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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

映画「i ―新聞記者ドキュメント―」森達也監督 メディアの劣化あぶり出す 「個」の自覚を促す問い響く

2019-11-20 16:43:05 | 政治・社会問題について
映画「i ―新聞記者ドキュメント―」森達也監督
メディアの劣化あぶり出す 「個」の自覚を促す問い響く


もり・たつや 映画監督、作家、明治大学特任教授1956年、広島県生まれ。99年、テレビドキュメンタリー「放送禁止歌」、98年ドキュメンタリー映画「A」、2001年「A2」。『A3』『「テロに屈するな!」に屈するな』ほか著書多数。「i ―新聞記者ドキュメント―」は第32回東京国際映画祭で日本映画スプラッシュ部門作品賞



オウム真理教の信者を内側から追った「A」やゴーストライターをめぐる「FAKE」などドキュメンタリー映画で異彩を放ってきた森達也さん。新作「i ―新聞記者ドキュメント―」は、日本のメディアの実態に迫ります。昨年12月からこの映画化に携わって見えてきたものは―。森監督に聞きました。
(児玉由紀恵)

「i」に取り組む契機は、河村光庸プロデューサーからの依頼でした。東京新聞記者・望月衣塑子著『新聞記者』を原案として、劇映画とドキュメンタリーを作ってほしい、と。



東京・新宿ピカデリーほか全国で公開中 ©2019「i―新聞記者ドキュメント―」製作委員会

政治家や役人忖度せず追及
「最終的に劇映画の方は藤井道人監督に任せることにして、僕はドキュメンタリーに専念しました。劇映画の準備の勢いで走り出したという感じで、自分から進んでという企画ではなかったのですが、望月さんはとてもフットワークのいい方でしたね」
菅義偉官房長官の会見で食い下がって質問する望月記者はよく知られる存在です。この映画の撮影期間中、望月さんは、森友、加計学園問題の籠池夫妻や前川喜平元文科事務次官、レイプ事件で係争中の伊藤詩織さんらを取材。ミサイル貯蔵で揺れる陸上自衛隊宮古島駐屯地では弾薬庫の存在を暴露するスクープを飛ばします。
スーツケースを運びながら日本各地で取材をし、事実を基に忖度せず政治家、役人を追及し、いやがらせや脅迫にも屈しない姿は印象深く胸に刻まれます。
といっても、映画が伝えようとするのは望月記者の活躍物語ではありません。官邸会見や記者クラブの閉鎖性が問われ、撮影する監督自身も取材の壁にぶち当たる事態に―。
〈政治権力に対して質問する。疑問があったら追及する。これがなぜ注目されなきゃいけないのか〉―映画に出てくる監督の自問です。望月さんを描く映画が、メディアの劣化をあぶり出しにします。
「撮影しながら日本のメディアの組織化がとても進んでしまったと実感しました。組織として完成するということは、営利追求を大義に規則や指示を優先してしまうということです。自分を滅して組織を優先する、となるとジャーナリズムは衰退します」
メディアを叱咤激励しながら続けます。
「政治も同じです。特に今の自民党は、安倍首相を頂点とした一枚岩。議員たちはほぼ1人残らず組織に従属しています」
時折、画面に映し出される一方向に泳ぐ魚の群れ。タイトル「i」にも関わる一瞬の映像です。監督は、映画のヤマ場のモノローグで、それに連なる思いを語っています。

「歴史逆行」にあきらめない
「これまで自覚していなかったけど今回これを撮るにあたって、『集団と個』ということが自分の中のテーマなんだと気づきました。人間は集団の中で生きる生き物で、僕だっていろんな集団に入っていますし、集団と距離を置くのは絶対無理です。ただその時の意識の持ち方、集団にいるけど同時に個でもあるという自覚が大切だと思いますね」
監督が「ずっと気になっていた」という一枚の写真が、ヤマ場に出てきます。ナチス・ドイツ降伏後のパリ解放の場面、歴史の中での「個」のありようが問われるワンシーン。“あなたは、この時代をどう生きる?”という一人ひとりへの問いかけが響きます。
森さんは、テレビのディレクター、映画監督と並んでユニークな著述も旺盛に展開しています。近刊『すべての戦争は自衛から始まる』(講談社文庫)では、歴史に逆行するばかりの国の現状を憂えつつも「あきらめない」と。「だって子どももいますし、彼らに知ーらないってわけにいきませんからね」

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年11月20日付掲載


映画「i―新聞記者ドキュメント―」は、ともすると望月記者の活躍物語かと思ってしまいがちですが、「組織と個人の関係を問う」ことがテーマになっているんですね。
画面に映し出される一方向に泳ぐ魚の群れ。タイトル「i」にも関わる一瞬の映像。
ナチス・ドイツ降伏後のパリ解放の場面、歴史の中での「個」のありようが問われるワンシーン。“あなたは、この時代をどう生きる?”という一人ひとりへの問いかけ。
個人としての自覚を持って生きることが大事。

コメント
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