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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

職場のトラブルQ&A⑩ 上司が一方的に「辞めてくれないか」と 「退職しません」とまず伝える

2019-04-30 13:58:50 | 職場のトラブルQ&A
職場のトラブルQ&A⑩ 上司が一方的に「辞めてくれないか」と 「退職しません」とまず伝える
今回は「退職勧奨」に関する相談です。会社の上司から、「辞めてくれないか」と言われるケースです。労働者に応じる義務はありません。辞める意思がない場合は、そのことを明確に伝えることが大切です。

Q 私は、期間の定めのない労働契約で医療機器販売の仕事をしています。先日、上司から「会社の業績が不振だ。君にやってもらう仕事がなくなりそうだから、辞めてくれないか」と言われました。家族や生活もありますので、辞めるわけにはいきません。私は会社を辞めなければならないのでしょうか。




A いいえ、そんなことはありません。あなたは会社を辞める必要はありません。辞めるつもりがないのであれば、そのことをはっきり上司に伝えてください。
会社側は、退職勧奨を原則として自由に行うことができるとされています。しかし退職を強要することはできません。
中には、退職には応じないと伝えているのに執拗(しつよう)に退職を求め続けるケースもあります。
その回数、時間、態様(威圧的、半強制的、人格攻撃・暴言・脅し・いやがらせを伴うなど)に照らして、社会的相当性を逸脱した手段・方法によるものは、退職強要として、不法行為や債務不履行(安全配慮義務違反)となり、使用者の損害賠償責任が生じることとなります。
退職強要により退職の意思表示をしてしまった場合には、その意思表示が無効または取消の対象となることがあります。
労働者の損害賠償請求が認められた裁判例(慰謝料30万円)もあります。
労働者が退職には応じない意思を示したにもかかわらず、会社側が「退職しなければ解雇する」などと言いながら5回(1回1~2時間)にわたり面談で退職を求めた結果、労働者のメンタルヘルス障害が悪化したというケースです。
判決は会社の行為が「労働者の退職に関する自己決定権を侵害する違法な退職勧奨だった」と結論付けました。(京都地裁2014年2月27日判決)
このような争いになることもありますので、退職勧奨が行われる際には、会社側の発言を記録(録音、メモなど)しておくことが重要です。




退職に応じない場合に会社が解雇(=使用者側からの一方的な労働契約の解約)をしてくるかどうかという問題があります。
しかし解雇は法律上、「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる場合」にのみ有効です。そうでない場合は権利の乱用として無効となります。(労働契約法16条)
会社にとってハードルは高く、簡単には行えません。
業績不振を理由とする場合でも、「整理解雇の4要件」(経営上の必要性があるか、解雇を回避する努力を尽くしたか、人選に合理性があるか、十分な協議交渉が行われたか)に照らして、その是非が吟味されることになります。やはり、容易ではないといえるでしょう。
今村幸次郎(弁護士)

「しんぶん赤旗」日曜版 2019年4月14日付掲載


労働者の解雇はよほどの事がない限り出来ない事になっています。「整理解雇の4要件」(経営上の必要性があるか、解雇を回避する努力を尽くしたか、人選に合理性があるか、十分な協議交渉が行われたか)です。
一人でも入れる労働組合や労働基準局に相談して、自信をもって闘いましょう。

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職場のトラブルQ&A⑨ 「後任いない」と退職届を受け取らない 無期契約なら通告だけで解約

2019-04-29 14:34:46 | 職場のトラブルQ&A
職場のトラブルQ&A⑨ 「後任いない」と退職届を受け取らない 無期契約なら通告だけで解約
今回は、退職(辞職)をめぐるトラブルを取り上げます。近年、労働者が退職届を提出しようと思っても、使用者がこれを受け取らず辞めさせてもらえないといったトラブルが増えています。しかし憲法は、職業選択の自由(憲法22条)を保障します。労働者の退職は原則として自由です。

 私は、期間の定めのない労働契約により運送業の会社で働いていました。しかし、仕事がきついので転職しようと思って、昨日(3月20日)、4月30日をもって退職するとの退職届を社長に提出しました。すると、社長は、「後任がいないのに辞められては困る」と言って退職届を受け取りませんでした。私は辞めることができないのでしょうか。

