尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

桃月庵白酒独演会で、白酒三席を聴く

2024年04月21日 21時59分06秒 | 落語(講談・浪曲)
 北千住のシアター1010桃月庵白酒独演会を聴きに行った。区民割引で久方ぶりに夫婦で落語。劇場は駅の隣(丸井)の11階だが、終わってからホームまで行くより、電車に乗って最寄り駅まで行く時間の方が短い。それぐらい近いのは楽。2時から4時の会で、前座一人(桃月庵ぼんぼり)の後、桃月庵白酒が中入りをはさんで連続三席。「独演会」ならではだが、独演会と言っても弟子の二つ目も入って、本人は二席ぐらいのことも多い。今一番脂が乗っている噺家の一人だから満足したけど、体力は大丈夫かな。

 前座は「元犬」で、白犬が人間になっちゃう噺。割合とよくやられている噺だ。面白いんだけど頑張ってねという感じ。続いて、色物(紙切りとか大神楽など)も入れず、白酒師匠が二席。マクラのとぼけ方や他の落語家の話題が面白いのは有名だ。今日も落語家は人を笑わせる商売だから、本人は笑ってない人も多い。鶴瓶師匠とか目が笑ってないでしょ、「笑点」の宮治さんなんかも。というのが大受けしていた。言われちゃうとそんな気がしてしまう。

 最初は「代書屋」。これは柳家権太楼がよくやる噺で、どうも権太楼節が頭に響いてしまう。三遊亭小遊三でも何度か聴いていて、多くの人がやってる。履歴書を書いてもらいに、無筆の男が代書屋を訪ねる設定だから、江戸時代の長屋じゃない。いつ頃かというと、日中戦争期に上方落語の4代目桂米團治が作った新作だという。米團治は本当に代書屋をやってたという。そこに自分の名前も生年月日も答えられないトンチンカンが「歴史書」を書いてくれとやってくる。抱腹絶倒だが、人によって細部の工夫が違う。鹿児島出身の白酒は、依頼人の名前を西郷隆盛にしていた。誰にも負けぬ可笑しさの爆笑ネタに満足。

 一度引っ込んだ後で、すぐ出て来て今度は「松曳き」という噺。これは知らなかったので、検索して調べた。 お殿様とお付きの田中三太夫のバカ噺である。このコンビの噺は幾つもあって、「妾馬」(めかうま)のような名作がある。この「松曳き」は殿様が松が伸びすぎて月が見えにくいので移植したいと思うが、三太夫は先代お手植えだからと一端止める。「餅は餅屋」ということで、出入りの植木屋に尋ねるが、植木屋はバカ丁寧に何でも「奉る」をくっつけてしゃべるから、何が何だか判らない。そこら辺が聴きどころ。その時三太夫に早馬が届き…。誤解や早とちりが積み重なる噺。白酒の演じ分けが楽しい。

 その後中入り(休憩)をはさんで、今度は「山崎屋」。これも初めて聴いたので調べた。40分近い長講で、吉原に入りびたる若旦那を番頭が諫める。が、実は若旦那も番頭のスキャンダルを握っていて…。ということで、二人でなじみの花魁(おいらん)を身請けして、いろいろと画策して大店の嫁に迎えてしまおうと作戦を立てる。当時は吉原が江戸では「北国」(ほっこく)と呼ばれていたという。その知識がないと最後の展開が判らない。だから最初に解説するんだけど、廓噺の中でも「明烏」「二階ぞめき」「幾代餅」なんかと違ってあまり演じられないと思う。サゲだけでなく、全体の展開が判りにくい点がある。だけど、そういう噺を聴けるのも「独演会」ならでは。持ち時間が短い寄席ではやりにくい。

 桃月庵白酒(1868~)は、1992年に五街道雲助に入門して、2005年に真打昇進。師匠が昨年「人間国宝」に認定され、一門も盛り上がっている。実は昨日、都内で雲助一門会が開かれていた。まあ二日続けて聴かなくてもと思って行かなかったが。真打昇進時期が近く、今はともに落語協会理事を務める柳家三三古今亭菊之丞らと並び、今後の落語協会を引っ張っていく存在になるだろう。多くの人にも聴いて欲しい落語家だ。(忘れないように落語界はすべて記録しておくので書いた次第。)

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