遠い森 遠い聲 ........語り部・ストーリーテラー lucaのことのは
語り部は いにしえを語り継ぎ いまを読み解き あしたを予言する。騙りかも!?内容はご自身の手で検証してください。
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プルートー 地上最大のロボットと遺伝子組み換え作物
日本の闇
/
2009-07-22 05:22:26
雲を透いて見えた日食
......きのう、テレビ朝日が一歩踏み込んだ報道をしていました。きのうのブログに書いた『年次改革要望書』に触れ、日本政府があこぎなアメリカの要求に唯々諾々と従い日本を事実上切り売りしてきたこと、日本のささやかな要求にアメリカは耳を貸さなかったことを番組のなかで伝えたのです。
日本の要求とは牛肉輸入にあたっての全頭検査とか、日本の有機野菜をアメリカに売るためのJAS規格の変更を求めるなどのかわいいものなのでした。日本は車や電化製品を売るために、アメリカの農作物を買っています。....というか大豆とかとうもろこしについては依存しています。中国の食物をわたしたちは警戒しますが、アメリカの農作物には警戒していないひとが多い。ところが、これが実はこわいのです。
残留農薬の問題があります。そして遺伝子組み換え作物、この遺伝子組み換え作物の種子をつくっているのが”モンセール社”、この会社は悪名高い枯葉剤をつくった会社でもあります。遺伝子組み換え作物は地上にないツクリモノの作物なんです。たとえば虫を寄せ付けないように農薬を撒き散らすとうもろこし....のようなものをつくっています。だから人体にどのような危険性があるかわからないし生態系にどんな影響を及ぼすかわからない、リスクの高いものなんです。ヨーロッパでは全面禁止ですが、日本はそうではありません。表示も曖昧です。
残留農薬の問題も含めて、日本政府は車や電化製品を売るために、国民の健康をないがしろにしているのです。グリーンピースに連絡すると、トゥルーフードガイド....遺伝子組み換え作物を使用している食品をチェックするパンフレットを送ってくれますよ。 家族の健康は自分の手で守りましょう。
グリーンピースは→
コチラ
さて、浦沢直樹さんのプルートー第八巻(最終巻)を読みました。浦沢さんはバガボンドの井上雄彦さんとならぶ日本を代表する漫画家で、今までもモンスターやニ十世紀少年などの骨太な、問題意識のある作品を世に問うてきました。その浦沢直樹さんが万を持して、手塚治虫氏の鉄腕アトムのシリーズのなかで一番の傑作「地上最大のロボット」をリメイクするというのですから、ファンは色めきたちました。
わたしは実は3.40年前のA4版の鉄腕アトムのシリーズをまだ持っているほどのファンですから、プルートーが出版されるのを、一抹の危惧を抱きつつ、たのしみにしていました。7巻のイプシロンのときもJRのなかで思わず涙をこぼしました。ノース2号のときもひそかに泣きました。....けれども、けれども、8巻を読むと危惧が現実になっていました。
浦沢直樹という漫画家は、イメージと作品世界の構想力において素晴らしい漫画家です。メッセージ性もある。しかしたぶんやさしい方なのでしょうね。登場人物に撞着してしまうきらいがありはしないか、エピソードをつめこみすぎるサービス精神がありすぎはしないか......結果、作品は客観性のコントロールを失い、エピソードの収拾をかろうじて支えても、ラストに向かってエネルギーがたかまり収束し、おさまるところにおさまるという読者の望む場所に着地しないまま終わってしまいます.....エンディングがウイークポイントなのです。
今は昔、小松左京さんが、作品を書くとき、中盤イメージの奔流にたずなを必死でひきしぼる、それが力仕事なのだと....そうしないとものがたりが拡散してしまうとおっしゃっていたことがあります。小松左京さんは短編の名手でありました。長編の「復活の日」は情緒に流れすぎた、「果てしなき流れの果てに」が傑作だと私見では思っております。
さて、「プルートー」ではどこが手塚さんと違っていたかというとアトムがまるで違っていた。アトムはロボットの少年というより生身の少女のようでした。見た目が人間そのままであったせいもあるのでしょうが、ロボットの持つ人間とは別の意味の有限性、無機的なかろやかさがなく湿り気をおびていた。それはいい意味もあるのですが、ものがたりを本質から変えるものではなかったでしょうか。
ゲジヒトが最後ちかくまで狂言まわしをつとめ、ノース2号、イプシロンとともにうつくしい旋律、崇高で心あらわれるエピソードをかさねた.......アメリカとイラクを模したトラキアと.....の構図もわるくなかった。......が、なぜか権力側がせこくて厚みをかいていたために、あまりにも人間的で崇高なロボットたちとの対比がかみあわず....かといって、プルートーの性格付けもウェットで、原作のロボット競技会形式はかたちだけだったので、結局不消化というか、読者はクライマックスに達することなく、ものがたりに置いていかれてしまった。
なんだか、すこし残念です。ものがたりというのは途中もたいせつなのですがエンディングが決まらないと、こう欲求不満が残ってしまう、カタルシスはたいせつです。「語り」でもそうなのですが、大作には語り手自身のパワーが必要です。客観性、制御力、持続力.....途中エピソードの山の高さを考慮しつつ.体力気力を残してエンディングに突入。8合目あたりが急所です。潜在的ポテンシャルを高めてゆくしかないのだろうなと思います。
けれどもプルートーには楽しませてもらいました.....なぜタイトルロールがプルートーなのか、ゲジヒトでもよかったんじゃないかな....という気がしないでもないですが、次の巻を待つ期待感、こころのたかぶりは10代の頃に帰ったようでした。そして20世紀少年でもそうなのですが、浦沢直樹さんには時代性がある、今世界で動いていること、問題をキャッチしてものがたりに投影してゆく気概があります。今のこれを掬い取るってこわいことでもあるのですよね。掬い取りようを間違えると瞬時に古くなる、いわゆる陳腐化してしまう.....歴史は動き続けているから。だから古典的なものに今を投影させるほうが楽なのですが、浦沢さんはリスクを犯しても果敢にチャレンジなさる.....敬服します。浦沢直樹さん ありがとうございました。
さて、わたしも、プルートーと遺伝子組み換え作物と語りの三題話、ムリムリエンディングに突入します。アメリカと日本の関係は、民主党に政権がうつったにしても目だった変化はないのではないか.....とわたしは危惧しています。なにしろ太平洋戦争以前、開国のときからアメリカ?は日本の首根っこを押さえてきたのですから、今後中国からの搾取に切りかえるにしても、日本を骨までしゃぶり尽くすまでは放さないでしょう、どんなあざとい手段をつかっても。
納得のいくラスト大団円は期待できそうもなく、そうなると遺伝子組み換え作物もポストハーベストでベトベトな作物も当分日本にやってくるわけで、それぞれの家庭、それぞれの個別のエピソードで対応するしかないわけです。私自身は国産品愛用→地産費消→自家栽培.....→菜食(飼料はもろあぶないです)というようにゆっくりたのしみながら変えていこうと思います。
語り手はものがたりを生きています。けれども、それぞれの人生のものがたりを生きることで、逃れようのないエンディングに向かっていくことで、わたしたちは誰しも ストーリーテラーなのかもしれません。納得のいくものがたりを生きて語ってゆきたい...ものです。
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