徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

アメリカ的な/「恋はデジャ・ブ」

2008-02-27 07:00:35 | Movie/Theater
恋はデジャ・ブ
Groundhog Day/1993/アメリカ
監督:ハロルド・ライミス
出演:ビル・マーレイ、アンディ・マクダウェル、クリス・エリオット、スティーヴン・トボロウスキー
<自己中心的なお天気キャスター、フィル(ビル・マーレイ)がひょんなことから永遠に同じ日が繰り返されるタイム・ラビリンス(時間の迷宮)に迷い込んでしまった。やがて、そのことに気が付いたフィルは状況を利用して美人プロデューサーのリタ(アンディ・マクダウェル)を口説こうとするが、平手打ちにあってしまう。何度も繰り返すうちに嫌気がさしたフィルは、このタイム・ラビリンスから抜け出るために悪戦苦闘するのだが…。>(シネフィル・イマジカ

ハートウォーミング・コメディには、オレの好きなアメリカがある。
同じ毎日の繰り返しに、逃れられない運命に悪態を吐き、欲望の赴くままに過ごしたり、絶望して考え付く限りの自殺方法を実行しても、結局毎朝6時に目が醒めて、同じラジオ番組が流れてくるタイム・ラビリンス。その正体が一体何なのか、フィルはどうやってこのタイム・ラビリンスから抜け出すのか(抜け出せたのか)は、これ一切、見事なほど、説明されない。この辺はアメリカのハートウォーミング・コメディにはよくありがちなご都合主義だが、むしろ、主題はそこじゃないんだよ、と言い切っている清々しさがある。確かに主題はそこにはない。リーさん同様、ハートウォーミング・コメディもDon't Think,Feel!なわけです。

運命に絶望したときフィルが選んだ行動は、とても(良い意味で)アメリカ的だ。しかし、その行動がフィルと小さな田舎町の運命も少しずつ変えていく。この小さな田舎町というのがポイントで、やはりアメリカ白人(に限らないけれども)の理想郷というのは、小さな善意と余計なお世話で成り立っている、小さな田舎町なんだろうなあと感じ入った次第。要するにリアルではヤンキーのニイちゃんも、一歩その世界に足を踏み入れてしまうと、解脱したかのように作為のない人の良い若者になってしまうという、悪キャラのいない、善意で成り立っているディズニーランド。(もちろん、自己完結するしかない隔離状態の田舎町と、欲望の際限がなくなってしまう都会では物語の性格が変わってしまう。ファンタジーである本作が前者を物語の設定に選ぶのは当然なのだけれども)。

今日は昨日とほとんど同じ繰り返しで、でもほんの少しの善意と行動力で運命は少しづつ変わっていく。誰もが思っていてもなかなかできない些細なことを気付かせる、という意味で、典型的なハートウォーミング・コメディ。
ビル・マーレイだし、見せ方が上手いのでかなり笑わせる。

ようやく“翌日”の朝を迎えることができたフィルが言う。
「長い一日だった」
で、フィルは一体どれぐらいの間、2月2日を過ごしたのか。それはさっぱりわからない(同じ時間を繰り返す中でフィルはスーパーマンになって、ついには“解脱”していくのだ!)
ま、ハートウォーミング・コメディでそれを訊くのは野暮ってもんです。