きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

地球温暖化防止 COP21 「2度未満」へ新たな枠組み

2015-11-29 15:45:17 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
地球温暖化防止 COP21 「2度未満」へ新たな枠組み
先進国と途上国の差異化 焦点に



あす開幕 課題と各国は

パリで30日、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開幕します。産業革命期(1850年頃)に比べ世界の気温上昇を「2度未満」に抑えるために、すべての国を対象にした2020年以降の新たな国際的枠組みづくりが目的です。
(パリ=島崎桂、社会部=野村説)

今回の会議の論点は、排出量削減の「長期目標」、各国の目標の引き上げ、気候変動による「損失と被害」の位置づけ、資金支援など多岐にわたります。
特に、温室効果ガス排出に大きな責任を持つ先進国に加え、中国、インドが世界第1、第3の排出国になっている今、途上国の取り組みが不可欠です。先進国と途上国との取り組みの差をどのように認めるか(差異化)が交渉の焦点です。

目標改善へ
国ごとの取り組みでは、会議を前に約150力国が自主的な削減目標を提出しています(表)。
しかし、その目標を合計しても「(気温上昇が)3度に達する恐れ」(ファビウス仏外相)があります。目標改善のために、たとえば各国が「5年」などの短期間で次の目標を出し、進ちょく状況を検証するなど実効性のある仕組みづくりができるかどうか、注目されています。
資金支援では、先進各国は、途上国の経済成長を妨げない気候変動対策のため、「2020年までに年1000億ドル(約12兆円)」の資金援助を行うとしており、会議での正式合意が見込まれています。
気温上昇は、すでに世界各地で災害や不作を引き起こし、島しょ国の一部では、海面上昇の被害が出始めています。「世界で最も気候変動の影響を受けやすい人々は、悲劇の連鎖に取り込まれている」(国際環境NGO「地球の友」)との声が上がっています。
実効性を持った高水準の合意が求められています。


【各国・地域が提出している削減目標】
日本2030年に26%減(13年比)
米国25年に26~28%減(05年比)
欧州連合30年に40%減(90年比)
中国30年までに減少に転じる
インド30年までに国内総生産あたりの排出量を33~35%減(05年比)
ロシア30年に25~30%減(90年比)


原発も議論
日本を含む一部の国が気候変動対策として原子力エネルギーを維持・拡充する方針を示す中、会議では原発の扱いも議論になりそうです。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は昨年4月の報告書で、原発を「低炭素エネルギー」と位置付ける一方、廃棄物処理方法の不在や事故の危険性など「さまざまな障壁とリスクが存在する」と指摘。原発を停止しても、風力や太陽光など他のエネルギー源で「代替可能」であり、「(温室効果ガスの)削減費用はわずかしか上昇しない」としています。



南極の氷の上に立つアデリーペンギン=2010年1月(ロイター)

日本:低い目標「脱炭素」に逆行
世界第5位の排出国である日本の削減目標は「2030年に26%減」(13年比)。基準年を1990年にすると18%減にしかならず、内外から「低すぎる」と批判されています。WWFジャパンの山岸尚之氏は「見掛けの数合わせで粉飾された、誠意のない態度だ」と批判します。
低い目標の背景にあるのが原発固執と石炭推進、再生可能エネルギー抑制のエネルギー基本計画です。特に二酸化炭素を大量に排出する石炭について、国内には48基の石炭発電所の建設計画があり、海外の石炭プロジェクトには世界最大の融資国になるなど世界の「脱炭素」の流れに背を向けています。(野村説)

EU:50年までに8割超を削減
欧州連合(EU)は、「2030年までに1990年比で少なくとも40%削減」し、長期的には「2050年までに1990年比で80~95%削減する」と表明。再生可能エネルギーについては、「エネルギー生産に占める割合を30年までに少なくとも27%にする」としています。
途上国支援では、議長国フランスやドイツを中心に支援強化の方針を決めており、他の先進国にも協力を呼び掛けるとみられます。このほか、▽欧州以外の大量排出国への対策強化の奨励・支援▽温暖化の影響への対処―なども検討しています。
(パリ=島崎桂)

