「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。
攻防 消費税⑫ 社会保障解体狙う
「これからは一気呵成(かせい)に与野党とも、この一体改革についての議論を進めていただきたい」
日本経団連の米倉弘昌会長は国会会期末を控えた6月11日、民主、自民、公明の消費税増税推進勢力に「号令」をかけました。その後、国会は延長され、26日には衆院本会議で消費税大増税法案が可決されました。財界3団体(経団連、経済同友会、日本商工会議所)はそれぞれ、衆院での可決を「歓迎」するとともに、法案の早期成立を求めるコメントを発表しました。
米倉会長名で
この日、衆院本会議では、「社会保障制度改革推進法案」も民自公の多数で可決されました。この法案は、自民党がまとめた「社会保障基本法案」を民主党がのんだもの。自公政権時代に進められた社会保障の切り捨て路線を法律にしたものです。
同法案は社会保障改革について、「自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされる」ことが必要だと強調。「機能の充実と給付の重点化及び制度の運営の効率化」を求めています。年金・医療・介護・生活保護・子育てなどの全面的な見直しを行うもので、社会保障の充実を国の責任として明記した憲法25条を真っ向から踏みにじるものです。
米倉会長名で消費税増税関連法案可決の歓迎コメントを出した経団連は同時に、「社会保障制度改革国民会議を速やかに設置し、社会保障給付の効率化・重点化、持続可能な社会保障制度の再構築に向けた検討を開始」することを求めました。
財界は、消費税増税とともに、社会保障の切り捨てをこれまでにも政府に迫ってきました。
経団連は5月24日に発表した提言(「社会保障・税一体改革の着実な推進を求める」)でも、次のように要求していました。
「社会保障制度改革については、現行の政府案は給付の効率化・重点化、財源の見直しが不十分な内容に留(とど)まっている。今後も国民的な検討を深め、社会保障の自助・共助・公助のバランスを見直し、成長や雇用創出と両立する持続可能な制度へと抜本改革を行うべきである」
「社会保障制度改革推進法案」でうたわれた「自助・共助・公助」や「効率化・重点化」の方針は、財界の要望そのものだったのです。さらに財界は、社会保障費の削減も露骨に求めています。
経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表も1月31日の記者会見で、「(年間)1兆円を超える(社会保障費の)自然増をどう抑制するのか、本格的なメスを入れない限り改革とは言い難い」と強調していました。
経団連は、5月15日の提言(「成長戦略の実行と財政再建の断行を求める」)で、消費税率を19%にまで引き上げるシナリオを提示する一方、社会保障費については、「社会保障給付の自然増を毎年2000億円抑制」することを求めています。
消費税増税・社会保障大改悪の関連法案を可決した衆院本会議=6月26日
「談合」に怒り
しかし消費税増税に反対する国民の声は、各紙の世論調査で5~6割に達しています。「日経」とテレビ東京が行った世論調査(25日付)でも、「民主、自民、公明3党が消費税増税など社会保障と税の一体改革で合意したこと」について「評価しない」としたものが52%と半数を超えています。
財界いいなりの消費税大増税と社会保障解体の民自公3党の「談合」に国民の怒りが広がっています。
(おわり)(この連載は金子豊弘、清水渡が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年6月29日付掲載
財界にとっては、消費税増税も社会保障費抑制も一体の要求です。逆に言えば、国民にとっては痛みの押し付けでしかありません。
生計費非課税、税の応能負担。生きる権利としての社会保障。これから参議院に審議は移ります。暑い夏の闘いです。
攻防 消費税⑪ 付則104条と財界
「3年後に消費税の引き上げをお願いしたい」―。2008年10月、当時の麻生太郎首相は景気対策を発表する会見で消費税増税を宣言しました。この会見に同席した与謝野馨経済財政相(当時)は「この時は私にも財務省にも何の相談もなし」「『このおじさん、いったい何を言い出すんだ』と驚いたぐらい」(『新潮45』09年3月号)と述べています。この発言が現在の消費税増税につながる09年度税制改正付則104条のきっかけとなります。
