波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

     白百合を愛した男   第75回

2011-03-11 09:34:55 | Weblog
日本を飛び立つ時は期待と興奮で一杯で元気良く出発したはずだが、僅か一週間を過ぎただけで、その元気は全く様変わりとなった。ドイツでの行程を終わり、次の予定地のフランスのパリに着いたときは、口も聞けないほどの疲労であった。予約されていた市内の
ホリデーインホテルへ着き、休息を取っていると、「おい、M君美味しい食事の店が見つかったよ。この近くに中華の店があるので今晩は此処でしっかり栄養を取ろう。」と声をかけられた。「はい。」と返事をしたものの体が動かない。「どうしたんだい。嬉しくないのか。」と言われたが返事が出来ない。「すいません。申し訳ないですが今はとても
食べる元気がありません。此処で休んでいますので皆さんで食べに行ってください。」
「気分でも悪いのか。大丈夫か」「大丈夫です。休んでいればよくなると思いますから、
すいませんが、水だけお願いします」ミネラルのボトルを貰ってダウンとなった。
海外へ行って、食事が美味しく取れるか、取れないかは最大の問題である。今回は食事が合わないと言うよりはストレスによる疲労であり、緊張の連続による環境との不調和によるものだったので、休息しかなかった。しかし、食事に関する発見としては何処の国に行っても、少し探せば中華料理の店が見つかる。このことは東洋人、分けても日本人には救いであり、(日本料理店は少ない)、何とか満足して食事が出来るので助かる。
まだ若いということもあって、その夜は何も食べずに早めに寝たこともあり、翌朝は元気に起きることが出来た。この日の予定はパリの郊外にあるユーザーの訪問であり、商談であった。憧れの「TGV」フランスが誇る新幹線に乗ることが出来た。期待して試乗したが、日本の新幹線と比較すると、正直言ってそれほどの差はない。むしろ日本のほうが全体には良く整っている気がした。フランス人は日本人と体型も似ていてむしろ小柄に近いこともあって、さほどにゆったりした空間がなく、少しせせこましい感じすらしたのだ。
窓から見る風景はのどかな丘の続く農園で、パリを一歩出るとそこは田園風景であった。
パリと言う潜在観念が強いせいか、そこはルーブル美術館があり、ノートルダム寺院があり、凱旋門がありといかにも芸術の国であり、ファッションの国と言うイメージが強かったのだが、それはパリだけのイメージであり、全体的にはのどかな農業国ということらしい。しかし、これだけでは満足できない。何とかその片鱗にあやかりたいと願って一夜を過ごした。