Leikon's Photo Diary

写真とカメラなどに係わる独り言

八月納涼歌舞伎 第二部

2024年08月07日 23時57分07秒 | 歌舞伎

誤認衆の H 口怪鳥のご厚意で「八月納涼歌舞伎 第二部」に芝居見物。お目当ては祖父、父の(更に言えば高祖父五代目、曽祖父六代目菊五郎の)当り役 新三を初役で務める勘九郎と進境著しい巳之助の勝奴による「髪結新三」です。
 

先ず「髪結新三」です。花道の出で、新三は忠七とお熊の話を黙って聞いています。十七世からの勘三郎型ですね。従来見物したのは松緑、菊五郎、菊之助で六代目型ですから「一番聞いてやろう」と言っていました。また髪結の場面でも「粋な男になれ”や”すぜ」と言ったように聞こえました。「ま」でないのも初めてのように思います。弥太五郎源七に対しては、口では恐縮しているものの最初から一分も恐れていないようで、これはビミョーかもしれませんね。全体を通してみて、勘九郎はカドカドがピシッとしていて色気も凄みもあって良かったと思います。それに十八世勘三郎に益々似てきて、巳之助は十世三津五郎に似てきたなぁ、と思ってホロっとしました。脇も扇雀、亀蔵、七之助は確り固めていますね。長三郎クンも。気になったのが、幸四郎の弥太五郎源七で、おじさんと言われる程の年配には見えず、役に合っていないか。彌十郎の大屋も左團次さんを思うと「太さ」が足りないと言いますか、愛嬌が勝ちすぎのように感じました。あと中車も大店の仲人らしい(錦之助のような)品に欠けるような気がしました。


次の「紅翫」は見るほどのものは無いですね。感想は相変わらずで、巳之助の上手いのと児太郎の貫禄あり過ぎ(笑) (明らかに荷が重い)橋之助の抜擢ではなく巳之助にやらせればよいのに。



【 本日の演目 】

河竹黙阿弥 作   
一、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)   
髪結新三
髪結新三   勘九郎(菊之助、菊五郎、松緑)
弥太五郎源七 幸四郎(彦三郎、團蔵、同左)
手代忠七   七之助(萬太郎、時蔵:現 萬壽、同左)
下剃勝奴   巳之助(菊次、権十郎、亀寿)
丁稚長松   長三郎
お熊     鶴松(児太郎、梅枝:現 時蔵、同左)
家主女房おかく 歌女之丞(萬次郎、同左、右之助)
車力善八   片岡亀蔵(菊市郎、秀調、同左)
加賀屋藤兵衛 中車(錦之助、家橘、仁左衛門)
家主長兵衛  彌十郎(権十郎、左團次、同左)
後家お常   扇雀(雀右衛門、魁春、秀太郎)
( )内は2023年5月、2019年11月、2015年10月公演の配役   


二、艶紅曙接拙(いろもみじつぎきのふつつか) 
紅翫(べにかん)
紅翫      橋之助
虫売りおすず  新悟
朝顔売阿曽吉  中村福之助
大工駒三    歌之助
角兵衛神吉   勘太郎
町娘お高    染五郎
蝶々売留吉   虎之介
団扇売お静   児太郎
庄屋銀兵衛   巳之助