 いいえ、あなたは会社を辞めることができます。期間の定めのない労働契約の場合、労働者は、一定の期間を置いて申し入れをすれば、労働契約を解約できることになっています。(民法627条)
会社の就業規則では、退職は30日前までに申し出ることとなっていますので、30日以上の期間を置いて、4月30日をもって退職するとの申し出は、他の事情にかかわらず有効です。
4月30日付で退職することを明記した書面を内容証明郵便で会社(社長)宛に送付するとよいと思います。そうすれば、4月30日をもって、会社を辞めることができます。




使用者(会社)にとって不都合な時期に労働者が退職したため、会社が損害を被ったとして損害賠償を請求したり、損害賠償請求をすると通告したりするような事例もみられます。
しかし労働者には退職の自由があり、また、辞めることで賠償の対象となるような損害が生じるとは考えにくいと思います。
労働者が退職した際に「十分な引き継ぎの期間がなかった」などとして、使用者側が損害賠償を求めたケースで、損害の発生が否定された裁判例もあります。(横浜地裁2017年3月30日判決)
また、ボーナスを払う際に「1年以内に自らの意思で退職した場合は全額返還する」との約束をし、7カ月後に退職した労働者に対して使用者がその返還を求めたケースもありました。
しかし、そのような約束は、労基法上の強制労働の禁止(労基法5条)、賠償予定の禁止(同法16条)に反し、無効とされています。(東京地裁03年3月31日判決)
なお、期間の定めのある労働契約の場合は、労働者は、やむを得ない事情があるときに限り、契約期間中での解約(退職)ができることになっています(民法628条)。例えば、労働者が病気や事故などによって長期間働けない場合、使用者の賃金未払いや労基法違反により働くのが困難な場合などです。
また、1年を超える契約期間を定めた場合、契約期間の初日から1年を経過した日以降は、原則として、いつでも退職できることになっています。(労基法附則137条)
今村幸次郎(弁護士)

「しんぶん赤旗」日曜版 2019年4月7日付掲載


会社にとっては辞めてもらっては困る労働者もいます。しかし、労働者の側からすると、どんな仕事を選ぶかは労働者の権利です。
一般的には1か月前の「退職届け」で辞めることができます。仕事の引継ぎが必要な場合でも何カ月も引き延ばせないように交渉しましょう。
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職場のトラブルQ&A⑧ 「年休なんか取り下げろ」と上司が指示 自分が決めた日に取っていい

2019-04-28 13:52:51 | 職場のトラブルQ&A
職場のトラブルQ&A⑧ 「年休なんか取り下げろ」と上司が指示 自分が決めた日に取っていい
今回は、年次有給休暇(年休)に関する相談を取り上げます。労働基準法上、労働者は、休日のほかに毎年一定日数の休暇を有給で取得できるようになっています。労働者にとって大事な権利ですが、わが国では、その取得率が低いのが現状です。ぜひ、有意義に活用するようにしてください。

 IT系の会社に入社して7カ月継続して働いてきました。入社以来、決まった労働日はすべて休まず勤務しました。そこで、先日、上司に2日間の年休取得を申請したところ、「年休なんか取ったら評価が下がるから取り下げろ」と言われました。私は年休をあきらめなければいけないのでしょうか。

 いいえ、そんなことはありません。あなたは、自分で指定した日に年休を取ることがで
年休は、「労働者が6カ月間続けて勤務し、全労働日の8割以上働く」という要件を満たせば、他の事情にかかわらず発生する権利です。
使用者(会社)は、「労働者が求めた時季に」これを与えなければなりません(労基法39条)。勤続6カ月の場合は、合計年間10日です。この日数は、勤続が1年増えるごとに増えていき、最大は20日です。(図表①)



