地球温暖化防止 COP21 「2度未満」へ新たな枠組み
先進国と途上国の差異化 焦点に
あす開幕 課題と各国は
パリで30日、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開幕します。産業革命期(1850年頃)に比べ世界の気温上昇を「2度未満」に抑えるために、すべての国を対象にした2020年以降の新たな国際的枠組みづくりが目的です。
(パリ=島崎桂、社会部=野村説)
今回の会議の論点は、排出量削減の「長期目標」、各国の目標の引き上げ、気候変動による「損失と被害」の位置づけ、資金支援など多岐にわたります。
特に、温室効果ガス排出に大きな責任を持つ先進国に加え、中国、インドが世界第1、第3の排出国になっている今、途上国の取り組みが不可欠です。先進国と途上国との取り組みの差をどのように認めるか(差異化)が交渉の焦点です。
目標改善へ
国ごとの取り組みでは、会議を前に約150力国が自主的な削減目標を提出しています(表)。
しかし、その目標を合計しても「(気温上昇が)3度に達する恐れ」(ファビウス仏外相)があります。目標改善のために、たとえば各国が「5年」などの短期間で次の目標を出し、進ちょく状況を検証するなど実効性のある仕組みづくりができるかどうか、注目されています。
資金支援では、先進各国は、途上国の経済成長を妨げない気候変動対策のため、「2020年までに年1000億ドル(約12兆円)」の資金援助を行うとしており、会議での正式合意が見込まれています。
気温上昇は、すでに世界各地で災害や不作を引き起こし、島しょ国の一部では、海面上昇の被害が出始めています。「世界で最も気候変動の影響を受けやすい人々は、悲劇の連鎖に取り込まれている」(国際環境NGO「地球の友」)との声が上がっています。
実効性を持った高水準の合意が求められています。
【各国・地域が提出している削減目標】
原発も議論
日本を含む一部の国が気候変動対策として原子力エネルギーを維持・拡充する方針を示す中、会議では原発の扱いも議論になりそうです。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は昨年4月の報告書で、原発を「低炭素エネルギー」と位置付ける一方、廃棄物処理方法の不在や事故の危険性など「さまざまな障壁とリスクが存在する」と指摘。原発を停止しても、風力や太陽光など他のエネルギー源で「代替可能」であり、「(温室効果ガスの)削減費用はわずかしか上昇しない」としています。
南極の氷の上に立つアデリーペンギン=2010年1月(ロイター)
日本:低い目標「脱炭素」に逆行
世界第5位の排出国である日本の削減目標は「2030年に26%減」(13年比)。基準年を1990年にすると18%減にしかならず、内外から「低すぎる」と批判されています。WWFジャパンの山岸尚之氏は「見掛けの数合わせで粉飾された、誠意のない態度だ」と批判します。
低い目標の背景にあるのが原発固執と石炭推進、再生可能エネルギー抑制のエネルギー基本計画です。特に二酸化炭素を大量に排出する石炭について、国内には48基の石炭発電所の建設計画があり、海外の石炭プロジェクトには世界最大の融資国になるなど世界の「脱炭素」の流れに背を向けています。(野村説)
EU:50年までに8割超を削減
欧州連合(EU)は、「2030年までに1990年比で少なくとも40%削減」し、長期的には「2050年までに1990年比で80~95%削減する」と表明。再生可能エネルギーについては、「エネルギー生産に占める割合を30年までに少なくとも27%にする」としています。
途上国支援では、議長国フランスやドイツを中心に支援強化の方針を決めており、他の先進国にも協力を呼び掛けるとみられます。このほか、▽欧州以外の大量排出国への対策強化の奨励・支援▽温暖化の影響への対処―なども検討しています。
(パリ=島崎桂)
米国:削減目標に拘束力求めず
ローズ米大統領副補佐官は24日の会見で「気候変動対策で国際的な努力を強めることはオバマ政権の外交政策の特徴だ」とし、COP21で「主要国が任務を果たしていることを示すため各国を結集する役割を果たす」と述べました。
ホワイトハウスによると、オバマ大統領は30日、中国の習近平国家主席、インドのモディ首相と会談します。温室効果ガス排出量で世界1位と3位の中印両国と相次いで協議することで、途上国も含めた新しい国際協定の合意へ弾みをつけたい考えです。
米政府は国際協定について「多くの条項は法的拘束力を持つが、いくつかは拘束力を持たない混合型」(国務省のスターン気候変動担当特使)が望ましいとし、各国の温室効果ガスの削減目標には拘束力を持たせないよう主張しています。
背景には、気候変動対策で負担を嫌う野党共和党が米議会で多数を占めるなか、法的拘束力のある削減目標は批准されない可能性があることがあります。
オバマ政権は温室効果ガスの排出量を2025年に05年比26~28%削減する目標を提出。各国の目標を5年ごとに見直し、野心的な内容に保つよう主張しています。
(ワシントン=島田峰隆)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月29日付掲載
すでに温室効果ガス排出量で世界1位と3位の中国とインドで、削減目標が達成できるように先進国の支援が求められます。
先進国は、独自に戦略的な削減目標を達成するためにイニシアチブを発揮しないといけない。
先進国と途上国の差異化 焦点に
あす開幕 課題と各国は