七月大歌舞伎 夜の部

2024年07月15日 23時57分34秒 | 歌舞伎

誤認衆の H 口さんのご厚意で「七月大歌舞伎」夜の部に芝居見物。お目当ては宙乗りも演じる幸四郎の三役と贔屓の巳之助です。
 
序幕。厳しい言い方かもしれませんが、本も役者も学芸会レベルですな。中車は歌舞伎の台詞廻しをもう一回やった方が良いでしょう。最悪なのは本能寺の場。蘭丸に眉間を鉄扇で割られ、馬盥。これを経ての謀反でしょうが。それがその場で直ぐに鎖帷子なら、堪え難きを堪え、忍び難きを忍んだうえでの「時は今」にならんでしょう。本が悪過ぎ!! この本で芝居にできる光秀役者なら兎も角、松也も大根でしたし。愛宕山山中も期待の巳之助でしたが、然程のことは無し。最後に右近の殺陣をやる時間があるなら、光秀の遺恨を溜める場面に使って欲しかったですね。
二幕目。備中高松塞の場は渡辺保さんも書いているとおり、唯一の芝居らしい場面。幸四郎も良い芝居で、笑也、笑三郎も脇を固めていました。染五郎も力いっぱいです。四人の密な空間を感じました。処が、この場の終わり頃、秀吉になった幸四郎が孫市の染五郎に対して、良い父、という場面で笑う客に興醒め。ここは、その関係性でなくて芝居を観る部分でしょ。本水は猛暑のクーラー程度の味かな。必然性に欠けます。
大詰。宙乗に価値を見出す観客であれば良かったのですが、ウチ夫婦は違いますので。今日のなかで、最後の所作 2 場は良かったです。二幕目の「杉の森」とこの舞踊二つが今日のハイライトでしょう。白頭翁は所作事は不得意ですが、今回くらい踊り手のレベルが違うと、なる程と思いますし、所作事への興味が湧きます。舞踊に詳しい妻に訊いてみましたが、ほぼ同評価なので安心してここに書きますと、雀右衛門、高麗蔵の踊りは手堅いです。中車は、長じてから修業している人に辛い言い方で申し訳ないですけど、子供の頃からやっていないハンディキャップは大きいですね、観ていて辛いです。女舞二人に紛れての家康の舞で下手なのが見え難くしたのでしょうが、分かりますよ(次の 5 人の中には入れないでしょう)。さて、次の最も興味深く見物した 5 人の舞。幸四郎がトップとして当然ですが、次に僅差で巳之助が良いです。贔屓ばかりでもなく、体幹がどっしりして頭が(立っていて)ブレないですね。観ていて綺麗です。かなり差をつけられて、右近と染五郎の順でしょうか。更に大きな差の或る最下位の松也。バタバタしていますし、軸はブレるし(前に倒れる)、修業が足らんでしょう。華もある人なのにこの出来栄えは悲しいです。


【 本日の演目 】

奈河彰輔 脚本
藤間勘十郎 演出・振付
千成瓢薫風聚光(せんなりびょうたんはためくいさおし)
裏表太閤記(うらおもてたいこうき)
松本幸四郎宙乗り相勤め申し候
序幕  第一場 信貴山弾正館の場
    第二場 本能寺の場
    第三場 愛宕山登り口の場
    第四場 同 山中の場
二幕目 第一場 備中高松塞の場
    第二場 山崎街道の場
    第三場 姫路秀吉陣所の場
    第四場 同 海上の場
    第五場 道中の場
    第六場 大津坂本大滝の場
大詰  第一場 天界紫微垣の場
    第二場 大坂城大広間の場

豊臣秀吉/鈴木喜多頭重成/孫悟空 幸四郎
明智光秀/前田利家  松也
織田信忠/加藤清正  巳之助
光秀妹お通/毛利輝元 尾上右近
鈴木孫市/宇喜多秀家 染五郎
服部弥兵衛      廣太郎
十河軍平/天帝    猿弥
重成妻関の谷     笑也
重成母浅路      笑三郎
出井寿太郎      寿猿
僧日計実は四王天但馬/猪八戒 青虎
沙悟浄        九團次
多喜川一益      錦吾
織田信長       彦三郎
天帝大后       門之助
淀殿         高麗蔵
松永弾正/徳川家康  中車
北政所        雀右衛門
大綿津見神      白鸚


六月大歌舞伎 昼の部

2024年06月22日 17時57分31秒 | 歌舞伎

初日に夜の部に見物したのに続いて「六月大歌舞伎」昼の部に。お目当ては時蔵、梅枝の襲名口上です。その口上に付き合う仁左衛門丈の豆腐買おむらという大ご馳走が最大のお目当てですけどね。小川家立ち役総出の官女も。あとは獅童と菊之助の上州土産百両首。
 
スタッフも萬屋の「桐蝶」紋の法被を身に着けています。


「上州土産百両首」では出で獅童が声が大き過ぎて煩いです。その後も声の大きさが上手くコントロールできていないし、全般にイマイチ。菊之助はダメ男を上手く演じていました。「聖天さま」に行くのに近道といって、二人で客席を練る際に我々の席の横を通ってくれたので、これは嬉しい。演者は脇も歌六、錦之助、錦吾と手堅いのですが、芝居としては感動がないですね。これは本が良くないのかもしれませんが。なお、三次の隼人が懐手から顎に手を当てる仕草が仁左衛門丈によく似ていて驚きました。
「時鳥花有里」は孝太郎は流石に上手いです。染五郎の格好良いのと米吉の可愛いのは鉄板です。児太郎は減量すべき、一人だけデカい!
「御殿」は、何と言っても新・時蔵が良い! 健気な町娘から責めを受けて遂に「凝着の相」に至る、その心の移ろいが丹念です。また、双眼鏡で見ると、汗と涙(?)が凄い量なのが分かります。正に熱演。お目当て、仁左衛門丈の口上は流石にお上手です。似合わない役も親戚なんで・・・とお話でしたが、女形の姿を見られるのは本当に貴重。襲名ならでは、です。襲名故にいじめの官女は歌六、又五郎、錦之助以下の播磨屋、萬屋立ち役の超豪華キャストですが、役者が笑ってしまったり、イマイチでしたか。4 番バッターを揃えたどこぞの球団と同じかな(笑) 4 番バッターじゃないけど、長袴で完璧にトンボを切った三階さんはプロの技でしたね。ともあれ、この演目は何と言ってもお三輪につきるので、その意味でも芝居を堪能しました。これからも時蔵を応援したいです。

