きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

物価高騰 日本経済の構造的弱点④ 海外移転で円の需要減

2022-04-30 07:12:38 | 経済・産業・中小企業対策など
物価高騰 日本経済の構造的弱点④ 海外移転で円の需要減
物価高に拍車をかけている円安。その要因は日銀の金融緩和だけではありません。日本経済の構造変化によって円の実需が減少している、という要因が指摘されています。
特に重大な変化は、大企業が生産拠点を海外に移転し、貿易収支を悪化させたことです。
財貨(モノ)の輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は今年3月、4124億円の赤字でした。8カ月連続のマイナスとなり、赤字基調が定着しています。2021年度の貿易収支も5兆3749億円の赤字でした。
もともと2000年代半ばごろから世界的な需要の増加と供給の抑制によって原油やLNG(液化天然ガス)の輸入額は高止まりしてきました。そこへ新型コロナウイルス禍からの景気回復やロシアのウクライナ侵略、円安の進行が重なり、原油や石炭、LNGの輸入価格が高騰したことで貿易収支の赤字幅が拡大しました。



中国・上海市のコンテナ港湾(ロイター)

輸出促進効果 移転で低下へ
円安には輸出企業の価格競争力を高めて輸出を促す面がありますが、この効果は落ちています。大企業が生産拠点を海外に移転し、日本からの輸出数量が伸びづらくなったためです。製造業企業の子会社・孫会社による海外生産比率は19年度に37・2%に達しています(経済産業省「海外事業活動基本調査」)。他社への外部委託を含めれば、海外生産比率はさらに高まるとみられます。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志経済研究部上席エコノミストは、これらの要因によって「2000年代半ばごろまで10兆円前後の黒字を維持していた日本の貿易収支がこの10年程度はほぼゼロに落ち込み、外貨を円に交換する円転需要の減少につながった」(「まるわかり“実質実効為替レート”」)と指摘しています。(グラフ1)
他方、モノ・サービス・投資収益などの海外との取引の収支を合計した経常収支は大幅な黒字が続いてきました(グラフ2)。企業の海外投資の増大に伴い、海外子会社からの配当金や証券投資の利子収入など「第1次所得」が増えたためです。日本の海外での稼ぎを示す経常黒字は通常、外貨を売却して円に換金する需要を高めるため、円高を招くといわれています。






需要増えない「再投資収益」
しかし「第1次所得」黒字額の14~64%(21年度)を占める「再投資収益」は、海外子会社などの内部留保として積み立てられたものであり、円の需要を増やしません。一方で企業の海外投資の活発化は、円を投資用の外貨に交換する需要を増大させるため、円の下落につながります。
また、経常収支の黒字自体が急減しています。経常収支は昨年12月に2675億円の赤字となり、今年1月には赤字幅が1兆1964億円に拡大しました。原油高や円安で輸入額が増えた一方、輸出の回復が遅れ、訪日外国人の激減が続いたためです。経常収支には季節要因による波があり、2月には1兆6483億円の黒字に戻りましたが、黒字額は前年同月と比べ1兆2177億円(42・5%)も減っています。
上野氏は、①日本の低成長②日銀の金融緩和③企業の生産拠点の海外シフト④原油価格の高止まり―という四つの要因で「円の実需が減少した」と結論付けています。
このように、現在の円安には日本経済の構造的な弱点が現れています。低賃金労働力を目当てに生産拠点を海外移転し、国内の雇用・産業・経済を破壊してきた大企業の責任は重大です。「自由貿易」の推進や海外進出企業優遇税制によって製造業の空洞化を招いた自公政権の政策の転換が必要です。(おわり)
(北川俊文、清水渡、杉本恒如が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月29日付掲載


物価高に拍車をかけている円安。その要因は日銀の金融緩和だけではありません。日本経済の構造変化によって円の実需が減少している、という要因が指摘。
特に重大な変化は、大企業が生産拠点を海外に移転し、貿易収支を悪化させたこと。
上野氏は、①日本の低成長②日銀の金融緩和③企業の生産拠点の海外シフト④原油価格の高止まり―という四つの要因で「円の実需が減少した」と結論付け。
「円」の通貨としての魅力が低下していることはともかく、「自由貿易」の推進や海外進出企業優遇税制によって製造業の空洞化を招いた自公政権の政策の転換が必要。
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物価高騰 日本経済の構造的弱点③ 輸入に依存するもろさ

