読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

小説新潮1月号 特集「新春短編グランプリ」

2009-01-02 23:36:43 | 読んだ
小説新潮1月号の特集は「新春短編グランプリ」で16の短編小説が掲載されている。
そのうち7編を読んだ。

「ミント・ティの匂い」 曽野綾子

嘉治郎と知花は夫婦である。嘉治郎の後輩・武彦と知花は過去に過ちを犯しその後会うことがなかったが、嘉治郎の赴任先のイスタンブール(小説にはイスタンブールとは書いていないが多分そうだろうと思う)で再会する。

武彦がダムに行くというのに知花はついていく。
その行った先で運転手の従兄弟の家に寄った二人は、昔のことを思い出す。

とまあ、短編なのであまり説明するのも何なのだが、しんみりするというか男と女の関係ということの不思議さを感じさせる物語であった。


「歳月」小池真理子

この話は男一人女二人の物語である。
「わたし」と千佳と千佳の元夫・瀧田との話。

3人は学生時代の友人で「わたし」は瀧田に好意を持っていた。しかし瀧田は千佳と結婚した。
その後、千佳と瀧田は離婚し、「わたし」と千佳は時々あって話したりする。

私が持っていた瀧田と息子の写真を千佳に渡すと、あなたから瀧田に渡して、と頼まれ「わたし」は瀧田に会う。

これも、男と女のしんみりした話である。過去の恋愛が今になってどうなるのか、という「ミント・ティーの匂い」と同じような主題で面白い。


「飲めば都」北村薫

出版社に勤めている年のころなら27・8、30ででこぼこにみられるだろうと期待している「都」さんの酒癖にまつわる話である。

軽快でスピード感あふれるユーモア小説である。
お気に入りである。


「月が笑う」角田光代

泰春は妻から離婚を迫られた。
自分は何一つ悪いことはしていないのに。

興信所を使い調べたところ、妻には男がいた。
絶対に別れてやるものか、と泰春は思う。

そんな時、タクシーの運転手から聞かされたことで、泰春は考える。
そして彼は何を選んだのか?


「ミスター・ロンリー」藤田宣永

幹夫は大手自動車部品メーカーに勤めている。
入社したときは技術職であったが今は社長室長である。

半年前に先代社長がなくなってその息子があらたな社長になって以来、社長との関係が厳しくなり、とうとう衝突をしてしまう。

そして、会社に行かず映画館で「ローリング・ストーンズ」の映画を見ているときに知り合った男と不可思議な一日を過ごす、という物語。

こういう話も嫌いではないが、団塊の世代の人たちが思っている「かっこよさ」というのはもう古いというか自分勝手だと思ったりしたのである。


「ミートボール」諸田玲子

1982年にハワイ旅行に出かけた夫婦と子供二人そして舅姑の話。
夫と子供と舅姑に振り回される杏子。

独身時代に訪れたハワイでのことに思いをはせ、思い出の地へ出かけてみると・・・

結婚をすると妻とか嫁とか母になって「女」であることがなくなってしまう。
というのはよく言われてきたことで、今は「妻」も「嫁」も「母」も捨てて「女」になることが以前よりできやすい環境になっている。

そんなことなどを思わせる物語であった。
とはいえ、それほど重苦しいことはなく軽いタッチである。


「師匠の恋人」吉川潮

人気の若手落語家・柳亭楽之輔の師匠・楽喬50歳が、楽之輔の独演会のゲストで出て、そこで若い女の子のファン・泉25歳と出会う。
そして泉と「いい仲」になる。

しかし泉の父は広域暴力団の若頭・片桐であり楽喬は脅される。気の強い泉が父を説得し、その手打ちの宴で楽喬と片桐は意気投合する。というか一方的に片桐に気に入られる。

まあドタバタといえばドタバタなのだが、芸人に詳しい著者がいかにも芸人のシャレみたいなものを表現している。

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