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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証 日米首脳会談⑤ 同盟でなく共同体へ

2024-05-07 07:09:23 | 国際政治
検証 日米首脳会談⑤ 同盟でなく共同体へ

「ハブ・アンド・スポークから格子状の戦略的同盟への進化」―。今回の日米首脳会談を前に、エマニュエル駐日米大使はこう繰り返してきました。

格子状の同盟方式
「ハブ・アンド・スポーク」とは、自転車の車輪のように、米国が中軸(ハブ)となり、放射線状に同盟関係を結ぶ方式です。日米安保体制をはじめ、米国が構築してきた伝統的な同盟網は、基本的にこうした方式です。
これに対して「格子状」とは、米国の同盟国同士が結びつく、多国間の同盟関係を意味します。その狙いは、インド太平洋地域での中国との覇権争いに勝利するためです。米国はいずれ、軍事・経済両面で中国が上回ると予測。「ハブ」が弱体化し、同盟国を従えなければ勝利できないのが実情です。
バイデン政権は既に、米英豪の軍事的枠組み「AUKUS(オーカス)」や日米豪印の枠組み「QUAD(クアッド)」など、多国間の枠組みを強化。今回の日米首脳共同声明では、①日米豪の「防空」網構築や無人航空機の開発などに関する協力②先端技術面でAUKUSと日本の協刀を検討③日米英の定期共同訓練の開始1などに言及しました。
首脳会談翌日の4月11日には初の日米比首脳会談が開かれ、中国の覇権主義的行動を念頭に「海洋安全保障」強化で一致しました。



初の3カ国首脳会談に臨む(右から)岸田文雄首相、バイデン米大統領、マルコス・フィリピン大統領=4月11日、ワシントン(ロイター)

平和の枠組みこそ
米国が排他的な軍事ブロックを強化すれば、中国も同じ対応に走るのは必然です。
防衛省のシンクタンク・防衛研究所は昨年11月の報告書で、中ロが「事実上の同盟国関係に入ることが予想される」と指摘。実際、日本周辺における中ロの共同訓練が質量ともに強化されています。
覇権主義的な傾向を強める両国の結びつきは世界の平和と安定に対する深刻な懸念です。ロシアのウクライナ侵略をめぐっても、中ロ関係の強化は、「侵略戦争をやめろ」という世界の団結の障害になっています。
こうしたブロック対応の強化は世界の分断を強め、軍事対軍事の悪循環をもたらすものでしかありません。
これと対極にあるのが、東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組みです。①武力の威嚇・行使の禁止②紛争の平和的手段による解決―を柱とした東南アジア友好協力条約(TAC)を軸に、重層的な平和の枠組みを構築。その最新の到達が、「開放性」「透明性」「包摂性」を掲げた「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」です。排他的な軍事ブロックの対極にあるものです。
首脳会談直後の4月17日、日本共産党の志位和夫議長は、①ASEANと協力して東アジア規模での平和の地域協力の枠組みを発展させる②北東アジアの諸問題の外交的解決をはかり、東アジア平和共同体をめざす③ガザ危機とウクライナ侵略を、国連憲章・国際法を唯一最大の基準にして解決するーとした東アジアの平和構築への提言を発表しました。
日米共同声明もAOIP支持を表明しています。そうであるなら、憲法9条を持つ日本がとるべき道は明白です。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月5日付掲載


「ハブ・アンド・スポーク」とは、自転車の車輪のように、米国が中軸(ハブ)となり、放射線状に同盟関係を結ぶ方式。日米安保体制をはじめ、米国が構築してきた伝統的な同盟網は、基本的にこうした方式。
これに対して「格子状」とは、米国の同盟国同士が結びつく、多国間の同盟関係を意味します。その狙いは、インド太平洋地域での中国との覇権争いに勝利するため。
覇権主義的な傾向を強める中ロの結びつきは世界の平和と安定に対する深刻な懸念。
これと対極にあるのが、東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組み。①武力の威嚇・行使の禁止②紛争の平和的手段による解決―を柱とした東南アジア友好協力条約(TAC)を軸に、重層的な平和の枠組みを構築。その最新の到達が、「開放性」「透明性」「包摂性」を掲げた「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」。排他的な軍事ブロックの対極にあるもの。
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検証 日米首脳会談④ 米の核抑止 日本が強化