2022-04-29 07:08:02 | 経済・産業・中小企業対策など
物価高騰 日本経済の構造的弱点③ 輸入に依存するもろさ
ロシアのウクライナ侵略は、進行中の円安による輸入物価の上昇と相まって、食料、飼料、肥料、燃料などを輸入に依存する日本の脆弱(ぜいじゃく)性を浮かび上がらせました。

食料自給率は37%まで下落
日本の食料自給率は史上最低の37・17%まで下落しています。ロシアのウクライナ侵略の影響で、食料の安定供給が懸念される事態も想定されます。
穀物価格の国際的指標とされるシカゴ商品取引所(CBOT)で3月8日、小麦の先物価格が14年ぶりに史上最高値を更新しました。世界の小麦需要が高まっているなかで、主要輸出国のカナダや米国などで天候不順のために収量が減少し、値上がりが続いていたところへ、ロシアのウクライナ侵略で供給不安が増幅したためです。両国だけで世界の小麦輸出量の約3割を占めているのです。
政府は1日、輸入小麦の売り渡し価格を17・3%引き上げました。ウクライナ危機以前の国際価格の上昇を反映させたにすぎません。それでも、パン、麺類など食料品の値上げが相次いでいます。しかし、食料品の値上がりはこれにとどまる保証はありません。



農業生産資材高騰への対策を農林水産省に求める農民連の長谷川敏郎会長(右から2人目)ら=3月24日、参院議員会館

国連食糧農業機関(FAO)が8日発表した世界の食料価格指数は3月、過去最高を更新しました。FAOの試算によると、ロシアとウクライナからの穀物の輸出の減少は、他の諸国の輸出余力では補いきれず、食料の国際価格が8~22%上昇する恐れがあるといいます。
日本はロシアとウクライナから穀物をほとんど輸入していません。しかし、両国からの輸出が滞れば、輸入国の代替需要が日本の主な輸入相手国である米国やカナダ、オーストラリアなどへ向けられ、争奪戦も起きかねません。日本が買い負ける可能性も十分にあるのです。
日本は、飼料穀物の多くを米国、ブラジル、オーストラリアなどからの輸入に頼っています。飼料自給率はわずか25%なのです。飼料穀物の国際価格も上昇しています。
使用割合の高いトウモロコシは、輸入の68%までを米国、19%をブラジルに依存しています。大麦も64%までをオーストラリアに依存しています。トウモロコシの国際価格は、中国における需要増加や南米産の作況悪化懸念などで上昇。その後、やや下がったものの、ウクライナ危機を受けてさらに高騰しています。トウモロコシの輸出ではウクライナが世界4位(14・5%)です。ちなみに、大麦の輸出ではウクライナが1位(13%)、ロシアが2位(13%)です。
日本が輸入する化学肥料の原料も値上がりが続いています。世界的に人口増加による食料需要の増加に伴い、食料増産のために化学肥料の需要が高まり、原料価格が上昇を続けていたところへ、ウクライナ危機の影響が加わりました。
尿素の輸入は47%をマレーシア、37%を中国に依存しています。リン酸アンモニウムの輸入は90%までを中国1国に頼っています。塩化カリウムは16%をロシアから、10%をベラルーシから輸入しており、経済制裁に伴い調達先の変更を迫られています。






石油価格上昇影響広範囲に
石油製品価格の上昇と高止まりで、農業や漁業をはじめ、国民の営業と暮らしに深刻な影響が広範囲に出ています。
新型コロナウイルス禍からの景気回復に伴う需要増で世界の原油価格が上昇に転じていたところへ、世界3位の産油国ロシアのウクライナ侵略と対ロ経済制裁で供給不安が高まりました。それに加えて、日本にとっては円安によって輸入価格が膨らみました。まさに「三重苦」です。政府は、石油元売り会社へ補助金を出して、卸値を抑制し、小売価格の上昇を抑えようとしています。それでも、国際的にも国内的にも、石油の高止まりが続いています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月28日付掲載


日本の食料自給率は史上最低の37・17%まで下落しています。ロシアのウクライナ侵略の影響で、食料の安定供給が懸念される事態も想定。
日本はロシアとウクライナから穀物をほとんど輸入していません。しかし、両国からの輸出が滞れば、輸入国の代替需要が日本の主な輸入相手国である米国やカナダ、オーストラリアなどへ向けられ、争奪戦も起きかねません。日本が買い負ける可能性も十分にある。
食料やエネルギーの自給率を高める努力が政府に求められています。
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物価高騰 日本経済の構造的弱点② アベノミクスの呪縛

