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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

命救う住まい(下) 国の脆弱な住宅政策 兵庫・尼崎の住環境支援事業調査 追手門学院大学准教授 葛西リサさんに聞く

2024-07-21 07:17:31 | 政治・社会問題について
命救う住まい(下) 国の脆弱な住宅政策 兵庫・尼崎の住環境支援事業調査 追手門学院大学准教授 葛西リサさんに聞く

住まいに窮する人たちが増えるなか、住宅施策はどうあるべきなのか。兵庫県尼崎市の「REHUL(リーフル)」事業の調査をした追手門学院大学の葛西リサ准教授に聞きました。



日本の住宅政策は長年、持ち家、中流以上の家族を基準とし、支援の対象としてきました。世帯のあり方が多様化するなか、多くの人たちが支援の対象から外れています。
セーフティーネット(安全網)である公営住宅は、全住宅の3・6%しかありません。供給戸数が減るなか、応募倍率は高止まりしています。総務省の調査によると、2~5倍という団地がもっとも多く、100倍以上というものもあります。地理的な偏りもあります。また、多くの自治体は若年単身者の入居を認めていません。
民間賃貸住宅は公営住宅に比べると家賃は高く、低所得世帯ほど負担が重くなります。
不動産業者は、収入が低い人や不安定な人を「リスク」とみなし、入居を拒みます。ひとり親、高齢者、若年者、外国人といった人たちの多くは困窮し、住まいを失いかけても、国にも不動産市場にも救ってもらえない、というのが現状です。



「リーフル」事業に活用している市営団地=兵庫県尼崎市

活気戻った例も
「リーフル」は、「政策空き家」の「目的外使用」という国の制度を使ったものです。尼崎市が全国に先駆けて始めました。市営住宅のうち、建て替えが決まり、募集を停止した住戸のなかから、状態の良い空き家を期間限定で貸し出します。
募集停止をすると、若い人や体力がある人は次の住まいに移っていき、高齢者が残るというのが大きな特徴です。尼崎市としては、地域が荒廃していくなか、今の居住者をどう支援し、救済するかが狙いでした。
参加団体には自治会参加を条件としました。イベントにも積極的に声をかけ、新旧の居住者の交流を重視したことで活気を取り戻しつつある団地もあります。
「政策空き家」は全国で約20万戸あります。他県からも注目される「リーフル」ですが、普遍化し、全国に広げるには乗り越える課題もあります。

誰が中心担うか
最大は、中心の役割を誰が担うのかです。「リーフル」は「コープこうべ」が中心となり、ほぼ無償で、団体選びから日々の運営まで、きめ細かく行っています。もうけ主義で参入する団体もあるでしょう。貧困ビジネスをどう排除するのかも課題です。
さらに政策空き家の「目的外使用」という仕組みは、期間限定の事業であり、入居者にとっても一時利用です。居住権の保障が難しいという点もあります。
本来は公営住宅に住む権利のある人たちを、こうした仕組みで支えざるを得ないという、日本の住宅政策の脆弱(ぜいじゃく)性に目を向けるべきでしょう。
住まいは命を支える基盤です。コロナ禍以降、住まいの貧困は多様化、深刻化しています。尼崎市とコープこうべの挑戦に注目しています。(芦川章子)(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月19日付掲載


日本の住宅政策は長年、持ち家、中流以上の家族を基準とし、支援の対象としてきた。世帯のあり方が多様化するなか、多くの人たちが支援の対象から外れています。
セーフティーネット(安全網)である公営住宅は、全住宅の3・6%しかありません。
「リーフル」は、「政策空き家」の「目的外使用」という国の制度を使ったもの。尼崎市が全国に先駆けて始めました。市営住宅のうち、建て替えが決まり、募集を停止した住戸のなかから、状態の良い空き家を期間限定で貸し出します。
最大は、中心の役割を誰が担うのかです。「リーフル」は「コープこうべ」が中心となり、ほぼ無償で、団体選びから日々の運営まで、きめ細かく行っています。
「政策空き家(空家になっても募集しない)」は神戸市もあります。尼崎の住宅の様に、エレベーターの無い5階建てまでの住宅です。神戸市も、尼崎市に見習って、地元「コープこうべ」と協力して、本当に必要な人に貸し出してはいかがかな。
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命救う住まい(上) DVから逃れ心身も安定 兵庫・尼崎 住環境支援事業