なお、人違いかもしれませんが、我々のブロックの最前列に「溜席の妖精」さんがいらっしゃいました。

【 本日の演目 】

川村花菱 作  
齋藤雅文 演出  
一、上州土産百両首(じょうしゅうみやげひゃくりょうくび)  
正太郎     獅童 
牙次郎     菊之助 
宇兵衛娘おそで 米吉 
みぐるみ三次  隼人 
亭主宇兵衛   錦吾 
勘次女房おせき 萬次郎 
金的の与一   錦之助 
隼の勘次    歌六 

二、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)  
所作事 時鳥花有里(ほととぎすはなあるさと)  
源義経    又五郎 
傀儡師種吉  種之助 
鷲尾三郎   染五郎 
白拍子伏屋  左近 
白拍子帚木  児太郎 
白拍子園原  米吉 
白拍子三芳野 孝太郎

六代目中村時蔵 襲名披露狂言   
三、妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)   
三笠山御殿   
劇中にて襲名口上申し上げ候   
杉酒屋娘お三輪  梅枝改め時蔵(菊之助)
漁師鱶七実は金輪五郎今国 松緑(芝翫)
入鹿妹橘姫    七之助(米吉)
おむらの娘おひろ 初舞台梅枝  
官女桐の局    隼人  
官女菊の局    種之助  
官女芦の局    萬太郎  
官女萩の局    歌昇  
官女桂の局    獅童  
官女柏の局    錦之助  
官女桜の局    又五郎  
官女梅の局    歌六  
烏帽子折求女実は藤原淡海 時蔵改め萬壽(梅枝 現 時蔵)
豆腐買おむら   仁左衛門(時蔵 現 萬壽)
( )内は2023年10月の国立劇場通し狂言での配役です。



六月大歌舞伎 夜の部

2024年06月01日 23時06分28秒 | 歌舞伎

誤認衆の H 口さんのご厚意で「六月大歌舞伎」夜の部の初日に芝居見物。お目当ては萬壽丈、時蔵丈、梅枝クンの襲名口上です。獅童の魚屋宗五郎と二人の息子さんたちの初舞台も。素より、仁左衛門丈の豆腐買おむらという大ご馳走のある昼の部もチケットを既に確保しております(笑)
  2 階の最前列。
祝幕 2 種。風神雷神図の方は、北野武ではなく「ビートたけし」(祝幕の右下にも記名)で、作だけでなく贈、凄い!。
 


さて、「八犬伝」。残念ながら大歌舞伎でなく新春浅草歌舞伎でしたね。だんまりがそう見えない。もう少しがんばりましょう。水晶玉がグリーンに明るく輝いて良かった。一個、欲しい(爆)
続いて「山姥」。萬壽と芝翫に支えられ、梅枝クンが力一杯の演技。立派なものでしょう。陽喜クンはお兄ちゃんだけのことはありますが、夏幹クンはちょっと早かったかな。でも、踊りも口上も忘れずにできて立派なものです。子役は出るだけが仕事、悪く見えたら周りの大人が悪い、という金言があるそうですが、子役 3 人、本人たちも周囲の大人も良かったです。
さて「魚屋宗五郎」。初日ということもあり、獅童は、酔っていく見せ場で徐々に酒乱になっていくのが分かり難くくて大減点。全体に役に入り切れていないのか、一寸イマイチ。七之助も同様。権十郎、孝太郎、隼人も世話物とはいえ、もう少し重みがあった方が良いように思いました。中では魁春が手堅く、松緑の鳶がご馳走でした。
Ps.  2 日 7 時に補筆。酒を飲む場面で、獅童は単に酒を飲んでいるだけで、妹が嬲り殺しにされた悲哀を抑えようと飲み始めたものの酒量と共に悲哀が増えてどうしようもない行動に向かうところが出ていない(当代菊五郎、一八世勘三郎、十世三津五郎の映像を視ていますので、評価は厳しくなりがちですけど)。獅童がそうなので、七之助も権十郎も止めに入るのに受けようがない。孝太郎は単なる伝令であって、お蔦を殺されたことへの義憤が肚に落ちていない。そういう風に感じてしまいました。
そうそう、富司純子さんを筆頭に新 時蔵夫人、歌六夫人、米吉夫人などお顔の分かる方だけでも大勢いらしてましたね。襲名の初日なら当然のことでした。

