きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

円安時代③ 異次元の自国窮乏化策

2022-10-31 07:12:16 | 経済・産業・中小企業対策など
円安時代③ 異次元の自国窮乏化策
「私の話で円は安くなり、株価は上がり続けている」
総選挙を目前に控えて舌戦が熱を帯びた2012年末、「無制限の金融緩和」を掲げる安倍晋三自民党総裁(当時)は、狙いが円安誘導にあることをあけすけに語っていました。
当時、安倍氏の発言を詳報した「朝日」(12年11月20日付)はこう解説しています。「金融緩和をすれば円の金利が下がるので、円は売られやすくなる」。「円高に苦しむ日本の輸出産業が息を吹き返し、景気も良くなるとの見方が株高を誘う」
「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」(安倍氏)という「異次元金融緩和」の眼目は、円安誘導による輸出大企業支援にあったのです。しかし、アベノミクスで日本の産業が息を吹き返すことはありませんでした。



日本銀行本店=東京都中央区

給与は伸びず
第2次安倍政権が発足した12年12月26日から今年10月26日までの間に、円相場は約73%も下落(1ドル=85円→147円)しています。大企業の利益と株主配当は急増し、内部留保も積みあがりました。
ところが、従業員給与と設備投資は全く伸びず、国内経済の好循環は起きていません(図1)。製造業では日本企業の海外現地法人が増える一方、国内企業数と従業員数は減り続けました。(図2)






大企業が円安で利益を増やす経路は二通りあるからです。
第一は、日本で製造した商品を海外に輸出する経路です。1ドル=100円が1ドル=150円になれば、同じ1ドルで売っても円での受取額は50円増えます。商品を値下げして販売数量を増やせば、国内生産が拡大し、雇用や賃金に波及します。
第二は、海外子会社が製造・販売して得た利益を円換算し、親会社の連結業績に組み込む経路です。円安になれば円換算額が増えるので、親会社の業績が向上します。増えた利益を親会社が配当に回し、株価が上がれば、株主は多大な恩生産は増えず、雇用や賃金にも波及しません。
アベノミクスの下では、主に第二の経路で大企業と株主の利益が膨張したと考えられます。「結局アベノミクスとは、自国窮乏化政策なのです」と中央大学の村上研一教授は指摘します。

空洞化を無視
「安倍自公政権は、製造業が空洞化して産業構造が変容していることを見過ごし、輸出大企業支援という従来型の発想で円安政策を推し進めました。輸出は伸びず、賃金が低迷したまま、輸入物価が高騰しました。さらに、法人税減税と消費税増税、労働法制改悪、社会保障費抑制を通じて大企業のコスト削減を図り、国民の実質所得を低下させました。国民の生活水準低下は、内需産業の縮小と輸出製造業の空洞化をいっそう促進しました」
アベノミクスという名の時代錯誤の輸出大企業支援政策が、異次元の自国窮乏化を招いています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月28日付掲載


第2次安倍政権が発足した12年12月26日から今年10月26日までの間に、円相場は約73%も下落(1ドル=85円→147円)しています。大企業の利益と株主配当は急増し、内部留保も積みあがる。
ところが、従業員給与と設備投資は全く伸びず、国内経済の好循環は起きていません。製造業では日本企業の海外現地法人が増える一方、国内企業数と従業員数は減り続けました。
大企業が円安で利益を増やす経路は二通り。
アベノミクスのもとでは、海外子会社が製造・販売して得た利益を円換算し、親会社の連結業績に組み込む経路。円安になれば円換算額が増えるので、親会社の業績が向上。
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円安時代② 海外移転で国内が衰退

2022-10-30 07:06:12 | 経済・産業・中小企業対策など
円安時代② 海外移転で国内が衰退
日本経済の構造は過去20年ほどの間に大きく変わりました。国内生産が衰退し、貿易赤字が拡大しました。とりわけ深刻なのが、かつて輸出産業の花形だった電気機器製造業の落ち込みです。

黒字額が急減
電気機器の貿易黒字は2007年、7・6兆円にのぼりました。ところが09年以降、黒字額が急減し、20年には1・5兆円に縮小しています(図1)。その主因は、パソコン、携帯電話(スマートフォン)、テレビ製造業の海外移転と衰退です。




