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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

パラダイス文書の衝撃④ 消える境界線 著名法律事務所が関与

2017-11-30 11:30:06 | 経済・産業・中小企業対策など
パラダイス文書の衝撃④ 消える境界線 著名法律事務所が関与
政治経済研究所 合田寛理事

「パラダイス文書」はスポーツ用品製造販売の多国籍企業ナイキ社の税逃れのしくみを明るみに出しています。ナイキ社の税逃れのしくみも、基本的にはアップル社と同様に、商標権などの知的財産権をタックスヘイブン(租税回避地)に移すことによって、利益を移転する方法をとってきました。
ナイキ社は、欧州本社のあるオランダ政府との取り決めで、2000年代半ばから10年間、ヨーロッパにおける販売収益をロイヤルティー(使用料)支払いの形で無税の英領バミューダ諸島に移転することを認められていました。スニーカーなど同社製品に使っている「スウッシュ」と呼ばれるロゴマークなどの商標権を、バミューダの子会社に置くことによって、利益をバミューダに移していました。
オランダ政府との間の取り決めの期限終了が近づいた14年、同社はこれまで通りの税の優遇を受ける方法について、同社のアドバイザーであった法律事務所べーカー・マッケンジーに相談を持ち掛けました。同法律事務所が提案した解決策は、「スウッシュ」などの商標権をバミューダから、新しいオランダ子会社「ナイキ・イノベート・CV」に移すことでした。



東京都渋谷区にあるナイキの店舗

課税権が及ぼず
オランダ税法では「CV(有限パートナーシップ)」によって得られた収益は、CVを所有するパートナーによって生み出されたものとみなされます。それがオランダ以外の国のパートナーであれば、オランダでは課税されません。つまりオランダCVを所有するオランダ国外の持ち株会社を設立すれば、オランダの課税権は及ばなくなります。他方で、オランダCVは他国では通常のオランダの企業とみなされることから、他国の課税権も及びません。こうして二重に非課税となります。
商標権をバミューダからオランダCVに移して以来、ナイキの税負担は下がり続け、海外利益は増え続けています。オランダCVの制度はナイキだけでなく、ウーバーなど多くの多国籍企業によって利用されています。

新枠組みを提供
アップル社にせよナイキ社にせよ、税逃れスキーム(枠組み)の再構築にあたって、新たなスキームを指南したのは、べーカー・マッケンジーという世界でもトップクラスの法律事務所であったことは注目すべきです。べーカー・マッケンジーはアメリカのシカゴ本拠を置き、世界47力国に77のオフィスを有し、4100人以上の法律家が所属しています。
べーカー・マッケンジーは経済協力開発機構(OECD)の公式諮問機関である経済産業諮問委員会(BIAC)にも所属し、これまでOECDの移転価格に関するガイドライン作成など、国際税制の構築に関しても、ロビー活動を通じて強い影響力を行使してきました。
「パラダイス文書」が明らかにしたオフショア(タックスヘイブン)世界の構造は、「オンショア」(タックスヘイブン以外)を代表する著名な法律事務所が、アップルビーなどという「オフショア」の法律事務所と共同して、多国籍企業や富裕者に対してさまざまな税逃れの仕組みを提供しているというものです。オンショア世界とオフショア世界を隔てる境界線はすでに消え、私たちの見えないところで実はつながっていたのです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年11月29日付掲載


タックスヘイブンを利用した税逃れを指南しているのは、巨大な法律事務所。
労働問題や遺産相続などに取り組んでいる普通の法律事務所とはわけが違いますね。
表の社会に出ている法律事務所が、裏社会をサポートしている。
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パラダイス文書の衝撃③ 税逃れ考案・指南 アナふさいでも別の穴

2017-11-29 10:25:05 | 経済・産業・中小企業対策など
パラダイス文書の衝撃③ 税逃れ考案・指南 アナふさいでも別の穴
政治経済研究所 合田寛理事

「パラダイス文書」はオフショア(タックスヘイブン)法律事務所「アップルビー」が、米国企業アップル社やナイキ社などの巨大多国籍企業に対して、税逃れのしくみを考案し、提供してきたことを具体的に明らかにしています。

