きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

けいざい四季報2023Ⅲ ① 世界経済 「脱ドル」の動き加速

2023-09-30 07:14:55 | 経済・産業・中小企業対策など
けいざい四季報2023Ⅲ ① 世界経済 「脱ドル」の動き加速
【ポイント】
①インフレ抑制の各国の利上げが景気を冷やす。米国では22年ぶりの高金利続く
②不動産市場が一段と悪化。不動産開発大手が米国で破産法を申請。高失業が続く
③世界経済の構造変化。ウクライナ戦争のロシア制裁により「脱ドル」の動きが加速

コロナパンデミックからの回復の途上にあるとされる世界経済には、長引くロシアのウクライナ侵略、そのことを契機とした資源価格の上昇、インフレ抑制のための金融引き締めなど懸念材料が山積しています。

インフレ抑制
米連邦準備制度理事会(FRB)は7月26日、連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の0・25%引き上げを決めました。政策金利は年5・25~5・50%と、2001年以来約22年ぶりの高水準となりました。9月20日のFOMCでは、政策金利据え置きを決めました。FRBは声明で「インフレ率は依然として高い」と強調。パウエル議長は、最近の原油価格上昇や、米議会の予算案審議難航による政府閉鎖の懸念、などを挙げ「不透明感が大きい」と指摘しました。



記者会見する米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長=20日、ワシントン(EPA時事)

中国景気減速
中国では、不動産市場が一段と悪化しています。中国不動産開発大手、中国恒大集団は8月17日、ニューヨーク州の連邦破産裁判所に、外国企業が米国内で保有する資産の保全を可能にする連邦破産法15条の適用を申請しました。9月には融創中国も、米国で連邦破産法15条の適用を申請しました。
経済協力開発機構(OECD)が9月19日に発表した最新の経済見通しでは、24年の世界の成長率を2・7%としました。6月の前回予想から0・2ポイント引き下げました。インフレ抑制に向けた各国の利上げが景気を冷やすと予想しました。OECDはとくに、「中国の予想を上回る急激な景気減速が再び重要なリスクとなっている」と指摘。消費者の信頼感の低迷や不動産市場における進行中の重大な問題などが主な懸念材料となっているとしています。


■世界経済の主な出来事(7月~9月)
7/12OECD、「デジタル課税」の多国間条約の2025年の発効へ
7/26米FRB、0.25%利上げ。金利は年5.25~5.50%
8/17中国不動産大手「恒大集団」、米の裁判所に連邦破産法申請
8/22BRICS(ブリックス)の首脳会議が開幕。「脱ドル」を加速
8/23インドの無人月探査機が月面軟着陸成功。着陸成功は4カ国目
8/25FRB議長講演。「ジャクソンホール会議」でインフレ「高過ぎ」
9/920カ国・地域首脳会議、インドで開催。首脳宣言を初日採択
9/15途上国77カ国グループ(G77)と中国の首脳会議で宣言採択
9/15全米自動車労組(UAW)、ストライキに突入
9/18国連、「SDGS(持続可能な開発目標)」の首脳級会合を開催
9/19中国不動産開発大手の融創中国、米国で連邦破産法適用を申請
9/20FRB、政策金利を据え置き。利上げの経済への影響を見極め


進む構造変化
世界経済の中で、いわゆる「グルーバルサウス」の存在感が高まっています。
南アフリカのヨハネスブルクで8月22日から24日に第15回BRICS首脳会議が開催されました。今回のサミットでアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6力国がBRICSに新規加盟することになりました。また、加盟国の財務相と中央銀行総裁に対し、地域通貨や決済手段、プラットフォームに関する問題を検討し、次回の首脳会議で報告するよう指示しました。これまで静かに進んでいた「脱ドル」の動きは、ウクライナ戦争を契機にしたロシアに対する経済制裁をきっかけに加速しています。世界経済の構造変化が進んでいます。
今年の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は9月9日から10日の2日間、インドの首都ニューデリーで開催されました。サミットには中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は参加しませんでした。
ウクライナ戦争について突っ込んだ議論をすればまとまらないという事態を避けたためか、首脳宣言は、初日の9日に採択するという異例の会議になりました。G20内のひずみが見て取れます。途上国が多く参加するアフリカ連合(AU)の正式メンバー入りも9日に合意しました。
(つづく)(4回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月26日付掲載


