「現前の周縁に揺曳するもの」
──中井久夫『徴候・記憶・外傷』
ことばがとどかない、触れることができない
みずからに訪れ、明滅する透明な告知
すじちがいの方角へ向かっていることの感知
「ちがうな」
絶対的な正義、善きこと、真実の名において
けっしてそういうことではない
疑いようのない透明な明証性において
みずからに告げるものがあるということです
ラングでもパロールでもなく
ただ内なる出来事として、
なにかを指し示し、教え、諭し、命じることばではない
専制に走るものとすれちがい、はるかに遠ざかるもの
ことばに修正をうながすように静かに木霊し
見失われやすく、はかなく現われ消えてゆくもの
このはかない告知のはかなさのまま保たれるように
保たれるにふさわしい場所をあつらえ
無形、未形のままラングもパロールもしばし休ませておく