波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

   パンドラ事務所  第六話  その3

2014-02-07 09:48:22 | Weblog
「そりゃあ嬉しいじゃないか。わざわざ来てくれるなんて」と軽く言うと片山は顔をしかめて「青山さん、無責任にそんなこと言わないで下さいよ、こっちにだって都合と言うものがあるんですから」「えっつ、そうなの、何か都合でも悪いことでもあるのかい。」と皮肉っぽく言うと「別に悪いことをしているわけじゃあないですよ。ただ、今は昔と違って女と関わっているほどの余裕がないんですよ。それに彼女とは島にいるときだけの付き合いでもう終わったと思っていたんです。」「そうか、君の気持ちは分かったよ。だったらそれはそれで彼女にあって直接はっきり話せばよいじゃないか。」「そうすることが出来るならわざわざ青山さんに相談に来ませんよ。それが出来ないからどうしたら良いか教えてもらいに来たんじゃないですか。」今どきの若者は人にものを頼むときでもあまり礼儀を弁えていないようだ。まるで当たり前のように口をとがらせている。
しばらく沈黙が流れた。青山は面倒なことに首を突っ込む気はなかった。
下手に同情したり、理解を示すと自分に降りかかってくるリスクを感じていた。
「出来れば会わないではっきり断りたいんですよ。だけど彼女、友達の家を頼って出てきて、東京へ着いたら、ここへ来るつもりらしいのでそれを止めるのは難しいんです。だから青山さんが私の代わりに会って話をして頂けないですか。」
やっぱりそうか。恐れていたことが起きていてそれを覚悟しなければならないことを話を聞きながら感じていた。そして思い口を開いた。
「片山さん、あなたも立派な大人だし社会人だ。逃げたりしないで正面から会って正直に自分の考えを話すべきだと思うよ」と一応正論と思われることを口にした。
「分かってますよそれは、私だってそうしたいです。でも会ってしまうと彼女の言い分に負けて自分がどうなるか自信がないんです。そして自分の考えていることと違ってしまうと後で後悔することになってしまうのではと心配で自信がないんです。お願いします。青山さん私の代わりに彼女にあって話してもらえませんか。」そんな片山の赤裸々の話を聞きながら青山は不図自分の若かった時のことを思い出していた。
そうだ。自分もそんな時があった。結婚を考えていた時に自分の考えを通すことが出来ないで、
親の言うとおりに自分の気持ちを抑えてしまい、何かそぐわない結婚をしてしまったような
気がしていたことを何となく思い出していた。