2024-05-06 13:51:31 | 国際政治
検証 日米首脳会談④ 米の核抑止 日本が強化

4月10日の日米首脳会談で発表された共同声明に、驚くべき一文が記されました。
「日本の防衛力によって増進される米国の拡大抑止を引き続き強化することの決定的な重要性を改めて確認し、2国間協力を更に強化する」
「この観点から、次回の日米2プラス2の機会に、拡大抑止に関する突っ込んだ議論を行う」(傍線は編集上引いたもの)
「拡大抑止」とは、自国の抑止力を他国に提供することです。基本的には「核の傘」を意味します。岸田文雄首相は「核兵器のない世界」を標ぼうしながら、米国の核抑止の容認にとどまらず、その「強化」に加担すると表明したのです。究極の二枚舌であり、「核兵器のない世界」を真剣に模索している市民や国際社会に対する重大な背信行為です。

2プラス2で明記
日本の軍事力が米国の核抑止を強化する―。こうした考えが初めて示されたのは、昨年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)です。共同発表文には、「日本の能力によって強化される米国の拡大抑止」との文言が明記されています。
米国の核抑止を強化する「日本の防衛力」とは何か。何ら明示されていませんが、前回の2プラス2は、日本が敵基地攻撃能力の保有や、同能力の保有を前提とした「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」の導入を決定したことを踏まえています。長射程ミサイルなどの敵基地攻撃兵器は核兵器と同様、耐え難い打撃で敵を威嚇する「懲罰的抑止」に分類されます。
違憲の敵基地攻撃能力保有が、米の核戦略と密接に関連しているのか。注視する必要があります。



横田基地に着陸したB52戦略爆撃機=2023年7月12日(羽村平和委員会提供)

核軍拡の悪循環に
4月2日、米軍横田基地(東京都福生市など)に米第5爆撃航空団所属のB52戦略爆撃機が無通告で飛来しました。戦略爆撃機は大陸間弾道ミサイル(ICBM)、戦略原潜と並び、核戦略の「3本柱」の一つとされています。
ベトナム戦争期、B52は頻繁に日本や沖縄に飛来していましたが、近年は途絶えていました。2008年5月には岩国基地(山口県岩国市)での航空ショーへの参加が計画されていましたが、強い反発を受け断念に追い込まれています。しかし、昨年7月12日、B52が突如、「エマージェンシー」を理由に横田に着陸。今回の無通告着陸は、世論の反発をかわしながら「突破口」を開く狙いがあったとみられます。
米政府は22年に決定した新たな「核態勢の見直し(NPR)」で中国やロシアを念頭に、核戦力の「可視化」を明記。核兵器の運搬を任務に掲げているB52の横田への飛来は、その具体化であることは明らかです。
核兵器禁止条約への参加が国際社会で着実に広がる中、核軍拡の悪循環を加速する動きを、唯一の戦争被爆国・日本で許してはなりません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月3日付掲載


米国の核抑止を強化する「日本の防衛力」とは何か。何ら明示されていませんが、前回の2プラス2は、日本が敵基地攻撃能力の保有や、同能力の保有を前提とした「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」の導入を決定したことを踏まえています。長射程ミサイルなどの敵基地攻撃兵器は核兵器と同様、耐え難い打撃で敵を威嚇する「懲罰的抑止」に分類されます。
米政府は22年に決定した新たな「核態勢の見直し(NPR)」で中国やロシアを念頭に、核戦力の「可視化」を明記。核兵器の運搬を任務に掲げているB52の横田への飛来は、その具体化であることは明らか。