2024-07-20 07:55:02 | 政治・社会問題について
命救う住まい(上) DVから逃れ心身も安定 兵庫・尼崎 住環境支援事業

貧困が広がるなか「居住の権利」が脅かされる人たちが増えています。困窮者支援として、自治会支援として、専門家や支援団体から注目を集めている兵庫県尼崎市の事業「REHUL(リーフル)」。スタートから3年目を迎えました。



「ここがなかったら逃げられなかった。思い切って連絡して、本当によかった」
夫のDV(家庭内暴力)から逃れ、他県から引っ越してきた40代の女性は穏やかな表信で語ります。尼崎市の市営団地の一室で生活しています。
夫の暴力と支配は長年続きました。抜け出す方法が分からないまま、耐えるだけ。人生を取り戻すきっかけは、同市の住環境支援事業「リーフル」を紹介する報道でした。
女性は「わらをもつかむ思い」で電話をかけました。「リーフル」経由で住まいはすぐに見つかりました。リーフル事務局の担当者は同時に、DV被害者の支援団体に協力を求めました。
今、子どもたちは市内の学校に通い、女性は心身の安定を取り戻しつつあります。団地の高齢者とも日常的に言葉を交わします。「これ、食べて」。おすそわけをもらい、お互いの健康も気にかけ合います。



「リーフル」事業で貸し出している市営団地の一室。母子の居場所事業にも活用されています=兵庫県尼崎市

市営住宅安価で
「リーフル」は、市と生活協同組合「コープこうべ」が連携し、2022年4月、始まりました。建て替え予定で、新規入居を停止した市営住宅を安価で提供する事業です。「コープこうべ」が窓口になり、ネットワークに参加する支援団体に空き家を貸し出します。3月末現在、20団体に約50戸を提供しています。
市が団体へ貸し出す使用料は1戸あたり月6500円。修繕費などは団体持ちです。居住者は団体に利用料を支払います。
ひとり親、DV被害者、障害者、外国人、ホームレスの人たち…。団体が支援する人は多岐にわたります。利用料は団体により異なりますが、月1万~3万円。「営利目的にならない範囲」(市担当者)にとどめています。
市が「リーフル」を始めた背景には、別の事情もありました。
都市整備局住宅部住宅管理担当の秋岡修司課長は「10年前からの募集停止で新しい人が入らなくなり、入居者の高齢化が進み、草刈りや清掃、団地の管理維持も難しくなっていた」と振り返ります。1人あたりの自治会費や共益費の負担も重くなるばかりでした。
「リーフル」を始めたことで入居者が増え、年齢も多様に。祭りやもちつきなどのイベントが復活した自治会もあります。
「リーフル」を利用する一般社団法人「オフィスひと房の葡萄」の赤井郁夫代表理事は「本当に助かっている」といいます。子どもの居場所、若者の自立支援シェアハウスなどを手がけています。活動資金は寄付頼み。家賃を抑えることで、支援の幅は「ぐっと広がった」と話します。

支援団体の悩み
「リーフル」の立ち上げから中心を担う「コープこうべ」の前田裕保・第1地区本部本部長は、住宅困窮者に提供できる部屋が圧倒的に足らず、多くの支援団体が悩んでいることを知っていました。
「困っている人に、いかに迅速に住まいを提供できるか。『即、入居』が命を救う。同時に部屋を貸して終わりではなく、継続した支援を地域につなぐ。
この事業が“住まい”のあり方を考える先導になればと思います」
次回は、国の脆弱(ぜいじゃく)な住宅政策や事業の課題について、追手門学院大学の葛西リサ准教授の話を紹介します。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月18日付掲載


