読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

ローマ人の物語(28)すべての道はローマに通ず<下> 塩野七生 新潮文庫

2007-07-23 21:51:06 | 読んだ
やっと読み終えた。
ゆっくりジックリと読んだのである。

本書は「ハードなインフラ」の続き『水道』と「ソフトなインフラ」の『医療』と『教育』である。

水道、については非常に興味深く読んだ。
水道の持つ役割を、ローマはよく知っていた。つまり「衛生の確保」である。
従って、水道料金は基本的には無料である。(特別な場合は有料)

ローマ人は街道と橋と水道の建設と維持管理は国家の仕事だと認識していたのである。
それがすごいと思うのである。
国家の仕事というのは「税」でまかなうということである。

ところが、医療と教育は国家の仕事だとは設定していない。
していないのだが、医師と教師への特典があった。
特典はあるが競争もあるので、能力のない者は淘汰されていくのである。

インフラをローマ人は「人間が人間らしい生活をおくるためには必要な大事業」と定義したと著者は言う。
そして個人ではやれないがゆえに国家や地方自治体が代わって行うことと著者は考える。

現代では、人間が人間らしい生活をおくる、ということが多種多様化してしまったがゆえに、国家や地方自治体の仕事が増え、仕事が増えれば財源が必要となり、つまりは国民の負担が増えることとなる。

国家や地方自治体が行わなければならない事業をどう規定するのか、その財源と一緒に考えなければならない時期に来ているのではないだろうか。

近頃の日本では、何でもかんでも国家つまり政治と行政の責任にして、非難することが多い。
たとえば地震でも台風でもいつの間にか「全て人災」になってしまったりする。
そのうち人が老衰で死んでも政治と行政の責任になるのではないかと心配してしまう。

国家とは、国民が存在して成立するものである。そして国民は国家に対して責任を負わなければならない。

そういうことをローマ人の物語を読むと深く強く感じてしまうのである。

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