平城遷都1300年祭を迎えて各寺院では大切な仏像などを特別開扉されることが多くなっている。
東京で開催された「国宝阿修羅展」や「尼門跡寺院の世界展」には大勢の観覧者が訪れ長蛇の列が続いたという。
奈良では国立博物館で「国宝 鑑真和上展」が開催された。
一枚のチケットを拝領したので後学のためにと足を運んだ。
近鉄奈良駅から博物館まではそんなに距離はない。
ところがだ、体調は相変わらず芳しくなく足取りは重い。
なだらかな坂道なのにとても時間がかかる。
貧血症は重傷領域に入っている。
少しずつ歩めては立ち止まる。
健康体ならすぐにでも着く博物館は遙か遠くに去っていくようだ。
普段の倍ほどの時間を費やしてようやく辿り着いたら平日の午後のためだったのか館外に並ぶ人は見られない。
それはともかく入館したらそこにも階段がある。
登り切ってようやく会場に辿り着いた。
そこは照明に照らし出された異次元のような空間が広がっている。
四天王立像、如来立像をひとつひとつ拝ましていただく。
東征伝絵巻は生き生きとした表情で描かれている。
そして鑑真和上坐像に出会う。
なかでも注目したのは八世紀の大雲経請雨品だ。
ときおり判読できる文字がある。
大雨に止雨。
おそらく大雨が降って止雨祈願したものであろう。
他にウシのクリとか牛乳年記の文字も見られる。
これはどういうことを意味するものなのだろうか。
農耕行事に関連することなのだろうか、興味が沸々と沸いてくる。
唐招堤寺では金堂が平成大修理の真っ最中。
古い写真に写りこんでいるひとかげが見える。
当時の装束に興味をそそられながら、最後は目の前にどーんと居座る鴟尾の姿に感動する。
見納めの鴟尾を後にしつつ帰路となったが、今日の身体ではJR奈良駅までの戻り道がとてつもなく遠く感じる。
博物館前は巡回バスが次から次へとやってくる。
これに乗ろうと思ったのは言うまでもない。
(H21. 5.19 SB912SH撮影)