遠い森 遠い聲 ........語り部・ストーリーテラー lucaのことのは
語り部は いにしえを語り継ぎ いまを読み解き あしたを予言する。騙りかも!?内容はご自身の手で検証してください。
 



矢代まさこは昭和22年、花の24年組にほんのすこしさきがけて生まれ 15歳で貸本漫画でデビューしました。貸本漫画の終わりのころの花形であり 商業誌とふたつの媒体を生きた漫画家です。貸本漫画では26冊つづいたようこシリーズ(さまざまな「ようこ」を主人公にした連作漫画)が有名です。わたしのなまえがようこであったこともあってようこシリーズをほぼ全巻持っていました。かさばるので7冊を残して処分してしまったのが今となっては残念です。(一時は1冊4000円から9000円という高値がつきました)ようこシリーズでは”見えないながれ”と”ピーナツをひとつぶ””笑ってごらん”が好きです。

見えない流れは幼い少女が家族の復讐をするものがたり、笑ってごらんは少女の再生のものがたり.....とても鮮烈でした。

   その後別冊マーガレットに登場、COM ジャンプ、キング、チャンピオンなどの少年誌、青年誌で矢代まさこは果敢な挑戦をつづけました。女性が男性誌に書いた草分けではなかったかと思います。西谷祥子が高橋留美子について 男女の垣根を越えた漫画家があらわれた(それが望みだったが先を越された)感慨を書いていましたが、少年誌に掲載されることは女性漫画家にとってひとつの夢であったのではないか、それを最初にしてしまったのが矢代まさこではないかと思います。

   貸本まんがで活躍した新城さちこさんが夫君山本まさはるさんの姉であると知ったのは 近年のことです。新城さんは生活に根ざしたテーマを鋭く描く漫画家で社会派でもありました。矢代まさこは新城さちこにから影響をうけたようです。新城さちこの漫画にはキラリ光るものがありましたが、絵柄が地味だったので捨ててしまったのがこれも残念です。

    生活に根ざした明るいコメディー、家族や動物がある苦難を乗り越えてふたたび歩き出すというテーマが印象に残っています。またそれとうらはらに ひとの心に潜むトワイライトゾーン.......自分でもわからない薄青い闇を描くことのできる漫画家でした。後半の作品から感じるのは、たとえばヤツデの木の下 薄暗がりにひっそり咲く白い花のイメージです。日本固有のものといわれる私小説に似たこまやかなひそやかな湿った匂い.....それは独特のものでした。いつのまにか指をすり抜けていったしあわせ....のようなテーマ....商業誌では書けないものがたりをファニィ などで書いたのでしょうか。すこし昔の日本の少女の揺れ動く思春期....清潔な首筋 かすかなせっけんの匂い うちに秘めた秘密....がこれほど似合うひとを知りません。

    作品はほとんどが自分のなかから生み出されたもの...創作のひとでした。再話というとジェイン・エアしか思い浮かびませんが、力のこもったものでした。この作品ばかりではありませんが、畳み掛けるような緊迫感 主人公が心理的に追い詰められるシーンが秀逸 のちの漫画家が参考にしたのではないかと思います。男性の描き方は類型的でした。のちに睦月とみの名で書きましたが それらの作品はとってありません。......名前を変えれば中身も変わるような気がした.....という後年のコメントが心に響きます。

    樹村みのりは矢代まさこの影響をもっとも受けたひとです。もっと光をいれて明るくして影と光のコントラストをつけ ひとの闇をより社会にひろげたひとでした。矢代まさこは萩尾望都が 横山光輝 水野英子 とおなじように模写し 初期に強く影響を受けた漫画家でもありました。

