書店で文庫本を一冊選びレジへ向かう途中、
「すんません」と見知らぬおじさん(推定年齢73歳)に声をかけられた。
ダウンコートにお決まりの長靴姿だったので、書店の店員さんと間違えて声をかけたのではなさそう。
私に用があって呼び止めたのに違いない。
何か探している本でもあるのだろうか。
ちょっと知的なおばさんに見えたのだろうか。
「はい?」と笑顔でおじさんに向き合うと、
「すまんがそこの地図とってくれんか。わし手が届かんくて」
……そうきたか。
私、ご存知かと思いますが、背は高いんです。
おじさん、チャンスだと思ったんだろな。
昭文社の地図の棚で、分県地図ってやつね、がばっと広げてみる、シートタイプ。
で、
「茨城、茨城県とってくれんか」
はいはい、はいはい、いいですよ、とりますよ、茨城ですね、ほら、よいしょっと。
おじさんの気転というか、背が高い人通るの待ってたのかと思うとおかしくて、
おもいっきりの笑顔で茨城県地図を手渡してあげましたけど、
いやぁ、自ら進んで高いところのものをとって上げることはあるけれど、
通りすがりに呼び止められ頼まれたのは初めてのような気がする。
役に立つ こともあるこの 背丈かな。
気温が上がって路面ぐちゃぐちゃで大変大変。長靴最強だな。