──H.S.サリヴァン『精神病理学私記』阿部大樹・須貝秀平訳
(Personal Psychopathology by Harry Stack Sullivan, 1929〜1933)
以下の定義を仮に採用したい。
悪徳とは人間の営みに不当に立ち入るものすべてである、と。
誰かの人生に立ち入るときには、それが当事者にとって正当なものであるかどうか、
医学や福祉にかかわる限り考え続けなくてはならない。
精神病理学を学ぶものはさらに、組織力学や文化や習俗による
人間の内側からの介入をも考慮しなければならないだろう。
もしも社会と個人が共に自律するための共通認識を得られたなら、
そして古代よりの鉄条網を乗り越えられたなら、
西洋文明は数世代のうちにさらなる高みに達するはずだ。そのときがやってくれば、
宗教的情熱に濫費されていたものが社会福祉への現実的関心へと変わるだろう。
少なくとも知性と幸運に恵まれた人々にとっては、
そのような献身こそ自分たちにふさわしいものとして映るに違いない。