同付則は「消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずる」と期限を切った消費税増税を宣言したもの。財務省はホームページ上で麻生発言が指摘した「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラムを年末の税制改正において取りまとめる」との趣旨をふまえて制定したと解説しています。
決まっていた
実は、消費税増税は「麻生発言」から湧いて出たものではありません。09年2月に日本共産党の佐々木憲昭議員が「麻生発言」について質問した際、与謝野氏は事前の打ち合わせはなかったとしつつ、「累次にわたる(自民・公明の与党)税制改革大綱には消費税を含む税制の抜本改革をやるということをたびたび書いてあ」るので、消費税増税は既定だったと答弁しています。
増税路線はいつ、どこでつくられたのか。話の出所はやはり財界です。経団連総会決議には毎年のように「直間比率の是正」「税財政改革」などが盛り込まれています。日経連と経団連が統合した02年の総会決議では「歳出構造、社会保障、税を一体とした財政構造改革を進めるよう求めています。現在、政府が看板に掲げる「社会保障・税一体改革」と重なる表現です。07年発表の長期ビジョン「希望の国、日本」では、消費税を11年度までに7%に増税し、その後10%にする2段階の引き上げを提言しています。政府のねらう2段階の増税と符合します。こうした流れの中での「麻生発言」だったのです。
質問する佐々木憲昭議員=2009年2月27日、衆院財務金委
政権交代後も
09年の総選挙で民主党政権が誕生しても財界の増税路線はかわりませんでした。しかし民主党は総選挙で「4年間は消費税増税の必要はまるでない」と公約しています。藤井裕久財務椙(当時)は、09年11月の衆院財務金融委員会で、付則104条について問われ「修正するのが筋だ」と答弁したのです。
状況が変わったのは10年4月に経団連が「成長戦略2010」を発表したころから。成長戦略は「2011年度から速やかかつ段階的に、消費税率を少なくとも10%まで引き上げていくべきである」と明記。さらに、20年代半ばまでに「10%台後半ないしはそれ以上へ引き上げ」を求めています。
財界の要求を受けて、民主党は公約をかなぐり捨てます。そして消費税増税を目指して、自民党・公明党と談合を進めました。談合の結果、26日の衆院本会議で、消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%へと引き上げる大増税法案の採決が強行されたのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年6月28日付掲載
消費税増税のシナリオは結局財界発。使い古された文句「直間比率の是正(直接税である法人税や高額所得者の税率を下げて、間接税である消費税の税率を上げる)」「税財政改革(税金の集め方と使い方を福祉・教育優先から財界優先に変える)」とが出てきます。
民主党も財布のひもを財界に握られているので、言う事を聞かないと、どうしようもなくなったのですね。
攻防 消費税⑩ 「増税ノー」の審判
消費税の3%から5%への増税は1994年に村山富市内閣が決定し、97年に橋本龍太郎内閣が強行したものです。いずれも自民党、社会党(96年社民党に改組)、さきがけ3党の連立政権です。増税「決定」と「実施」の間にすでに「再増税」への動きが始まっていました。
長期ビジョン
96年1月、経団連は長期ビジョン「魅力ある日本―創造への責任」を発表します。その中で「直間比率の是正」として2020年度までに「間接税比率5割程度」まで引き上げるよう求めています。さらに同ビジョンは参考資料として、97年の5%への増税を前提に“2000年度には7%、05年度には10%に引き上げる”など「目標達成」にむけた試算を掲載しています。また、03年発表の経団連長期ビジョン「活力と魅力溢(あふ)れる日本をめざして」では、04年度から消費税率を毎年1%ずつ引き上げれば、14年度以降は「16%で据え置くことが可能になる」と述べています。