安全地探し出し
アップル社の場合、アイルランドに設立した三つのペーパーカンパニー(幽霊会社)に、アメリカ大陸以外で上げた利益を移すことによって、どこの国からも課税されていないことが、2013年にアメリカ上院の調査小委員会によって明らかにされています。
この税逃れのしくみは二つのアイルランド子会社が重要な役割を担うことから「ダブル・アイリッシュ」と呼ばれ、アップル以外にもグーグル、フェイスブックなど多くの多国籍企業によって使われてきました。国際的な批判を受けたアイルランド政府は、14年、「ダブル・アイリッシュ」を20年末までに廃止することを決めました。
アイルランド政府のこの措置に対するアップル社の対応について、これまで必ずしも明らかではありませんでした。その疑問に答えたのが「パラダイス文書」です。
公表された文書は、以下のような事実を新たに明らかにしています。アップル社のアドバイザーは世界のトップ法律事務所ベーカー・マッケンジーでした。アップル社から相談を受けた同法律事務所はオフショア法律事務所のアップルビーに、アイルランド子会社をどこに移すべきかの検討を求めました。
その結果、アップルの二つのアイルランド子会社は、イギリスの王室属領で、法人税のないジャージー島に落ち着くことになりました。ジャージー島ならイギリスの銀行システムとの間に強いつながりがあり、欧州連合(EU)の規制も届かない安全地であると判断されたのです。



チヤネル諸島にあるジャージー島(ロイター)

新たな恩典利用
もう一つのアイルランド子会社は、引き続きアイルランドに残り、アイルランド政府が「ダブル・アイリッシュ」廃止と引き換えに創設した税の恩典を利用することにしました。それはアイルランドにパテント(特許権)などの知的財産権を移転する企業に、特別に税の控除を認めるというもの。この制度を利用することによって、アイルランドに残ったアップル子会社もごくわずかな税を支払うだけで済むことになりました。
アップル社はこうした税逃れのしくみを使って得た巨額の利益をオフショアにため込んでいます。アメリカ上院の公聴会が開かれた13年には1113億ドル(約12兆円)であったオフショア・キャッシュは、アップルの税逃れのしくみが再構築された14年以降も増え続け、現在は2523億ドル(約27・8兆円)に達しています。
「パラダイス文書」が新たに明らかにした事実は、アップル社のような多国籍企業は、これまでの税逃れのしくみがふさがれても、また別の税逃れの抜け穴を探し出すことを示しています。タックスヘイブンをなくさない限り、それは永遠に続きます。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年11月28日付掲載


ひとつのタックスヘイブンをふさいでも、また別のタックスヘイブンを見つけてくる。
いたちごっこですね。それぞれの国や地域の課税政策には介入できないとはいえ、いかにしてタックスヘイブンを無くしていくかが求められる。

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パラダイス文書の衝撃② 格差が格差呼ぶ 自動増幅メカニズム

2017-11-27 11:09:11 | 経済・産業・中小企業対策など
パラダイス文書の衝撃② 格差が格差呼ぶ 自動増幅メカニズム
政治経済研究所 合田寛理事

「パラダイス文書」はオフショア=タックスヘイブン(租税回避地)が、巨大多国籍企業や超富裕者など、選ばれた一部の特権者だけのための楽園(パラダイス)であることを明らかにしています。
その結果、オフショア=タックスヘイブンを利用できる人々と、そうでない人々との格差は開くばかりです。近年、特に顕著にみられる極端な富の格差の拡大の主因もそこにあります。

超富裕者が急増
「パラダイス文書」が公開されて間もなく発表された、クレディ・スイスの「世界ウェルス・リポート2017年」によれば、世紀の変わり目の2000年に、世界のトップ1%が所有する富は、全世帯の人々が保有する富の45・5%を占めましたが、現在は50・1%を占めています。特に5000万ドル(約55億円)超の資産を有する超富裕者の増加が著しく、この間に5倍に増えています。
「パラダイス文書」はいかにしてオフショア世界が、深い秘密のべールの下で、超富裕者や彼らが所有する巨大企業に対して、払うべき税を減らし、富をますます増やすために貢献しているかを明らかにしています。
たとえば「パラダイス文書」ではヘッジファンド(投機的投資組合)王、ジェームズ・シモンズ氏の例が紹介されています。氏は個人資産185億ドル(約2兆円)を保有し、フォーブズの世界長者番付で49位の超富裕者の一人です。シモンズ氏はヘッジファンド「ルネッサンス・テクノロジーズ」の創設者であり、その旗艦ファンドは年率40%の高収益をあげています。
一方、シモンズ氏および家族の資産はバミューダにあるいくつかのトラスト(信託)で管理されています。オフショア・トラスト(海外信託)は複雑な所有構造を持ち、富裕者が富を隠し、税を逃れる手段の一つです。タックスヘイブンでヘッジファンドを運営し、個人資産もオフショアのトラストで運用すれば、富は膨らむ一方です。



