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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

大阪市の学校“3密”(下) 安倍政権の方針先取り

2020-06-30 08:12:02 | 政治・社会問題について
大阪市の学校“3密”(下) 安倍政権の方針先取り


大阪市の強引な学校統廃合の動きに対し、住民は4人の連合振興町会長を共同代表に「生野区の学校統廃合を考える会」を結成し、年3回の市議会のたびに、強引に統廃合を進めないよう陳情してきました。
ところが市は2月、小学校の適正規模を12~24学級とし、それ以下の学校は市教委が統廃合に向けた「再編整備計画」を策定しなければならないとする条例案を市議会に提出。大阪維新の会、公明党の賛成、日本共産党、自民党、市民第一の反対で可決されました。
山口照美生野区長は、市議会で「考える会」の共同代表の1人を名指ししたうえで「まちの大事な決断を高齢の方が1人で担っており、若い人たちとのコミュニケーションがとれない。そういった中で条例化の話がでてきた」と発言。統廃合への地域の理解が進まない責任を町会長らに転嫁し、条例を正当化しました。

経済効率だけで
共同代表の1人、猪股康利舎利寺連合振興町会長は、区長の発言は辞職に値すると憤慨します。学校がなくなれば地域は間違いなく衰退するとし、災害時の避難場所の確保にも支障が出かねないと語ります。
猪股さんは、地元小学校で毎年そろばんを教えています。子どもが20人くらいだと一人ひとりの指の使い方がよく見え、丁寧に指導できるといいます。
「小規模校の良さを見ず、経済効率だけで統廃合するという。統廃合が住民の最大公約数なら文句は言いません。しかし、市は住民と全く話し合おうとしない。民主主義は、賛否をとる前に議論を尽くすことです」
同市の学校統廃合の背景には国の政策があります。安倍政権は「地方創生」の名で、自治体に所有施設の延べ床面積を削減するよう要求。学校統廃合に自治体を仕向けるとともに、15年には小中学校の適正規模・適正配置に関する手引を「改正」。1校当たり12~18学級を標準とし、1学年1学級以下の学校については、統廃合を速やかに検討することとしました。
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は昨年、文科省の手引にも書かれている小規模校の利点に一切触れず、1学年1学級では「クラス同士で切磋琢磨(せっさたくま)できない」「クラス替えできない」などと小規模校を批判。統廃合を強力に求めました。





「考える会」は3密を高める学校統廃合の見直しを求めるポスターをつくり、街中に張り出す。

子どもの心に傷
学校統廃合問題に詳しい和光大学の山本由美教授は、文科省が標準とする12~18学級について、1950年代に市町村合併(昭和の大合併)を進める際、行政効率の観点から出てきた数字で、教育学的な根拠はないと指摘。切磋琢磨など政府があげる統廃合の根拠も「教育学的俗説」と切り捨てます。
山本さんは、かつて小学5年生が統廃合の中止を訴える遺書を残して命を絶った事件をあげ、「強引な統廃合は、子どもから慣れ親しんだ学校や仲間を奪い、心に傷を負わせるリスクを与える。それは子どもだけでは乗り越えられない、という認識が必要」だと強調します。子どもの気持ちに寄り添うことなく強引に統廃合を進めたケースでは統合後に「荒れる」ことが多いとし、大阪市の進め方を懸念します。
「新型コロナを受け、十分な社会的な距離を保てる少人数学級の重要性は増しています。すでに廃校にした学校の再活用も含め、どうすれば少人数学級が実現できるか考えるべきです」
(おわり)(この連載は佐久間亮が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月28日付掲載


「1学年1学級では、クラスどおしで切磋琢磨できない」って、どういう発想なのでしょうか。
小中学校の統廃合の背景にあるのは経済効率化。子どもの健やかな成長や教育への目配りはありません。
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大阪市の学校“3密”(上) 緊急事態下で統廃合工事

2020-06-29 08:21:25 | 政治・社会問題について
大阪市の学校“3密”(上) 緊急事態下で統廃合工事


新型コロナウイルス感染症で3密(密集・密接・密閉)の回避が課題になるなか、これまで国が進めてきた学校統廃合も見直しが必要になっています。ところが、橋下徹、吉村洋文、松井一郎と3代続けて大阪維新の会の人物が市長を務める大阪市では、緊急事態宣言中から統廃合を上から押し付ける動きを加速しています。同市生野区の現場を歩きました。



