読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

ジーン・ワルツ 海堂 尊 小説新潮

2008-01-06 15:22:19 | 読んだ
週刊朝日で、海堂尊の小説「極北クレイマー」の連載が始まった。
読み始めたらいわゆる「医療小説」らしく、興味を持ったのでこれから読み続けようと思ったのである。

そうしたら「小説新潮」の12月号に「ジーン・ワルツ」という小説の集中連載・最終回とあるのを発見した。
これは読んでおこう、と思い、第1回の6月号から読み始めて、あまりの面白さに全部読んでしまったのである。

したがって、今はすごく「興奮状態にある」のだ。
それほど面白い小説だった。

主人公は帝華大学の産婦人科学教室の講師:曽根崎理恵、女医である。
この小説は、彼女をとおして、現在の医療行政と医療現場の乖離や医学についてと、5人の妊産婦の経過が描かれている。

現在の医療特に産婦人科の大変さ(医師も妊産婦も)は、マスコミ報道だけでなく我々の日常でも語られていることである。
現に我が市の公立病院には常勤の産婦人科医も小児科医もいない。

このようなことになってしまった源などについても、この小説で描かれている。
また、子供を産みたくても産めない人、或いは産みたいと願わないのに妊娠する人についても描かれている。

健康で5体満足な子供が生まれる確率というのは決して高いものではないこと。
子供を産む、ということは高いリスクがあること。
それらを乗り越えて子供産むということの崇高さ、みたいなものが伝わる。

曽根崎理恵の大学の講義「発生学」の場面では「へえーそうなのか」と改めて妊娠と出産について教えら、医学生の気分になったりする。
また、それらを科学的に説明できる現代の医学の水準の高さ、或いは人口授精や手術などの医療技術の高さを知ることができる。

そして、それらの科学的理論や高度な技術をもってしてもどうしようもない「現実」の非情さや、人の心の移り変わりに感動してしまう。

医学と医療技術の進歩や高度化、そして安全な社会の構築は、我々を不老不死の社会にいるというような錯覚に陥らせ、覚悟とか諦観といったいわば「哲学的」或いは「宗教的」感覚を失わせてしまった。
そういう思いを更に深く強く感じさせられた。

小説の大きな山場では、4人の妊産婦が同時に産気づき、それを奇跡的な現象と高度な医療技術で乗り越える、ということが描かれ、これは本当に感動ものであった。

我々は、科学であらゆる現象を検証することも大切だが、もっと謙虚に自然や生命というものの不可思議さを受け入れるべきである。

ちなみにこの小説の題名「ジーン・ワルツ」だが、ジーンはGeneつまり遺伝子である。そしてこの遺伝子の3つの組み合わせが1種類のアミノ酸を指定する。というところから出ているらしい。

久々に興奮して読んだ小説であった。
この著者についてはこれまで食わず嫌いであったところもあるが、ちょっと注目していこう。とりあえずは「チーム・バチスタの栄光」でも読んでみようかと思っている。

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