Leikon's Photo Diary

写真とカメラなどに係わる独り言

「キャパの十字架」

2013年05月07日 00時21分19秒 | 写真・カメラ
沢木耕太郎の「キャパの十字架」を「元上司」から拝借し、読了。NHK 番組「沢木耕太郎 推理ドキュメント 運命の一枚 ~ "戦場" 写真 最大の謎に挑む ~」の種本です。NHK 番組よりも本の方がよく解るのが、オマハ海岸に行かなくてはならなかった理由など「キャパの十字架」の重さを推理している点で、正にテーマの核心ですね。一方で、( NHK 番組を見直しましたが)銃の構造の説明や CG については、動画である NHK 番組の方がよく理解できるケースが多かったですね。

いずれにしても、番組も本も、良く出来ていると感心しております。沢木と NHK の技術陣の説得力ある説明は素晴らしいと思います。ただ、カメラ好きの観点から少し気になったのは以下の点です。

1. 当時のライカでも、ライカピストルがあれば、「突撃する兵士」と「崩れ落ちる兵士」の撮影時間の 0.86 秒の間に連射できます。モータードライブの無かった当時、2 台のカメラが必要との論拠の一つが、IIIaではこの短い時間に連射できないことを上げていますが、論拠としては弱いのでは。ピストルは使ったことはありませんから偉そうなことは言えませんが、同じようなライカヴィットなら、私でも秒 3 コマは撮れました。番組には出てませんが本では、田中長徳がサポートしている、と記載してありましたのに(田村彰英も!)。
もっとも、沈胴ズマールを沈胴したまま撮る沢木ですから、書きぶりが悪いのかもしれません。なお、キャパがライカピストルをスベインに持ち込んで無いなら、そう書くべきです。当時のライカの技術を甘く見てはいけません。

2. 更に、ゲルダのローライフレックスなら、その程度の連射は出来た筈です。つまり 2 枚ともゲルダが撮った可能性がありますが、その点については触れていません。
例えば、1台で同じ位置から撮ったと仮定すると、銃の長さと背景の山の稜線の長さから、レンズの画角を推定することは可能だと思います。この 2 枚ではレンズの画角が異なる結果になる(つまり、135 の 50mmと120 の 75mm が必要になる)とか。


なお、全くの蛇足ですが、MOMA に崩れ落ちる兵士だけでフィルム1本ぶんのコンタクトプリントがあるとの「都市伝説」があります。

末尾ながら、敬称略で失礼しました。