米国:削減目標に拘束力求めず
ローズ米大統領副補佐官は24日の会見で「気候変動対策で国際的な努力を強めることはオバマ政権の外交政策の特徴だ」とし、COP21で「主要国が任務を果たしていることを示すため各国を結集する役割を果たす」と述べました。
ホワイトハウスによると、オバマ大統領は30日、中国の習近平国家主席、インドのモディ首相と会談します。温室効果ガス排出量で世界1位と3位の中印両国と相次いで協議することで、途上国も含めた新しい国際協定の合意へ弾みをつけたい考えです。
米政府は国際協定について「多くの条項は法的拘束力を持つが、いくつかは拘束力を持たない混合型」(国務省のスターン気候変動担当特使)が望ましいとし、各国の温室効果ガスの削減目標には拘束力を持たせないよう主張しています。
背景には、気候変動対策で負担を嫌う野党共和党が米議会で多数を占めるなか、法的拘束力のある削減目標は批准されない可能性があることがあります。
オバマ政権は温室効果ガスの排出量を2025年に05年比26~28%削減する目標を提出。各国の目標を5年ごとに見直し、野心的な内容に保つよう主張しています。
(ワシントン=島田峰隆)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月29日付掲載


すでに温室効果ガス排出量で世界1位と3位の中国とインドで、削減目標が達成できるように先進国の支援が求められます。
先進国は、独自に戦略的な削減目標を達成するためにイニシアチブを発揮しないといけない。
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どうみる改悪派遣法 座談会③ 雇用守る共同大きく

2015-11-28 18:36:46 | 働く権利・賃金・雇用問題について
どうみる改悪派遣法 座談会③ 雇用守る共同大きく

全労連事務局長  井上 久さん
日本共産党副委員長(参院議員) 小池 晃さん
弁護士  鷲見(すみ) 賢一郎さん

でたらめ答弁突いた論戦
―派遣労働者の正社員化(直接雇用)の道を閉ざす問題点を明らかにした論戦はインパクトがありましたね。
鷲見 私は参考人として、業務単位の期間制限をなくしたことが重大な問題だと指摘しました。
少し説明しますと、派遣の期間制限はこれまで業務単位だったのです。“派遣法の生みの親”といわれる高梨昌氏が著書『詳解労働者派遣法』で書いていますが、期間制限は業務単位にするから意味がある。業務単位で制限すれば、期間が過ぎたらその職場ではもう一切派遣を使えない。そういう方法をとらないと、派遣先は派遣会社や派遣労働者を入れ替えて何年でも派遣を使うことができることになる。高梨氏は、業務単位の期間制限の方法以外では「派遣先の常用雇用の代替防止の実効を期すことが困難となる」と書いています。
また、業務単位の期間制限のもとでは、制限期間が過ぎてなおその業務を続けたければ、派遣労働者を直接雇用するしか他に方法がない。ですから業務単位の期間制限は直接雇用を促進する機能があるわけです。今回の改悪は、その機能も奪ってしまったわけです。

人を代えて継続
正社員への道閉ざす

井上 鷲見先生がそれを参考人のときに主張されて、民主党の雰囲気が変わりましたよね。
何が問題なのかよくわかったという雰囲気になりました。
鷲見 期間制限といっても業務単位と個人単位では意味がぜんぜん違うのです。個人単位の期間制限は、人を代えればいくらでも続けられる。派遣労働者の正社員への道はなくなるわけです。
小池 「希望すれば正社員になれる」と安倍首相はいったけれど、派遣先に雇ってくれるよう「お願い」するだけです。安倍首相も塩崎厚労相も「これは経営判断だ」と答えて、何の保障もないことが明らかになりました。
正社員になれるようにキャリアアップ措置をとるというのもおかしい話です。だいたい正社員よりもキャリア、スキルがある派遣労働者は少なくありません。キャリアがないから正社員になれないのではなくて、「雇用の調整弁」として使い捨てにしたいから派遣にしているのです。キャリアアップ措置で正社員への道を開くというが何の実効性もないじゃないかと迫ると、政府はまともに答えられない。