南アフリカのヨハネスブルクで8月22日から24日に第15回BRICS首脳会議が開催。今回のサミットでアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6力国がBRICSに新規加盟。また、加盟国の財務相と中央銀行総裁に対し、地域通貨や決済手段、プラットフォームに関する問題を検討し、次回の首脳会議で報告するよう指示。これまで静かに進んでいた「脱ドル」の動きは、ウクライナ戦争を契機にしたロシアに対する経済制裁をきっかけに加速。
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2024年度 概算要求の焦点⑨ 軍事費 長射程ミサイルに巨費

2023-09-29 07:31:19 | 予算・税金・消費税・社会保障など
2024年度 概算要求の焦点⑨ 軍事費 長射程ミサイルに巨費
2024年度の防衛省の概算要求は7兆7385億円で、過去最大だった23年度当初予算より9166億円の増額となりました。10年連続で過去最大を更新しました。

対米公約優先
政府は昨年末、米国の要求を受けて安保3文書に23~27年度に軍事費43兆円を確保すると明記。今回の概算要求は同方針を踏まえて軍事費を突出して増やしており、物価高騰で市民生活が危機に陥るなか、対米公約を最優先にしています。
敵基地攻撃能力につながる長射程ミサイルの関連経費が並びます。音速の5倍以上で飛ぶ「極超音速誘導弾」の開発費に718億円、量産費に85億円を計上。射程1000キロ程度に延ばす「12式地対艦誘導弾能力向上型」は、開発費(174億円)や量産費(474億円)のみならず、地上発射用の弾頭や発射装置の取得費、護衛艦に搭載するための器材調達費も盛り込みました。誘導性能を高め、長射程化する「精密誘導弾」の開発に320億円を要求しました。
敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化させる「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」にも巨額の予算を充てます。極超音速滑空弾を迎撃する新型ミサイル「GPI(滑空段階迎撃用誘導弾)」の日米共同開発に750億円を新規計上。イージス・システム搭載艦2隻の建造費として3797億円を要求。同艦の1隻あたりの経費は約3950億円に上り、当初計画していた陸上イージスの導入経費の3倍以上に膨れました。





イージス・システム搭載艦(イメージ図=防衛省概算要求資料から)

ツケ払い膨張
軍事費急増に伴って、新たなツケ払いとなる「新規後年度負担」も7兆8787億円と過去最大を更新。軍事ローンが膨らむことで、将来の財政が硬直化し、暮らしに直結する予算を圧迫します。
陸海空自衛隊を一元的に指揮する常設の「統合司令部」(約240人規模)の創設を明記。米インド太平洋司令部のカウンターパートになります。陸海空共同の部隊として「自衛隊海上輸送群」を創設し、南西諸島への輸送力を強化します。
弾薬費として計9303億円を計上。新たに5カ所の司令部の地下化に176億円、弾薬庫4カ所の新設に221億円を充てます。
イタリア、英国との次期戦闘機の共同開発を管理する国際機関への拠出金40億円を盛り込みました。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月23日付掲載


敵基地攻撃能力につながる長射程ミサイルの関連経費が並びます。音速の5倍以上で飛ぶ「極超音速誘導弾」の開発費に718億円、量産費に85億円を計上。射程1000キロ程度に延ばす「12式地対艦誘導弾能力向上型」は、開発費(174億円)や量産費(474億円)のみならず、地上発射用の弾頭や発射装置の取得費、護衛艦に搭載するための器材調達費も盛り込む。
まさに、軍事費はシルクロードの「西域」ならず、国家予算の「聖域」に。
国民向けの予算を圧迫しています。
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2024年度 概算要求⑧ 地方財政・デジタル マイナカード活用継続

2023-09-28 07:08:57 | 予算・税金・消費税・社会保障など
2024年度 概算要求⑧ 地方財政・デジタル マイナカード活用継続
総務省は2024年度予算の概算要求で、地方の一般財源総額(地方税や地方交付税など自治体が自主的判断で使える財源)を、23年度比0・6%増の62・8兆円と見込んでいます。
地方税等(地方譲与税、地方特例交付金を含む)は、0・7兆円(1・6%)増の46・2兆円。地方交付税は0・2兆円(1・1%)増の18・6兆円。同交付税の不足額を補てんする臨時財政対策債(地方債)は0・3兆円(29・0%)減の0・7兆円です。

