たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

澤田ふじ子氏の「高瀬川」シリーズ「高瀬川女船歌」を読みました

2017-05-28 11:32:08 | 本・読書

「もどり橋」に続いて、2冊目の澤田ふじ子さんの作品を読みました。
「高瀬川女船歌」(たかせがわおんなふなうた)<上><下>

平成7年9月から9年6月にかけて「小説新潮」に連載され、
同年9月に新潮社から刊行され、その後「新潮文庫」になり、
2009年に埼玉福祉会から大活字本で出た本です。

高瀬川は京都・二条から鴨川に沿って南に流れる川で、
森鴎外の「高瀬船」の舞台にもなっている川ですね。
この川は角倉了以、素庵親子のよって開削された幅四間の掘割川。
京都と伏見、さらには京都と大阪を結ぶ水の交通の要路でした。



ときは江戸時代の安永・天明期を背景に舞台は京都。
高瀬川に沿って商う宿屋、荷蔵、酒問屋や炭問屋など商家が中心です。

物語は高瀬川運輸の管理をする「角倉屋敷」内に位置し、
川筋の中でも重きをなしている「旅籠の柏屋」を中心に
――中秋の月/冬の蛍/鴉桜/いまのなさけ/うなぎ放生、
かどわかし/長夜の末日/あとがき/解説――の7編からなっています。

17歳のお鶴は京都・高瀬川沿いの旅籠「柏屋」の養女になって8年。
柏屋の主(あるじ)惣左衛門と伊勢夫婦、女船頭のお時、
捨て子だった少年平太、遊女小梅、謎の男・宗因――。
人々の暮らしや出来事の人生ドラマが描かれています。

江戸時代の京都。セリフは京言葉で綴られており、
現代小説のように、テンポよく読み進むには難儀でしたが、
読み終えて、じわっと来る人生の哀歓がこころに染みます。
澤田さんの作品を、もう少し読んでみようと思いました。