波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

   パンドラ事務所   第六話  その4

2014-02-14 13:11:18 | Weblog
数日後片山から「彼女から渋谷のハチ公銅像前で会いたいと言ってきた」知らせてきた。青山は
「私の事はは説明してあるの」「いや、ただ分かったとしか言ってないので良く説明してください。よろしくお願いします。」到頭乗りかかった船に乗ってしまった変な気持であったが、引き受けた以上嫌とは言えず「分かったよ。行ってくるよ」と電話を切った。
生憎の雨で気が重かったが、反面どんな女性が来るのかいう好奇心もあった。自分の事ではないのに何となく興奮している。久しぶりの渋谷である。若い時は話の種と思い、何度か行ってみたことがある。道玄坂や繁華街はやはり独特の雰囲気があるが、目的もない散策は何も得ることもなく、ただ人ごみがうっとうしいだけだった。
駅前は昔と変わらず、交番前には人だかりがしていてハチ公は相変わらず首を少し傾けて今も
主人を待ちかねている様子はいじらしい。そのへんをぶらぶらしていると夕方とあって何組かの男女の待ち合わせの姿も見ることになる。もうそろそろかなと注意しているとそれらしい女性が
傘を肩に立っていた。「失礼ですけど木村さんでしょうか」と聞いてい見る。女性は驚いたようにこちらを向くと少し警戒するように「はい、そうですけどどちらさまですか」と聞かれる。
「私は青山と言うもので怪しいものではありません。実は片山さんから頼まれて代理で来ることになったんです。」と名乗った。彼女は青山の様子を暫く観察したようだが、「片山さんは来ないんですか。」と言う。「彼は今日どうしても外せない用事があるようで私に代わってほしいと頼まれましてね。よかったら少し時間をもらって食事でもしながら話をしたいと思っているんですけど」片山が来ないと分かった時点で急にテンションが下がって見えたが、食事の話を聞いたときに少し表情が柔らかくなった。「分かりました。私も話を聞いてもらいたいので、」という
スクランブル交差点を渡り、道玄坂を少し上りかけたところに少し落ち着いた和食屋がみえてきた。暖簾には「嵯峨野」と書いてある。
少し高級なところそうだから、ここなら少し静かに話が出来るかもしれないとためらわずに入った。客はほとんどいなくてテーブルが並んでいる。照明を少し落としてあり、何となく
静かな雰囲気が漂っている。青山は慣れた足取りで一番奥のテーブルへ行くと彼女を座らせた。
「さあ、ここでゆっくり食事をしましょう。そして明るく声をかけた。