女性は「わらをもつかむ思い」で電話をかけました。「リーフル」経由で住まいはすぐに見つかりました。リーフル事務局の担当者は同時に、DV被害者の支援団体に協力を求めました。
今、子どもたちは市内の学校に通い、女性は心身の安定を取り戻しつつあります。
「リーフル」は、市と生活協同組合「コープこうべ」が連携し、2022年4月、始まりました。建て替え予定で、新規入居を停止した市営住宅を安価で提供する事業。
「リーフル」を始めたことで入居者が増え、年齢も多様に。祭りやもちつきなどのイベントが復活した自治会も。「リーフル」を利用する一般社団法人「オフィスひと房の葡萄」の赤井郁夫代表理事は「本当に助かっている」といいます。
「困っている人に、いかに迅速に住まいを提供できるか。『即、入居』が命を救う。同時に部屋を貸して終わりではなく、継続した支援を地域につなぐ。
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「骨太の方針」を読む④ 原発/PPP・PFI 再稼働へ危険な転換

2024-07-12 07:07:43 | 政治・社会問題について
「骨太の方針」を読む④ 原発/PPP・PFI 再稼働へ危険な転換

「骨太の方針」は原子力発電について、「原子炉の再稼働を進める」「次世代革新炉の開発・建設」などと明記しています。岸田文雄政権は2023年の通常国会で原子力基本法等を改定しました。
福島原発事故を契機に「原発依存度を低減する」としてきた従来方針を「原発推進」へ大転換し、原発の運転期間「原則40年」のルールを60年超としたことなどが背景にあります。老朽原発を再稼働して酷使するのは極めて危険です。
東京電力福島第1原発事故から13年たちますが、原子力緊急事態宣言は解除の見通しが立っておらず、溶け落ちた核燃料(デブリ)の状態は未解明。避難生活を余儀なくされた被害者への賠償や補償は不十分で、未除染の土地も多いなかでの再稼働は、原発ゼロを望む国民多数の思いを踏みにじるものです。
岸田首相は6月21日の会見で、次世代型原子炉といわれるSMR(小型モジュール炉)の研究開発、実装を検討すると明言しました。しかし、SMRは実用化しておらず、「小型」と装いを新たにしてもコストは高く、事故リスクは避けられず、核廃棄物の処分の見通しさえ全くありません。
元日に起きた能登半島地震では、北陸電力志賀原発(石川県)で変圧器が壊れて外部電源の一部を失うなど深刻なトラブルが続出し、現行の避難計画が机上の空論であることも浮き彫りになりました。
世界有数の地震・津波国の日本で、原発の稼働はあまりにも無謀です。原発優先政策を転換し、大きな雇用効果が見込まれ、地域経済の活性化にもつながる再生可能エネルギーの普及こそ最優先すべきです。




民間への移譲
「骨太の方針」は、官民連携や公的部門の民間移譲、民営化による自治体経営の効率化を進めるPPP/PFIについて「更に推進する」と明記。ウォーターPPPや空港、スタジアム・アリーナを重視して進めるとしています。PPP(Public Private Partnership=官民連携)とは、公共サービスを民間事業者の資金やノウハウで行う手法で、PFI(Private Finance Initiative)は民間資金やノウハウを活用し、公共施設や道路、鉄道・水道などの大規模事業を、企画から建設・運用まで民間委託する手法の一つです。
新自由主義的な「小さな政府」「企業参入規制の緩和」を進める考え方に基づいており、この制度の活用により、各地で学校、水道、公営住宅などの再編・統廃合や、都市公園の樹木伐採を伴う民営化などが進んでいます。
「ウォーターPPP」は、上下水道、工業用水道の公共事業に官民一体となって取り組む手法で、政府は今後10年で225件とする目標を示していますが、水道事業の民営化反対の世論を恐れ、説明方法を変えたにすぎません。

公営堅持こそ
海外では300超の自治体で一度民営化した水道を再公営化しています。フランスのパリ市は、2倍以上に値上がりした水道料金や水質悪化、不透明な経営問題が噴出し再公営化に至りました。
命の水の安心・安全を守るためには公営を堅持すべきです。
(おわり。この連載は島田勇登、土屋知紀、森糸信が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月11日付掲載


