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鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『坂東玉三郎:中山右介・著』

2010-09-05 21:05:42 | Weblog
一向に衰えを見せない今年の夏。
夏は、いつまで続くのか・・・。


坂東玉三郎さん。
言わずと知れた歌舞伎の立女形さんですが・・・。

以前から、不思議に思っていたのですが、歌舞伎の他に、舞踊や演劇、演出、映画などを手がけていて、マルチな才能を発揮されているまさに、芸術の女神に溺愛された稀有な役者さんですが、どういうわけか、本家本元の歌舞伎座への出演が、それ程、多くなかったような・・・。

この疑問の答えが、この本にありました。

・・・そういうことですか・・・。

伝統芸能の世界は、世襲制で、一般のひとが、歌舞伎座の舞台に立とうと思っても、歌舞伎のお家に生まれない限りは、主役には、なれない・・・そんな世界の中で、守田勘弥の芸養子となり、類稀な美しさで、作家の三島由紀夫や円地文子に愛されながらも、養父の早い死で、後ろ盾をなくし、伝統の世界に君臨する氷の女帝・六代目中村歌右衛門の存在が、彼に役を与えず、かなり苦難な道を歩かれた方だと知りました。

お姫様役は、向いていない・・・と言いながら、歌舞伎三姫のひとつ、一昨年の八重垣姫は、本当に、美しかったし、八重垣姫は、女帝独占の役だったから、歌舞伎座で、歌右衛門以外の女形が演じられなかったようです。

ワタシ、ラッキーでした。
玉三郎の八重垣姫を見ることができて・・・。
ほんとうに、舞台に足がついていないようで、ふわふわと宙を舞っているようだったし。

そして、中村歌右衛門しか演じられないとされていた傾城『阿古夜』。
琴・三弦・胡弓を弾きこなせる役者が、歌右衛門の他にもいた・・・それが、玉三郎。
正に、不世出の女形な訳で。

普通のひとには、知りえない梨園の構造。
このあいだ、梨園の御曹司と結婚された某・アナウンサー嬢は、ちゃんとやれるのかしら・・・なんて、下世話な事を思ったり。

あの世界を知る人でないと、務まらない梨園の妻稼業。
そんなことを思いながら、一気に読んでしまった一冊。