住民に隠し推進
「市が突然工事に着手したのは、感染がピークに達していた4月20日。地域や保護者にも知らせず、当初は施工業者などを記した標識もなし。法律違反だと指摘され慌てて掲示しましたが、住民に隠して進める意図は明らかです」
「生野区の学校統廃合を考える会」(連合振興町会長4氏が共同代表)の室谷雄二事務局長は、西生野小学校の工事現場を前に憤ります。工事は、同小と隣接する生野中学校と敷地を一体化して校舎を増設し、さらに近隣の3小学校を統合するためのものです。
着工の2日前には市内の新型コロナの新規陽性者が58人を記録。この数はいまも同市の最大値です。市民に外出自粛や休業を呼び掛ける裏で、ひそかに重機を搬入し工事を強行していたのです。
源流は2012年にさかのぼります。当時の橋下市長が、市教育委員会に市内約300の小学校のうち3分の1を統廃合する計画を作成するように指示。なかでも小規模校が多い生野区が標的とされ、16年には区内西地域を四つの中学校区に分け5中12小を4中4小に再編する計画が発表されました。
生野中学校区の林寺小学校(全学年1学級)の場合、現在11~23人の学級規模が統廃合後は3年生と5年生では40人、他の学年も29~31人に膨らみます(19年度で試算)。室谷さんは、緊急事態宣言直後も分散登校せずにすんだ小規模校の良さが失われると語ります。



大阪市は緊急事態宣言中に学校統廃合に向けた工事を強行。西生野小学校脇の非常に狭い道をときには10トントラックが通過する。

移動は500メートル以上
さらに田島中学校区では、同中の校庭を斜めに分断し地上21メートル5階建て(屋上プール)の校舎を新築し、同中と近隣2小学校を統合する計画です。校庭が狭くいびつになるため、市教委は廃止する田島小の校庭を併用するといいます。しかし、同小までは信号を渡って500メートル以上あり、短い休憩時間に移動できるのか、移動中の安全を確保できるのかなど懸念が尽きません。
田島小学校PTA有志と同OB会有志は、計画の変更・延期を求める要望書を市に提出。密接、密集を増やす計画では「子どもの『学びの保障』ができる環境にはありません」と訴えます。


子どもも教師も疲弊
「授業参観に行っても自分の子どもの姿は見えないし、子どもたちも教師の目が行き届かないと分かっているので、あちこちで私語を始め、授業が成り立たなくなっていく」
勝山小学校に子どもが通う女性2人は、昨年の小学4年生の参観の様子をそう語ります。大阪市は2年生までは35人以下、3年生以降は40人以下で学級編成します。子どもが荒れだしたのは、2年生まで2学級各20人程度だったクラスが、3年生で1学級40人になってからだといいます。



日本共産党の西田さえ子生野区市政対策委員長(正面)と話す、勝山小学校に子どもが通う女性たち

「暴れる子を教師がむりやり連れていったり、他のクラスの教師からたびたび『うるさい』と怒られたり。それがまた子どものストレスになる。教師も疲弊していた」
2人は今年2月、2学級にすることを求める署名に取り組み、多くの保護者から賛同を得ました。緊急事態宣言解除後、3密対策で学級が一時的に二つに分けられると、子どもの様子が激変したと語ります。
「いつも怒られていた子が落ち着いて授業を受けるようになって、授業後もみんなと一緒に学校で宿題をしてから帰るようになった。子どものストレスが全然違う」
市は、小規模校では競争心が育たないといいます。2人は「競争はいらない。親同士の顔が見え、徒歩で通える学校でゆったり育ってほしい」と強調。市がコロナ対策で全児童・生徒にフェイスガードを配ったことにも、「それじゃない」とあきれます。
「フェイスガードより、教室に子どもたちを詰め込むのをやめてほしい。少子化で教室は空いている。少人数学級はやる気があればできると思う」
通学圏が広がることで、車や自転車が大量に通る道が通学路になることにも不安の声があがります。舎利寺(しゃりじ)小学校に子どもが通う田中昭博さんは、再編先の生野中学校が母校。中学生のとき通学中に熱中症になったことがあるといいます。
「中学生でも生野中は遠かった。重いランドセルをしょって低学年の子が本当に通えるのか」
大阪市学校園教職員組合の宮城登委員長は、通学圏が広がると放課後の遊び時間が減り、遠い地域の子とは遊べなくなるとし「子どもの生活が制約されることになる」と語ります。
(つづく)


