尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

『桂二葉チャレンジ!!2』、桂二葉の才能とエネルギーに感嘆

2024年06月14日 20時32分21秒 | 落語(講談・浪曲)
 6月13日夜に、『桂二葉チャレンジ!!2』(朝日ホール)に行った。11日に文枝、小朝の会に行ったばかり。我ながらよく頑張っているなあという感じだが、それは間違い。どっちが先だか忘れたけど、片方を取っているのを忘れてチケットを申し込んでしまったのだ。あれ、このあたりで落語に行くはずと調べて、あっ良かったダブル・ブッキングしてなかったと安心した。間一日あるとは言え、週半ばに夜二日出掛けるのは今じゃ大変だ。でも、これがものすごく面白い。すごい才能が現れたものだ。

 桂二葉(かつら・によう)は上方の若手女性落語家として、いま注目の的だ。CM(金鳥蚊取り線香)にも出ているから、関東でも見覚えがある人が多くなってきたと思う。僕も二葉が面白いという声を聞くようになって、是非一度行ってみたいと思っていた。前からやってるシリーズらしく、必ず一席ネタ下ろし(観客に向けた初演)をするという趣向だという。今回は「くしゃみ講釈」がネタ下ろし。ゲストが一人呼ばれて、「人間国宝」五街道雲助師匠が登場するという豪華な企画である。
(桂二葉)
 桂二葉をよく知らないから調べてみた。1986年8月生まれで、2011年に桂米二(米朝の弟子)に入門した。2021年に「NHK新人落語大賞」を女性として初めて受賞し、この頃から注目され始めたようだ。(ちなみに上方落語には前座、二つ目、真打の昇格制度がない。)東京の女性落語家を見てみると、林家つる子は1987年6月生まれで、2010年に林家正蔵に入門、2015年に二つ目に昇進した。そして2024年に抜てきで真打昇進となる。この間、21,22年に続けてNHK新人落語大賞の本選出場者に選ばれている。(だから、21年は二葉に負けた。)なお、蝶花楼桃花は1981年生まれ、2007年に小朝に入門して、2011年に二つ目、2022年に真打に昇進した。東京落語では修行期間が長いことがよく判る。その功罪は決められないけど。

 会場はマリオン11階の朝日ホールで、かなり大きいけど場内は満員。なんと五円玉が入った「大入り袋」が配られたのには驚いた。前座(まんじゅう怖い)に続いて、早速二葉が登場し、冒頭で「声が高い」と自ら言う。「上方落語界の白木みのる」を名乗っているという。この白木みのるが理解できる人が何人いるか不明だが、大受けしていた。亡くなったばかりの桂ざこば師匠をめぐるマクラも面白い。しかし、なんと言っても「くしゃみ講釈」が凄かった。前に聴いてる噺だが、いつだろうと自分のブログを探したら春風亭一之輔の昇進興行だった。これを昇進興行でやるのも凄いな。

 講釈師に恨みがあって、講釈場で唐辛子を炊いてくしゃみを連発させるという、筋で聞いたら納得できないような展開が続く噺だ。でもその不条理性が面白いのである。そして「くしゃみ」連発の肉体芸が見物。桂二葉のくしゃみは素晴らしかった。とにかく可笑しいのである。いやあ、こんなバカげた噺を一生懸命やる「落語」という古典芸能は奥が深いです。
(五街道雲助)
 続いて五街道雲助の「お菊の皿」。昔は暑くなると怪談をやったなどと始まって、番町皿屋敷の幽霊噺になる。しかし、これは怪談じゃなく、滑稽話である。最近雲助師匠は良く聴いているけど、悠然と語る姿が次第に「人間国宝」の風格を見せてきた。ま、今回は普通という感じだったけど。中入り休憩を挟んで、後半は再び二葉の「子は鎹(かすがい)」。これがまた滅法面白い。よくやられるネタで、何度も聴いてる人情噺だが、二葉が一番だったかも。二葉ははっきりした口跡と「語り」だけではない身体芸で、飽きさせない。筋を知っていても可笑しくて、心に沁みる。

 しばらくホール落語に行かなかったが、やはり夜行くのは大変なのである。(外食だとお金も掛かるが、それより塩分摂取量を抑えたいので。)だけど、ホールだと、演目に長時間を掛けられる。長講に相応しいネタを聴ける。やはり時々行きたいなと思った。それにしても、この桂二葉のエネルギーと言ったらどうだろう。こんなにフレッシュで元気な落語家は久しぶりに見た。まあ「芸協」の「成金」グループに近いかもしれない。あるいは四半世紀ぐらい前に春風亭昇太を知った時に近いかも知れない。まだ「円熟」には遠く、ひたすら面白いエネルギーにあふれた時代である。だが、とにかく見て聞いて楽しく可笑しい。大注目。

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