【 本日の演目 】

曲亭馬琴 原作
一、南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん) 
円塚山の場 
犬山道節   歌昇
犬村角太郎  種之助
犬坂毛野   児太郎
犬川荘助   染五郎
犬江親兵衛  左近
犬田小文吾  橋之助
娘浜路/犬塚信乃    米吉
網干左母二郎/犬飼現八 巳之助


初代中村萬壽 襲名披露狂言 
二、山姥(やまんば) 
五代目中村梅枝 初舞台 
劇中にて襲名口上申し上げ候 
山姥         時蔵改め萬壽
山樵峯蔵実は三田の仕 芝翫
怪童丸後に坂田金時  初舞台 梅枝
源頼光        獅童
白菊         梅枝改め時蔵
猪熊入道       萬太郎
渡辺綱        初舞台 陽喜
卜部季武       初舞台 夏幹
源賢阿闍梨      錦之助
平井保昌       又五郎
多田満仲       歌六
藤原兼冬       菊五郎

河竹黙阿弥 作 
新皿屋舗月雨暈 
三、魚屋宗五郎(さかなやそうごろう) 
初代中村陽喜 
初代中村夏幹 初舞台 
魚屋宗五郎   獅童
女房おはま   七之助
丁稚与吉    初舞台 陽喜
丁稚長吉    初舞台 夏幹
召使おなぎ   孝太郎
鳶吉五郎    松緑
小奴三吉    萬太郎
磯部主計之助  隼人
菊茶屋娘おしげ 男寅
浦戸十左衛門  坂東亀蔵
父太兵衛    権十郎
菊茶屋女房おみつ 魁春

 


團菊祭五月大歌舞伎 夜の部

2024年05月03日 23時28分39秒 | 歌舞伎

誤認衆の H 口さんのご厚意で團菊祭に芝居見物。お目当ては菊之助の乳人政岡。7 年前に 2 回観ていますが、その間の進境著しいので、どう変わったかも楽しみです。あとは同じく 7 年前に観た「四千両」も。梅玉の藤十郎は変わらずで、富蔵が菊五郎丈から松緑に変わっています。
 
まず「御殿」。菊之助が貫禄が付いて(児太郎みたいに付き過ぎではない)、雀右衛門の栄御前、歌六の八汐に位負けしていないです。栄御前を見送ってからのくどきが泣かせます。ただ、千松殺しのあと鶴千代を連れ出すのですが、政岡の部屋の設えがないので、安全なのかイマイチ不安。沖の井に預ける方が分かり易いように思いました。八汐の歌六は憎々しいところが鉄板です。雀右衛門さんは最初の台詞が飛んでしまったようで、そこだけ興醒め。他は安定していただけに惜しい。丑之助も上手いですね。
「床下」では仁木弾正の團十郎が良かったです。妖気が漂っていました。台詞がなくて芝居の少ない、こういう役ならイイです。

次に「四川両」。牢内が風俗もわかり面白いです。ただ、前回観た四世左團次は修羅場をくぐってきたと思わせる不思議な魅力があり、正に牢名主でしたけど、歌六は牢名主としては真面目過ぎてしまい合ってない感じ。八汐は女形なので吹っ切れて良かったのか。松緑も悪くはないのですが、菊五郎のイメージが(珍しいことに!)残っているので、もう少しがんばりましょう、に思えてしまいます。梅玉は手堅いです。

惜しい方を亡くしました。

幕間は「吉兆」さんで。
 
稚鮎に筍ご飯、皐月和えなど季節感タップリで美味でした。


【 本日の演目 】

一、伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ) 
御殿 
床下 
〈御殿〉 
乳人政岡   菊之助(同左、玉三郎、藤十郎)
栄御前    雀右衛門(魁春、吉弥、秀太郎)
一子千松   丑之助
鶴千代    種太郎
沖の井    米吉(梅枝、菊之助、時蔵)
八汐     歌六(同左、同左、梅玉)
〈床下〉 
仁木弾正   團十郎(同左:海老蔵、吉右衛門、幸四郎:白鷗)
荒獅子男之助 右團次(松緑、同左、吉右衛門)
( )内は 2017 年 5 月( 2 回)、2015 年 9 月、2013 年 5 月(歌舞伎座新開場柿葺落公演)の配役です。
  