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検証 日米首脳会談③ 軍需産業まで「統合」へ

2024-05-05 09:33:31 | 国際政治
検証 日米首脳会談③ 軍需産業まで「統合」へ

日米首脳会談では、米軍・自衛隊の「統合」と並んで、日米軍需産業の「統合」も重要議題となりました。

「死の商人国家」
日米首脳共同声明は、軍需産業間の協力に関する協議体=「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議」(DICAS)を創設すると明記。背景にあるのが、米政府が2022年に公表した「国家安全保障戦略」です。同戦略は「中国抑止」のため、同盟国の軍事・外交・経済力を総動員する「統合抑止」を打ち立てています。
その具体化として、米国防総省は今年1月、同盟国の軍需産業の「統合」を掲げた「国家防衛産業戦略」を初公表しました。同戦略は、「同盟国やパートナー国の強固な防衛産業は、統合抑止の礎石であり続ける」と指摘。地球規模の武器供給網(サプライチェーン)や整備拠点の確保が死活的だとして、同盟国との共同生産や維持・整備網の構築を掲げています。
重大なのは、日米共同声明が、殺傷兵器の輸出を可能にした防衛装備移転三原則と運用指針の改定を「歓迎」し、日米軍需産業の優先分野の第1に、「ミサイルの共同開発・共同生産」をあげていることです。
防衛省は既に、昨年12月、地対空ミサイル・パトリオットを米国に輸出。将来的には、敵基地攻撃や先制攻撃につながる長射程ミサイルも排除されていません。米主導の武器輸出網に本格的に組み込まれ、対米従属下の「死の商人国家」に踏み込む危険があります。



地対空ミサイル・パトリオット(航空自衛隊提供)

事実上の工廠復活
優先分野の第2が、日本の民間企業を動員しての米艦船・航空機の「共同維持整備」です。実は、首脳会談全体の議題のなかで、米側にとって最も死活的な分野と言えます。
近年、米艦船・航空機の故障や重大事故が頻発。整備要員や部品が不足し、稼働率も低下の一途をたどっています。日本でも2017年、横須賀基地(神奈川県横須賀市)所属の米艦船が衝突・座礁など立て続けに6件の重大事故を起こしました。米軍機の緊急着陸も相次いでいます。
米戦略に詳しい軍事社会学者の北村淳氏は「かつて米海軍は13カ所の海軍工廠を運用していたが、現在は4カ所の海軍造船所に縮小した。施設も老朽化し、労働環境が劣悪なために慢性的に人員が不足。整備が追い付かず、稼働率が下がって将兵の士気が低下している。日本に常駐している第7艦隊などの整備を日本国内で実施すれば、米軍にとって大幅な負担減になる」と指摘します。
戦後、旧日本軍の工廠(軍需工場)は米占領軍によって解体されました。今度は、米軍のために事実上の工廠を復活させようという動きです。



衝突事故で大破したイージス艦フィッツジェラルド=2017年7月、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)

日本労働者を米戦略に
ただ、日本の民間企業が本格的に米軍装備の修理・整備を行うためには、機密情報に接するための身辺調査=「適性評価(セキュリティー・クリアランス)」が避けられません。参院で審議中の経済秘密保護法案は、日本の労働者・技術者を米戦略に組み込むための条件づくりなのです。
日本の民間企業が米艦船・航空機を定期的に整備するためには、部品や作業員などを常時、確保する必要があります。NPO法人「国際地政学研究所」の林吉永事務局長は、「新たな『思いやり予算』の形で、政府が整備費を負担する可能性もある」と指摘します。世界的に部品も人的資源もひっ迫する中、政府の税金投入で民間船舶・航空機よりも米軍の整備を優先する事態になれば、この国の産業に深刻なゆがみは避けられません。
さらに、米軍は中国との武力衝突が発生した際、日本を足場に戦うことを想定しています。そうした事態を見越した場合、日本に艦船・航空機の整備拠点を確保することは決定的に重要となります。日本の国土の戦場化をもたらす動きであり、注視していく必要があります。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月2日付掲載


重大なのは、日米共同声明が、殺傷兵器の輸出を可能にした防衛装備移転三原則と運用指針の改定を「歓迎」し、日米軍需産業の優先分野の第1に、「ミサイルの共同開発・共同生産」をあげていること。
優先分野の第2が、日本の民間企業を動員しての米艦船・航空機の「共同維持整備」です。実は、首脳会談全体の議題のなかで、米側にとって最も死活的な分野。
ただ、日本の民間企業が本格的に米軍装備の修理・整備を行うためには、機密情報に接するための身辺調査=「適性評価(セキュリティー・クリアランス)」が避けられません。参院で審議中の経済秘密保護法案は、日本の労働者・技術者を米戦略に組み込むための条件づくり。
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検証 日米首脳会談② 頭から自衛隊のみ込む

2024-05-03 06:05:07 | 国際政治
検証 日米首脳会談② 頭から自衛隊のみ込む

「日米同盟が始まって以来、最も重要なアップグレード(更新)だ」。バイデン米大統領は4月10日(日本時間11日未明)、日米共同声明に「(日米の)作戦及び能力のシームレスな統合を可能に」するため、2国間でそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させると明記されたことを指して、こう力説しました。