日本共産党の緊急提言
日本共産党は6月2日発表の緊急提言で、新型コロナによる休校で生じた学習遅れや教育格差を解消するうえでも、感染予防で身体的距離を確保するうえでも、教員10万人増など教育条件の抜本的整備が必要だと主張。教員10万人増を少人数学級移行のステップにすることを呼び掛けています。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月27日付掲載


小学校が統廃合されると、クラスの人数が20人だったものが40人になるなど、必然的に増えていく。
また、長距離通学などのリスクもでてくる。
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#通常国会150日の軌跡⑥ 新自由主義決別へ深化

2020-06-28 11:27:36 | 予算・税金・消費税・社会保障など
#通常国会150日の軌跡⑥ 新自由主義決別へ深化
コロナ禍と向き合い、政治のあり方が問われた第201国会。国民に危機克服の展望を語れない安倍政権に対し、野党各党が語り始めた「ポストコロナ」の社会像が、新自由主義からの決別を示す方向で響き合っています。

#社会の脆弱
「ポストコロナを展望して自己責任でなく、人々が支え合う社会をめざし、豊かなビジョンをつくりたい」(日本共産党・志位和夫委員長、5月28日のインターネット番組)、「自己責任から抜け出し、人々が支え合い、適切な再配分を行う社会と政治のあり方が必要」(立憲民主党・枝野幸男代表、同)、「グローバリズム、東京一極集中、富の偏在の見直しが必要だ」(国民民主党・玉木雄一郎代表、10日の衆院予算委)。各党の党首が見据える方向は重なりあいます。効率優先の掛け声のもと、医療・社会保障を削減し、非正規雇用の拡大を推し進める政治と社会の脆弱(ぜいじゃく)さが現れた結果です。
201国会の150日を通して、日本共産党と、立憲民主党、国民民主党などの野党共闘は鍛え上げられ、一層深化しました。
2月13日の衆院本会議で安倍晋三首相が放った「(共産党の)暴力革命の方針に変更はない」との中傷に対する野党の対応は、共闘の深化を物語りました。
首相のデマ答弁に対し、志位委員長はすぐさま、党の正規の方針として「暴力革命の方針」をとったことはなく、首相の答弁がはるか以前の論戦で全面的に破綻したものであると反論しました。
デマ答弁翌日の野党国対委員長連絡会。首相のデマ答弁を、「いわれのない誹謗(ひぼう)中傷だ」と訴えた日本共産党の穀田恵二国対委員長に、立憲民主党の安住淳国対委員長は「(首相の)発言は極めて不適当だ。われわれも共産党と同じ認識だ」と応じ、国民民主党の原口一博国対委員長も「公党を何の根拠もなく誹謗中傷するなど、壊れている」と憤りました。そして安住氏は、自民党に抗議に向かう穀田氏に、自ら同行を申し出たのでした。
穀田氏はこの時を、「首相のデマ攻撃を民主主義の破壊ととらえ、野党が共同で対処することができた。気持ちのいい共闘だった」と振り返りました。



野党国対委員長連絡会。左から5人目は穀田氏=2月14日、国会内

#首相と対峙
共闘は、9条改憲に執念を燃やす安倍首相と対峙(たいじ)し、憲法審査会を自由討論1回のみにとどめ、自民党改憲案の提示を5国会連続で見送らせた点でも、その力が発揮されました。
コロナ禍に対する対処では、野党は連日、政調間の協議を重ね、対策を練り上げていきました。これが、政府・与野党連絡協議会を通して政府の政策に取り込まれていきました。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、国民一人ひとりがよって立つ社会のもろさ、日本の政治の貧困さを“見える化”しました。
「こんな社会でいいのか」「その声に応えられるのは誰か」―。その厳しい目線は野党にも向けられています。
201国会は安倍政権の“1強”状態のかげりを浮き彫りにしました。野党が示す政権構想が、今ほど待たれているときはありません。(おわり)(この連載は、国会取材団が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月27日付掲載


自民党の共産党への旧態依然の反共攻撃は通用しない時代になった。自民党に抗議に行く共産党のこくたさんに立憲民主党の安住さんが同行するって良い話しじゃないですか。
自民党改憲案の提示を5国会連続で見送らせたことも大きいですね。

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#通常国会150日の軌跡⑤ 憲法原則ふみにじる

2020-06-27 08:02:38 | 予算・税金・消費税・社会保障など
#通常国会150日の軌跡⑤ 憲法原則ふみにじる
通常国会で浮き彫りになったのは、憲法を踏みにじって恥じない安倍政権の姿勢です。