画像はあとでUPします。

所有作品

1965年 
しあわせの後姿 (単行本) ようこシリーズ 4  
見えない流れ (単行本) ようこシリーズ 5  
ジョオの青い星 (単行本) ようこシリーズ 14  
歌うこがらし (単行本) ようこシリーズ 17  
1966年
ちびっこ聖者 『別冊マーガレット』 10月号 24
ミミー,みっつ 『別冊マーガレット』 12月号 31
ピーナッツを一粒 (単行本) ようこシリーズ 20  
よっこヒヨッコ逃亡記 (単行本) ようこシリーズ 21  
ママに乾杯 (単行本) ようこシリーズ 22  
笑ってごらん (単行本) ようこシリーズ 23  
おはぎのお嫁いり (単行本) ようこシリーズ 26  

1967年
ゲンの吹雪 『別冊マーガレット』 1月号 24
子象のデイト 『別冊マーガレット』 2月号 31
ジーン・ブルース 『別冊マーガレット』 4月号 16
こねこのピアノ 『週間マーガレット』 24号 29
えくぼがお似合い 『別冊マーガレット』 6月号 30
虹どろぼう 『別冊マーガレット』 8月号 48
ミセス・モンローのお嬢さん 『別冊マーガレット』 9月号 31
水晶のフェアリィ 絵物語『別冊マーガレット』 10月号
トルウラブ ひとりぼっち 『週間マーガレット』 39号 29
サチのポプラレター 『週間マーガレット』 43号 ~48号
イブのらくがき 『別冊マーガレット』 12月号 24
赤い風船 『マーガレット増刊』 12/14増刊 7
キキの新しい歌 『別冊マーガレット』 1月号 24
水晶の山 『別冊マーガレット』 2月号 6
石の花 絵物語『別冊マーガレット』 3月号 6
短編シリーズ 1 蝶々の泣いた夜 『COM』 6月号 16
短編シリーズ 2 笑いかわせみにいえない話 『COM』 7月号 20
短編シリーズ 3 歌うたう里子 『COM』 8月号 20
短編シリーズ 4 わが名はボケ猫 『COM』 9月号 20
短編シリーズ 5 クモの糸 3話 『COM』 10月号 22
短編シリーズ 6 ここちゃん 『COM』 11月号 16
短編シリーズ 7 5匹と2人の物語 『COM』 12月号 24
ほおずきの歌 少女コミック 6月号 31
パパと7人の仲間 少女コミック 8月号 53
おんぼろデュエット 少女コミック 10月号 31
1969年
短編シリーズ 8 シャボン玉 『COM』 1月号~3月号 71
短編シリーズ No.9 影を落とした・・・・・・ 『COM』 4月号 20
短編シリーズ No.11 熱・すすき・白い闇 『COM』 6月号 20
短編シリーズ 最終回 まり子の涙 『COM』 7月号 20
ノアをさがして 『COM』11月号 48
愛と感動のシリーズ 4 白神 週刊少年マガジン12号 30
純愛シリーズ① ひとときだけ・・・ ファニー 創刊号 16
純愛シリーズ② 6月は、もの想う ファニー 6月号 16
純愛シリーズ③ 永久花の死 ファニー 7月号 16
純愛シリーズ④ ひぐらしの季節 ファニー 9月号 16
純愛シリーズ⑤ 風が通りすぎる・・・ ファニー 10月号 16
純愛シリーズ<最終回> 何処の波に・・・ ファニー 11月号 16
ジェーンエア ジュニアコミックス 5月号(通巻9号) 163
イルカのくる島 りぼんコミック 9月特大号 31
1970年
トムピリビに会った? 『デラックス・マーガレット』 春の号 30
シークレット・ラブ 『デラックス・マーガレット』 冬の号 31
風のある絵 『COM』昭和45年 3月号 24
イルカのくる島 別冊ファニー 7月号 31
ひいらぎ 『COM』 1月号 24
エミのストールのこと 『COM』 4月号 24
うそつき鏡 『COM』 10月号 24
1974年
雪の夜に聞かせて 月刊ファニー 5月号 32
矢代まさこよみきり劇場(1) 赤い実たべた!? 週刊少女コミック 8月19日号 40
1975年
かわいそうなイヴォンヌ! 週刊少女コミック 10月12日号 40



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