岸田首相は6月21日の会見で、次世代型原子炉といわれるSMR(小型モジュール炉)の研究開発、実装を検討すると明言。しかし、SMRは実用化しておらず、「小型」と装いを新たにしてもコストは高く、事故リスクは避けられず、核廃棄物の処分の見通しさえ全くありません。
「骨太の方針」は、官民連携や公的部門の民間移譲、民営化による自治体経営の効率化を進めるPPP/PFIについて「更に推進する」と明記。
PPP(Public Private Partnership=官民連携)とは、公共サービスを民間事業者の資金やノウハウで行う手法で、PFI(Private Finance Initiative)は民間資金やノウハウを活用し、公共施設や道路、鉄道・水道などの大規模事業を、企画から建設・運用まで民間委託する手法の一つ。
海外では300超の自治体で一度民営化した水道を再公営化しています。フランスのパリ市は、2倍以上に値上がりした水道料金や水質悪化、不透明な経営問題が噴出し再公営化に至りました。
命の水の安心・安全を守るためには公営を堅持すべきです。
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「骨太の方針」を読む③ デジタル行財政改革 自動運転事業化狙う

2024-07-11 07:14:20 | 政治・社会問題について
「骨太の方針」を読む③ デジタル行財政改革 自動運転事業化狙う

今年の「骨太の方針」は、岸田文雄首相が昨年9月の内閣改造で看板に掲げた「デジタル行財政改革」を具体化しました。
河野太郎デジタル相は、デジタル行財政改革担当や規制改革担当を兼任。「わが国の規制が時代遅れになっていて、現実的な社会の要請に対応できていない」として、デジタル化の“障壁”を取り払う「規制改革」に執念を見せています。
岸田首相を議長とする「デジタル行財政改革会議」が設置され、「規制改革推進会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの政府の合議体やデジタル庁を統括。今年6月に最終報告をまとめ、それが同方針に具体化されています。

実質的な解禁
同方針は「ライドシェアを全国で広く利用可能とする」としています。ライドシェアはタクシーの営業資格を持たない一般ドライバーが自家用車を使い、配車アプリを通じて営利目的で送迎するもの。米国の一部地域で全面解禁されていますが、性犯罪の多発などの安全性や、ギグワーカーなど不安定な雇用の増加など多くの懸念を抱えています。
さらに「タクシー事業者以外の者が行うライドシェア」について、「法制度を含めて事業のあり方の議論を進める」としています。「タクシー事業者以外の者」とは、海外のライドシェア大手のウーバーやリフトなど、運転手と利用者をマッチングするアプリを提供するIT企業のことです。これらの新規参入を許せば、実質的なライドシェア全面解禁にほかなりません。



デジタル行財政改革の「課題発掘対話」に出席した岸田首相(左)と河野デジタル相=2023年10月、東京都千代田区

国の押し売り
同方針は「自動運転の社会実装」にも踏み込みました。河野氏はこれまで「(ライドシェア解禁論議の)本丸は自動運転だ」と述べています。「交通・物流DX」として一般道での自動運転を2024年度に約100カ所、25年度に全都道府県での通年運行の計画・実施、27年度に本格的な事業化を目指しています。
しかし、21年には東京パラリンピック選手村(東京都中央区)で、柔道代表選手が自動運転中の巡回バスと接触して負傷する事故が起きました。自動運転には技術的課題が山積しており、人口減少や人手不足を口実に安易な「社会実装」を行うべきではありません。
同方針はさらに、国と地方が共通デジタルサービスを利用できるよう、今夏から国・地方自治体間の連絡協議体制を整備し、各府省庁が「業務見直しとシステム構築を行う」としています。
河野氏は「自治体でバラバラだった様式を全国で統一し、システムを共通化する。政策判断をそれぞれの自治体できっちりやっていただく」などと、地方分権を「デジタル化」で制限する考えを示しています。
本来、住民の声に応えて創意工夫をこらした政策を具体化していく地方自治体に、国が一元的に期限や枠組みを決めたデジタル技術やシステム基盤を押し売りし、デジタル庁がカタログ化した住民サービスに共通化していくもので、地方自治の理念に反します。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月10日付掲載