人件費減狙う
一般財源の総額は「経済財政運営と改革の基本方針2023」などを踏まえ、「23年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保」するとしています。
23年度にトラブルが相次いだマイナンバーカードの利活用拡大を継続。「マイナンバーカードの利便性・機能向上、円滑に取得できる環境整備、自治体フロントヤード(窓口)改革」に112・1億円増の619・2億円を計上しています。このうち大半がマイナンバーカード交付事業費の補助金(345・7億円)と同事務費補助金(263・3億円)。運転免許証、在留カードなどとの一体化、郵便局における交付申請や電子証明書の発行・更新などを盛り込みました。
新規で「自治体フロントヤード改革推進に向けた調査研究」(10・2億円)を要求。庁舎窓口や公民館、ホームページなど住民と自治体の接点を対象に、マイナンバーカードを活用した行政手続きを増やし、人件費の削減も狙っています。デジタル知識を前提とすることに、住民が置き去りにされないか懸念されます。



自治体DXを視察する河野太郎デジタル相(一番左)=8月21日、埼玉県戸田市

締め付け強化
「自治体情報システム標準化・共通化」には3・9億円を要求。自治体側の準備が間に合わず、25年度の全面移行を延期しましたが、引き続き自治体に対する締め付けを強めます。
デジタル庁の概算要求額は5820億円(23年度比868億円増)です。
同庁が一括計上する各府省の政府情報システムの整備・運用は5670・4億円を計上し、同庁要求額の大半を占めています。政府が運営する「マイナポータル」の利便性向上、利用拡大のためオンライン申請機能などを強化します。
人による目視や監視など「アナログ規制」の一掃に1・7億円を要求。行政・民間分野における「デジタル完結」を加速化するとしています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月22日付掲載


23年度にトラブルが相次いだマイナンバーカードの利活用拡大を継続。「マイナンバーカードの利便性・機能向上、円滑に取得できる環境整備、自治体フロントヤード(窓口)改革」に112・1億円増の619・2億円を計上。このうち大半がマイナンバーカード交付事業費の補助金(345・7億円)と同事務費補助金(263・3億円)。運転免許証、在留カードなどとの一体化、郵便局における交付申請や電子証明書の発行・更新などを盛り込み。
デジタル庁の概算要求額は5820億円(23年度比868億円増)。政府が運営する「マイナポータル」の利便性向上、利用拡大のためオンライン申請機能などを強化。
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2024年度 概算要求の焦点⑦ 社会保障 「自然増削減」と負担増

2023-09-27 07:17:28 | 予算・税金・消費税・社会保障など
2024年度 概算要求の焦点⑦ 社会保障 「自然増削減」と負担増
厚生労働省の2024年度概算要求は高齢化などによる社会保障費の増加を受け、23年度当初比1・8%(約5900億円)増の約33兆7300億円となりました。ただ、コロナ禍のもとで繰り返してきた医療逼迫(ひっぱく)を防ぐための抜本的な体制強化は何ら示していません。


軍事費増より社会保障の拡充をと呼びかける人たち=2月8日、東京・新宿駅西口

抑制路線継続
24年度は6年に1度の医療や介護の報酬の同時改定の年です。「近年の物価高騰・賃金上昇等を踏まえて」対応するといいますが、長年の抑制路線は維持しています。高齢化などで当然増える社会保障費の「自然増」を5200億円と見込むなか、自然増分を国民負担増・給付削減を充てて圧縮してきた路線も継続。
「自然増削減」は、安倍政権時の13年度から計2兆3千億円を超えています。
先の国会で成立した改悪法に基づき、75歳以上で年収153万円を超える人の医療保険料を、24年4月から段階的に引き上げます。出産育児一時金の増額に必要な財源に保険料アップの一部を充てるとして、世代間対立をあおっています。しかし、老親を支える現役世代の暮らしも圧迫するのは必至です。




介護改悪狙う
そのうえ、岸田文雄首相は看板倒れの「少子化対策」を掲げる一方、財源確保のため「何よりも徹底した歳出改革」を行うとし、厚労省も「聖域を設けることなく」歳出削減すると躍起です。世論の怒りで先送りに追い込まれていた「史上最悪」と呼ばれる介護保険改悪のうち、▽利用料2割負担対象者の拡大による負担増▽介護老人保健施設など相部屋(多床室)の有料化―などは、24年度実施を狙い23年末までに結論を出す構えです。
次の感染症危機に備え、米疾病対策センター(CDC)の日本版をうたった「国立健康危機管理研究機構」を25年度以降、既存の2組織を統合し創設します。体制整備のため5億3千万円を新規計上しましたが、設置法では「科学的知見の情報を提供」「業務の状況を首相や厚労相に報告」するなどとしているだけで、専門家の知見を生かす担保がないと指摘されています。
マイナンバーカードの普及を大前提とした医療・介護のDX(デジタル改革)推進は23年度より4倍近い166億円を要求。相次ぐトラブルに無反省のまま「マイナ保険証」の推進も盛り込みましたが、金額や内容は示しませんでした。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月21日付掲載


