読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

小石川診療余話 安住洋子 小説新潮

2011-07-12 20:42:06 | 読んだ
小説新潮に連載された時代小説である。

春の雨 2010. 8月号
桜の嵐 2010.10月号
夕虹  2010.12月号
照葉  2011.02月号
春告鳥 2011.04月剛

の5編である。

著者の安住洋子は注目している作家の一人である。
ではあるが、あまり読んでいなかった。

そこで、小説新潮に連載されているこの作品を一気に読んでこのさい「けり」をつけようではないか、と、乱暴な思いに駆られたのである。(何の「けり」だったんだろう?)

この物語の主人公は「高橋淳之祐(じゅんのすけ)」である。
小石川養生所に住み込みで働きながら、医学間へ通っている。
父母はなく、養子に行った高橋家で育てられ、養生所に住み込むようになって3ヶ月。
実の父母は亡くなった。
父の死は、藩の不祥事の責任を取っての切腹。
そのあたりが彼の性格に少なからず翳を落としている。

小石川養生所での彼の仕事はきつい。
そして養生所には問題が山積している。
そのなかでも看護人が世間から外れたような男達の集まりであること、は大きな問題である。
また、患者も町医者にかかれない貧しい人たちや身寄りのない老人など、弱い立場の人たちであることや、もう手遅れになった人たちが多いことから、いわゆる「治癒率」が低いことも問題となっている。(つまり治癒率が低ければ不要な施設と言う考えもある)

というような設定の中で、淳之祐の実父の切腹の謎、つまりは淳之祐のアイデンティティの礎、そして養生所の雑用をおこなっている「お瑛」との仲が縦糸で描かれ、横糸には養生所で看護を受ける人たちや養生所にいる人々たちの生活が事件として描かれる。

この事件は、エイヤっと片付きはしない。
主人公が快刀乱麻に解決できるものは、現実離れのした事件である。
しかし、この物語の主人公は文武両道でかつどちらも人並み以上、ということはない。
従って、この物語で描かれるのはわりと現実的な事件が発生し、胸がすくような解決ということにはならない。

淳之祐を取り巻く人々は、悪い奴もいるが人情に厚いいい奴だっている。

そういう人々に囲まれて、養生所で成長していく淳之祐は、好ましい青年であり応援をしたくなる性格である。

とりあえず終了したのであるが、続編を期待する。
そして、安住洋子、目に触れたら積極的に読んでみよう。

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