マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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榛原笠間・S家のハウス苗代の水口マツリ

2018年04月25日 09時54分27秒 | 宇陀市(旧榛原町)へ
例年なら4月10日ころにモミオトシを済ませて育苗器で数日間育てる。

それから良い日に苗箱を積んでハウスに運ぶ。

一枚、一枚を並べる。

ところが今年は3月末から4月初めは冷え込み厳しい日が続いた。

宇陀市榛原の笠間はその影響も大きくモミオトシ時期を遅らせた。

さらに長引く遅霜にも悩まされた。

予定がまったく狂ってしまったとぼやいても始まらない。

遅くなっても苗を植えなきゃならない。



ようやく第二弾の苗ができた。

ハウスに運ぶ直前は稲の穂先に露がついた。

温かい育苗器から移して軽トラに乗せた。



運んでくる間に露は蒸発していく。

田主は少しばかり、まだあるはずやと云われてレンズで覗くが・・・。



確かにあったが、時間が経ったものだから、僅か2粒の滴。

画像を縮小したら見えなくなるだろうな。

これまで何度かに分けて育苗した苗箱を運んでいた。

育っていくにつれ根も力強くなる。

もっと根を強くするにはこういう具合に踏むと云って実演してくださる。

あっと、思ったが、足で踏んでいた。



この通り、すぐに戻ってくるからと云って、手で抑えてくれる。

農業体験のない私にとっては育った稲を踏むなんてことは信じられない。

だが、このように意外と強いということを教えてくださって見方を変えないといけないと思った。

ただ、Sさんが云うには、実際は足で踏むわけではなく、コンパネ板の上を踏んでいるらしい。

ところで、育苗するこのハウスの構造が気になった。

私の概念ではハウスに太い木材があることは初めて知る。

一般的にはない構造だと思って尋ねてみた。

一年中、ほうれん草栽培をしているSさんが云うには、それは突っ張り棒だという。

寒い時季、雹や霰が降ったときである。

勢いが強い場合には倒れてしまうのがハウスの難点。

パイプで組み立てたハウスは弱いということだ。

それを防ぐには突っ張り棒が要る。

S家の山から伐り出したヒノキ材。

皮を剥いたヒノキを天井に何本かを斜交いにして括り付ける。

左右それぞれ交互に突っ張り棒をすることによってハウスは倒れ難くなる。

この構造は先代の教え。

今でもこうしてハウスを支えている。

この突っ張り棒はいつでも簡単に外すことができる。

ハウス壁側をよくみていただきたい。

支えている部分はハウスに括っているアンテナロープ。

輪っかにしているだけので、簡単に外れる。

元の位置に戻す場合は、その輪っかに通す。

つまり移動・着脱方式なのであった。

田主のSさんと知り合ったのは2年前。

場所は隣村の大宇陀の平尾。

平成27年6月24日に行われた平尾の田植え休みの植付け奉告祭の日だった。

早めに着いた平尾の水分神社。

行事の数時間前のことである。

境内におられた男性は宇陀市榛原の笠間の住民。

水分神社の社殿に巣を作っていたミツバチ退治の作業をし終えたときだった。

平尾氏子依頼の作業をしていた男性とよもやま話をしていた。

笠間の神社行事に御田植祭がある。

その行事に杉の実を束ねて奉ると話してくれた。

その奉り方を拝見したのは平成29年の3月5日

それこそほぼ2カ月前に遡る。

その行事に宮総代のKさんも同じく奉っていた。

二人とも同じ垣内の東垣内。

ともに御田植祭に奉った杉の実苗を持ち帰り、ハウス栽培の場に豊作を願って水苗代に立てる。

Kさんの水苗代の祭り方は数週間前の4月14日にされた。

Sさんはさらに日を伸ばしてこの日に立てると伝えてくれた。

着いた時間はお昼前。

水口まつりの在り方をお聞きして、ようやく拝見する稲苗に見立てた模擬苗の杉の実立てである。

さて、肝心かなめの模擬苗の杉の実立てである。

既に立ててあった傍に寄ってくれた。



今朝早く、こうして立てていた、と再現してくれる形。

ありがたく撮らせてもらう。

神社の行事に奉ったときの姿は逆立ち姿の自生垂れ。

水苗代に立てる場合はこれを逆さにする。



大きな実が見えるだろうか。

その実をポンポンすれば埃のようなものが飛び散る。

御田植祭のときにポンポンされたら、のけ反ったくらいの飛散量だったことを思い出す。

実というのは雄花である。

長く垂れさがる雄花を求めて探し回るが、高いところにしか生えていない。

もっと手が届くところといって探して来た、杉の雄花ばかり。

くるりと逆さにして束にしたらまん丸くなる。

豊作の印しはこうでなくてはといって、それを苗代に立てる。

苗代の場はほうれん草栽培もしているハウス内だ。

この時期だけは稲苗の箱ばかりにする1棟。

その一角に供えた豊作願いの形。

下に藁束を二つ。

倒れないように細竹を立てて支える。

家に咲いていたイロバナも添えた。



2本の細竹が見えるだろう。

杉の実はそのままでは立てることはできない。

細竹に束ごと括りつけて、その青竹を土に差し込んで固定するのである。

立てる土台は藁束。

昨年の収穫稲の藁を残しておいて土台にする。

前述した宮総代のK家も同じようにしていた。

Sさんの作付けはヒトメボレ。

すべての苗箱が揃ったら325枚にもなるそうだ。

そのヒトメボレの苗土は石川県産の土。

試しに購入したという。

以前はコシヒカリも作付けしていたが、倒れやすい品種なのでやめたそうだ。

Sさんは、そのコシヒカリを「コケヒカリ」と呼んでいたのに笑わせてくれた。

稲作もしているが、本業はほうれん草栽培。

以前も聞いたことがある販売先。

大手スーパーのイオングループが買い付け人だと話していたことを思い出す。

そのほうれん草を持って帰ってやと云われて、他のハウスに移動する。

一面に育ったホウレンソウ畑である。



前述したようにほうれん草ハウスも同じように木材で補強している。

畑に中に入って選別するほうれん草。



両手で抱えるくらいの量をくださった。

この日もいただいたほうれん草が瑞々しい。

癖のないほうれん草は甘くて美味しい。

過去にももらったことがあるからとても嬉しい大量のほうれん草にいつも感謝している。

ちなみにほうれん草の肥料は牛の糞だそうだ。

ハウス全体で3反の作付面積。

9棟のハウスを順に廻して、種蒔から収穫まで40カ月間のローテーションする。

また、米の作付面積は1町8反。

圧倒的に広さが違うが、逆に収穫比率からみた面積は非効率のような気がする。

(H29. 4.29 EOS40D撮影)


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