小惑星衝突 どう備える プラネタリー・ディフェンス
今年初め、ある小惑星が8年後に地球に衝突するかもしれないというニュースが世界を駆け巡りました。その心配はないとわかりましたが、小惑星衝突から地球を守る「プラネタリー・ディフェンス」の重要性が浮き彫りになりました。そうした中、日米欧の専門家による講演会が東京大学で開かれ、現在の取り組みの状況などを議論しました。(間宮利夫)

東京大学で開かれた公開講演会
専門家取り組み議論
衝突するかもしれないと言われた「2024YR4」は、昨年末、「小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)」の南米チリにある望遠鏡が発見。「国際小惑星警報ネットワーク(IAWN)」が翌月、1・3%の確率で約8年後に地球に衝突すると発表したのです。
この天体は大きさが推定40~90メートル。IAWNは、大きさ10メートル以上で衝突確率が1%以上と見積もられた場合に発表します。
観測が進むにつれ、衝突確率は一時3・1%まで上昇し、その後急速に低下。IAWNは2月、衝突確率は0・004%で、今後100年間地球に衝突する恐れなしと発表しました。ただ、月への衝突確率が3・8%となっています。

米アリゾナ州にあるバリンジャークレーター。5万年前に小惑星が衝突してできたとみられています(©USGS)
過去に何度も
地球への天体衝突は、過去何度もありました。
約6600万年前、現在のメキシコ・ユカタン半島に大きさ10キロメートル以上の天体が衝突し、恐竜が絶滅したとする説が有力です。
2013年2月にロシア・チェリャビンスク州に落下した天体は大きさが約17メートルあったと推定され、上空で爆発した際の衝撃波で多くの建物を壊し、その破片で人々に重軽傷を負わせました。
1908年6月にロシア・中央シベリアで東京都に匹敵する森林の木がなぎ倒されたツングースカ大爆発は大きさが50~60メートルの天体衝突だったとみられています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の吉川真准教授はじめ、専門家は地球に衝突する小惑星を早く発見することの重要性を強調しました。
ATLASのほか日本スペースガード協会美星スペースガードセンター(岡山県井原市)など世界各地の地上望遠鏡、宇宙望遠鏡の観測で、これまでに約144万個の小惑星が確認されています。
このうち約3万8000個が地球接近小惑星(NEO)で、2008年以降、予測された11個が実際に衝突しています。いずれも1~数メートルと小さく被害の報告はありませんでしたが、発見から衝突までの時間が長くて20時間程度でした。
2024YR4のように60メートル級の小惑星が衝突すれば大きな被害が出る可能性があります。恐竜絶滅の原因となったとされる10キロメートル級の小惑星はすでに発見され、近い将来の衝突はないとみられていますが、未発見が多数と考えられている数十~数百メートル級小惑星の早期発見が大きな課題です。
米航空宇宙局(NASA)は27年にプラネタリー・ディフェンス専用宇宙望遠鏡「NEOサーベイヤー」の打ち上げを計画しています。これまで難しかった、太陽方向から接近する小惑星の発見がしやすくなるといいます。

今年4月6日の小惑星の分布。+が太陽、青い点は内側から水星、金星、地球、火星、木星で赤い点が地球接近小惑星で、灰色がそれ以外の小惑星(©JAXA)

二重小惑星「ディディモス」に衝突直前の探査機の想像図(©NASA)
どんな性質か
地球接近小惑星は一つひとつ大きさや形状、構成する物質や密度などさまざまあり、探査も重要です。
JAXAの小惑星探査機はやぶさ、はやぶさ2などは地球接近小惑星を間近で観測し、その試料を持ち帰ってきました。それにより、その正体がさまざまな大きさの岩石の集合体であることなどを明らかにしました。はやぶさ2は、現在、二つの地球接近小惑星の観測を目指して飛行を続けています。
29年4月に大きさ約340メートルの小惑星「アポフィス」が地球から約3万2000キロメートルのところを通過します。間近で観測する絶好の機会に、欧州宇宙機関(ESA)は探査機ラムセスを打ち上げる計画で、JAXAもそれへの参加を検討しています。
軌道変え防ぐ
発見したとして、衝突を避ける方法はあるでしょうか。
探査機を衝突させて小惑星の軌道を変えるというのがその一つ。NASAは22年、大きさ約780メートルの二重小惑星「ディディモス」に探査機を衝突させる実験を行いました。その周りを回っているもう一方の小惑星の動きから、ディディモスに何らかの変化があったことが確認されました。24年に打ち上げられたESAの小惑星探査機「Hera」が26年に接近し、追観測を行う計画です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年5月25日付掲載
発見したとして、衝突を避ける方法はあるでしょうか。
探査機を衝突させて小惑星の軌道を変えるというのがその一つ。NASAは22年、大きさ約780メートルの二重小惑星「ディディモス」に探査機を衝突させる実験を行いました。その周りを回っているもう一方の小惑星の動きから、ディディモスに何らかの変化があったことが確認されました。24年に打ち上げられたESAの小惑星探査機「Hera」が26年に接近し、追観測を行う計画。
小惑星衝突を避ける取り組みも現実味を帯びていますね。
今年初め、ある小惑星が8年後に地球に衝突するかもしれないというニュースが世界を駆け巡りました。その心配はないとわかりましたが、小惑星衝突から地球を守る「プラネタリー・ディフェンス」の重要性が浮き彫りになりました。そうした中、日米欧の専門家による講演会が東京大学で開かれ、現在の取り組みの状況などを議論しました。(間宮利夫)

