たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

終末ケアの元彼氏の死に向き合う「モルヒネ」

2016-10-22 12:25:13 | 本・読書

最近、こんな本を読みました。
動機は、まったく埋め合わせで手に取りました。
安達千夏さんという作家もはじめて知りました。

「モルヒネ」(上・下)図書館から借り出した大活字本です。
元本は2003年に祥伝社から出版され、
のちに文庫版で流通しているようです。



「モルヒネ」は化学薬品で「医療用麻薬」に分類されている劇薬。
がんの痛みを消し、延命効果があり、
自然界が人類に与えた最高の鎮痛薬だという。
麻薬ヘロイン生成の原料にもなり、厳しく管理されている。

この劇薬をそのまま文学作品の題名にした、
安達千夏著「モルヒネ」は恋愛小説でした。

小説の主人公・藤原真紀は忌まわしい過去を引きずっている。
いつでも死を選ぶことができる終末医療の医師になった。



幼くして母は入水自殺し、ある日暴力父に殴られた姉を抱きながら一夜過ごす。
気がついたら姉は死んでいた。そのとき真紀は小学生だった。
医師の養父母に引きとられて育つ。
死について考えながら医療ホスピスの道を志した。
30代になった真紀は在宅医療に携わる医師として誠心誠意働く。

勤める医院の院長と婚約している病棟に「厄介な患者」が入院した。
7年前に勝手に消えてしまった元恋人の倉橋克秀だと知った。

彼は余命2~3カ月の末期脳腫瘍患者として現れたのだ。
ピアニストを目指し7年前に真紀を捨てオランダ渡った。
一切の延命治療を拒否し続け死と向き合う彼と真紀は‥‥

モルヒネを欲しがる克秀、100ccのモルヒネは死につながるが、
適量のモルヒネは痛みを和らげたり、気持ちを静めたりする。



ホスピス、延命、安楽死、尊厳死‥‥重いテーマを抱え、
婚約者の院長、死に向かう元彼、終末医療医師の真紀。
抜き差しならない恋模様を通して死についてストーリーは進む。

初めて知った作者の安達千夏でしたが、
調べてみると相当なベストセラー作家でした。
すばる文学賞作家で「モルヒネ」以外にも多くの作品があることを知りました。



この本を手に取った動機はまったく単純なんです。
「鬼平犯科帳」の3分冊を借りて、あと2冊を借りられる。
池波さんの隣りが「ア行」で派手な装丁の安達さんの本が目に入った。
9月の長雨の日に少しづつ読んでいました。
久しぶりにこの手の小説を読みました。
「鬼平」と違って、読みづらい書き方の小説でした。