※労働日数が週1~3日または年48~168日の場合も、日数に応じて年休が与えられます。

これは法律上の権利ですので、会社にその制度がなくても行使できます。
フルタイムの労働者だけではありません。週の勤務日数が4日以下で労働時間が週30時間未満のパートタイム労働者や、年間の勤務日数が216日以下の労働者にも、その働く日数に応じて年休が与えられることになっています(労基則24条の3)。活用しましょう。(図表②)
労働者が、休暇日数の範囲内で休みの始めと終わりを特定して年休を申請すれば、年休が成立します。つまり、その日の分の賃金を失うことなく会社を休むことができます。
会社側には、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限定して、休暇の時季を変更する権利があるだけです。
あなたの上司がいう「評価が下がる」というようなことは、「事業の正常な運営を妨げる場合」にはあたりません。
また、年休を取った労働者に対して、賃金を減額するなどの不利益な扱いをすることは禁止されています(労基法附則136条)。「年休を取ったら評価を下げる」ことも許されません。
年休の申請に対して、「年休取得は望ましくない」などと言って取り下げさせた上司の行為について、不法行為が成立するとして慰謝料(60万円)が認められた裁判例(大阪高裁2012年4月6日判決)もあります。
なお、働き方改革一括法により今年の4月から、「年休義務化」が導入されました。年10日以上の年休が与えられた労働者について、うち年5日を「会社側が時季を指定して休ませる」ことが必要です。すでに5日以上の年休を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定は不要です。詳しくは厚生労働省のHPなどをご参照ください。
今村幸次郎(弁護士)

「しんぶん赤旗」日曜版 2019年3月31日付掲載


「年次有給休暇」は、労働者が自分が希望する日にちに取得することができる権利です。
「年休取得義務化」によって会社の方が時季を指定して休ませることができますが、それを悪用して会社の都合の日にちに休ませる(夏季休暇や年末年始の休暇を年休扱い)などは許されません。


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職場のトラブルQ&A⑦ 「固定給に残業代込み」っていいの? 事前に明示なければ問題あり

2019-04-27 07:55:38 | 職場のトラブルQ&A
職場のトラブルQ&A⑦ 「固定給に残業代込み」っていいの? 事前に明示なければ問題あり
今回は、よく労使紛争の原因となっている「固定残業代」の相談を取り上げます。募集、採用時の労働条件の説明にもからむ問題です。就職や転職をする場合には、賃金や労働時間などの重要な労働条件については、十分に確認しておきたいものです。

 固定給月額25万円という条件で、営業の仕事に転職しました。最初から仕事が忙しく、残業時間は月40時間になりました。ところがもらった給料は25万円(基本給20万円十営業手当5万円)だけでした。社長に確認したら、「うちの営業手当は残業代込みだから、それ以外に残業代を支払う必要はない」と言われました。そんな話は聞いていませんでしたが、残業代はもらえないのでしょうか。

 いいえ、そんなことはありません。あなたは残業代を請求できます。
確かに、法律上必要とされる時間外割増賃金(残業代、労基法37条)の支払いに代えて一定額の手当を支給することや、基本給の中に割増賃金を組み込んで支給することはありえます。(このような方法で支払われる残業代を固定残業代と呼んでいます)
しかし、こうした固定残業代が有効となるのは、①雇用契約で、残業代がこのような形で支払われるものとされていること、②通常の労働時間の賃金と残業代とが明確に区分されていること―が必要です。
またその場合でも、③固定残業代が「法で定める残業代の計算方法による額」を下回る時は、その差額がきちんと支払われなければなりません。
あなたの場合、営業手当5万円が固定残業代であることを事前に聞いていません。また、就業規則などにもそれが明記されていないのですから、これを残業代の支払いとみなすことはできません。
月の所定労働時間を160時間とすると、あなたは、25万円を基礎賃金として、約7万8000円(25万円÷160時間×1.25×40時間)の残業代を請求できます。会社が支払いに応じない場合は労働組合に相談するか、会社の所在地を担当する労働基準監督署に申告してください。



2018年1月1日付の職安法改正を解説する厚労省のパンフレット「労働者を募集する企業の皆様へ」
↑クリックすると別画面で開きます。

最近、高額の固定残業代を基本給に組み込み、賃金額を高く見せかけて入社させるケースがあります。実際には、長時間残業しても基本給しか支払わないといったトラブルも増えています。
会社が労働者を募集する場合、次の事項を明示しなければならないとされています。(職業安定法5条の3、職業安定法施行規則4条の2)
それは業務の内容、労働契約の期間、働く場所、始業と終業の時刻、残業の有無、休憩時間・休日、賃金に関する事項です。
これらに加えて、固定残業代制をとる場合には固定残業時間と金額、固定残業代を除いた基本給額なども明示する事項になりました。(18年1月の指針改正)
入社後にトラブルとならないためにも、賃金、労働時間、業務内容、契約期間などの重要な労働条件については、しっかり確認するようにしてください。
今村幸次郎(弁護士)

