波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

オヨナさんと私   第16回

2009-08-07 09:44:38 | Weblog
「昨夜、偶然主人がお風呂に入っている時、ケータイのメールを見てしまったのです。そしたら、そこには知らない女の人のメールが入っていて、いつも親切にしてもらってありがとうございます。一度、ゆっくりお話がしたいです。と書いてあったのです。びっくりしてしまい、主人にすぐ話そうと思ったのですが、興奮して
自分が何を言うか自信が無くて我慢して寝たのですが、とても眠れませんでした。
今朝も子供を保育園まで連れて行き、仕事にでたのですが、落ち着かなくていました。そんな時に粗相をしてしまい、申し訳ありません。ごめんなさい。」
一気に其処まで話すと、女性はコップのビールを飲み干した。そして少し落ち着いたのか、又話し始めた。「私、主人にそんな女の人がいるなんてとても信じられません。もし、本当に誰かいるとしたらこのままではいられません。
今日、帰ったら話そうと思っているのです。でも、このままだと、けんかになりそうで恐いんです。と言って、このまま我慢して黙っていることも出来ません。
どうしたらよいか、迷っています。」
「お子さんはいくつですか。」「4歳の男の子です。」「可愛いでしょうね。」
オヨナさんは話をそらすように子供のことを聞いていた。
しかし、女性は自分のことで精一杯なのか、コップを見つめながら一人で物思いに沈んでいた。
「夫婦でも、人のメールを勝手に見ることは良くないことです」オヨナさんはぽつんと話し始めた。「それに、あなたが女の人のことを話せば、ご主人は逃げ場がなくなり、困るのです。どのように説明するか分りませんが、きっと心を痛めるでしょう。それは言い訳になるかもしれませんが、あなたのことを考えてのことでもあるのです。だから、あなたは勝手にメールを見たことを素直に謝り、これからは見ないことを約束してください。そしてご主人を信用することです。
ご主人はあなたのことを充分愛しておられますよ。今日もいつもと同じように迎えてあげてください。」お客が少し立て込んできていた。
二人は外へ出た。オヨナさんの話を聞いているうちに気持ちが楽になったのか、アルコールの所為なのか、女性の表情が柔らかく、穏やかに見えた
「ありがとうございました。これから子供を迎えにいって、帰ります。」
女性の後姿を見送りながら、オヨナさんは空を見上げ「今日も終わったなあ」と
呟いていた。

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