#検察に介入
憲法は、立法、行政、司法の三つを分立させることで、権力の乱用・集中を防いでいます。しかし、安倍政権は1月31日、黒川弘務東京高検検事長(当時)の定年を延長することを閣議決定。準司法官である検察官の人事に対する内閣の介入であり、三権分立の蹂躙(じゅうりん)そのものでした。
昨年秋以降、安倍政権を直撃する国政私物化や疑惑が相次ぎました。こうした疑惑や不正で、司法からの追及をいかに防ぐか―。これを目的に「官邸の守護神」と呼ばれた黒川氏の定年を延長し、検事総長に据えようとしたとの見方が広がりました。
しかも、安倍政権はこの閣議決定を後追いで正当化するために、内閣の判断で特例的に検察官の定年延長を可能とする検察庁法改定案を3月に国会に提出し、検察幹部人事に干渉・介入する仕組みの導入まで狙いました。
日本共産党は、政府が戦前の裁判所構成法に定年延長の趣旨があると主張したことに「(当時は)三権分立は不十分であり、なぜ裁判所構成法がもちだされたか。論立てが大間題だ」(藤野保史衆院議員)と批判。検察庁法改定案について、「検事長等の人事は官邸が握ると公言するようなもの」「こういう仕組みをつくること自体、疑惑隠しだと疑念をもたれる」(山添拓参院議員)と一貫して厳しく追及しました。
5月に入り、検察OBが検察庁法改定に反対する異例の意見書を森雅子法相に提出。さらに、政府の新型コロナ対策が後手後手を踏む中で、検察をも私物化しようとする「火事場泥棒」的な動きだとして、数百万ものツイッターデモが起こりました。市民の力と野党の追及によって、検察庁法改定案を廃案に追い込みました。次なる「黒川氏」を生まないためにも、定年延長の閣議決定そのものを撤回することが必要です。



検察庁法改定案に反対する意見書を発表する清水勇男・元最高検検事(左)と松尾邦弘・元検事総長=5月15日、東京・霞が関

#巨額予備費
安倍政権は、憲法の財政民主主義をも踏みにじりました。第2次補正予算に、同予算総額(約32兆円)の3分の1を占める10兆円もの巨額予備費を計上した問題です。
憲法83条は「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」と定めており、具体的にどの課目に、どれだけの予算をあてるかは、国会での審議・議決が必要です。
このため予備費はあくまで例外であり、歴代政権もその計上には抑制的でした。戦時中の1943年でさえ、政府が計上した予備費は予算全体の10・9%でした。
安倍政権は野党の追及に、「どのような事態にも対応できるようにするためだ」と言い逃れに終姶しました。
コロナ対策で迷走したあげく、疑惑まみれの安倍政権に巨額予備費を託していいのかという声が広がっています。国会には、閉会中も行政監視機能を果たすことが求められています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月26日付掲載


三権分立を冒す、内閣の判断で特例的に検察官の定年延長を可能とする検察庁法改定案。財政民主主義を踏みにじる巨額の予備費。
まさにモラルの崩壊が起こっています。
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新型コロナが問う 日本と世界 人間生活の土台強化を

2020-06-26 08:05:06 | 新型コロナウイルス
新型コロナが問う 日本と世界 人間生活の土台強化を
新型コロナウイルスの世界的な流行が示したものは何か。フランス文学・思想研究者で、EUの問題にも詳しい慶応大学名誉教授の堀茂樹さんに聞きました。
聞き手 西沢亨子 写真 橋爪拓治

フランス文学者 堀茂樹さん
ほり・しげき1952年生まれ。慶応大学名誉教授(フランス文学・思想)。翻訳家。
訳書に『悪童日記』『第三の嘘』ほか多数




今回のコロナ禍で痛感させられたのは、人間生活のインフラつまり土台が、いかに重要で、いかに損なわれてきたか、です。
まず自然環境。相次ぐ新しい感染症の発生は、人類の野放図な経済活動が森を壊し、自然を痛めつけてきたことの結果です。かつては人間が直接触れることのなかった森の奥の野生動物から、未知のウイルスが人間に感染する。
次に身体性。地球の文明生活が自然の上に成り立っているように、個人の思想や感情も身体という土台の上にあるということ。
同様に、われわれは社会的な存在でもあり、集団生活は公共性に支えられています。
自然、身体、公共をもう一度意識化し、その保全に十分なお金を注いで強くする必要があると思います。
それでどうするか。表面的な効率追求、ジャストインタイム(必要な物を必要な時にだけ取りそろえ在庫を極力減らす)的な、余裕のない社会の組織・運営をやめて正気を取り戻す、物事の本質を見つめなおす意識改革が必要です。ところが、それをやらせないのがいわゆる新自由主義ですね。日本でこれをひっぺがし、環境を保護し、疾病に備え、公共部門を強くするには、政権交代が不可欠です。