派遣労働者が実態語り運動広げた
―派遣労働者が反対の声をあげる動きが注目されました。
小池 派遣で働いている当事者が衆議院、参議院の参考人質疑、地方公聴会でリアルな実態を語ってくれ、傍聴にもつめかけてくれたのは大きかったですね。
井上 われわれや労働弁護団の記者会見、宣伝行動に参加し、労働組合に入る人も出ました。身分が不安定で、声を上げるのがきびしいという人が多かったと思いますが、これは重要な動きでした。
鷲見 派遣労働者は賃上げ・一時金なし、交通費なし、ロッカーの使用差別などひどい扱いを受けています。それなのに、また改悪かと怒っています。
「派遣労働者110番」でひどいと思ったのは、労災かくしです。仕事で指を傷めて病院で診察をうけたら、労働災害にあたると診断された。派遣先の上司に労災申請について相談したら、上司はいやな顔をし、「うち、これまでも何人か死んでるんだよ」といわれたというんです。こういう人たちと新たな運動をともに起こしていく必要があると思います。
小池 参考人質疑や公聴会で「人間扱いされていない」という当事者のリアルな話がすごく響きました。「派遣元に無期雇用されている派遣は安定している」と政府がいくらいっても、そんな実態はない、仕事がなくなったらすぐに切られる経験を繰り返しているわけだから、説明がいかにでたらめかわかる。現場の実態は、全体の議論に影響を与えましたね。



派遣法大改悪に反対する人たち=5月27日、衆院第2議員会館前

労働法制の改悪阻止へ
―改悪派遣法のもとで一雇用破壊を許さないたたかいの強化が重要になっていますね。
労働組合の役割が大きくなる
鷲見 私は労働組合の役割が大きくなると思います。改悪派遣法で、派遣先企業は3年たって派遣を継続するかどうか過半数労働組合等の意見聴取をしなければなりません。たとえば、労働組合から再度の異議があったら、派遣延長の中止、期間の短縮などを検討することが「派遣先指針」に盛り込まれました。
井上 これは重要だと僕も思っています。労働組合への意見聴取問題は、国会論戦でも意見を聞くだけで実効性がないという批判があり、ついに修正もして詳しく書かざるをえませんでした。
小池 国会は日本共産党が選挙で躍進して、厚生労働委員会は衆議院で高橋千鶴子さんと堀内照文さんの2人体制になりました。参議院の厚労委員は1人だけれども、私だけでなく、吉良よし子さん、辰巳孝太郎さんも質問に立って論戦をやりました。躍進した党議員団の力が論戦で発揮されたことをぜひとも強調しておきたい。
今後のたたかいでは、安倍首相がいい続けた「正社員の道が開かれる」というのと法律はまったく正反対。正社員は増えず、逆に派遣労働者が増えていく。ここは彼らの最大の弱点ですよ。「1億総活躍社会」といいながら、格差と貧困を広げる派遣法の改悪をやったのは支離滅裂なわけで、そこを太く突いてたたかう必要があると思います。
井上 政府の「1億総活躍」というのは労働力不足が深刻で、要は安上がりで使い捨て可能な労働者として若者や女性、高齢者、外国人労働者を活用しようということです。
大企業がもうかればやがて家計に回ってくるという「トリクルダウン」なんてないんだということは保守の人たちも含めてだんだん分かってきて、世論は変わりつつあります。賃金底上げ、雇用の安定、社会保障の充実、中小企業の支援で内需の拡大をはかる地域循環型の社会に転換することが何より重要です。