河竹黙阿弥 作 
二、四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは) 
四谷見附より牢内言渡しまで
野州無宿富蔵  松緑(菊五郎)
数見役     彦三郎(権十郎)
頭       坂東亀蔵(亀三郎)
女房おさよ   梅枝(時蔵)
三番役     歌昇(亀寿)
浅草無宿才次郎 萬太郎(松緑)
伊丹屋徳太郎  巳之助(錦之助)
四番役     種之助 
黒川隼人    莟玉(鷹之資 休演、松江)
寺島無宿長太郎 左近(菊之助)
生馬の眼八   橘太郎(團蔵)
田舎役者萬九郎 松江 
浜田左内    権十郎(彦三郎)
うどん屋六兵衛 彌十郎(東蔵)
隅の隠居    團蔵(歌六)
牢名主松島奥五郎 歌六(左團次)
石出帯刀    楽善(秀調)
藤岡藤十郎   梅玉(同左)
( )内は 2017 年 2 月の配役です。


四月大歌舞伎 夜の部

2024年04月26日 23時58分00秒 | 歌舞伎

本日は「四月大歌舞伎 夜の部」千穐楽を見物。お目当ては「当たり前田」のニザタマ。土手のお六・鬼門の喜兵衛からの神田祭は既に 3 回拝見しているので止めようと思っていましたが、仁左衛門丈の綱豊卿を拝見し、やはりこのコンビは見ておかねば、と思い直しました。で、まぁ、どうせなら千穐楽と思って探したら 2 階の東桟敷席前列があったので即ゲット。各劇評も絶賛でしたから(って、良く書くしかないとは思いますが、ここまで良いのも珍しい)買って良かったです。
 
さて、「お染の七役」(お染も久松も出ないけど)です。玉三郎丈の悪婆が軽さと手強さがあって流石です。仁左衛門丈の喜兵衛も鉄板です。ただお二人とも立ち上がる時に少し辛そうな感じがして、千穐楽で疲れが出たのかもしれませんが、心配です。他では錦之助が手堅いですし、橘太郎が義理堅さをよく出していて名脇役ぶりを発揮していました。生き返る丁稚役者はイマイチかなぁ。

神田祭。これはもうお二人の世界に尽きます。不世出のペアでしょうね。満員の劇場内が幸せ色に包まれ、万雷の拍手でした。しかし、このお二人でないと歌舞伎座は満員にならないのですよねェ。

舞踊 4 種。帰りの東海道線が 130 分遅れになったのに引っ掛かるのが予見できていたら見なかったですね(爆) 秋の孝太郎以外は群舞や軽業を見せたりするだけで、詰まらなかったです。

お弁当は(テーブルのあるときの)最近のお気に入り、「升本」の「両国」。



【 本日の演目 】

四世鶴屋南北 作
渥美清太郎 改訂
一、於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)
土手のお六
鬼門の喜兵衛 
土手のお六  玉三郎(同左、同左)
山家屋清兵衛 錦之助(権十郎、錦之助)
髪結亀吉   中村福之助(同左、坂東亀蔵)
庵崎久作   橘太郎(吉之丞、橘三郎)
油屋太郎七  彦三郎(同左、同左)
鬼門の喜兵衛 仁左衛門(同左、同左)
なお、( )内は 2021年2月、2018年3月(2日連続)公演の配役。

二、神田祭(かんだまつり) 
鳶頭  仁左衛門(同左、同左、菊五郎)
芸者  玉三郎(同左、同左、時蔵)
なお、( )内は 2021年2月、2018年3月(2日連続)、2015 年 2 月公演の配役。

九條武子 作
三、四季(しき)
〈春 紙雛〉
女雛   菊之助
男雛   愛之助
五人囃子 萬太郎
同    種之助
同    菊市郎
同    菊史郎
同    吉太朗


〈夏 魂まつり〉 
亭主   芝翫
若衆   橋之助
太鼓持  歌之助
仲居   梅花
舞妓   児太郎
 
〈秋 砧〉 
若き妻  孝太郎

〈冬 木枯〉 
みみずく  松緑
みみずく  坂東亀蔵
木の葉 男 廣松
同     中村福之助
同     鷹之資
同     亀三郎
同     眞秀
木の葉 女 男寅
同     莟玉
同     玉太郎
同     左近

 


四月大歌舞伎 昼の部

2024年04月03日 18時16分04秒 | 歌舞伎

誤認衆の H 口さんのご厚意で歌舞伎座に芝居見物。
お目当ては愛之助の団七、菊之助の徳兵衛で「浪花鑑」、梅玉の十次兵衛、松緑の濡髪で「引窓」と楽しみな芝居が二つ。それに若手花形の七福神も。
 