日米「統合司令部」
「指揮・統制の枠組み向上」―。端的に言えば、米軍・自衛隊の司令部機能の連携強化です。岸田文雄首椙は「独立した指揮系統」を強調しますが、日本共産党の志位和夫議長は22日の衆院予算委員会で「自衛隊は事実上、米軍の指揮下に組み込まれる」と鋭く告発しました。自衛隊を頭からのみ込み、従属態勢を完成さ
せる―。ここに最大の狙いがあることは明らかです。
旧日本軍の解体後、米占領軍は自らのアジア戦略の補完部隊を育成するため、日本の再軍備に着手。1950年8月の警察予備隊から54年7月の自衛隊創設にいたるまで、米軍が一から育成してきました。米側は日本の軍事組織が自らの指揮下に入ることを当然視しており、52年1月、米軍の占領特権を定めた日米地位協定の前身「日米行政協定」の当初案に、「有事(緊急事態)」に統合司令部を設置し、米側が指揮官に就くとの条項を提案しました。ここでいう「有事」は米側が判断することになり、「日本有事」に限定されません。



日米共同訓練レゾリュート・ドラゴンの開始式典で敬礼する米海兵隊(左)と陸上自衛隊各部隊=2023年10月14日、健軍駐屯地(熊本市)=米海兵隊ウェブサイトから

しかし、日本側は必死に抵抗します。外務省が公開した行政協定の交渉経緯に関する外交文書によれば、日本側代表の岡崎勝男外相は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とする憲法9条2項を引用し、建前上は軍隊ではない警察予備隊が「第三国に対する交戦行為に参加できることを予見する協定またはそのような解釈の余地を残す協定を外国政府と結ぶことは不可能」だと断言しています。つまり、米軍の指揮下に入ることは9条違反だという主張です。
現在の自衛隊の行動も、憲法9条によってさまざまな制約を受けています。阪田雅裕・元内閣法制局長官は「米軍の指揮下に入るということは、自衛隊が米国の意に従って軍事行動を取ることを意味する。集団的自衛権の全面的な行使など、無制限で米軍の指揮に従うことは、違憲の軍事行動を許容することであり、到底許されない」と指摘します。

完全な9条空洞化
結局、行政協定から「統合司令部」条項は削除されましたが、日米両政府は「有事」に自衛隊が米軍の指揮下に入るという密約をかわし、自衛隊にも引き継がれました。その後、憲法と日米同盟の矛盾を抱えたまま、日米共同作戦体制の強化や日米軍事協力の指針(ガイドライン)などに基づく軍事一体化が進み、実態的に米側が指揮権を握る構造が強まってきました。
今回の日米共同声明は、いわばその「完成形」を目指していると言えます。だから、「最大のアップグレード」なのです。その先にあるのは、憲法9条の完全な空洞化です。


米「主権切り離し」まで要求
「指揮・統制の枠組み向上」として臭体的に狙われているのは、米軍の司令部機能の強化です。2024会計年度米国防権限法(第1317条)は国防総省に対し、「在日米軍の司令部機能見直しの実現可能性・可否」を含む、日本との安全保障協力に関する報告書を6月1日までに議会に提出するよう求めています。5月末にも東京で開かれる日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、大枠が決定される見通しです。
在日米軍は米本土以外では最大規模となる5万人以上の兵力を抱え、空母打撃群や海兵隊など地球規模の出撃部隊を有しています。しかし、横田基地(東京都)に置かれる在日米軍司令部のスタッフはわずか140人とされています。しかも、その機能は基地や人員の維持・管理などにすぎません。
戦時の指揮権を有し、日米共同訓練などを立案するのは、ハワイにあるインド太平洋軍司令部です。インド太平洋軍は30万の兵力を有し、広大な太平洋からインドまで、北極から南極まで地球の約半分を「責任区域」とする米軍最大の統合軍です。同司令部の下に統合任務部隊(JTF)を設置し、日本に派遣。2025年3月に発足する自衛隊の「統合作戦司令部」を支援する案が有力視されています。
統合作戦司令部は陸海空自衛隊の実動部隊を一元的に指揮するとしています。しかし、河野克俊・元統合幕僚長は、同司令部創設にいたった最大の理由は、「インド太平洋軍司令部との調整」にあることを明らかにしています(『トモダチ作戦の最前線』)。当初から、米軍の実質的指揮下に入ることが予定されていたのです。
アーミテージ元米国務副長官らが4月4日に発表した報告書では、日米の統合司令部を同じ場所に置くべきだと提言しています。
「有事」に統合司令部を置くとの日米密約を踏み越え、「平時」から公然と、事実上の統合司令部を置くというものです。