2022-04-28 07:10:18 | 経済・産業・中小企業対策など
物価高騰 日本経済の構造的弱点② アベノミクスの呪縛
円安が急速に進んでいます。物価抑制のために利上げに転じた世界の流れから日本は取り残され、円が激しく売られています。

投資マネーが日本から逃避
3月7日に114円台だった対ドルの円相場は、4月20日に一時129円台まで下落しました。ひと月半ほどで約15円、円安が進みました。
大きな要因は日米金利差の拡大です。長期金利の指標となる10年物国債の利回りをみると、米国では3月7日に1・7%台でしたが、4月20日に一時2・98%まで上昇しました。他方、日本では0・25%以下の低水準を維持しています。日米金利差は2・7ポイント程度に拡大しました。
金利の高い金融商品を求める投資マネーが日本から逃避して米国に向かい、ドル高円安が進んできました。
長期金利が上昇しているのは米国だけではありません。主要7力国(G7)の10年物国債利回りは、日本を除き、3月7日以降に0・6~1ポイント上昇しています。日本だけがわずか0・1ポイントの上昇にとどまっています(表)。このため対ユーロの円相場も、3月7日の125円台から4月20日の138円台へ急落しました。
円安は輸入物価を押し上げます。経済同友会の桜田謙悟代表幹事(SOMPOホールディングス社長)は3月29日の記者会見で「現在の(円安)水準が適切だとはとても思えない」と述べました。輸入コスト増が燃料高や原材料の価格上昇に拍車をかけ、コロナ禍で苦しむ運輸・飲食業をさらに圧迫していると指摘しました。
日本と米欧の金利差が拡大してきた背景には金融政策の違いがあります。
米連邦準備制度理事会(FRB)は物価の高騰を抑えるため、3月に政策金利を0・25%引き上げました。欧州中央銀行(ECB)も量的金融緩和の縮小を始めており、利上げを予定しています。イギリスの中央銀行(BOE)は昨年12月以降3回の利上げを行い、政策金利は現在0・75%になっています。
他方、日銀はマイナス0・1%の政策金利に固執しています。10年物国債利回りを0・25%以下に抑えるため、10年物国債を利回り0・25%で無制限に買う「指し値オペ」を実施してきました。そのうえ黒田東彦総裁が「(円安は)わが国経済にプラス」(3月22日の記者会見)と言い放ち、円安の火に油を注いできました。



日本銀行本店=東京都中央区

各国の10年物国債利回り(終値、単位%)
3月7日①4月20日②②-①
日本0.1400.2510.111
米国1.7772.8341.057
英国1.3031.9160.613
フランス0.4771.3380.861
ドイツ0.0130.8620.875
イタリア1.5972.5180.921
カナダ1.7262.8171.091


政府経済政策全面的転換を
日銀が混迷するのはアベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の呪縛にとらわれているからです。
2%物価上昇をめざす異次元金融緩和の根底には“経済低迷の原因はデフレなので日銀が大胆な金融緩和を採用して物価を上げれば経済は成長する”という誤った理論があります。異次元緩和を9年間続けても日本経済は低成長から脱せず、日銀は自縄自縛に陥りました。「デフレは低成長の原因ではなく、結果」(白川方明前日銀総裁『中央銀行』)というのが真相だからです。
日本を経済成長できない国にした元凶は、自公政権による誤った経済政策です。アベノミクスは雇用破壊・社会保障改悪・消費税増税という新自由主義政策を進めて国民の可処分所得を減らしました。新型コロナウイルス禍以前から個人消費が落ち込んでいたため、欧米諸国と違い、ワクチン普及後も景気が急回復しませんでした。
2021年通年の実質GDP(国内総生産)成長率(前年比)を比べると、米国は5・7%、欧州連合(EU)27力国は5・3%の高水準でした。日本は1・6%にとどまり、置き去りにされています。
日銀を自縄自縛から解き放ち、「物価の番人」としての役割を果たさせるためには、政府の経済政策を全面的に転換する必要があります。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月27日付掲載


