けいざい四季報2023Ⅲ ① 世界経済 「脱ドル」の動き加速
【ポイント】
①インフレ抑制の各国の利上げが景気を冷やす。米国では22年ぶりの高金利続く
②不動産市場が一段と悪化。不動産開発大手が米国で破産法を申請。高失業が続く
③世界経済の構造変化。ウクライナ戦争のロシア制裁により「脱ドル」の動きが加速
コロナパンデミックからの回復の途上にあるとされる世界経済には、長引くロシアのウクライナ侵略、そのことを契機とした資源価格の上昇、インフレ抑制のための金融引き締めなど懸念材料が山積しています。
インフレ抑制
米連邦準備制度理事会(FRB)は7月26日、連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の0・25%引き上げを決めました。政策金利は年5・25~5・50%と、2001年以来約22年ぶりの高水準となりました。9月20日のFOMCでは、政策金利据え置きを決めました。FRBは声明で「インフレ率は依然として高い」と強調。パウエル議長は、最近の原油価格上昇や、米議会の予算案審議難航による政府閉鎖の懸念、などを挙げ「不透明感が大きい」と指摘しました。
記者会見する米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長=20日、ワシントン(EPA時事)
中国景気減速
中国では、不動産市場が一段と悪化しています。中国不動産開発大手、中国恒大集団は8月17日、ニューヨーク州の連邦破産裁判所に、外国企業が米国内で保有する資産の保全を可能にする連邦破産法15条の適用を申請しました。9月には融創中国も、米国で連邦破産法15条の適用を申請しました。
経済協力開発機構(OECD)が9月19日に発表した最新の経済見通しでは、24年の世界の成長率を2・7%としました。6月の前回予想から0・2ポイント引き下げました。インフレ抑制に向けた各国の利上げが景気を冷やすと予想しました。OECDはとくに、「中国の予想を上回る急激な景気減速が再び重要なリスクとなっている」と指摘。消費者の信頼感の低迷や不動産市場における進行中の重大な問題などが主な懸念材料となっているとしています。
■世界経済の主な出来事(7月~9月)
進む構造変化
世界経済の中で、いわゆる「グルーバルサウス」の存在感が高まっています。
南アフリカのヨハネスブルクで8月22日から24日に第15回BRICS首脳会議が開催されました。今回のサミットでアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6力国がBRICSに新規加盟することになりました。また、加盟国の財務相と中央銀行総裁に対し、地域通貨や決済手段、プラットフォームに関する問題を検討し、次回の首脳会議で報告するよう指示しました。これまで静かに進んでいた「脱ドル」の動きは、ウクライナ戦争を契機にしたロシアに対する経済制裁をきっかけに加速しています。世界経済の構造変化が進んでいます。
今年の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は9月9日から10日の2日間、インドの首都ニューデリーで開催されました。サミットには中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は参加しませんでした。
ウクライナ戦争について突っ込んだ議論をすればまとまらないという事態を避けたためか、首脳宣言は、初日の9日に採択するという異例の会議になりました。G20内のひずみが見て取れます。途上国が多く参加するアフリカ連合(AU)の正式メンバー入りも9日に合意しました。
(つづく)(4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月26日付掲載
南アフリカのヨハネスブルクで8月22日から24日に第15回BRICS首脳会議が開催。今回のサミットでアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6力国がBRICSに新規加盟。また、加盟国の財務相と中央銀行総裁に対し、地域通貨や決済手段、プラットフォームに関する問題を検討し、次回の首脳会議で報告するよう指示。これまで静かに進んでいた「脱ドル」の動きは、ウクライナ戦争を契機にしたロシアに対する経済制裁をきっかけに加速。
【ポイント】
①インフレ抑制の各国の利上げが景気を冷やす。米国では22年ぶりの高金利続く
②不動産市場が一段と悪化。不動産開発大手が米国で破産法を申請。高失業が続く
③世界経済の構造変化。ウクライナ戦争のロシア制裁により「脱ドル」の動きが加速
コロナパンデミックからの回復の途上にあるとされる世界経済には、長引くロシアのウクライナ侵略、そのことを契機とした資源価格の上昇、インフレ抑制のための金融引き締めなど懸念材料が山積しています。
