チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 61

2018年12月04日 11時11分49秒 | 日記
悉皆屋(しっかいや)に初めて取材に行ったときの驚き様はなかった
なんと
流れる水の中で布を泳がせ亀の子束子で洗っている!
絹は水に濡らしてはいけない
体温を逃したあとにたたむ
丁寧に丁寧に絹は非常にデリケートだから

ところがここでは
絹は踊るように水に転がされてゴシゴシ洗われているのだ
こんなことってあるのか

しかし
遥かに記憶をたどると
家の女たちは秋になると大きなたらいを引っ張り出して
解いた着物をたらいに入れて布を送りながらた洗っていたが
その時たわしが使われていたかどうかは記憶にはない

子供はみんなが働いているのを見るのが嬉しい楽しいので
そののそばで遊び戯れている

その他にも染色の取材に行くと
水場で絹は洗われていた何回も何回も水をくぐる
そして見違えるほど色が冴えてきれいになる

そういう記憶をたどっていくうち
驚きは納得に変わり落ち着いて工程を取材することにした

洗ったあとは何回も水をくぐらせ
布をふのりにつけて伸子張りで布を整えながら天日に干す
無風の日より少し風がある方が乾きが早い
乾いた布を取り込んできちんとたたむと
アイロンをかけることもない

ここまでは昭和40年代の悉皆屋

そして今は
チャコちゃん先生がお願いしているところは
天日干しはなく
伸子張りは室内でしている

しかし別のところは乾燥は乾燥機を使っていた
伸子張りでの乾燥は乾燥は「俺で終わりだな」と悉皆屋

姑は「伸子張りの洗い張りの布は針の通りが良くて縫いやすい」
といっていた
当然着る方も布が柔らかい

しかししかし
こうやって時代は変わっていく
時代にそう洗い方、縫い方 着方になっていくのも仕方のないことなのだと思う

しかしながら
それぞれ違う作業をしながらも
その担当の人達が仕事をしやすいように心がけた仕事の仕方
心遣い
こういうものは伝えていくべきだと思ってる

人は一人では生きていけない
それぞれの立場の人が相手を思いやって生きていくことで
住みやすい世界になる

着物は最終的には着る人のものだが
そこに行くまでの工程に人それぞれの思いもあり
長い道のりを経て自分のところに来たものをたいせつにしたい

きものからいろんなことを学んできたとつくづく感謝の気持ちが深くなる

コメント
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