骨太の方針は「ライドシェアを全国で広く利用可能とする」と。ライドシェアはタクシーの営業資格を持たない一般ドライバーが自家用車を使い、配車アプリを通じて営利目的で送迎するもの。米国の一部地域で全面解禁されていますが、性犯罪の多発などの安全性や、ギグワーカーなど不安定な雇用の増加など多くの懸念を抱えています。
同方針は「自動運転の社会実装」にも踏み込みました。河野氏はこれまで「(ライドシェア解禁論議の)本丸は自動運転だ」と。
自動運転には技術的課題が山積しており、人口減少や人手不足を口実に安易な「社会実装」を行うべきではありません。
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「骨太の方針」を読む② 介護・医療DX 社会保障削減日程並ぶ

2024-07-09 07:12:33 | 政治・社会問題について
「骨太の方針」を読む② 介護・医療DX 社会保障削減日程並ぶ

「骨太の方針」は、医療・介護分野について「不断の改革によりワイズスペンディング(賢い支出)を徹底」すると述べ、昨年12月に決定した全世代型社会保障構築をめざす改革の道筋(改革工程)を「着実に推進する」としています。この「改革工程」には、社会保障のあらゆる分野の削減メニューが具体的日程を示して並んでいます。
同方針は、介護保険制度について「利用者負担が2割となる『一定以上所得』の判断基準の見直し、ケアマネジメントに関する給付のあり方、軽度者への生活援助サービス等に関する給付のあり方」について、2026年度末までに「結論を得る」と述べています。ケアプラン作成を有料化し、要介護1・2の利用者の介護給付を外し、介護保険利用料の2割負担の対象者を拡大し、負担増・給付削減を進める方向です。

原因は低報酬
また、介護現場の人手不足対策として「テクノロジーの活用や協働化・大規模化」「外国人介護人材を含めた人材確保」などを挙げています。人手不足を「効率化」とICT(情報通信技術)の活用や事業所の大規模化などで解決するといいますが、人手不足の根本原因は低すぎる介護報酬です。とりわけ、訪問介護の基本報酬を今年度から2%強引き下げたことは重大です。すでに介護事業者の倒産件数が急増して過去最多を上回っています(東京商工リサーチ調べ)。国会では衆院厚生労働委員会で介護・障害福祉従事者の処遇改善に関する決議が異例の全会一致で採択(6月5日)されており、報酬再改定が必要です。
また、「改革工程」では、「医療・介護保険における金融所得や金融資産の取り扱い」を明記。政府はマイナンバーを活用し、個人の所得だけでなく金融資産を加えた新たな負担制度をつくり、将来に備えた蓄えにまで徴収を強めようとしています。
さらに同方針には「政府を挙げて医療・介護DX(デジタルトランスフォーメーション)を確実かつ着実に推進する」とも記しています。
政府の「医療DX工程表」には、▽医療情報のデジタル化と共有、二次利用の推進、▽デジタル化による業務改革を実現、▽国民自身の疾病予防を促進などが盛り込まれています。
「医療DX工程表」は財界の提案が色濃く、医療情報の二次利用とは、企業が国民の医療情報をビジネスとして活用すること。デジタル化による業務改革は、政府のデジタル化に合わせて医療や介護制度を変えていくことです。




個人情報狙う
国民には、疾病予防として健康や医療データの自己管理や活用を促して「自己責任」を押し付け、公的医療費の抑制とデータ化された医療情報を利活用し、新たな産業につなげるのが狙いです。
政府は健康・医療情報、個人の生活、購買、移動データなどあらゆる個人情報をひも付け、企業や行政がAI(人工知能)を使って自動的に分析、評価・差別・選別(プロファイリング)する社会を目指していますが、国民、患者の人権やプライバシーを守る仕組みが求められます。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月8日付掲載


介護の人手不足を「効率化」とICT(情報通信技術)の活用や事業所の大規模化などで解決するといいますが、人手不足の根本原因は低すぎる介護報酬。
とりわけ、訪問介護の基本報酬を今年度から2%強引き下げたことは重大。
「医療DX工程表」は財界の提案が色濃く、医療情報の二次利用とは、企業が国民の医療情報をビジネスとして活用すること。デジタル化による業務改革は、政府のデジタル化に合わせて医療や介護制度を変えていくこと。
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