「しんぶん赤旗」日曜版 2019年3月24日付掲載


「固定残業代」として一定金額があらかじめ支給されている場合でも。その「固定残業代」に相当する残業時間を上回って働いた場合は、その分を請求できるって事。
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職場のトラブルQ&A⑥ 「バイトに残業代出るわけないだろ」!? 社員と同様に割増賃金の対象

2019-04-26 15:53:03 | 職場のトラブルQ&A
職場のトラブルQ&A⑥ 「バイトに残業代出るわけないだろ」!? 社員と同様に割増賃金の対象
今回は、ブラックバイトの相談を取り上げます。ブラック企業のアルバイト版です。「高すぎる学費」のためにアルバイトをする学生が急増していますが、知識不足や立場の弱さに付け込む形で、残業代未払い、長時間労働、過酷労働、パワハラなどが横行しています。

Q 都内の大学2年生です。先月から飲食店でアルバイトを始めました。出勤は週2日、勤務時間は午後1時から夜7時まで、時給1000円の約束でした。けれども、働き始めると店主から、毎回のように「今日は混んでいるから残ってくれ」などと言われ、閉店時間(夜11時)まで働かされました(10時間労働)。しかし、もらった給料をみると残業代が支払われていませんでした。店主に「残業代はつかないのですか」と聞いたら、「アルバイトに残業代なんかあるわけないだろ」と言われました。これって本当ですか。

A いいえ、そんなことはありません。アルバイトも労働ですから、当然、労働基準法の適用があります。労基法は、1週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないとしています(32条)。それを超えて働かせた場合、その超えた時間について、通常賃金を25%割り増しした時間外割増賃金(=残業代)を支払わなければならないこと(37条1項)なども定めています。このケースでは、夜9時以降働いた分は割増賃金の対象になります。
さらに、あなたは夜10時以降も働いています。その部分については、深夜業(夜10時から朝5時までの労働)の割増賃金(通常賃金の25%割り増し)も別に支払われます。(労基法37条4項)あなたの場合、夜10時から11時までの時間は、時間外労働と深夜業が重なっていますので、この部分については50%の割増賃金が支払われることになります。(表)




3種類の割増賃金と割増率
種類支払う条件割増率
時間外
時間外手当
残業手当
法定労働時間(1日8時間・40時間)を超えたとき25%以上
時間外労働が限度時間(1カ月45時間、1年360時間など)を超えたとき25%以上
時間外労働が1カ月60時間を超えた時
※中小企業は当分の間、適用猶予
50%以上
休日
休日手当
法定休日(週1日)に勤務させたとき35%以上
深夜
深夜手当
22時から5時までの間に勤務させたとき25%以上


こうした時間外労働や深夜業に対する割増賃金は、法律の定めです。雇用者は、特に取り決めがなくても、働かせた以上は当然、支払い義務を負います。
違反した場合には罰則もあります。(6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金、労基法119条1号)
実際に働いた時間をもとに時間外割増賃金と深夜業割増賃金を計算して、店主に請求してください。
店主が応じない場合は、地域の労働組合に相談するか、お店の所在地を担当する労働基準監督署に申告すればよいと思います(厚労省・全国の労働基準監督署の所在案内)。残業代未払いが確認されれば、監督官が、店主に是正勧告を出してくれます。
残業代の相談や請求をする場合は、証拠が重要です。労働契約書、給料明細書、勤務シフト、タイムカードのコピーなどの証拠を集めておいてください。
実際に働いた時間の証拠としては、タイムカードのほか、入退室記録、メールの送受信記録などが考えられます。手帳や日記に自分でつけた始・終業時刻のメモも証拠になり得ます。
今村幸次郎(弁護士)

「しんぶん赤旗」日曜版 2019年3月17日付掲載


アルバイトでも1日8時間以上働いた場合は割増賃金。深夜や休日働いた場合も割増賃金。
加算されていない場合はシッカリ請求しよう。

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