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チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 68

2018年12月12日 18時20分40秒 | 日記
蚕は元々野生であった
美しい糸を吐くことを知った人間は
蚕を家の中で手厚く飼育することを覚えた
そして蚕は人間の思惑通りの生命体として人間社会に尽くす事になった

蚕は変態動物である
種から幼虫なり成虫になったら糸をはいて自分の家を自分で作る
その家を「繭」というその繭の中で蚕は蛹に姿を変える
そこで七日間生きているので繭はタンパク質で強くして風通しよく、また紫外線を避け湿気も防ぎ抗酸化の効力も持って生き延びて行く
まゆを形作り命を守る大きな役目を担うタンパク質をセリシンと呼ぶ
その繭の中で休養を取った後子孫を残すためにまた姿を蛾に変えて繭の吐口を柔らかくして外に出る
外に出た蛾は羽があっても飛べないように人間がしてしまったのでおとなしく交尾して卵を産む

その卵の数は驚くなかれ500とも800ともあるという
(当方では100くらいだったそれでもすごい数)
とにかくたくさんの子孫を残す事になるので人間は9割くらいは糸としていただこうと思ったのだと思う
ま そのお陰で私たちは絹をふんだんに身につけることができる

虫は苦手で初めて蚕を見たときは手で触ることができず箸でつまんでいた
しかし蚕の人間への貢献度 無条件の愛などを知るに従って「命をいただいて申し訳ない」という思いが強くなり心からの感謝が湧いて来て蚕を愛しいと思うようになった

先人たちが着物の仕立てで布を切り捨てないという考えに至った気持ちも「蚕に対する感謝」から来ているのだと私は確信した
「繰り回し」という事も布を大事にするという考えが基本になっているー

また
絹は思っているより強いという事も蚕の一生から学ぶ
蚕はひたすら糸を吐くそれはあくまで自分の身を守るための家づくりだ
そしてその家は雨にも風にも負けず太陽の紫外線もはねのけ湿気にも強く濡れてのすぐ乾く揮発性もある
さらに活性酸素もねじ伏せ抗酸化も強い

ということはですよ
絹を素肌に使って入れば老化が防げるのではあるまいか
こういう蚕の生態を詳しく博士たちから聴くに及んですぐ実行したのは
「肌着を絹にする」ということ
それにはセリシンが糸についている方が効果的
しかしながらセリシンのついた糸を探すほうが難しい

ここからチャコちゃん先生の蚕本来の糸づくりの旅が始まった
この旅で日本の養蚕のあり方 蚕が外資を稼いだ事実 製糸事業の顛末などを取材するうち日本の姿を蚕に教わった

#製糸業 #蚕 #養蚕 #チャコちゃん先生 #絹 #繭 #蛹
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