読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

国家の品格 藤原正彦 新潮新書

2006-04-20 22:47:38 | 読んだ
今話題の或いはブームの「藤原正彦」である。
どっかで見た顔だなあ、と思っていたら、ナント、新田次郎のご子息であった。
新田次郎の「山岳もの」は高校時代よく読んでいたなあ・・・などと思いつつ、新聞に掲載された藤原正彦の論説を読み「そうだそうだ」と感心をしていたのであった。
そんなことから「では手始めに」ということで本書を選んだのである。

世の中には「総論賛成、各論反対」という事象は多いが、本書を読んで思ったのは「各論賛成、総論反対」ということであった。

現在の日本が抱えている様々な課題の分析は概ね肯んずることができるが、だからといって「日本が良くて欧米が悪い」というようなことは一概には言えないと思うのである。

戦後の民主主義の導入の方法が非常にまずかった、と私は考えており、民主主義を早急に押し付けたがために、現在の日本は多くの課題を抱えているのだと思うのである。

著者は、これらの課題を解決するに「武士道」ということを重要視しているが、なぜ今さら武士道なのだろうか?

日本が日本という国の中でよりよい秩序をもち、なおかつ地球のなかでいい環境を求めていこうとするとき、従来の倫理だけではダメだと思う。
それは、欧米が長年かけて作り上げてきた「民主主義」や「資本主義」が行き詰まりをみせていることとおなじで、これから必要なのは新しい「地球主義」のようなものではないのだろうか?

言わんとしていることはよくわかる(つもり)ではあるが、その先が武士道というのは、グイグイと盛り上げて期待させていった挙句の「答え」としてはガッカリしたのであった。

確かに論理的・合理的・効率的な考え方だけでは世の中はうまくはいかない。しかし義理や人情(著者は「惻隠の情」といっているが)を前面に押し出すには、我々の暮らす社会は広すぎるのである。

ある種の平等・公平を保つには「情」だけではなんともならないのである。
論理と情をうまく使い分けることができるのは、天才、だけなのである。あの諸葛孔明でさえ「泣いて馬謖を切った」ことで秩序を保った。

本書は、その言わんとするところはわかるし、著者の情熱のようなものも感じとれ好感を持つのだが・・・根底にある考え方は危険である、といわざるを得ないのである。

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