パソコンなどの電算機類は2000年代以降、坂道を転げ落ちるように貿易赤字を拡大しました。低賃金の中国に生産拠点を移した米国メーカーや中国メーカーの激安商品が売り上げを伸ばし、一部の日本メーカーも生産を海外へ移転したためです。
携帯電話などの通信機の転機となったのは米アップル社がアイフォーンを発売した07年です。日本メーカーはスマホ開発に乗り遅れ、中国で組み立てられたアイフォーンに市場を奪われました。
大幅な貿易黒字を誇ったテレビなどの音響映像機器も、10年代に貿易赤字に転落しました。中国・韓国メーカーとの低価格競争に敗れたシャープが経営危機に陥り、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入った16年以降、赤字幅が拡大しています。シャープは国内工場での生産を次々に打ち切り、海外移転を進めました。
日本の中核産業である自動車(輸送用機器)も、国内生産に目を向けると芳しくありません。08年のリーマン・ショックで生産・輸出が急減した後、海外生産はうなぎ登りに増えたのに、国内生産と輸出は以前の水準を回復していません。海外生産の拡大に伴って伸びていた部品輸出も低迷しています。(図2)




新興国の台頭
中央大学の村上研一教授はこうした構造変化の背景に新興国の台頭があるといいます。
「巨大な人口を抱える中国などの新興国は低賃金の生産拠点として急成長するとともに、世界の主要市場として台頭しました。新興国の所得水準は欧米諸国より低く、質が悪くても安い商品でなければ売れませんでした。日本メーカーは10年代、サプライチェーン(供給網)ごと海外展開し、低品質・低価格の部品を現地で調達するようになりました。その後、新興国内の技術が急速に向上し、質のよい部品を安価に調達できるようになっています。『組み立て工程を海外移転しても部品輸出が進むので国内産業は空洞化しない』という議論は成り立たなくなっています」
低賃金・低税率を求めて世界を飛び回る多国籍企業の競争の中で、日本の製造業は空洞化しました。国内の賃金は低迷して内需が冷え込み、内需産業も縮小再生産を余儀なくされました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月27日付掲載


パソコンなどの電算機類は2000年代以降、坂道を転げ落ちるように貿易赤字を拡大しました。低賃金の中国に生産拠点を移した米国メーカーや中国メーカーの激安商品が売り上げを伸ばし、一部の日本メーカーも生産を海外へ移転したため。
日本メーカーのパソコンも、中国や東南アジアでつくられたものがほとんどです。
新興国内の技術が急速に向上し、質のよい部品を安価に調達できるように。
効率化で、海外移転していったツケが出てきています。

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円安時代① 自ら「日本売り」招く

2022-10-29 07:44:37 | 経済・産業・中小企業対策など
円安時代① 自ら「日本売り」招く
円安の流れが止まりません。対ドルの円相場は年初から約30%も下落(1ドル=15円→149円)しています。日本人の対外購買力が低下し、輸入品価格が為替要因だけで30%上がる計算です。円安急進の背景には金融政策の混迷に加え、日本経済の構造的弱点があります。
9月の輸入物価(円ベース)は円安を最大の要因として前年同月比48%上がりました(図)。




国内物価への波及も進み、消費者物価(生鮮食品を除く総合指数)は3%上昇しました。円安が業績に悪影響を及ぼすと答えた企業は6割超(帝国データバンク調べ)に達しています。
国民生活と経済にもたらす異常円安の弊害は深刻なのに、岸田文雄政権は円安指向のアベノミクスにとらわれたままです。対応は混迷を極めています。
9月22日に政府・日銀は24年ぶりの「ドル売り・円買い介入」に踏み切りました。しかし効果は続きません。10月21日に再度介入したとみられますが、円安基調は変わらず、1ドル=149円台まで下落しています。
金利の低い円を売ってドルを買う流れを支えているのは日銀自身です。米連邦準備制度理事会(FRB)が物価抑制のために利上げを進める一方、日銀は低金利政策に固執し、日米の金利差が拡大する見通しだからです。
黒田東彦日銀総裁は今後2~3年間「金利を引き上げるようなことはない」(9月22日の記者会見)と断言し、円安急進のきっかけをつくりました。岸田文雄首相も「円安メリットを生かした経済構造の強靱化を進める」(10月3日の所信表明演説)と述べ、円安圧力にお手上げの状態です。10年近く続けたアベノミクスの金融緩和政策から脱却する道筋を描けない政府・日銀の失態が異常円安と物価高騰を招いています。