東京大学で開かれた公開講演会
専門家取り組み議論
衝突するかもしれないと言われた「2024YR4」は、昨年末、「小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)」の南米チリにある望遠鏡が発見。「国際小惑星警報ネットワーク(IAWN)」が翌月、1・3%の確率で約8年後に地球に衝突すると発表したのです。
この天体は大きさが推定40~90メートル。IAWNは、大きさ10メートル以上で衝突確率が1%以上と見積もられた場合に発表します。
観測が進むにつれ、衝突確率は一時3・1%まで上昇し、その後急速に低下。IAWNは2月、衝突確率は0・004%で、今後100年間地球に衝突する恐れなしと発表しました。ただ、月への衝突確率が3・8%となっています。

米アリゾナ州にあるバリンジャークレーター。5万年前に小惑星が衝突してできたとみられています(©USGS)
過去に何度も
地球への天体衝突は、過去何度もありました。
約6600万年前、現在のメキシコ・ユカタン半島に大きさ10キロメートル以上の天体が衝突し、恐竜が絶滅したとする説が有力です。
2013年2月にロシア・チェリャビンスク州に落下した天体は大きさが約17メートルあったと推定され、上空で爆発した際の衝撃波で多くの建物を壊し、その破片で人々に重軽傷を負わせました。
1908年6月にロシア・中央シベリアで東京都に匹敵する森林の木がなぎ倒されたツングースカ大爆発は大きさが50~60メートルの天体衝突だったとみられています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の吉川真准教授はじめ、専門家は地球に衝突する小惑星を早く発見することの重要性を強調しました。
ATLASのほか日本スペースガード協会美星スペースガードセンター(岡山県井原市)など世界各地の地上望遠鏡、宇宙望遠鏡の観測で、これまでに約144万個の小惑星が確認されています。
このうち約3万8000個が地球接近小惑星(NEO)で、2008年以降、予測された11個が実際に衝突しています。いずれも1~数メートルと小さく被害の報告はありませんでしたが、発見から衝突までの時間が長くて20時間程度でした。
2024YR4のように60メートル級の小惑星が衝突すれば大きな被害が出る可能性があります。恐竜絶滅の原因となったとされる10キロメートル級の小惑星はすでに発見され、近い将来の衝突はないとみられていますが、未発見が多数と考えられている数十~数百メートル級小惑星の早期発見が大きな課題です。
米航空宇宙局(NASA)は27年にプラネタリー・ディフェンス専用宇宙望遠鏡「NEOサーベイヤー」の打ち上げを計画しています。これまで難しかった、太陽方向から接近する小惑星の発見がしやすくなるといいます。

今年4月6日の小惑星の分布。+が太陽、青い点は内側から水星、金星、地球、火星、木星で赤い点が地球接近小惑星で、灰色がそれ以外の小惑星(©JAXA)

二重小惑星「ディディモス」に衝突直前の探査機の想像図(©NASA)
どんな性質か
地球接近小惑星は一つひとつ大きさや形状、構成する物質や密度などさまざまあり、探査も重要です。
JAXAの小惑星探査機はやぶさ、はやぶさ2などは地球接近小惑星を間近で観測し、その試料を持ち帰ってきました。それにより、その正体がさまざまな大きさの岩石の集合体であることなどを明らかにしました。はやぶさ2は、現在、二つの地球接近小惑星の観測を目指して飛行を続けています。
29年4月に大きさ約340メートルの小惑星「アポフィス」が地球から約3万2000キロメートルのところを通過します。間近で観測する絶好の機会に、欧州宇宙機関(ESA)は探査機ラムセスを打ち上げる計画で、JAXAもそれへの参加を検討しています。
軌道変え防ぐ
発見したとして、衝突を避ける方法はあるでしょうか。
探査機を衝突させて小惑星の軌道を変えるというのがその一つ。NASAは22年、大きさ約780メートルの二重小惑星「ディディモス」に探査機を衝突させる実験を行いました。その周りを回っているもう一方の小惑星の動きから、ディディモスに何らかの変化があったことが確認されました。24年に打ち上げられたESAの小惑星探査機「Hera」が26年に接近し、追観測を行う計画です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年5月25日付掲載
発見したとして、衝突を避ける方法はあるでしょうか。
探査機を衝突させて小惑星の軌道を変えるというのがその一つ。NASAは22年、大きさ約780メートルの二重小惑星「ディディモス」に探査機を衝突させる実験を行いました。その周りを回っているもう一方の小惑星の動きから、ディディモスに何らかの変化があったことが確認されました。24年に打ち上げられたESAの小惑星探査機「Hera」が26年に接近し、追観測を行う計画。
小惑星衝突を避ける取り組みも現実味を帯びていますね。