パラダイス文書に記載された米国のウィルバー・ロス商務長官(ロイター)

献金で権益擁護
またシモンズ氏は民主党への主要な献金者の一人ですが、同じ「ルネッサンス・テクノロジー」の運営者でシモンズ氏のビジネス・パートナーであるロバート・マーサー氏は、先の大統領選でトランプ氏への大口献金者でした。
このことはオフショアのファンド運営によって得られた巨額の収益が、アメリカの民主・共和両党への献金のための資金になっているということを意味しています。彼らの献金の目的は言うまでもなく、オフショア・ファンドの権益の擁護であり、ファンドを運営しているファンド・マネージャーおよびその家族の利益の保護であることは明らかです。
彼らの献金を受け政権についたトランプ大統領が、富裕者・企業減税のための税制改革案を提案しているのもまた当然のことです。オフショアが格差拡大を呼び、格差拡大がさらなる格差拡大の政策を招きます。オフショア世界では格差拡大を増幅する自動メカニズムが働いています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年11月25日付掲載


タックスヘイブンの擁護の政策を政府に求めるために献金をする。その行為にアメリカの商務長官自らが関わってる。
許せないことです。
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パラダイス文書の衝撃① 租税回避地 誰のための楽園か

2017-11-26 10:05:36 | 経済・産業・中小企業対策など
パラダイス文書の衝撃① 租税回避地 誰のための楽園か
政治経済研究所 合田寛理事

「パラダイス文書」の流出でタックスヘイブン(租税回避地)の秘密の一部があらわになり、世界に衝撃を与えています。税逃れの機構に詳しい政治経済研究所の合田寛(ごうだ・ひろし)理事に寄稿してもらいました。

英領バミューダ諸島に本拠を置く法律事務所などから流出した膨大な電子ファイルに基づく情報が、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)と各国の調査報道記者による約1年間の共同調査を経て、11月5日に一斉に公表されました。

豪華な顧客たち
「パラダイス文書」と名付けられたこの文書は、会社の内部文書、会計報告、Eメールなどさまざまな文書・資料からなり、合わせると昨年のパナマ文書を上回る1340万件という史上最大規模のリークです。
文書の出所は複数ありますが、最大の流出元はバミューダに本拠のある法律事務所「アップルビー」です。同法律事務所はバミューダのほか、ケイマン、ジャージー、マン島など世界の主なタックスヘイブンに事務所を持つ、いわゆるオフショア法律事務所の一つです。オフショア法律事務所はその名が示すように、顧客に対し、タックスヘイブンでペーパーカンパニー(幽霊会社)の設立や架空の所有者を提供したり、秘密の取引を可能にすることを主な業務とする法律事務所です。
「アップルビー」は設立以来120年の歴史を有し、この世界では名のある最大規模のオフショア法律事務所であり、「オフショア・マジック・サークル(オフショア魔術団)」の中心メンバーとされています。
今回公表された「パラダイス文書」の特徴は、文書の分量の多さばかりではありません。一見して驚くのは「アップルビー」の顧客の豪華な顔触れです。シティバンクなど多くのメガバンクやナイキ、アップルなどの多国籍企業のほか、王族、政府首脳、超富裕者、ハリウッドスター、著名スポーツ選手などが名を連ねています。



英国のエリザベス女王(ロイター)