こうした財界の要求にこたえて、1999年2月に小渕恵三首相(当時)の諮問機関「経済戦略会議」が財政再建を口実に「消費税率の引き上げも視野に入れざるを得ない」と最終答申に盛り込んでいます。また同年12月の政府税制調査会答申には消費税について「今後、わが国の税財政にとってますます重要な役割を果たすべき基幹税である」と述べています。
2000年に入ると森喜朗政権の下で政府税調が「少子・高齢化が進展する二十一世紀を展望すると、消費税の役割はますます重要なものになっていくと考えられます」などとする中期答申をまとめています。
1998年7月の参院選挙で当選者の名に花をつける日本共産党の不破哲三委員長(右、当時)と志位和夫書記局長(当時)=党本部
怒りを恐れて
税率引き上げ後、最初の国政選挙である1998年の参院選では自民党は改選議席を16減らす大敗を喫し、社会党から党名変更した社民党は改選12議席から8議席へと後退、さきがけの当選はゼロとなっています。一方、消費税増税を一貫して批判した日本共産党は、改選6議席の2倍以上となる15議席を獲得しました。
いくら内閣支持率が高くても、「国民の怒り」への恐れは解消できません。戦後の首相で在職3位の長さ、発足直後の内閣支持率80%超を誇った小泉純一郎首相も消費税増税を正面から掲げられませんでした。社会保障を連続的に改悪した小泉首相は2003年9月の記者会見で、「(自民党総裁の任期)その間に税率を上げる環境にない」と表明しています。
しかし小泉首相は06年6月の経済財政諮問会議で「増税してもいいから必要な施策をやってくれ、という状況になるまで、歳出を徹底的にカットしないといけない」と述べるなど、消費税率引き上げに向けた環境をつくってきました。
つづいて首相となった安倍晋三内閣で増税計画は発動します。07年の参院選で、自民党は「(07年度をめどに)消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」と公約に明記したのです。安倍首相はテレビ番組で「秋に抜本的な税制改正を行う。消費税を上げないとはひと言も言っていない」と発言しています。
しかし、国民の審判は「増税ノー」でした。この選挙で自民党は、改選64議席に遠く及ばない37議席という歴史的な議席減に追い込まれました。国民の怒りは消費税増税を何度もとん挫させてきたのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年6月27日付掲載
1998年の参院選挙では定数2の兵庫選挙区でも大沢たつみさんを当選させました。自民党の新人候補を破っての2位当選でした。
消費税増税への怒りにあわせて牛肉の輸入自由化への怒り。それが、党組織のない但馬牛の産地美方郡美方町でも大沢たつみの票が伸びたことに感激したことを覚えています。
近畿の大阪、京都に続き兵庫県でも参院選挙区の議席を獲得したことに、当時JRがやっていた宣伝文句「三都物語」にかけて、近畿の三都で議席を取ったことに感激したことを覚えています。
今回の消費税増税法案はまだ衆院で可決されただけで、これから参議院での審議があります。世論で追い込んで、採決させないで廃案にさせましょう。
攻防 消費税⑨ 態度180度変えて
細川護煕内閣が導入を画策した国民福祉税を、与党内で最も強く批判したのは社会党でした。1994年4月、細川首相は自らの金権疑惑もあり、突然退陣。その後、発足した新生党の羽田孜党首を首相とする内閣に、社会党とさきがけは参加しませんでした。少数与党だった羽田内閣は、94年度予算の成立を待って、わずか2カ月で総辞職しました。
社会党が容認
羽田内閣退陣後、政権復帰に執念を燃やした自民党主導の多数派工作で、社会党の村山富市委員長を首相とする自民、社会、さきがけの3党連立政権が成立しました。村山首相は94年7月の所信表明演説で、「所得、資産、消費のバランスのとれた税体系を構築する」と述べ、消費税の増税を表明しました。細川内閣の与党時に取った態度を百八十度変えた社会党について、当時、政府税制調査会委員だった石弘光氏は「社会党が消費税率引き上げを認め、よく歩み寄ったと驚きを禁じ得ない」「土井たか子委員長の下で、選挙で『ダメなものはダメ』と、一度は政治的に消費税を葬り去った社会党も、政権につけばその存在を認めないわけにはいかなかった事実は重い」(『消費税の政治経済学』)と述べています。