志位議長の告発で
日米の司令部機能「統合」で、自衛隊が事実上、指揮下に置かれる―。日本共産党の志位和夫議長は22日の衆院予算委員会で、具体的な事実をあげて告発しました。
第1の問題は、敵基地攻撃実行の際の「日米共同対処」です。当面、念頭に置かれているのは、自衛隊が導入を進めている米国製巡航ミサイル・トマホークの共同運用です。
志位氏は防衛省の資料を示し、「指揮統制」で日米が緊密な協力を行うことが明記されていると指摘。指揮統制は情報・装備等で圧倒的に優越的な立場にある米軍主導で行われ、「自衛隊は事実上、米軍の指揮統制のもとにおかれることは明らかだ」と迫りました。



質問する志位和夫議長=4月22日、衆院予算委

シームレスな統合
第2の問題は、日米共同声明に初めて明記された、米軍と自衛隊の「シームレス(切れ目のない)な統合」という概念です。
これに関して志位氏は、インド太平洋軍の「IAMDビジョン2028」概要版を示し、「同盟国とシームレスに統合する能力を備え」ると明記していると指摘しました。
IAMD(統合防空ミサイル防衛)は防空と敵基地攻撃を一体化したシステムです。中国軍の航空機やミサイルによる脅威を無力化し、米軍の作戦行動の自由を確保するのが狙いです。基地だけでなく司令部機能、空港などインフラへの先制攻撃も排除されていません。日本は敵基地攻撃能力の導入に合わせ、IAMDの導入を決定しました。
岸田文雄首相は志位氏の追及に、日米のIAMDは「まったくの別物」だと反論。志位氏は米軍の太平洋IAMDセンター所長が執筆した公式の解説論文(米空軍『航空宇宙作戦レビュー』22年冬号所載)を示し、「インド太平洋軍の広大な管轄では、同盟国やパートナー国が絶対に不可欠であり、地域の同盟国とシームレスに統合するというビジョン」を力説していることを明らかにして、「別物」という理屈は成り立たないと反論しました。



防衛省を表敬訪問した米インド太平洋軍のアキリーノ司令官(右)。左端は吉田圭秀統合幕僚長=4月22日(インド太平洋軍ウェブサイトから)

まぎれもない違憲
解説論文は「シームレスな統合」の具体的な内容として、センサー(情報網)やインターセプター(ミサイル、戦闘機など)といった同盟国の戦力を、米軍主導の単一のネットワークに組み込むことを挙げています。その上で、米国防総省が開発を進めている「統合全領域指揮統制(JADC2)」に言及。JADC2は米軍の全戦力を単一の情報ネットワークに統合するシステムですが、「IAMDビジョン2028」のネットワークは、同盟国も含めて統合する「一歩進んだもの」だとしています。
志位氏は、ここに組み込まれる危険を追及。さらに、こうしたネットワークを実現するために、米軍が同盟国に「主権の一部を切り離させる」ことまで要求していることを明らかにしました。
解説論文はこう述べています。「ビジョンの実現のための政治的な賛同に取り組む必要がある。より大きな全体的な防衛ネットワークのために、まずは諸国家に主権の一部を切り離させるという最終的な権限は、政府全体のアプローチが必要だ」。日本を含む同盟国に国家主権の一部放棄を迫っていることは明らかです。
志位氏は「これが米軍の求める『シームレスな統合』だ。日本の主権まで米国に差し出すなど、まぎれもない憲法違反だ」と告発しました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月1日付掲載


行政協定から「統合司令部」条項は削除されましたが、日米両政府は「有事」に自衛隊が米軍の指揮下に入るという密約をかわし、自衛隊にも引き継がれました。その後、憲法と日米同盟の矛盾を抱えたまま、日米共同作戦体制の強化や日米軍事協力の指針(ガイドライン)などに基づく軍事一体化が進み、実態的に米側が指揮権を握る構造が強まってきました。
日米の司令部機能「統合」で、自衛隊が事実上、指揮下に置かれる―。日本共産党の志位和夫議長は22日の衆院予算委員会で、具体的な事実をあげて告発。
JADC2は米軍の全戦力を単一の情報ネットワークに統合するシステムですが、「IAMDビジョン2028」のネットワークは、同盟国も含めて統合する「一歩進んだもの」だとしています。
志位氏は、ここに組み込まれる危険を追及。さらに、こうしたネットワークを実現するために、米軍が同盟国に「主権の一部を切り離させる」ことまで要求していることを明らかに。
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検証 日米首脳会談① 「勇敢さ」たたえる米政権の真意