インフレ抑制
米連邦準備制度理事会(FRB)は7月26日、連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の0・25%引き上げを決めました。政策金利は年5・25~5・50%と、2001年以来約22年ぶりの高水準となりました。9月20日のFOMCでは、政策金利据え置きを決めました。FRBは声明で「インフレ率は依然として高い」と強調。パウエル議長は、最近の原油価格上昇や、米議会の予算案審議難航による政府閉鎖の懸念、などを挙げ「不透明感が大きい」と指摘しました。
記者会見する米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長=20日、ワシントン(EPA時事)
中国景気減速
中国では、不動産市場が一段と悪化しています。中国不動産開発大手、中国恒大集団は8月17日、ニューヨーク州の連邦破産裁判所に、外国企業が米国内で保有する資産の保全を可能にする連邦破産法15条の適用を申請しました。9月には融創中国も、米国で連邦破産法15条の適用を申請しました。
経済協力開発機構(OECD)が9月19日に発表した最新の経済見通しでは、24年の世界の成長率を2・7%としました。6月の前回予想から0・2ポイント引き下げました。インフレ抑制に向けた各国の利上げが景気を冷やすと予想しました。OECDはとくに、「中国の予想を上回る急激な景気減速が再び重要なリスクとなっている」と指摘。消費者の信頼感の低迷や不動産市場における進行中の重大な問題などが主な懸念材料となっているとしています。
■世界経済の主な出来事(7月~9月)
7/12 | OECD、「デジタル課税」の多国間条約の2025年の発効へ |
7/26 | 米FRB、0.25%利上げ。金利は年5.25~5.50% |
8/17 | 中国不動産大手「恒大集団」、米の裁判所に連邦破産法申請 |
8/22 | BRICS(ブリックス)の首脳会議が開幕。「脱ドル」を加速 |
8/23 | インドの無人月探査機が月面軟着陸成功。着陸成功は4カ国目 |
8/25 | FRB議長講演。「ジャクソンホール会議」でインフレ「高過ぎ」 |
9/9 | 20カ国・地域首脳会議、インドで開催。首脳宣言を初日採択 |
9/15 | 途上国77カ国グループ(G77)と中国の首脳会議で宣言採択 |
9/15 | 全米自動車労組(UAW)、ストライキに突入 |
9/18 | 国連、「SDGS(持続可能な開発目標)」の首脳級会合を開催 |
9/19 | 中国不動産開発大手の融創中国、米国で連邦破産法適用を申請 |
9/20 | FRB、政策金利を据え置き。利上げの経済への影響を見極め |
進む構造変化
世界経済の中で、いわゆる「グルーバルサウス」の存在感が高まっています。
南アフリカのヨハネスブルクで8月22日から24日に第15回BRICS首脳会議が開催されました。今回のサミットでアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6力国がBRICSに新規加盟することになりました。また、加盟国の財務相と中央銀行総裁に対し、地域通貨や決済手段、プラットフォームに関する問題を検討し、次回の首脳会議で報告するよう指示しました。これまで静かに進んでいた「脱ドル」の動きは、ウクライナ戦争を契機にしたロシアに対する経済制裁をきっかけに加速しています。世界経済の構造変化が進んでいます。
今年の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は9月9日から10日の2日間、インドの首都ニューデリーで開催されました。サミットには中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は参加しませんでした。
ウクライナ戦争について突っ込んだ議論をすればまとまらないという事態を避けたためか、首脳宣言は、初日の9日に採択するという異例の会議になりました。G20内のひずみが見て取れます。途上国が多く参加するアフリカ連合(AU)の正式メンバー入りも9日に合意しました。
(つづく)(4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月26日付掲載
南アフリカのヨハネスブルクで8月22日から24日に第15回BRICS首脳会議が開催。今回のサミットでアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6力国がBRICSに新規加盟。また、加盟国の財務相と中央銀行総裁に対し、地域通貨や決済手段、プラットフォームに関する問題を検討し、次回の首脳会議で報告するよう指示。これまで静かに進んでいた「脱ドル」の動きは、ウクライナ戦争を契機にしたロシアに対する経済制裁をきっかけに加速。