輸出産業支援の失敗
現在の「円売り・日本売り」の根底には金融政策の行き詰まりだけでなく、日本経済の構造的な弱さがあります。それを生み出したのも自民・公明党政権の間違った政策です。
「為替レートの決定要因は主に四つ」だと国際経済研究者の木原隆氏は話します。
①インフレ率(商品量に比べて貨幣量が多くインフレ率の高い国の通貨は安くなる)②貿易収支(赤字の国の通貨は安くなる)③金融政策(金利の低い国の通貨は安くなる)④政治的要因(信用の低い国の通貨は安くなる)―です。
「このうち②と③が現在の円安の原因だと考えられます。短期的には金融政策の方向性が決定的ですが、長期的には貿易収支の状況が重要です」
9月の貿易収支は2兆940億円の赤字でした。単月の赤字は14カ月連続です。2022年度上半期(4~9月)の貿易収支は11兆75億円もの赤字でした。半期の赤字として比較可能な1979年度以降で最大です。輸入額が輸出額を上回る貿易赤字の拡大は円売り・ドル買い取引の増加を意味します。
長期的には鉱物性燃料(石炭、石油、天然ガスなど)や繊維・衣類の赤字が膨らみ、電気機器の黒字が縮小しています。(図)




中央大学の村上研一教授は「貿易赤字拡大の一方の要因は燃料輸入額の増大ですが、他方の要因は国内供給力の衰退です」と指摘します。「輸出産業は海外に生産拠点を移転し、空洞化しました。国内の製造業生産能力が減衰したために輸出額が落ち込んでいるのです。輸出産業支援に主眼を置いたアベノミクスの失敗です」(つづく)(5回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月26日付掲載


9月の貿易収支は2兆940億円の赤字。単月の赤字は14カ月連続です。2022年度上半期(4~9月)の貿易収支は11兆75億円もの赤字。半期の赤字として比較可能な1979年度以降で最大。輸入額が輸出額を上回る貿易赤字の拡大は円売り・ドル買い取引の増加を意味します。
長期的には鉱物性燃料(石炭、石油、天然ガスなど)や繊維・衣類の赤字が膨らみ、電気機器の黒字が縮小。
中央大学の村上研一教授は「貿易赤字拡大の一方の要因は燃料輸入額の増大ですが、他方の要因は国内供給力の衰退です」と指摘。
いわゆる産業の空洞化ですね。
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軍拡と財政金融危機⑤ 集中する富に課税を

2022-10-28 07:09:37 | 予算・税金・消費税・社会保障など
軍拡と財政金融危機⑤ 集中する富に課税を
群馬大学名誉教授 山田博文さん

現代日本の財政状況はすでに終戦時と同水準の厳しさです。政府が国内総生産(GDP)の2・6倍の債務を抱える「政府債務大国」となっています。

債務大国への転落
戦後日本は、国債増発と金融緩和政策を先行させ、将来所得を先取りしながら、大型公共投資や不況対策などを推進する経済運営を続けてきました。財政と金融へのタカリの構造が、戦後の平和国家日本を「政府債務大国」に転落させました。
普通国債発行残高だけでも、2022年度には約1000兆円に達します。この莫大(ばくだい)な国債の管理を一手に担っているのは国債整理基金特別会計です。本来なら10年で全額償還される長期国債も60年かけて償還(「60年償還ルール」)されるので、10年目の一般会計には6分の1しか計上されません。残りは国債整理基金特別会計を発行母体にした借換債の発行で処理されます。そのため、日本財政の全貌は一般会計からは見えません。
そこで、一般会計と13の特別会計の重複分を除いた主要経費別純計額で確かめると、政府債務返済のための国債費は全体の33・6%の99・5兆円に達しています。国民の生存権と社会生活のための社会保障関係費96・9兆円を上回る最大の経費になっています(図)。
日本財政は借金で首が回らない状況にあり、今後、軍事関係費を2倍にする財源など、逆立ちしても出てこない事態です。
しかも増発された国債の過半を日銀が買い入れて保有しているので、現代日本の財政は日銀に依存した状態(財政ファイナンス)です。いったん民間金融機関が公募入札した国債を最終的に買い入れてきたのは日銀です。異次元金融緩和政策をやめて日銀が国債を買わなくなったら、財政資金が調達できず予算が成立しなくなります。