先ずは引窓。これは東蔵が主役ですかね、良かったです。梅玉、松緑も安定感があります。扇雀は体調が悪いのか声がかすれ気味で精彩を欠いていたように思います。

次に七福神。鷹之助が一段抜けている印象を持ちました。上手くなってきましたね。と言っても、所作は良く知らないんですけど(爆)

さて、浪花鑑。愛之助の団七の力演を多としましょう。義平次殺しの場面、同じ橘三郎でしたが二世吉右衛門はもっと短く(感じました)ても、舅殺しの哀感がもっと迫ってきたような気はします。が、これは比べちゃイカン。愛之助のこれからに期待。歌六の三婦は貫禄もあり鉄板ですね。菊之助と端役かもしれませんが巳之助は(贔屓故とも思いますが)粋な感じも出て場面を締めていました。米吉は役を徐々に娘からご内儀にシフトしていますが、成功しつつあると感じました。問題は愛之助のお辰。これは二役にしないで良かったと思います。誰が、と言われると思い浮かばないですけど。莟玉と種之助はもう少し頑張りましょう。殊に種之助は 4 年前に二世吉右衛門のときに同役なんだから。なお、秀乃助クンが出ていたので歌昇夫人が種太郎クンと来ていましたね。



【本日の演目】

一、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき) 

引窓 
南与兵衛後に南方十次兵衛 梅玉(菊之助)
女房お早  扇雀(雀右衛門)
平岡丹平  松江(歌昇)
三原伝造  坂東亀蔵(種之助)
濡髪長五郎 松緑(吉右衛門)
母お幸   東蔵(同左) 
( )内は2020年9月公演の配役。 

今井豊茂 改訂 
二、七福神(しちふくじん) 
恵比寿  歌昇
弁財天  新悟
毘沙門  隼人
布袋   鷹之資
福禄寿  虎之介
大黒天  尾上右近
寿老人  萬太郎

並木千柳 作  
三好松洛 作  
三、夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)  
序幕 住吉鳥居前の場 
二幕目 難波三婦内の場 
大詰 長町裏の場 

団七九郎兵衛  愛之助(吉右衛門)
徳兵衛女房お辰 同上(雀右衛門)
一寸徳兵衛   菊之助(錦之助)
団七女房お梶  米吉(菊之助)
下剃三吉    巳之助(松江)
傾城琴浦    莟玉(米吉)
伜市松     秀乃介(寺嶋和史)
おつぎ     歌女之丞(東蔵)
大鳥佐賀右衛門 松之助(吉之丞)
三河屋義平次  橘三郎(同左)
堤藤内     桂三(同左)
玉島磯之丞   種之助(同左)
釣船三婦    歌六(同左)
( )内は2018年6月の配役。  

 


三月大歌舞伎 昼の部

2024年03月23日 23時06分03秒 | 歌舞伎

歌舞伎座「三月大歌舞伎」、9日の夜の部に続いて昼の部に芝居見物。お目当ては仁左衛門丈の綱豊卿です。あとは菊之助のニンに合わない(と思っている)松王丸と愛之助の源蔵で寺子屋です。
 
最近のお気に入りの二等の東桟敷席。何と言ってもお弁当が食べやすい(笑)

まず寺子屋。ニンには合わないとは思いましたし、渡辺保さんの評価も厳しかったのですが、菊之助、意外に(!?)良かったです。前半の敵役の場面もそれなりに憎らしいですし、「わらいましたか」「桜丸が不憫でござる」で白頭翁は落涙いたしました。源蔵の愛之助も、陰のある部分を上手く演じていて、この二人の組合せはこれから楽しみです(って、来月もあります!)。戸波の新悟と千代の梅枝も情感溢れ、この女形二人も頼もしいです。

傾城道成寺、よく解りません(自爆) 最後に菊五郎が立ち上がったので安堵しました。

さてさて御浜御殿。もう仁左衛門丈の芝居に尽きます。真山青果の芝居は正直言って好みではありません、説教臭くて。ところが、演者に拠っては見応えのあるものに変わります。将軍後継者としての貫禄、そして新井白石との談義の知性、幸四郎の助右衛門から小川大晴クンまで見事に捌く鷹揚さ、正にはまり役。と言いますか、当世ではこの本をここまで見せてくれる俳優は他にいないでしょう。正に仁左衛門丈の至芸。一方の幸四郎も純粋な若武者を上手く見せていました。本来なら中堅で、夜の部の福岡貢のように座頭もできる役者ですが、仁左衛門丈に謙虚にぶつかっていくのが良かったのでしょう。或る意味、未だこういう役が似合うというレベルなのかも。もっともこのクラスでないと仁左衛門丈とバランスしないので、若手俳優なら使えないでしょう(同じ仁左衛門丈の綱豊に対して、中車の助右衛門をテレビで視ましたが、芝居が大袈裟で、本の臭みが強く出てげんなりしました)。梅枝のお喜世も良かったと思いますし、歌六の新井白石は盤石です(仁左衛門丈と交互に笑い合うところなど絶妙)。やはり観に行って良かったです。



