マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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矢部・杵都岐神社のさなぶり

2018年07月30日 09時40分36秒 | 田原本町へ
この日はずっと雨だった。

雨の日のさなぶり行事が行われる田原本町矢部の杵都岐神社。

実は12年ぶりの再訪問である。

平成17年は6月26日の日曜日だった。

村の各戸の田植えが終わるころを見計らってさなぶり行事の日程を決める。

前年の平成28年は当初予想よりも早く終わったこともあって第3週目の日曜日。

6月19日に実施された。

そのことを知ったのは一週間後の6月26日

6月の最終日曜日と判断して出かけたが終わっていた。

今年こそはと思って前週の18日に訪れて前自治会長のFさんに確認していたから間違いない。

そういう経緯があって拝見する杵都岐(きづき)神社のさなぶり。

なにが見たいかといえば、苗さんの御供である。

苗さんは一把の苗。

田植えを終えて残りの一把を神さんに供えて、村の田植えが無事にすべてを終えましたと伝えるさなぶり行事である。

伝えるのは祝詞を奏上する神官である。

矢部に出仕する神官は多神社の神職である多宮司であるが、昨今は息子さんの禰宜と数多くある当該地域を振り分けて出仕されている。

その数は兼社。

26社にもなるから手分けせざるを得ないということである。

神事が行われる時間よりずいぶん早めに到着して新任交替された自治会長らにご挨拶をしておきたい。

そう思って早めに着いた杵都岐神社に存じている男性がおられた。

雨天にかかる雨に濡れながらも、予め準備をしていた神饌御供。

すべてではなくある程度の御供を並べていた。男性は矢部のの行事取材でお世話になったNさんだった。

ハツホ講のハツホ参りは平成28年の7月7日

その日の夕刻は祇園祭の燈明灯し

ヨミヤ参りは平成28年10月17日

和服姿の奥さんとともに参拝された。

Nさんと初めてお会いしたのは先に挙げたさなぶり行事を終えた一週間後

残念な日であったが、その日に目にしたカンピョウ干しに話しを伺ったNさんである。

それから1カ月後も拝見したN家のカンピョウ干し撮りの際に他家のカンピョウ干しも教えてもらった。

それから1年後にお会いしたさなぶりの日は新任の自治会長になっていた。

矢部の自治会役員は抽選で決まった5人。

杵都岐神社の年中行事を支える地域の役員さんの任期は2年である。

今年は雨が少なくて水不足に陥っていた。

池の水を足してもらってなんとかしたが、苗が育つかどうか心配していた日々であるが、この日は前夜から大雨状態。

今も降っているのが珍しいくらいだと云いながら並べていた。

一旦は、家に引き上げて再び神社にやってきたNさん。

今度は神饌に捧げる生鯛を持って来られた。

先に供えていると猫が食べてしまうから、神事が始まる直前ぐらいにと思って持って来た。

カボチャ、ダイコン、ニンジン、ホウレンソウ、ナスビにトウモロコシ野菜にコーヤドーフに板カマボコ。

スルメ、昆布にシイタケ。

リンゴ、バナナの果物など。

お神酒横に大きな鏡餅を盛った。

さなぶりに相応しい一把の苗さん。



ピンと育った稲苗の葉が美しい。

そのころに到着した多神社の神職。



鯛は神職の到着をもって供える。

矢部は神職が来られるのを確認してから村全戸に伝えるマイク放送をする。



その合図を聞いた村の人たちがぞろぞろとやって来た。



傘を要するこの日の参拝に、祝儀を役員さんに手渡して拝殿前に立つ。

幣で祓ってくださる祓い清め。



これをシャンコと呼んでいたのはNさんだった。

シャンコの祓いは順番待ち。

行列にはならなかったが、途切れることはない。



拝殿前、少し距離をとって順を待つ。

お一人参拝もあるが、家族単位の参拝も。

祓いを受けた人たちは右へ廻って木戸から入って、本殿向かい正面に立って参拝する。



祓いを受けてから氏神さんに頭を下げる。

矢部のいつもの参拝の仕方である。

待っている人たちも合わせて撮っていた際に声をかけられる。

平成29年2月3日のトシコシ行事の際に撮らせてもらったW婦人である。

先週に立ち寄った際に撮らせてもらった写真を前自治会長にお願いしていた。

お手数をかけますが、写っている人たちにどうぞ、と伝えていた。

その写真が手元に届いたというお礼である。

真っ暗な状況で撮っていただけにお顔ははっきりと認識していなかったが、撮られた方が覚えておられた。

ありがたくも嬉しいお声であった。



それはともかくお祓いをしてもらった参拝者は自治会役員からハクセンコウを受けとる。

この日の祭礼に多神社の神職がもってこられたハクセンコウである。

12年前にも見た同じ光景である。



夏祭りや秋の祭りは参拝者でいっぱいになるが、さなぶり行事の参拝者は農業を営む農家さんである。

この日は雨が降っているので少ないだろうと想定していたが、村全戸が90戸のうち1/3になる31人も参拝された。

もう来ないだろうと、参拝者が途切れたころを見計らって神事が行われる。



今度は役員の皆さん方のための祓えの儀である。

祝詞を奏上されて玉串奉奠。



そうしている間にも参拝者がやってくる。

時間ともなれば多神社の神職も腰をあげなければならない。

次に向かう兼務社のさぶらき行事の時間帯は午後5時。



出仕する兼務社すべてに苗さんを供えているという。

それぞれの神社にはそれぞれの神社役員がおられる。

矢部もそうだが、任期をもって交替する。

役員の引継ぎが上手くできずに継承できなくなればさぶらき行事は御供なしになる。

そういうことにならないように、苗代は必ず準備していただきたいと常々話しているというが、現状は24大字のうち、20大字が苗さんを供えているらしい。

また、神職や自治会役員が伺える範囲によれば、このような矢部の村さなぶり行事はあるとして、ここら付近は各家がする家さなぶりはたぶんになかっただろうという。

確かにここら辺りでは苗代田の水口まつりはまったく見られない。

そのことについては多神社神職も驚くべく現状であった。

(H29. 6.25 EOS40D撮影)


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