財政危機のおそれ
この先、さらに「防衛国債」を増発して政府債務を積み増すと、財政危機を誘発するでしょう。しかも増額される軍事費は少数の軍需企業の経営を好転させるだけで、経済的波及効果がありません。
すでに日銀資産(686兆円)の79%を、価格変動リスクのある国債(546兆円)が占めています。世界各国はインフレ対策のため、金融引き締めに転換し、一斉に金利を引き上げはじめました。日米の金利格差は3%ほどに拡大しています。世界のマネーは金利の高い方に流れます。低金利の日本からマネーが逃避する市場の圧力に日銀が耐えられなくなり、金利が上昇(=国債価格が下落)すると、財政サイドでは国債利払い費の上昇(1%で10兆円増)となって財政危機を深刻化させます。金融サイドでは日銀保有国債の評価損発生で日銀信用が毀損(きそん)し、円安になり、輸入物価が高騰します。それに連動して国内物価が高騰し、国民生活が破壊される深刻な事態に陥ります。
現代日本はほぼ半世紀ぶりに、不況と物価高が併存するスタグフレーションに突入しています。新型コロナウイルス禍、サプライチェーン(供給網)の切断、可処分所得の低下を背景とした不況下で、物価が高騰しています。今後、国民の反発が激化し、早晩、軍拡路線は頓挫する可能性が高いといえます。



川崎重工が製造するC2輸送機(航空自衛隊のホームページから)

応能負担で再生を
終戦直後の膨大な政府債務は、国民からの大収奪によって解消されました。これを教訓とした今後の課題は、応能負担による日本再建を展望することでしょう。「大企業の内部留保金484兆円」「富裕層の純金融資産333兆円」「対外純資産411兆円」など、一極に集中する富へ新規に課税し、その税収を政府債務の解消、貧困と格差是正、経済再建などに活用する対策が求められています。
目下のウクライナ戦争は、軍事力以前の問題として、食料・エネルギーの自給率の低い国が物価高と食糧危機に襲われ、敗戦国状態に陥ることを示しています。食料・エネルギーを外国に依存する日本の課題は、自給率を高め、自立的で持続可能な経済システムを構築することです。それこそが、国民の命を守り国民経済を発展させる、本来の国防力増強であるといえるでしょう。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月22日付掲載


一般会計と13の特別会計の重複分を除いた主要経費別純計額で確かめると、政府債務返済のための国債費は全体の33・6%の99・5兆円に達しています。国民の生存権と社会生活のための社会保障関係費96・9兆円を上回る最大の経費になっています。
日本財政は借金で首が回らない状況にあり、今後、軍事関係費を2倍にする財源など、逆立ちしても出てこない事態です。
終戦直後の膨大な政府債務は、国民からの大収奪によって解消されました。これを教訓とした今後の課題は、応能負担による日本再建を展望を。「大企業の内部留保金484兆円」「富裕層の純金融資産333兆円」「対外純資産411兆円」など、一極に集中する富へ新規に課税し、その税収を政府債務の解消、貧困と格差是正、経済再建などに活用する対策が求められています。

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軍拡と財政金融危機④ 軍事費が壊す社会保障

2022-10-27 07:10:47 | 予算・税金・消費税・社会保障など
軍拡と財政金融危機④ 軍事費が壊す社会保障
群馬大学名誉教授 山田博文さん

予算のあり方は、その国の姿を忠実に反映します。とくに一般会計の歳出費目は、国民から徴収した税金がどの分野にどれだけ配分されているかを正確に映し出す鏡です。
戦前と戦後の一般会計の歳出費目を比較すると(図)、軍事国家から平和国家へ激変したことがわかります。
太平洋戦争に突入した1941年度の一般会計歳出では、軍事関係費が突出し、予算全体の50・2%を占めました。そのしわ寄せを受けた代表的な費目は社会保障関係費であり、予算全体の2・3%にすぎず、旧軍人とその家族などへの恩給関係費4・3%を大幅に下回っています。国民の社会生活や権利に一切責任を持たない国の姿勢が予算配分に示されています。
他方、戦後77年たった今年度予算では、軍事関係費の占める割合は5・0%です。予算の最大の費目は社会保障関係費であり、全体の33・7%を占めています。