3月7日に114円台だった対ドルの円相場は、4月20日に一時129円台まで下落。ひと月半ほどで約15円、円安が進む。
大きな要因は日米金利差の拡大。
元々は、アメリカに強要されて導入したマイナス金利政策。当のアメリカはすでに脱却しています。
株価を押し上げる結果になりましたが、経済成長は止まったまま。コロナ禍や円安、ウクライナ侵略による物価高騰で庶民の暮しは大変なことに。

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物価高騰 日本経済の構造的弱点① 格差が拡大するもとで

2022-04-27 07:14:15 | 経済・産業・中小企業対策など
物価高騰 日本経済の構造的弱点① 格差が拡大するもとで
物価高騰が止まりません。帝国データバンクが実施した企業アンケートによると、64・7%の企業が主要商品やサービスの値上げを実施済み、あるいは実施予定だと回答しています。また、食品主要105社を対象にした調査では4月14日までに累計6167品目で値上げが計画されています。物価高騰は「もろくて弱い」日本経済の構造的弱点を浮き彫りにしています。

今回の物価高騰は食料品をはじめ、ガス・石油など日常生活に欠くことのできない必需品を中心としていることが特徴です。生活必需品の値上げは低所得者層ほど強烈な痛みを押し付けます。



店頭で品定めする買い物客=東京都内

労働者に犠牲 富裕層に利益
新自由主義、とりわけ2012年12月に発足した安倍晋三政権下でのアベノミクスは日本社会に格差拡大と貧困を押し付けてきました。アベノミクスの名でとられた政策はいずれも国民・労働者の犠牲で大企業・富裕層に莫大な利益を与えるものでした。
大胆な金融緩和は円安と株高を引き起こし、一部の輸出大企業と大資産家を潤しました。米経済誌『フォーブス』が毎年公表している長者番付によると、日本の上位10人が保有する総資産は、12年の4兆4126億円から、22年は12兆1389億円へと2・75倍に膨れ上がっています。
また、大企業は経常利益を増やす一方で、設備投資や賃金を抑制。その結果、大企業の内部留保は12年度の333・5兆円から20年度の466・8兆円へと133・3兆円も増加しました。
一方で大企業の求めに応じて労働法制の改悪などがすすめられました。不安定雇用の労働者が増え、実質賃金は12年の年401万円から21年は同381万円へと20万円も減少しました。






消費税増税に加えてコロナ
安倍政権が14年4月、19年10月と二度にわたって強行した消費税増税は格差を広げ、消費を冷え込ませました。加えて新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で飲食・宿泊、交通など対人サービス業に打撃を与えたほか、サプライチェーンの寸断により幅広い製造業で生産活動が止まりました。その矛盾は女性や非正規雇用など経済的に最も弱い部分に集中的に押し付けられたのです。社会保障の削減で毎年のように年金が削減されていることも暮らしと経済を悪化させました。
この深刻な貧困と格差拡大のもとに、現在の物価高騰が襲いかかったのです。帝国データバンクの調査では、値上げを実施・予定している食料品メーカーの値上げ幅は平均11%。生活必需品の値上げは低所得者の生活に打撃を与え、格差をさらに拡大します。
民間シンクタンクのみずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、22年に予想される食料・エネルギー価格の上昇に伴う支出増の収入に対する割合は年間収入1000万円以上の世帯で0・5%にとどまるのに対して、同300万円未満の世帯では1・8%にのぼります。(つづく)
(4回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月26日付掲載


安倍政権が14年4月、19年10月と二度にわたって強行した消費税増税は格差を広げ、消費を冷え込ませた。加えて新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で飲食・宿泊、交通など対人サービス業に打撃を与えたほか、サプライチェーンの寸断により幅広い製造業で生産活動が止まった。
この深刻な貧困と格差拡大のもとに、現在の物価高騰が襲いかかった。
賃金が上がっていればまだしも、正規も非正規も賃金が上がらないもとでの物価高はたまりません。
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もろい日本経済③ 沈む日本からの脱却策

2022-04-24 06:47:56 | 経済・産業・中小企業対策など
もろい日本経済③ 沈む日本からの脱却策
群馬大学名誉教授 山田博文さん

「物価の番人」の日銀が身動きできないとなれば、物価は上昇し続け、国民生活はいっそう深刻化します。新型コロナウイルス禍やロシア・ウクライナ戦争など、危機的事態に出くわすことで、それまで隠されていた矛盾が表面化しました。
証明されたのは、新自由主義政策と異次元金融緩和政策にまい進したアベノミクスが貧富の格差を拡大し、政府債務を膨張させ、日本経済そのものを脆弱(ぜいじゃく)化させたことです。アベノミクスを進めた安倍晋三政権と、それを継承した菅義偉・岸田文雄政権の責任は重大です。