―最後に、労働法制改悪に反対するたたかいの展望についてお話しください。
小池 解雇の金銭解決問題が急浮上してきましたし、労働基準法を改悪する「残業代ゼロ」法案は継続審議となっています。政府と与党は来年の国会で「残業代ゼロ法案」の成立をねらっていますが、国会直後に参議院選挙もあるから、彼らも追いつめられていきます。たたかい時ですね。
鷲見 派遣法改悪反対のたたかいを通じて労働法制への関心は高まっています。「残業代ゼロ」制度に反対するたたかいにも生きると思います。厚労省は10月29日に解雇の金銭解決制度の検討会を開始しています。早急に取り組みを強化する必要があります。

「残業代ゼロ」法案許さないたたかいを
小池 「残業代ゼロ」法案の審議では、残業時間の上限規制、勤務間休憩のインターバル規制を中心に労働時間規制の対案を示してたたかう必要があると思います。
井上 安倍政権の雇用破壊は「企業が世界で一番活躍しやすい国」をつくるという路線から出ています。その結果、企業は、派遣や非正規の労働者を低賃金で使い捨てにし、300兆円もの内部留保をためこんで深刻な矛盾がおこっています。もっと雇用の安定、派遣労働者の待遇改善、地域の活性化などに使わせる運動を強めたいと考えています。
鷲見 派遣法について私は、抜本改正の展望を強く打ち出す必要があると思います。労働者派遣は臨時的・一時的業務に限定すること。それと均等待遇原則を強くいうべきだと思います。この二つが確立できれば、派遣の弊害は大幅に軽減できます。この間のたたかいは、派遣法の抜本改正にむけて大きな力になると思います。
小池 日本共産党はいま「国民連合政府」の提起をしていますが、これは戦争法廃止と立憲主義を取り戻すという一点で共同の政府をつくろうという提起です。それ以外の課題でも合意できれば、一致点が広がると考えています。その最たるものが労働法制の分野だと思うんです。先の国会でも、野党が一致して廃案という立場で臨んだのは派遣法改悪案でした。改悪を元に戻すという点で野党が力を合わせていきたいと思います。そのなかで労働者を保護する派遣法に抜本的に変える展望が開かれると思います。いよいよたたかいがいのある情勢だと思います。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月27日付掲載


改悪派遣法で、派遣先企業は3年たって派遣を継続するかどうか過半数労働組合等の意見聴取をしなければならない。
ますます労働組合の役割が増します。
日本共産党が選挙で躍進して、厚生労働委員会は衆議院で高橋千鶴子さんと堀内照文さんの2人体制。頼りがいがあります。
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どうみる改悪派遣法 座談会② 院内外で政府追い詰めた

2015-11-27 17:31:57 | 働く権利・賃金・雇用問題について
どうみる改悪派遣法 座談会② 院内外で政府追い詰めた

全労連事務局長  井上 久さん
日本共産党副委員長(参院議員) 小池 晃さん
弁護士  鷲見(すみ) 賢一郎さん

―労働者派遣法改悪に反対するたたかいは3国会に及びました。法律は成立しましたが、成立が危ぶまれるほどぎりぎりまで追い詰めた大闘争でした。
井上 まず3国会のたたかいを通じて世論が大きく変わりましたね。最初、マスコミの評価も「いいところもあるよね」という見方がかなりありました。そういう状況から「これは雇用を不安定にする」という声が広がって、批判的な論説が出るようになりました。賃金の底上げ、雇用の安定が日本経済の課題になっているとき、逆行ではないかという主張がはっきり出てきました。