暮らしが犠牲に
周知のように、戦後の憲法は、その第25条で国民の生存権を明記し、国民は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障され、政府は「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上」に努める義務を負っています。
戦前と戦後の予算を比較すると、戦時下で真っ先に犠牲になるのは国民の生活と権利であることがわかります。一定の予算枠の中で、軍事費が増大すると社会保障関係費は削減され、両者は両立しません。
国家予算に占める軍事費の割合が日本の3倍の約15%(円換算で約100兆円)に達する米国では、社会保障関係費は貧弱となり、年金でも保険でも国民は自己負担を強いられています。米国を現地取材した堤未果氏(『ルポ貧困大国アメリカ』岩波新書)によれば、皆保険でなく限定的な公的医療保険しかない米国で民間保険にも未加入の場合、「一度の病気で貧困層に転落」するほど医療費が高額のようです。急性虫垂炎で1日入院した場合の入院費は、日本では数万円程度ですが、ニューヨークやロサンゼルスでは200万円前後もかかってしまうからです。
一般会計の国債費は、今年度の22・6%に比べて戦前の方が14・7%と低くなっています。そのわけは、日清戦争以来の4回の大きな戦争において、国債増発による軍事費の調達・配分、・全体処理を一身に担っていたのは、一般会計から切り離された臨時軍事費特別会計だったからです。一般会計はこの特別会計に軍事関係費の一部を繰り入れていたにすぎません。戦争の始期から終期までを1会計年度とみなして処理する臨時軍事費特別会計は終戦によってなくなりました。



米社レイセオンとロッキード・マーチンが開発し三菱重工などがライセンス生産している地対空誘導弾パトリオットの発射システム(航空自衛隊ホームページから)

経済成長に逆行
軍事関係費が増えても、ごく少数の巨大軍需企業に独占されるので、経済成長に結びつかないどころか、経済成長に直結する社会保障・福祉予算を削減し、むしろ経済成長の基盤を壊してしまいます。軍事と社会保障・福祉は両立しませんが、経済成長と社会保障・福祉は両立します。しかも、社会保障・福祉への予算は従来の公共事業分野よりも経済成長に貢献することが計測されています。
2009年の京極高宣国立社会保障・人口問題研究所所長(当時)の試算によると、需要1億円当たりの雇用創出効果は、介護では24・786人、社会福祉では18・609人にのぼります。他方、公共事業では介護の半分以下の9・97人にすぎません。(「朝日」09年4月19日付)
社会保障分野に予算を振り向け、需要を増やすことが安定した多くの雇用を創出し、経済成長を実現する道です。高度に発達した日本の産業構造では、公共事業で直接利益を得る建設業・製造業とその従業員の割合は2割程度にすぎず、就業者の7割以上はサービス産業に従事しているからです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月21日付掲載


国家予算に占める軍事費の割合が日本の3倍の約15%(円換算で約100兆円)に達する米国では、社会保障関係費は貧弱となり、年金でも保険でも国民は自己負担を強いられる。米国を現地取材した堤未果氏(『ルポ貧困大国アメリカ』岩波新書)によれば、皆保険でなく限定的な公的医療保険しかない米国で民間保険にも未加入の場合、「一度の病気で貧困層に転落」するほど医療費が高額。急性虫垂炎で1日入院した場合の入院費は、日本では数万円程度ですが、ニューヨークやロサンゼルスでは200万円前後もかかってしまう。
軍事と社会保障・福祉は両立しませんが、経済成長と社会保障・福祉は両立します。しかも、社会保障・福祉への予算は従来の公共事業分野よりも経済成長に貢献することが計測されています。
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