【 本日の演目 】

一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
寺子屋
松王丸   菊之助(吉右衛門、仁左衛門)
武部源蔵  愛之助(幸四郎、勘九郎)
戸浪    新悟(児太郎、七之助)
涎くり与太郎 鷹之資(同左、国生)
小太郎   丑之助(丑之助は前回は菅秀才)
百姓吾作  橘太郎(橘三郎、松之助)
春藤玄蕃  萬太郎 (又五郎、亀蔵)
千代    梅枝(菊之助、玉三郎)
園生の前  東蔵(福助、扇雀)
( )内は2019年9月、2014年10月公演の配役。 

四世中村雀右衛門十三回忌追善狂言
二、傾城道成寺(けいせいどうじょうじ)
傾城清川実は清姫の霊 雀右衛門
白川の安珍実は平維盛 松緑
難波経胤  廣太郎
真名辺三郎 廣松
童子花王  亀三郎
童子駒王  眞秀
僧妙碩   友右衛門
導師尊秀  菊五郎

真山青果 作
真山美保 演出
元禄忠臣蔵
三、御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)
徳川綱豊卿  仁左衛門
富森助右衛門 幸四郎
中臈お喜世  梅枝
中臈お古宇  宗之助
おいぬ某   小川大晴
津久井九太夫 由次郎
上臈浦尾   萬次郎
御祐筆江島  孝太郎
新井勘解由  歌六

 


三月大歌舞伎 夜の部

2024年03月09日 23時48分36秒 | 歌舞伎

誤認衆の H 口さんのご厚意で、歌舞伎座「三月大歌舞伎」夜の部に芝居見物。『鰯売』の津の阿漕ケ浦は生まれ育った土地でしたのでそれに比べれば遠いですが、『伊勢音頭恋寝刃』には三重県の名所が出てくるので楽しみですね。歌舞伎座での通し上演は 62 年ぶりと云う歴史的な演目です。お目当ては、幸四郎の福岡貢、菊之助の今田万次郎の絡みです。役者としては「つっころばし」と「ぴんとこな」は逆なような気もしますけど。因みに白頭翁の写真の「ピント来な」い、ではありません(自爆)
それと松緑で『喜撰』です。十世三津五郎の絶品はシネマ歌舞伎でしか見ていないので。
 
芝居見物の楽しみ、お弁当。私は「豆狸」のお稲荷で、今月限定の桜稲荷と高菜稲荷を入れました。
 

さて、『伊勢音頭恋寝刃』です。前半の「地蔵前」辺りまでは元気いっぱいの歌昇が目立っていましたね。菊之助はつっころばしにしても覇気がなかったと言いますか、イマイチ。二見が浦辺りから、幸四郎が主役らしい動きになってきます。「万、呼べ」と「身不肖なれど」の見せ場はなかなか良かったと思いますが、その間の扇子を割って大小に見立てる部分はなく、初演時に仁左衛門丈に習ったので已む無しとはいえ、ここは東京型で見たかった。徐々に人を斬る妖しい気配になっていくというのも少し弱いかも。一方のお紺の雀右衛門の縁切りも単に縁切りをしているだけのようで肚に貢を助けるというのが無いような。もっとも、敵を欺くには先ず味方から、とすればこれも「あり」な演技でしょうか。脇では魁春の万野が流石でした。というか、万野で芝居が保っていたようなくらいの名演。これなら斬られるわ、という説得力・手強さが出ていました。彌十郎は無難ですが、又五郎の藤浪は軽い。愛之助と新悟は美味しい役でしたね。
ただ、通しでやった意義は大きいと思います。35 分の幕間を入れて 4 時間弱で筋もよく解りましたし、ダレることなく楽しめました。

「喜撰」。松緑は(少なくとも以前に観た菊之助よりも)なかなか良い味を出していましたね。台詞が少ないので舌足らずな台詞回しになることのある弱点も出ないし、踊りは流石ですし。梅枝も良いですね。権十郎、彦三郎、亀蔵など豪華な所化に亀三郎、眞秀、小川大晴が加わって微笑ましかったです。