世論つくった労組の共同、法律家との連携
―運動が世論をつくったんですね。
井上 はい。労働組合間の共同はかつてなくすすみました。「雇用共同アクション」ですけれども、全労連、全労協、純中立など、一部連合加盟組合も含めて広範な共同ができた。初めて同じ項目の署名用紙を使いましたし、団体の連名で国への申し入れ書を出すことができたのは象徴的でした。質的な発展だったと思います。それから日本弁護士連合会など法曹関係者を軸により広範な共同した市民集会などが開かれたのも変化です。
最終盤に派遣労働者が声を上げ、労働組合を結成する動きがおこりました。改悪派遣法にたいして派遣労働者といっしょにたたかっていく重要な足がかりができました。
鷲見 自由法曹団、全労連などで7月に、派遣労働者の声を国会に届けようと「派遣労働110番」をやったんです。びっくりしたのは改悪の内容をよく知っていて心配していたことです。「派遣期間が上限3年になったらクビを切られるんじゃないか」という不安の声がたいへん強かった。「自分も何か活動をしたい」という人もいました。
私は街頭宣伝にも何度か出ましたが、話を熱心に聞いてくれる。チラシの受け取りもだんだんよくなり、関心が強まっていることを感じました。
小池 たたかいの初期に、日本弁護士連合会が国会内で何度も集会を開き、野党各党の代表があいさつする機会をつくるなど法曹界にも大きな役割を果たしていただきました。
論戦でも法律家のみなさんと連携をとりました。最終盤に鷲見さんから提起を受けて私が質問したら、法律の付則をめぐって政府がとんでもない解釈を出して、委員会が散会になったことがあります。厚労省は審議がとまって青ざめていましたよ。今国会で法律が通るのか危うい状況になり・ましたからね。



「派遣法案を廃案にしよう」とアピールするデモ行進=7月2日、京都市

法案ボロボロ 審議中断くり返す
―国会論戦では、こんな法案を通していいのかというほど、法案のひどさを浮き彫りにしましたね。
小池 政府の答弁は最初からひどいものでした。まともに答弁できずに審議が止まる、その繰り返しなんですから。
井上 派遣法は戦争法案以上といってもいいほどポロポロですよね。だから政府の答弁は本当に壊れたテープレコーダーのように、一番最初の趣旨説明の内容を繰り返しているだけでした。最後の安倍首相なんて、間違った紙を読んでいましたよね、棒読みで。(一同笑い)
小池 壊れたテープレコーダーそのものですよ。その答弁を聞いて、最初は賛成しようとしていた一部の野党も、最後はみんな反対した。それは大きかったんじゃないですか。論戦を聞いていたら賛成できないですよ。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月26日付掲載


日本弁護士会などが仲介役となって、派遣法改悪反対で野党共闘が進んだんですね。
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どうみる改悪派遣法 座談会① 制度の根本を破壊

2015-11-26 13:04:49 | 働く権利・賃金・雇用問題について
どうみる改悪派遣法 座談会① 制度の根本を破壊

先の通常国会で労働者派遣法が改悪され、不安定な働き方の増加が懸念されています。改悪法の内容と問題点、雇用破壊を許さないたたかいの展望などをめぐって、井上久全労連事務局長、小池晃日本共産党副委員長(参議院厚生労働委員)、鷲見賢一郎弁護士に語り合ってもらいました。司会は内藤豊通「しんぶん赤旗」国民運動部長。

―今回の労働者派遣法の改悪は、これまでと比較できない大改悪といわれていますね。
法律の基本原則なくし、企業の野放し利用めざす
井上 労働者派遣には臨時的・一時的な業務に限定するという大原則があります。これを事実上なくして、企業が低賃金の労働者派遣を野放しで使えるようにしました。具体的には派遣制限期間を一応3年に設定していますが、派遣先企業は3年で人を入れ替えればいつまでも派遣を使いつづけることができる。労働組合など労働者の過半数代表の意見を聴取すればくりかえし延長できる。まさに労働者派遇の根幹を変える法制定以来の大改悪だと思います。
鷲見 まさしく法制定以来の大改悪です。労働者派遣法は1985年にできて、99年に対象業務を広げたわけですが、今度は派遣期間制限を事実上なくし、常用代替防止(常用労働に派遣を入れてはならない)という法の原則に正面から手をつけた大改悪ですよ。
私たちは、これまでのたたかいで、99年のときには業務単位で1年の期間制限をつけ、それを超えたら派遣先が派遣労働者を優先的に直接雇用する努力義務をかちとりました(40条の3)。03年のときも、期間制限を1年から3年まで延ばし、製造業務派遣を解禁する改悪がされましたが、1~3年を超えて派遣を使っているときについて、派遣先の直接雇用義務をかちとっています(40条の4)。今回、そういうものをことごとく取り払ってしまったんです。



