尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

大林宣彦監督「HOUSE」「ねらわれた学園」

2020年07月26日 22時42分08秒 |  〃  (旧作日本映画)
 新文芸坐で大林宣彦監督の追悼上映を断続的にやっている。先月は「さびしんぼう」「野ゆき山ゆき海べゆき」を書いたが、今月は「HOUSE」「ねらわれた学園」と「時をかける少女」「青春デンデケデケデケ」の2本立てを2日ずつ上映である。まずは最初の2本だが、どちらも公開直後に見て以来だ。「公開直後」と言っても、若い頃はほとんど名画座で見ていたから、多分どこかの名画座で見たんだと思う。1977年の「HOUSE」は大林監督の商業長編映画のデビュー作だが、見た時にすごく面白いと思った。その年の自分のベストワン映画だった。
(HOUSE」)
 1977年7月30日公開だったから、ほぼ43年ぶりに再見したことになるが、確かに今も面白かった。「特撮」を駆使して、ひたすら楽しい映像を作っている。こういう「遊び感覚」だけで作られた映画は初めて見た気がしたんだと思う。日本でもパロディやブラックユーモア、オシャレ感覚の映画はそれまでにもあった。しかし、パロディやブラックユーモアは、事前の知識があってこそ楽しめるところがある。「HOUSE」は若い観客が見て、ただ楽しめる映画に作られているのである。
(「HOUSE」)
 もっとも「HOUSE」が1位というのは、今から客観的に振り返れば過大評価だろう。77年は「幸福の黄色いハンカチ」(山田洋次監督)の年で、第1回日本アカデミー賞はじめ、キネ旬、毎日映コンなど映画賞を独占していた。僕はこの映画があまり好きではなかったが、3位の「はなれ瞽女おりん」(篠田正浩監督)や2位の「竹山ひとり旅」(新藤兼人監督)の方が上だと思う。近年になって見直したが感銘深い映画だった。「HOUSE」は21位で、11位以下には「黒木太郎の愛と冒険」(森崎東)や「北陸代理戦争」(深作欣二)などが入っている。

 「HOUSE」に関する情報はネット上に多い。「カルト的映画」なんだろう。ポップ感覚あふれるホラー映画で、77年じゃ少し早過ぎたんだと思う。当時18歳の池上季実子が主演だが、美少女ぶりに圧倒される。しかもなんとヌードシーンがある。実に自然で美しい描写で、僕は忘れていたのでちょっと驚いた。大林監督は少女を使っても、ヌードを見せるときがある。今の方が難しいかもしれないが、すごく美しいシーンだと思った。

 池上演じる「オシャレ」他7人の少女が田舎のお屋敷で悲劇に見舞われる。まあ「ホラー」というか、笑っちゃう展開だから、一緒になって楽しむ映画だと思う。他の6人は大場久美子松原愛神保美喜などだが、残りの3人は女優としては残らなかった。少女趣味的な「ガーリー・ムーヴィー」は後に多くの女性監督によって作られるが、「HOUSE」は12歳だった監督の娘、大林千茱萸(ちぐみ)のアイディアを生かした「ガーリー」な感覚が楽しい。同時に大林監督のオトナとしての売れ筋感覚も発揮されている。ずいぶん遊び的描写があるのに、88分と短いのも良い。
(「ねらわれた学園」)
 1981年の「ねらわれた学園」は薬師丸ひろ子主演のアイドル映画として作られた。眉村卓のジュニア向けSFの原作を角川映画が映画化した。大林監督の長編5作目で、テーマ曲となった松任谷由実守ってあげたい」が流れてくると、時間が戻って若い頃がよみがえる気がする。もっとも映画としてはたいしたことがないが、まあ若い時なら楽しく見られる。SFだし、ほぼ全編特撮で楽しく作られている。薬師丸ひろ子は健闘しているが、「時をかける少女」の原田知世と同じく、若すぎて池上季実子ほどの魅力を感じられなかったのが残念。
(「ねらわれた学園」=第一学園)
 話は超能力で学園支配をねらう「金星人」たちに対し、同じく超能力者である薬師丸ひろ子が立ち向かう。ただそれだけの物語で、その学園が何故ねらわれるのか、全く判らない。「HOUSE」はオリジナル脚本だから、7人の美少女たちがどういう順番でどうなるかは判らない。でも「ねらわれた学園」は話が単純すぎて、昔見た時も映像しか楽しめなかった。でも映像は楽しいのである。東京で撮影されているが、ロケハンの重要性も感じさせる。舞台の「第一学園」は、都庁が建つ前の空き地に特撮で合成したという。

 校長を原作者の眉村卓がやっている。担任の先生は岡田裕介で、今は東映会長である。当時の東映社長岡田茂の息子で、東宝の「赤ずきんちゃん気をつけて」の主役に(親と無関係に)スカウトされた。70年代当初は青春映画によく出ていた。悪の手先になるクラスメイト有川は手塚真で、手塚治虫の息子だが映像クリエイターとして活動している。稲垣吾郎、二階堂ふみ主演で、手塚治虫の「ばるぼら」の映画化作品が公開を控えている。大林作品は特別出演や友情出演がいっぱいで、探すのも楽しい。名前を忘れている人が多く、後で検索することになる。「HOUSE」では池上季実子の父を作家の笹沢佐保がやっていた。
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