ここ25年ほど、教育や知的活動の分野にも新自由主義が入り込み、基礎をないがしろにし、由その研究、何の役に立つの」という近視眼的な考え方が広がりました。「グローバルに活躍する人材を」が決まり文句となり、公共や国の利益は軽視され、個人が国境を超えた市場で自己の最大利益を求める行動がよしとされ、そういう志向が育てられてきました。
このように新自由主義の人間観は功利的な個人主義で、グローバリズムと表裏一体です。これをしっかり乗り越えるには、国家主義にハマることなしに国家を再評価する必要があります。
グローバルとインターナショナルの区別が重要だと思うんです。インターナショナルというのは、ナショナルな(国の)枠組みが前提です。私は、民主主義社会を営むには、ある程度の国家意識は必要だと考えます。他国と自国の区別、外国人と日本人、つまり政治的権利・投票権を持つ人と持たない人の区別です。
これは民族とは違います。民族は血ですから閉じている。国民はそうではない。誰がその国のメンバーかは、ラグビーのナショナルチームのようにルールを決めて開放的にすることもできる。でも一定の時期に一定の枠がないと多数決もとれない。だから民主制を成立させるには国境が必要なんです。
そのうえで、ほかの国との境を壁でなくドアや窓にして、開けたり閉めたりしながら国際協力する。
これはあくまで政治的権利に関する話です。コロナの補償とかワクチン接種とかで住民を国籍のある、なしで区別するのは、もちろん論外です。
グローバリズムは、国家を弱体化させ、国民の概念を曖昧にします。そうすると国民の総意がぼやけてしまい、民主主義ができず、結局、超富裕層による寡頭政治になるのです。

EUの優等生イタリアの今
世界で一番、グローバル化している空間はEU(欧州連合)です。現在の超国家としてのEUには、各国の国民の民意が届かない。なので一部のエリートが牛耳る、民衆からかけ離れた一種の帝国になっています。
イタリアはEU委員会からすると優等生だったんですよ。予算削減の。医療体制も一番削られた。今回その結果を突き付けられた時に、EUから何の助けもなかった。ギリシャ等の南欧に緊縮を強いてきたドイツは、自国はちゃんと医療体制も確保してたんですね。
いまイタリアは相当怒っています。ユーロ(通貨)圏から抜けたい、EUから脱退したいという意見が世論調査で過半数を占めています。
フランスでも、フランス有数の工業をドイツやアメリカの資本から守ろうとしなかった新自由主義者のマクロン大統領に対して、マスク一つ作れない国になっていることへの批判が起きています。今月、『人民戦線』という論壇誌が出るのですが、これは、戦中戦後にドゴール派と共産党が連帯した一種の愛国戦線、「全国抵抗評議会」を模範に、左右が共同で公共を強くする方向を目指しており、私は注目しています。

弱者・民衆が勝つためには
いうまでもなく、国家があるのは国民のためです。
国家をひとり歩きさせるのではなく、民主的にコントロールしながら「国家を活用する自由」。これを生かさなかったら民衆に勝ち目はないですよ。「国家からの自由」としての人権擁護を言っているだけでは富裕層の天下です。民主主義の闘いで権力を握り、力関係を変更し、市場に介入してはじめて貧しい側が勝てるのです。
19世紀のフランスのジャーナリスト、ラコルデールの言葉を紹介します。「強者と弱者、金持ちと貧乏人、主人と従者の間では、自由が抑圧し、法律が解放する」
国家権力を背景とする法的規制は民衆の味方になり得るわけです。もちろん全部規制したら自由ではないわけで、そこは切り分けです。社会共通資本は公共でやるべきです。
野党の結築で政権を奪取し、竹中平蔵氏のお仲間、一握りのメンバーが実質的権力を行使する政治を完全に終わらせたいものですね。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月22日付掲載


新型コロナの危機のもと、効率優先、新自由主義を見直し、人々の命、生活、福祉を優先する政府、行政に転換することが求められています。
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