パリで30日、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開幕します。産業革命期(1850年頃)に比べ世界の気温上昇を「2度未満」に抑えるために、すべての国を対象にした2020年以降の新たな国際的枠組みづくりが目的です。
(パリ=島崎桂、社会部=野村説)
今回の会議の論点は、排出量削減の「長期目標」、各国の目標の引き上げ、気候変動による「損失と被害」の位置づけ、資金支援など多岐にわたります。
特に、温室効果ガス排出に大きな責任を持つ先進国に加え、中国、インドが世界第1、第3の排出国になっている今、途上国の取り組みが不可欠です。先進国と途上国との取り組みの差をどのように認めるか(差異化)が交渉の焦点です。
目標改善へ
国ごとの取り組みでは、会議を前に約150力国が自主的な削減目標を提出しています(表)。
しかし、その目標を合計しても「(気温上昇が)3度に達する恐れ」(ファビウス仏外相)があります。目標改善のために、たとえば各国が「5年」などの短期間で次の目標を出し、進ちょく状況を検証するなど実効性のある仕組みづくりができるかどうか、注目されています。
資金支援では、先進各国は、途上国の経済成長を妨げない気候変動対策のため、「2020年までに年1000億ドル(約12兆円)」の資金援助を行うとしており、会議での正式合意が見込まれています。
気温上昇は、すでに世界各地で災害や不作を引き起こし、島しょ国の一部では、海面上昇の被害が出始めています。「世界で最も気候変動の影響を受けやすい人々は、悲劇の連鎖に取り込まれている」(国際環境NGO「地球の友」)との声が上がっています。
実効性を持った高水準の合意が求められています。
【各国・地域が提出している削減目標】
日本 | 2030年に26%減(13年比) |
米国 | 25年に26~28%減(05年比) |
欧州連合 | 30年に40%減(90年比) |
中国 | 30年までに減少に転じる |
インド | 30年までに国内総生産あたりの排出量を33~35%減(05年比) |
ロシア | 30年に25~30%減(90年比) |
原発も議論
日本を含む一部の国が気候変動対策として原子力エネルギーを維持・拡充する方針を示す中、会議では原発の扱いも議論になりそうです。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は昨年4月の報告書で、原発を「低炭素エネルギー」と位置付ける一方、廃棄物処理方法の不在や事故の危険性など「さまざまな障壁とリスクが存在する」と指摘。原発を停止しても、風力や太陽光など他のエネルギー源で「代替可能」であり、「(温室効果ガスの)削減費用はわずかしか上昇しない」としています。
南極の氷の上に立つアデリーペンギン=2010年1月(ロイター)
日本:低い目標「脱炭素」に逆行
世界第5位の排出国である日本の削減目標は「2030年に26%減」(13年比)。基準年を1990年にすると18%減にしかならず、内外から「低すぎる」と批判されています。WWFジャパンの山岸尚之氏は「見掛けの数合わせで粉飾された、誠意のない態度だ」と批判します。
低い目標の背景にあるのが原発固執と石炭推進、再生可能エネルギー抑制のエネルギー基本計画です。特に二酸化炭素を大量に排出する石炭について、国内には48基の石炭発電所の建設計画があり、海外の石炭プロジェクトには世界最大の融資国になるなど世界の「脱炭素」の流れに背を向けています。(野村説)
EU:50年までに8割超を削減
欧州連合(EU)は、「2030年までに1990年比で少なくとも40%削減」し、長期的には「2050年までに1990年比で80~95%削減する」と表明。再生可能エネルギーについては、「エネルギー生産に占める割合を30年までに少なくとも27%にする」としています。
途上国支援では、議長国フランスやドイツを中心に支援強化の方針を決めており、他の先進国にも協力を呼び掛けるとみられます。このほか、▽欧州以外の大量排出国への対策強化の奨励・支援▽温暖化の影響への対処―なども検討しています。
(パリ=島崎桂)
米国:削減目標に拘束力求めず
ローズ米大統領副補佐官は24日の会見で「気候変動対策で国際的な努力を強めることはオバマ政権の外交政策の特徴だ」とし、COP21で「主要国が任務を果たしていることを示すため各国を結集する役割を果たす」と述べました。
ホワイトハウスによると、オバマ大統領は30日、中国の習近平国家主席、インドのモディ首相と会談します。温室効果ガス排出量で世界1位と3位の中印両国と相次いで協議することで、途上国も含めた新しい国際協定の合意へ弾みをつけたい考えです。
米政府は国際協定について「多くの条項は法的拘束力を持つが、いくつかは拘束力を持たない混合型」(国務省のスターン気候変動担当特使)が望ましいとし、各国の温室効果ガスの削減目標には拘束力を持たせないよう主張しています。
背景には、気候変動対策で負担を嫌う野党共和党が米議会で多数を占めるなか、法的拘束力のある削減目標は批准されない可能性があることがあります。
オバマ政権は温室効果ガスの排出量を2025年に05年比26~28%削減する目標を提出。各国の目標を5年ごとに見直し、野心的な内容に保つよう主張しています。
(ワシントン=島田峰隆)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月29日付掲載
すでに温室効果ガス排出量で世界1位と3位の中国とインドで、削減目標が達成できるように先進国の支援が求められます。
先進国は、独自に戦略的な削減目標を達成するためにイニシアチブを発揮しないといけない。