「消費税5%減税」の署名やシールアンケートを呼びかける人たち=4月1日、東京都新宿区

世界で位置低下
かつて「1億総中流」や「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などともてはやされた昔日の日本は、もはや見る影もありません。世界経済における日本の位置は驚くほど低下しています。
日本経済(国内総生産陪GDP)が世界経済に占める割合は、1994年の17・8%をピークに、2021年には5・3%まで落ち込んでしまいました。
為替相場やインフレを排除した購買力平価で比較しても、日本のGDP(5・6兆ドル)は、中国(27・0兆ドル)、アメリカ(22・9兆ドル)、インド(10・1兆ドル)に次ぐ第4位です。
日本経済の脆弱化を加速したのは、大資本の目先の利益を優先し、国内の設備投資を怠り、賃金を削減する新自由主義を推進し、さらに異次元金融緩和で資産バブルと政府債務の膨張を招いたアベノミクスです。日本はもはや各国から注目されなくなり、海外メディアの日本記事は激減しました。日本に代わって注目されるようになったのは、経済大国に成長した中国やインドです。
21世紀に入り、先進国が高い経済成長率を誇る時代は終わりました。そもそもゼロ金利とは「貨幣が資本として増殖しない=経済成長しない」状態です。
2000年から20年までの実質経済成長率平均は、新興国のトップランナー中国の8・6%に対して、アメリカ1・8%、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均1・6%、そして日本は0・6%です。




日本の貿易相手国・地域と年間輸出入額(2020年)
中国36.0兆円(26.5%)
アメリカ20.0兆円(14.7%)
アジア73.8兆円(54.2%)
欧州連合14.2兆円(10.5%)
東南アジア諸国連合20.5兆円(15.0%)
財務省「貿易統計」から作成


対外関係見直し
この事実と歴史的傾向を踏まえるなら、沈む日本からの脱却はむやみに「成長」に走ることではなく、ましてアメリカに代わって日本の最大貿易相手国になった中国を仮想敵国にして軍備を増強することではありません。
やるべきことは、新自由主義政策とアベノミクスからの大転換であり、塗り変わった世界経済地図にふさわしい対外関係の見直しです。
第1に、新自由主義政策とアベノミクスによって失った「99%の人々の経済利益」の回復です。なによりも消費税率5%への減税が必要です。さらに賃金を上げ、各種保険料を下げて、国民の懐を温めることです。これは消費不況からの脱出に直結します。また、社会保障・教育関連政策を充実させ、明日への安心と夢を与えることです。その財源は大資本や富裕層などの応能負担で調達すべきです。
第2に、目下のインフレ・物価高から国民生活を守ることです。国民生活を破壊する消費者物価高騰を回避するためには、円安で高騰した輸入物価を安易に消費者物価に転嫁させない大企業の努力が求められます。その財源は十分存在します。非常事態の今こそ、大企業がため込んできた466兆円の内部留保金を吐き出してもらうことです。そうすれば、消費者物価を低位安定化できます。
第3に、世界最大の経済圏に成長したアジアに目を向け、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)との共存共栄を実現し、対米従属的な対外関係から脱却することです。
問題は、このような政策に向かわせる政府を実現できるかどうかにかかっている、と言えるでしょう。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月23日付掲載


かつて「1億総中流」や「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などともてはやされた昔日の日本は、もはや見る影もありません。世界経済における日本の位置は驚くほど低下。
日本経済の脆弱化を加速したのは、大資本の目先の利益を優先し、国内の設備投資を怠り、賃金を削減する新自由主義を推進し、さらに異次元金融緩和で資産バブルと政府債務の膨張を招いたアベノミクス。
その転換の道は…
第1に、新自由主義政策とアベノミクスによって失った「99%の人々の経済利益」の回復。
第2に、目下のインフレ・物価高から国民生活を守ること。
第3に、世界最大の経済圏に成長したアジアに目を向け、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)との共存共栄を実現し、対米従属的な対外関係から脱却。


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