チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 72

2018年12月21日 11時12分09秒 | 日記
撮影で学んだことをもう少し
当代一流のカメラマンたちそれぞれに癖もあり個性もある
その中で一番長く仕事を一緒にしたのが藤井秀樹さん

とにかくカメラ好きいつも35ミリのニコンを身から離さず
旅先で朝の散歩をしていてもシャッターの音の切れまがない
そういうときは人物を撮っているのではなく雲の流れ木々の葉の動きまた太陽の影などを撮っている
しばらくしてわかったのだが日本は四季によって太陽の色が変わるのでその時の強い色をどう表現するかの研究をしていたらしい
光線の色によってフイルムを変えたり露出を変える

この当時の先逹は弟子に細かく手取り足取り教えるということはしない
「黙ってみて身に着けろ」
という態度だから弟子たちは師匠から目を離さない
師匠が何を必要としているか師匠が考えた瞬間手が動いて必要な物を手渡す
外科手術でメスを渡す呼吸と一緒かもしれない
私語は一切禁物

スタジオでは息が詰まるほどの緊張感が走る
シャッターを押すときは藤井さんの声だけがスタジオに響き渡る
モデルの手の動きも一ミリ下げて?顔を一ミリずつゆっくり動かして?
とその人の一番美しい線を探してシャッターを切る
目線も下から上にゆっくり動かすほうがきれいな人
上から下に動かす場合は目玉を上げる感じ
肩を落として首を動かす
遠くを見るときは下からゆっくり顎と目線を上げていく

女の人の表情の変化や動きどんな女でも美しい場所があることを知った
それを引き出すから「女を撮って天下一品」と言われる
しかしロケ撮影は一挙に明るい
笑いの耐えない中で撮影が進んでいく

ロケハンは丁寧本番より時間をかける
前もって「ここの場所でこの着物」とロケハンして一緒に行くが
たいてい「却下」「なんで?」「たにやん(ちゃこちゃん先生のこと)が決めたときの太陽の位置と今は違うからね
光線が美しくない」
(よく云うよ)と思うがそのとおりだし出来上がりが綺麗なので文句は言えない

長く組んでいるとだんだん学んで様子もわかって理解できるようになる 呼吸もあう
女性を心から美しく撮りたいという思いが伝わるので一緒に仕事をしていて楽しい

当然メイクの色にもうるさい
着物と口紅の色が合わない 頬紅の色が強いと言って騒ぐ
「たにやん責任持ってしっかり指図してよ」とこちらに叱咤のお鉢が回ってくる
確かに企画者はすべての責任を持たねばならない
おかげでトータルコーデイネートが身についた

#トータルコーディネイト #ロケハン #口紅 #目線 #撮影 #スタジオ
コメント
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