波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

            オヨナさんと私  第67回

2010-02-15 09:39:57 | Weblog
それは予想もつかなかった再会であった。まさか彼女に会えるなんて期待もしていなかった。ただ、岡山へ来て思い出して電話をしただけのことであった。本当に何十年ぶりに会うことが出来た幸運を思わざるを得なかった。
卒業以来のことで想像もつかなかったが、彼女は変わっていなかった。面長の品の良い、色の白さ、そして少し外又で歩く歩き方、確かに年齢を重ねただけに、姿に貫禄のような重さが感じられたが、それはむしろ彼女の知性を深めていた。
挨拶の後、二人はレストランへ入った。話すことはたくさんある気がしていたが、言葉にはあまりならなかった。簡単な食事をした後、お茶をしながらやっと落ち着きを取り戻す気持ちになっていた。「さっき食べたあの小さな魚、少し酸っぱかったけど、あれ何と言う魚なの」「あれ、ママカリっていうのよ。」「えっつ、ママカリ」「そう、瀬戸内海で取れる白身の魚でたくさん取れて、ここではこれを酢漬けにして食べるの。これをおかずにして食べると
あんまり美味しいので、ご飯がなくなって、隣の家に飯を借りに行くぐらいという所から付いた名前よ。」「へえー、それは始めて聞いたよ。少し骨っぽい感じはするけど、さっぱりしていて美味しかったよ」そんな話をしながら、遠い昔を思い出していた。彼女の人生は今日までの長い時間の中で、どんな変遷があったのだろうか。どんな人との出逢いがあり、今日まで生きてきたのだろうか。それは自分の人生をダブらせて考えさせられることでもあった。プライベートなことを詮索するのは失礼と思いながら、聞かないわけには行かなかった。「今、如何しているの。」「今の会社で仕事をしているわ。ずっと一人よ。母と妹がいたけど、母は死んで、妹は結婚しているわ」「そう、僕も一人だけど、」と呟くように言った。
「ヨナさん、どうして結婚しないの。」「やはり、色々制約もあるしね。条件も難しいよ。でも結局は縁がないのかな。」「それより君はどうだったの。」「私は一杯恋をしたわ。
いい人もたくさんいたわ、出逢いがあって、別れがあって、又出逢いがあって又別れてその繰り返し、そしてその出会いもだんだん少なくなってきたの。」そういうと、少し淋しそうな表情を見せた。「君はとてもきれいで、あの頃、僕は無性にあなたにあこがれていたんだけど……」「そうね、あの頃のヨナさんとても可愛かったわ、何か同級生なのにあまり子供っぽくて、とても友達の様には見えなくて、弟のようだったわね。」

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