読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

リヴ・フォー・トゥデイ -俺たちに明日はないPART4- 垣根涼介 小説新潮1月号

2012-02-20 23:23:55 | 読んだ
俺たちに明日はないシリーズのpart4の第何話だろうか、兎も角「俺たちに明日はない」である。

「俺たちに明日はない」は、リストラ請負人の話である。
といっても、リストラ請負人である主人公「村上真介」が物語の中心で引っ張っていたのは最初のほうで、近頃はリストラされる人たちがそれぞれの物語の中で語られている。

そして、その人たちは光り輝いている。
つまり、リストラされそうにもないのにリストラされる。
そして、リストラされたことによって新たな人生が、さらに充実した人生が開ける。
だから、近頃この物語は、最初のころにあったドロドロしていたものが薄れてきた。
それは、リストラする側の真介の心の動きがどうしても暗くなってしまうからだ。

さて、今回のリストラされる側の人物は、これまたすごいヤツなのである。

巨大外食産業・ハイラークグループの一部門であるファミレスの「ベニーズ」は、ファミレスの高級化と低価格化の間にあってシェアを落としている。いわゆる普通のファミレスは競争に負けたのである。

そのベニーズで新宿エリアを担当する森山透が、今回真介が担当する相手である。

この森山透35歳の経歴がすごい。

最初に外食産業のアルバイトを始めたのが高校1年生。牛丼の「吉川屋」で1年後には高校生のバイトで店長となる。この時代、牛丼早盛りコンテストに出場し関東ブロック大会で優勝。さらに、高校では生徒会長、学区内の生徒会連合の取りまとめ役。

そして、現役で早稲田大学の政経学部に現役で合格。
大学生になって牛丼屋と並行してベニーズのバイトも始める。
20歳の時に大学在籍のまま四谷店の店長代理:契約社員待遇となり、牛丼屋をやめる。
21歳で店長に昇格。

大学には26歳まで在学、その間に、教員免許と普通自動車免許と大型2種免許を取得。
この「大型2種免許」というのが一つの謎というか特徴である。

で、大学卒業でハイラークグループのベニーズに入社。すぐに世田谷のメガ店舗の店長に就任、と同時に本社に籍を置きながら、このエリアにある8店舗を取りまとめるスーパーバイザーを兼ねる。

27歳で本社付となり、首都圏営業本部の販売促進課長。30歳で本部次長となる。
その1年後に、自ら現場に出ることを申し出て、新宿店の店長とエリアの統括となる。エリア全体の利益率は全体平均の2倍、店長になって4年連続全国最優秀店長表彰を受けている。

こういう経歴の者をリストラするというのはいかがなものかと思うが、やっぱり本社としては残ってもらいたい人物なので、Aランクとしてそれ以外の者たちと一緒に面接は行うが、残るように(今回の場合はグループ内での転籍)導くよう面接者に依頼されている。

しかし、リストラの場合、この残ってもらいたい人たち(つまり優秀な人材)が真っ先に辞めようとする。

さて、真介はどのように面接をして森山透を残そうとするのか、
そして、森山透は何を考えて面接に臨んでいるのか。

物語に森山は釈迦の言葉を思い出す。

過去を追うな。
未来を願うな。
過去はすでに捨てられた。
未来はまだやって来ない。
ただ今日なすべきことを熱心になせ。
誰か明日の死のあることを知らん。


題名の Live for today のもととなっているものだろう。

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 ニーズの名物男。
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