多数の隠れみの
なかでもイギリスのエリザベス女王の個人資産がケイマン諸島に設立されたファンドで運用されていたことは注目されます。女王だけではありません。チャールズ皇太子もバミューダのペーパーカンパニーを通じて、個人所有の不動産をひそかに購入していることが明らかになっています。
またトランプ米政権の商務長官であり、巨万の投資家として知られる、ウィルバー・ロス氏も「アップルビー」の古くからの顧客でした。「アップルビー」はロス氏のために、ケイマン諸島に多数のペーパーカンパニーをつくり、彼はそれらのペーパーカンパニーを隠れみのにして、大臣就任時におもてむき手放した船会社「ナビゲーター社」を、実質的に所有し続けていました。「ナビゲーター社」は経済制裁対象となっていたロシアのプーチン大統領の親族企業「シバー社」との契約で巨額の利益をあげていました。
「パラダイス文書」と名付けられたこの文書が描き出している世界は、権力者、超富裕者または超セレブだけが利用できる秘密の楽園(パラダイス)であり、彼らにそのためのサービスを提供して栄える特殊なビジネスの姿です。(つづく)(5回連載です)

【オフショア】
原義では「沖合」を意味し、本土の沿岸から遠く離れた地域(海外)をいいます。金融用語では、非居住者(外国人)に対して規制を優遇する国・地域を指します。税の側面からタックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれる国・地域とほぼ重なり、タックスヘイブンの別名と理解されています。オフショア=タックスヘイブンを主要拠点とする法律事務所をオフショア事務所と呼び、それ以外をオンショア事務所と呼びます。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年11月24日付掲載


租税回避地の新たな暴露文書、その名も「パラダイス(楽園)文書」。以前もそうでしたが、表社会で活躍しているそうそうたる人々の名が。
新しい「オフシェア」って用語もでてきました。

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COP23 本流と逆流④ 気候問題 “周回遅れ”日本の政策

2017-11-25 07:13:30 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
COP23 本流と逆流④ 気候問題 “周回遅れ”日本の政策

「今回のCOPで、日本が拍手喝采を浴びたり、ポジティブに話題にされたりすることがあったでしょうか」
環境NGO気候ネットワークの伊与田昌慶研究員はそう語ります。

石炭火力を促進
“周回遅れぶり”が目立つ日本の政策。COP開催中は、世界の流れから逆行する態度を見せました。
日本は6日、途上国での石炭火力と原発の技術を促進・展開する覚書を米国と交わしました。
14日には、日本の国際協力銀行(JBIC)が、地元住民らの反対が続くインドネシアの石炭火力発電所建設(丸紅などが出資)を対象にした初回の融資貸し付け(契約額は7億3100万㎡)に踏み切りました。
これらの行動は、市民社会の参加者から厳しい非難を受けました。



日本の海外での石炭投資に抗議する参加者=11月10日、ドイツ・ボン(岡本あゆ撮影)

再生エネ触れず
公益財団法人・自然エネルギー財団の大野輝之常務理事はCOPの空気について「2050年までに再生可能エネルギー100%を実現するのは当然という感じ」と話します。しかし、日本はCOP会場で再生可能エネルギーについてほとんど触れず、本筋を外れた議論に終始しました。
日本政府は、COPで「日本の気候変動対策イニシアティブ2017」(環境省)を打ち出し、「我が国のイノベーション技術」を発信したとします。
しかし、同イニシアティブは、「低炭素技術のイノベーションと普及促進」の項を設けながら、再生可能エネルギーについて一切触れていません。米国と交わしたエネルギーに関する覚書でも、再生可能エネルギーについての言及は1カ所もありません。
現在、日本は2030年までに温室効果ガスを18%削減(1990年比)という目標です。CASA(地球環境市民会議)専務理事の早川光俊弁護士は、「EUの40%削減目標などと比べると、かなり低い」と指摘します。
ツバルのエネレ・ソボアンガ首相は、日本の石炭火力推進について聞かれ、「ツバルは日本の良い友人だ。そうでありつづける」と笑いながら、「持続可能な発展の点では、懸念もある。日本は緊急の行動を起こして地球を救うのか。それともあきらめるのか」と問いかけました。
石炭火力・原子力に固執し続けるのか、再生可能エネルギーへの移行を含む積極的な気候変動対策か。日本の政策が問われます。(おわり)
(この連載は、伊藤寿庸、岡本あゆが担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年11月24日付掲載


化石燃料を全く使わずに、発電や暖房や冷房、電車や自動車やバイクなどの移動手段を動かす。
もちろん原発は論外ですが、2050年までに可能になる技術を人類は手に入れる。

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