「A‐非A」関係──命題「A」にはつねに命題「非A」が貼りついている。命題「ストライク」のメンバーからなるクラスを漫画の吹き出しのように囲むと、囲み線の外側には命題「アウト」のクラスが自動的に配置される。「A」か「非A」のいずれか一方のクラスを強調するだけで、このコンテクスト(世界の区切り方)は強化されていく。
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二項からなる対抗的共生関係──相互に否定し合う対立的関係にみえながら、実際には否定的媒介項としてそれぞれの存在理由の根拠を与えあう共生関係にある。
「善‐悪」「真‐偽」「正‐邪」「白‐黒」「友‐敵」「美‐醜」「聖‐穢」──その無数のバリエーションにもかかわらず、ともに二者の相互依存的関係の閉じた生態系(ニッチ)という形式的同一性で共通する。
二項図式──〈世界〉の意味配列、価値配列のもっともプリミティブな、そして滅びない原理的な思考シェーマ。われわれの日常の大部分を構成する世界の分節原理でもある。典型的には「友‐敵」図式にその本質が示されている。思考、感情、行動のすべてにわたり、日々の推進力の源泉として働く、より自然の法(力の論理)に近い関係原理。
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相互依存──相互に存在理由を与えあい支えあう対抗的共生関係においては、関係を離れたそれぞれの自分自身の独立した思考というものが存在しない。その活性も不活性も生成も死滅も運命共同体として一つである。
にもかかわらず、それぞれは相手のことをよく知らない。まったく知らないといってもよい。相互に相手の存在についての記述の一切は先験的に確定され、自明化しデフォルト化している。いいかえると、「否定項」という絶対的規定によって、それぞれは相互に思考対象から除外されている。
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人間的生から生成する分節原理──その価値と意味の配列、それぞれの実存の企投と結ばれて構成的に立ち上がる〝現実世界〟。その非自然的な生成性と消滅性から視線を外さないことで、あらゆる「超越」(物語・神話)の支配を廃棄することが可能になる。
いいかえると、「超越」を後ろ盾にした全言説が廃棄され、ただ実存(個)に創発する価値という原事実、そこから共同的に立ち上がる神意ならぬ〝人為〟としての集合的価値、その合意可能性という根本原理の暴露。そして、それを支えるものとしてのそれぞれの実存(個)が保持される。
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第三領域──神意ではなく〝人為〟、人間的実存における価値の創発可能性へのめざめとしての近代。
二項的世界図式──天国と地獄──に加えられる新たな関係的ナビゲーションの可能性、第三の思考領域の発見、第三の言語の創発可能性へのめざめ。すなわち人間的「自由」の発見と自覚、その実践的希求としての近代。
われわれはいまだに完全にめざめ切っていない、行きつ戻りつの歴史の中にいる。
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