2024-05-02 07:14:51 | 国際政治
検証 日米首脳会談① 「勇敢さ」たたえる米政権の真意

「先見的で勇敢な指導者だ」「過去3年間において、日米のパートナーシップは真のグローバルパートナーシップになった。勇敢な岸田総理の指導力のもと、それを実現してきた」。10日、米ワシントンで行われた日米首脳会談で、バイデン大統領は「国賓待遇」で迎えた岸田文雄首相を、口を極めて称賛しました。
なぜ、これほどまでに岸田首相の「勇敢さ」をたたえたのか。首脳会談後に発表された日米共同声明を見れば一目瞭然です。
冒頭、「日米同盟は前例のない高みに達した…わずか数年前には不可能と思われたような方法で、我々の共同での能力を強化するために勇気ある措置を講じたためである」と述べ、①軍事費の2倍化②敵基地攻撃能力の導入③殺傷兵器の輸出解禁―など岸田政権の大軍拡路線を「歓迎」。その上で①米軍・自衛隊の「指揮統制の枠組み向上」=司令部の連携強化②ミサイルの共同生産・輸出の拡大、日米軍需産業の連携③米英豪の軍事的枠組みAUKUS(オーカス)などとの連携強化④拡大抑止(核の傘)のさらなる強化―などを合意しています。そして、締めくくりで再び、「我々は日米同盟をかつてない高みへと導くための大胆かつ勇気ある措置を講じてきた」と表明しています。



バイデン大統領と握手する岸田文雄首相=4月10日(日本時間11日未明)、ワシントン(ロイター)

「平和国家」を破壊
軍事費の2倍化、敵基地攻撃能力の保有、殺傷兵器の輸出…。これらは共同声明が言うように、数年前までの日本では不可能とされていたことです。曲がりなりにも掲げてきた「平和国家」の理念を根底から破壊し、日米同盟を「新たな高み」に引き上げた岸田首相をたたえる言葉1それが「勇気」「勇敢さ」なのです。
NPO法人「国際地政学研究所」の林吉永事務局長(元航空自衛隊第7航空団司令)は、米側の意図をこう読み解きました。
「“かつてない高み”とは、日本がついに、真の意味で『戦争する国』になったということだ。それを端的に表しているのが、日米の指揮統制の強化。米軍のネットワークに組み込まれることで、単に米軍の戦争に巻き込まれるのではなく、自らの意思で米軍と一緒に戦争する。だからバイデンは『勇敢だ』とたたえたのだろう」「岸田首相は『国賓待遇』で浮かれているのかもしれないが、米側は『もはや後戻りは許されない』と、強い言葉で覚悟を迫っている。岸田氏はそれを理解しているのか…」
その岸田首相は首脳会談の翌日、米議会で演説。冒頭、「日本の国会では、これほどすてきな拍手を受けることはまずありません」という“自虐”フレースで笑いをさそった後、「日本は米国と共にある」という言葉を何度も用い、こちらも口を極めて米国への忠誠を誓いました。史上最悪の対米従属政権というほかありません。

日本共産党の田村智子委員長は4月11日、かつてない大軍拡と日米の一体化を合意した日米首脳会談について、「日米軍事同盟の歴史的大変質を宣言するものとなった」と批判。9条に基づく平和外交にこそ力をつくすよう求めました。日米首脳会談の危険な合意を検証していきます。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月30日付掲載


「先見的で勇敢な指導者だ」「過去3年間において、日米のパートナーシップは真のグローバルパートナーシップになった。勇敢な岸田総理の指導力のもと、それを実現してきた」。10日、米ワシントンで行われた日米首脳会談で、バイデン大統領は「国賓待遇」で迎えた岸田文雄首相を、口を極めて称賛。
「“かつてない高み”とは、日本がついに、真の意味で『戦争する国』になったということだ。それを端的に表しているのが、日米の指揮統制の強化。米軍のネットワークに組み込まれることで、単に米軍の戦争に巻き込まれるのではなく、自らの意思で米軍と一緒に戦争する。だからバイデンは『勇敢だ』とたたえたのだろう」
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