【 本日の演目 】

通し狂言 
一、伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば) 
相の山 
宿屋 
追駈け 
地蔵前 
二見ヶ浦 
太々講 
油屋 
奥庭 
福岡貢   幸四郎
今田万次郎 菊之助
料理人喜助 愛之助
正直正太夫 彦三郎
奴林平   歌昇
油屋お岸  新悟
杉山大蔵  廣太郎
桑原丈四郎 吉之丞
猿田彦太夫 橘太郎
銅脈の金兵衛 錦吾
徳島岩次実は藍玉屋北六 亀鶴
藍玉屋北六実は徳島岩次 市蔵
叔母おみね 高麗蔵
油屋お鹿  彌十郎
藤浪左膳  又五郎
油屋お紺  雀右衛門
仲居万野  魁春


六歌仙容彩 
二、喜撰(きせん) 
喜撰法師  松緑(菊之助)
所化    権十郎
同     松江
同     彦三郎
同     坂東亀蔵
同     萬太郎
同     種之助
同     鷹之資
同     玉太郎
同     左近
同     亀三郎
同     眞秀
同     小川大晴
同     吉之丞
祇園のお梶 梅枝(時蔵)
( )内は2018年5月の歌舞伎座公演の配役。所化は権十郎、歌昇、竹松、種之助、男寅、玉太郎など。

 


猿若祭二月大歌舞伎 昼の部 その 2

2024年02月25日 18時53分50秒 | 歌舞伎

「籠釣瓶」をもう一回見たくなって、歌舞伎座に十八世中村勘三郎 十三回忌追善「猿若祭二月大歌舞伎」昼の部の千穐楽前日の芝居見物。お目当ては素より勘九郎の次郎左衛門と七之助の八ツ橋、仁左衛門丈の栄之丞です。
 
前回は花道裏側でしたので八つ橋の微笑みかけが良く見えるように二階東桟敷です。お弁当も広げられますし(笑)

野崎村。鶴松が頑張って、泣ける程に良くなっていましたね。一方、進化していない児太郎のイマイチ感が目立ってしまいましたね。七之助を含め他はひと通りの演技ですから、特落ち(?)が余計に。
釣女。獅童と芝翫は流石に面白いと言いますか、初日より更に暴れて、昭和のコント並みかも。
籠釣瓶。勘九郎は初日に比べて深化していて、殊に大詰めの凄みが出て良かったです。「籠釣瓶はよく切れる」も決まっていたと思います。七之助も花魁が似合いますね。見染めの場面の見せ場である次郎左衛門への微笑みかけが良く見えました。自然な感じで現代風かもしれませんが、わざとらしくないのが良いと思いました。仁左衛門丈の栄之丞、初日は花道からの出でしたが、今日は下手から。権八が追いかけてくるのがちょっと短い距離で花道の方が良いと思いました。あと着替えも初日は雇女に手伝って貰っていたのでご体調を心配しましたが、今日はお一人でなさっていて安心しました。流石に色悪で鉄板です。歌六と時蔵の立花屋夫婦、ワルの松緑が出ている場面は締まります。児太郎は九重の優しさを出していて、こういう役は上手いです。橋之助は元気いっぱいなのはそのままに、台詞の聞き取り難さが改善して主を思う気持ちが伝わりました。初日に比べて練度が上がり更に良い芝居になっていて、歌舞伎を堪能しました。もう一回、見に来て良かった!

日曜の昼間ということもあり大入りで、冷たい雨の所為もあり地下の木挽町広場からエスカレータから女子トイレまで大行列ばかりでした。流石は中村屋!


【 本日の演目 】

一、新版歌祭文(しんぱんうたざいもん) 
野崎村 
久作娘お光 鶴松
丁稚久松  七之助
油屋娘お染 児太郎
百姓久作  彌十郎
後家お常  東蔵


河竹黙阿弥 作 
二、釣女(つりおんな) 
太郎冠者 獅童
大名某  萬太郎
上臈   新悟
醜女   芝翫

世河竹新七 作 
三、籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ) 
序幕 吉原仲之町見染の場より
大詰 立花屋二階の場まで
佐野次郎左衛門 勘九郎(吉右衛門)
兵庫屋八ツ橋  七之助(菊之助)
兵庫屋九重   児太郎(梅枝)
下男治六    橋之助(又五郎)
兵庫屋七越   芝のぶ(新悟)
兵庫屋初菊   鶴松(米吉)
遣手お辰    歌女之丞(同左)
女中お咲    梅花
若い者与助   吉之丞
絹商人丈助   桂三
絹商人丹兵衛  片岡亀蔵(橘三郎)
釣鐘権八    松緑(彌十郎)
立花屋女房おきつ時蔵(魁春)
立花屋長兵衛  歌六(同左)
繁山栄之丞   仁左衛門(菊五郎)
( )内は2016年2月の歌舞伎座公演の配役です。