24年度は6年に1度の医療や介護の報酬の同時改定の年です。「近年の物価高騰・賃金上昇等を踏まえて」対応するといいますが、長年の抑制路線は維持しています。高齢化などで当然増える社会保障費の「自然増」を5200億円と見込むなか、自然増分を国民負担増・給付削減を充てて圧縮してきた路線も継続。
世論の怒りで先送りに追い込まれていた「史上最悪」と呼ばれる介護保険改悪のうち、▽利用料2割負担対象者の拡大による負担増▽介護老人保健施設など相部屋(多床室)の有料化―などは、24年度実施を狙い23年末までに結論を出す構え。
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2024年度 概算要求の焦点⑥ 雇用 “使えない”賃上げ政策

2023-09-26 07:09:50 | 予算・税金・消費税・社会保障など
2024年度 概算要求の焦点⑥ 雇用 “使えない”賃上げ政策
岸田文雄首相は内閣改造後の記者会見で物価上昇を上回る賃上げを掲げたものの、2024年度の厚生労働省の雇用にかかわる概算要求は極めて貧弱な中身になっています。
中小企業の賃上げを支援するための「業務改善助成金」は23年度当初予算比3億円増の13億円です。22年度の同制度の支援実績は、約360万の事業所数に対し5672件しかありません。もともと生産性向上に資する設備投資が支援要件になっているためハードルが高く、大部分の事業所にとって使えない制度となっています。

中小支援なく
一方、複数の地方最低賃金審議会が要望している社会保険料の事業主負担の軽減など、物価高騰の影響を受けている全ての中小企業を対象とした賃上げ支援策はありません。
岸田首相は「成長戦略」としてリスキリング(学び直し)を掲げます。しかし非正規労働者を対象に月10万円の給付金と職業訓練を提供する「求職者支援制度」はわずか1億円増の269億円。従業員に職業訓練を受けさせる事業主向けの「人材開発支援助成金」は13億円減の645億円です。
岸田政権がIT(情報技術)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を成長分野と位置づけるなか、リスキリングの名でデジタル人材育成と同分野への「労働移動」を促す施策が多く盛り込まれています。
主に失業保険の受給者を対象とした公的職業訓練の予算規模は23年度と同水準の約1千億円です。ここでもデジタル分野への重点化が進んでいます。



暮らしていける賃金をとデモ行進する中央メーデー参加者=5月1日、東京都渋谷区



雇用破壊狙う
財界が狙う新たな雇用破壊と連動した予算要望も目立ちます。長期雇用を前提としない「ジョブ型制度」(職務給)の導入状況調査と導入に向けた周知・広報として6200万円(新規)、「副業・兼業に関する情報提供モデル事業」にも2900万円を求めています。副業・兼業の拡大は、賃下げや長時間労働をもたらす危険があります。
勤務地や職種・職務などを限定した「多様な正社員制度」(限定正社員)の導入拡大に5400万円を計上。非正規雇用労働者の正社員化を支援する「キャリアアップ助成金」にも、限定正社員制度を導入した企業への加算措置を導入するとしています。限定正社員は一般的な正社員より待遇は低いのに、責任は正社員と同じ水準が求められます。企業が地域、業務から撤退すれば、解雇される危険とも隣り合わせです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月20日付掲載


複数の地方最低賃金審議会が要望している社会保険料の事業主負担の軽減など、物価高騰の影響を受けている全ての中小企業を対象とした賃上げ支援策はありません。
岸田首相は「成長戦略」としてリスキリング(学び直し)を掲げます。しかし非正規労働者を対象に月10万円の給付金と職業訓練を提供する「求職者支援制度」はわずか1億円増の269億円。
長期雇用を前提としない「ジョブ型制度」(職務給)の導入状況調査と導入に向けた周知・広報として6200万円(新規)など、不安定雇用を増やす危険性。
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