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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

アマゾンと商業規制② フランスの法律の理念 関西大学教授 佐々木保幸さんに聞く

2019-11-16 08:33:15 | 経済・産業・中小企業対策など
アマゾンと商業規制② フランスの法律の理念
関西大学教授 佐々木保幸さんに聞く


アマゾンなどのデジタル・プラットフォーマー(個人や法人に活動基盤を提供するIT企業)への商業分野での規制については三つの側面を考える必要があります。
一つ目は租税回避行動です。一番税率の低い国に利益を移動させ納税する多国籍企業の行動には制限をかけなければなりません。
二つ目は竸争制限的で不公正な事業活動です。取引業者への手数料を一方的に引き上げるような行動に関しては競争政策(独占禁止政策)の側面から規制しなければなりません。
三つ目に、実店舗を圧迫し小売商業構造を変えてしまうことです。この問題への対応は、まったく講じられていません。



アマゾンの物流センター=千葉県市川市

小売業圧迫
大手小売業の事業活動によって商店街のような小規模零細小売業が圧迫されます。そのため、かつての日本では大型店の出店や事業活動を法律で規制し、調整していました。小売商業調整政策と呼ばれます。戦前から戦後にかけては百貨店法という法律で、1970年代からは大店法という法律で小売商業の調整を行っていました。
ところが1990年代以降、市場メカニズムを重視する新自由主義の考え方や政策が基調となり、小売商業調整政策が弱くなりました。日本でも大店法が廃止され、出店規制を取り払った大店立地法に変わりました。世界各国で中小零細企業の淘汰(とうた)が進んでいます。
商業の多様性は市場原理にまかせては維持できません。資本力格差は圧倒的なので市場での「自由競争」はゆがめられ、資本力の弱いものが淘汰されるからです。その状況が、アマゾンのような新しいインターネット小売業の急成長で加速されています。小規模零細な小売業だけでなく、大手の実店舗型小売業も淘汰されています。
しかし、多くの国では大手小売企業の事業活動を直接的に規制するような調整政策をもはやもっていません。新たな政策的な対応が求められています。ヒントになるのは2014年にフランスで制定された通称「反アマゾン法」です。書店と書籍に着目し、アマゾンの配送料無料サービスを禁じた法律です。
フランスではラング法という法律で書籍価格の値引きについては最大5%まで認めていました。アマゾンは5%の値引きに無料配送をつけ、事実上のダンピングで市場浸透を図りました。これを新法で禁じたのです。
アマゾンが送料を1セントに設定して対応するなど、現実的な効果は小さい法律です。しかし重要なのは、理念や方向性を指し示したことです。
反アマゾン法制定の過程ではさまざまな議論が行われました。アマゾンの不公正競争が問題にされ、実店舗型小売業の必要性が強調されました。書籍は単なる商品ではなく文化に密接に関連する独特の財であるという考え方も重視されました。実店舗の書店が存在することで地域住民が文化としての書籍に触れることができます。その文化的財を国と地域社会で守っていこうというわけです。

文化的側面
反アマゾン法を所管したのは文化担当大臣でした。書籍の重要性を文化的な側面から把握して法案を出したのです。このように、企業活動の影響については純粋に経済的な側面だけでなく、社会的な側面にも目を向ける必要があります。
現在の流れの中では大店法のように小売企業全体に網をかける小売商業調整政策は議論の姐上(そじょう)に載せにくい状況です。また、小売企業を店舗の面積に応じて規制する大店法の方式では無店舗の事業者を規制することはできません。反アマゾン法のポイントは、書籍という小売業の特定の分野で競争上の問題をとらえた点にあります。今後の政策対応の方向性を示唆しています。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年11月14日付掲


書籍は単なる商品ではなく文化。実店舗の書店が存在することで地域住民が文化としての書籍に触れる。その文化的財を国と地域社会で守っていこう。
アマゾンのダンピングを規制するフランスの取り組み。



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