消費税増税という公約違反をはじめ、日米安保体制の堅持、自衛隊合憲、「日の丸・君が代」の全面容認など、かつての主張を完全に投げ捨てた社会党に対して、国民は厳しい評価を下し、96年1月、社会民主党へと党名を変更せざるを得ませんでした。
非自民連立から、自民、社会、さきがけ連立へと政権の担い手が代わっても、消費税増税の方針が「堅持」されたのは、財界が執拗(しつよう)に消費税増税を求めたからです。
羽田内閣が総辞職する直前の94年6月に、経済団体連合会、日本商工会議所、日本経営者団体連盟、経済同友会の財界4団体が連名で発表した「政策本位の国会運営を求める」との意見書は、「規制緩和、税制改革など、内需拡大や改革の具体的な姿を明示する」ことを求めています。村山政権発足直後には経団連が「政策運営に関する緊急提言」を発表し、税制改革の課題として「国際的に極めて高い法人税負担の引き下げをおこなう」「(その財源については)直間比率の是正によって手当てする」ことなどを提起し、「課題の解決に全力を尽くすべきだ」と発破をかけました。
石弘光氏は、「この連立政権は、細川・羽田両内閣が残した税制改革を仕上げることが責務となっていた」(前掲書)と述べています。
消費税引き上げ反対署名を国会に提出する全国商工団体連合会代表=1994年2月17日、衆院議員面会所
思惑の通りに
財界の後押しを受けて、村山内閣は97年4月から消費税率を3%から5%に引き上げることなどを柱とする税制改革関連法案を94年10月に国会提出、11月には可決・成立させました。89年に消費税が導入されてから5年後のことでした。
消費税増税の際、水面下で暗躍したのが消費税導入時の首相、竹下登氏でした。竹下氏は自著『平成経済ゼミナール』でインタビューに答え、消費税導入当初から5年後の税率引き上げを構想しており、その実現に向けて画策したことを認めています。思惑通りに動いた村山首相を「村山さんも、税について、それほど詳しい方ではないが、理解は早い」と評価しました。
97年4月、自民、社会、さきがけ3党連立の橋本龍太郎内閣の下で、消費税増税は実行されました。増税に加えて、社会保障改悪によって国民には9兆円もの負担増がかぶせられ、国民の暮らしと日本経済はどん底に突き落とされることになります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年6月26日付掲載
社会党が変節したことが、消費税が3%から5%に値上げされたことに大きく貢献したのですね。もともと社会党は1980年の社公合意で安保条約容認で右転落していたわけなんですが、この時の自民党との連合政権でいよいよ落ちるところまで落ちました。
社会党は分裂してその大半は今の民主党の流れになります。一方は名前を変えて社民党に。
本当に許されないことだなあ!
消費税増税法案 社会保障の在り方を問う法案が国民の世論を無視して、衆院本会議で強行採決されました!
「社会保障制度改革推進法案」は、歯に衣を着せずに言えば、「社会保障を充実して欲しければ消費税をあげる、消費税を上げてほしくなければ社会保障は少々我慢せよ」と言うものだ。
これって、憲法25条に真っ向から歯向かうもので許せないものだ。
この法案は理念法のようなものなので、これからの国民の運動で実施させないようにさせていかないといけない。
「消費税増税法案」は、現在5%の消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げるもの。これにはさすがに、鳩山さんや小沢さんなどが反対。民主党を二分しかねない事態になっている。
こちらも実施は二年後なので、それまでに総選挙や参議院選挙などの国政選挙がある。
かつての一般消費税や売上税の時のように、これからの国民の運動で実施させない事は十分可能だ!
日本共産との「提言」 消費税に頼らない別の道があります 「社会保障の充実」「財政危機の打開」
このダイジェストパンフレットを国民の中にどんどん普及して、世論を変えていきたいですね。