全労連事務局長  井上 久さん
日本共産党副委員長(参院議員) 小池 晃さん
弁護士  鷲見(すみ) 賢一郎さん


「みなし制度」の施行のがれ、厚労省文書で成立急ぐ
小池 まちがいなく歴史的大改悪です。大原則だった臨時的・一時的業務に限る、常用雇用代替にしない担保をなくした。まがりなりにもかちとってきた派遣先に課せられていた直接雇用義務をほとんど消滅させたということですよね。
違法派遣があった場に派遣先が労働者に直接雇用を申し込んだとみなす、いわゆる「みなし雇用制度」は形のうえでは残ったけれど、ほとんど適用されなくなるようにした。労働者の声でかちとってきた成果を全部奪うという意図が明確な法律だと思います。
井上 「みなし雇用制度」は3年前に派遣法にもりこまれたのですが、施行されるのがことしの10月1日だったわけです。違法派遣に苦しんでいた多くの派遣労働者から施行が待ち望まれていましたが、今回の法改悪で期間制限が事実上牌なくなり、「みなし」制度川帆が適用されなくなりました。厚生労働省が「10・1ペーパー」といわれる文書を出して、施行日前の法案の成立を後押ししたのは許せませんよ。
小池 衆院審議が始まる段階で厚労省が、10月1日の前に法改正されないと「訴訟が乱発する」とか「大量の失業者がでる」といったデマを並べた、いわゆる「10・1ペーパー」をつくって一部国会議員に回し、法律を早く成立させる必要があるとふれ回ったことが明らかになったわけです。
私も国会で「これは派遣業界の、派遣業界による、派遣業界のための改悪だ」と批判したけれども、これだけ露骨なものがあるのかとあきれるぐらい露骨でした。
井上 最終盤に改悪法の施行日を9月30日ぎりぎりに設定して、強引に成立を強行しました。「みなし」制度が施行される1日前です。さんざん期間制限違反をしてきた違法企業を免罪することを厚労省がやった。労働行政のあり方にかかわる大問題だったと思います。厚労省と派遣会社はパートナーだということがはっきりしたように思います。
小池 厚労省と派遣業界のつながりは強いです。人材派遣協会の専務理事ポストは、5代続けて厚労省キャリア官僚OBの天下りで占めていました。それから厚労省がパソナをはじめとする人材派遣業界に100億円規模で事業委託をしている。カネとヒトによる癒着があるんですよね。
鷲見 私は今回のたたかいをふりかえってみて、世論の点ではわれわれは勝ったんじゃないかと思うんです。日経新聞の調査で68%の人が派遣法「改正」に反対だと答えています。大改悪はされましたが、この成果を確信にして改悪派遣法のもとでのたたかいに足早にとりくむ必要があると思っています。



派遣法の大改悪を止めようと唱和する人たち=5月20日、国会前

次につながるたたかいの成果も
労働界と全野党が反対、政府の矛盾つき運動強化

小池 そうですね。法律の中身がひどいから、全労連、連合が最後まで廃案の旗を掲げてたたかいぬいた。法律家のみなさんも反対を貫いた。全労協も含めた雇用共同アクションという形で幅広い人たちがたたかった。最終盤の論戦が戦争法と同時並行でおこなわれたなかで、参院段階では維新も含めて全野党が足並みそろえて反対の態度をとりました。そういう意味で次につながるたたかいになったというのが私の印象です。
井上 法律が成立した後に厚労省がつくったパンフやリーフレットなどをみると運動の成果を感じます。「派遣で働く皆さまへ」という文書があります。最初に「派遣労働という働き方、およびその利用は、臨時的・一時的なものであることを原則とするという考え方のもと、常用代替を防止するとともに、派遣労働者のより一層の雇用の安定、キャリアアップを図るため、労働者派遣法が改正されます」と書いています。実際は逆ですが、そう書かざるを得なかったと思います。
鷲見 付帯決議が39項目つきました。そのなかには、私たちの声を無視できなかったと思われるものもあります。第一項の2番に「画接雇用が労働政策上の原則である」といい、派遣元と派遣先のそれぞれに「派遣労働者の正社員化に向けた取組を講じさせる」
と書いています。安倍晋三首相、塩崎恭久厚労相は、正社員化への道が開けるようにすると何回もいっていたから、こう書かざるを得なかった。
小池 安倍首相は「正社員を希望する方にその道が開けるようにするのが、今回の法案だ」「派遣労働者の待遇改善を図るものだ」と繰り返しました。そういうごまかしを繰り返したことによって起こった矛盾が、付帯決議や省令、指針などに出てきているわけです。
井上 よく分析して、改悪法を利用して職場で正社員からの置き換えをすすめさせないとりくみや、派遣労働者を組織化して、均等待遇の実現、直接雇用に切り替える運動を両輪ですすめようと思っています。
(つづく)(4回連載の予定)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月25日付掲載


派遣労働は「臨時的・一時的な業務に限定する」という大原則を根本から取り崩した今回の派遣法改悪。
労働者や法律家の運動により、39項目もの付帯決議。
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政権交代へ ミャンマー③ 透明性ある経済めざす

2015-11-22 14:05:48 | 国際政治
政権交代へ ミャンマー③ 透明性ある経済めざす

ミャンマーの野党・国民民主連盟(NLD)が総選挙で掲げた公約の3番目の柱が「経済発展」。これは内外で大いに注目されています。
テイン・セイン現政権下で経済の自由化が進み、海外からの投資も増大して経済成長率は政権発足以降、右肩上がり。現在、年8%台を推移しています。しかし―。
「テイン・セイン政権は、海外企業との事業契約内容について公表したことはなかった」―NLDのソウ・ウィン経済委員(70)はこう批判し、同政権とNLDの経済政策の違いの一つに「透明性」を挙げます。
ダム建設など大型事業で現地住民の意思を無視して問題となったことが多いのが現政権。NLDの新政権は、事前調査と住民との協議、説明会などを実施し、政府、企業、住民がそれぞれ利益を享受できるよう努力するとしています。

軍の経済活動
第2次世界大戦直後、ミャンマー(当時ビルマ)は東南アジアでもっとも豊かな国といわれ、経済成長が期待された国でした。しかし1962年に軍がクーデターで実権を掌握して以降、経済成長がほぼストップ。軍政による経済運営は失敗し、域内最貧国と呼ばれるようになりました。
一方、軍政下で中国など一部の国がミャンマー国内の開発事業に関与するようになりますが、利益は企業やミャンマー軍部に流れて、住民や国家財政には還元されず、環境破壊も進んだとされます。
ミャンマーでは軍自身が経済活動に関与し、企業や工場、商店などを経営・保有しています。国内の経済活動の諸規定や法律を無視した活動も問題となっており、新政権はこれらの問題への対応も迫られることになります。
ウィン氏は、外国資本の投資については国際的基準と国内法を順守して国民を保護していくと主張。軍の経済活動についても、国内法を新たに整備していくなかで対応するとしています。



10日、ヤンゴンに建設中の国民民主連盟(NLD)の新しい党本部

財政も課題に
財政改革も新政権の重要課題です。今年6月にNLDが発表した「経済の戦略と優先課題」は、ミャンマーの社会・経済発展が低迷している主要因について、「国家財政がぜい弱だ」と指摘。「透明性のある財政制度に改善していく」と述べています。
また、税収の低さも問題となっており、国民に負担をかけずに経済成長をはかりながら税収を高めていくとしています。少数民族地域内にある天然資源から得られる収入について、少数民族との間で公平な富の分配を実現することで、少数民族との和平を促進していくとしています。
(ヤンゴン=松本眞志写真も)
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月20日付掲載


かつては東南アジアトップレベルだった経済が、軍が経済を握るようになって最貧国へ。
軍の特権を排除し、税収も負担能力に応じた徴収を。
経済も国家財政も立て直します。
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