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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

アマゾンと商業規制① 地域壊す焼き畑商業 関西大学教授 佐々木保幸さんに聞く

2019-11-15 09:31:19 | 経済・産業・中小企業対策など
アマゾンと商業規制① 地域壊す焼き畑商業
関西大学教授 佐々木保幸さんに聞く


インターネット通信販売を中心に急成長する米国企業アマゾンの特徴をどうとらえるか。小売業を研究する関西大学の佐々木保幸教授に聞きました。
(聞き手 杉本恒如)

アマゾンは創業当初から市場占有率の拡大に力点を置き、薄利多売の販売方法を徹底的に推し進めて市場侵攻を図ってきました。2000年代以降、現代資本主義の危機が先鋭化し、その時代背景がアマゾンの基本的な事業モデルと合致しました。
日本だけをとりあげても、正規雇用が非正規雇用に置き換えられ、低賃金での長時間労働がまん延しました。消費者は生活防衛を第一に考えざるをえなくなり、購買時間にも敏感になりました。アマゾンや楽天が提供する低価格商品や宅配サービスの利便性が消費者のニーズに合致しました。

店舗型圧迫
アマゾンの事業モデルは情報通信技術を利用した通信販売業の現代版であり、ショッピングセンターの拡大版でもあります。
従来のショッピングセンターには核となる小売業が存在し、さまざまな店舗を誘致して幅広い商品を取りそろえました。アマゾンはそれを無店舗形態で成し遂げ、取り扱う商品や誘致する店舗の範囲をいっそう拡大しました。他企業の吸収合併も積極的に行い、資本の集積と集中を進めて、大規模商業資本となり、さらに競争を制限する独占的な商業資本としての地位を築きました。
ネット通販は世界的に急成長しています。アマゾンの母国である米国では既存の小売業の業績が悪化して小売業の構造変化が進んでいます。近年、書店のポーダーズやスポーツ用品のスポーツオーソリティー、アパレルのザ・リミテッド、家電のラジオシャック、玩具のトイザラスなどが経営破綻しました。米国を代表する総合型量販店のシアーズも経営破綻に至りました。
ネット通販の拡大が店舗型小売業を圧迫する現象はアマゾン・エフェクト(効果)と呼ばれます。日本の電子商取引比率は欧米より低く、アマゾン・エフェクトというほどの状況はそれほど強く現れていません。しかし今後、ネット通販の拡大と、政府が推し進めるキャッシュレス化が合わされば、日本でもその影響は避けられないでしょう。
アマゾンが低価格で商品を宅配できるのには薄利多売の他にもさまざまな要因があります。クラウドサービスなど別の事業から利益を得ている面もあります。租税回避によって得た利益も原資になります。配送サービスを物流業者に低価格で委託し、コスト負担させている面もあります。



アマゾンの小田原物流センタ=神奈川県小田原市内

低価格競争
アマゾンの物流センターでは非常に厳しい労働強化が行われています。業務に必要な人員をそろえていないのだと考えられます。古いタイプの資本主義の労働強化と、最先端の情報通信機器を使った労働強化が融合されているのです。
市場侵攻するアマゾンの労働環境や賃金が劣悪であれば、多方面に影響が及びます。アメリカで「ウォルマート化」と呼ばれる現象です。世界最大の小売企業ウォルマートが進出してきた地域では、既存の小売業や納入業者も価格を引き下げざるを得なくなり、全体的な低価格競争が引き起こされ、それは低賃金に至ります。それが地域全体の経済力の低下につながり、地域社会が劣化します。
競争者を駆逐した後、独占的な商業者は商品価格を引き上げていきます。超過利潤を獲得するのが独占資本の特徴で、最終的な要求はそこにあります。小売業の多様性も失われます。
「焼き畑商業」と呼ばれ、後には草一本生えないという状況になります。この連鎖をどこかで断ち切らなければなりません。(つづく)(2回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年11月13日付掲載


アマゾンや楽天などのネットショップで注文すると翌日には届く。全国の在庫のある倉庫から一番効率的に配送される。
一方、配送センターの労働条件も厳しい。だからこそ低価格にできる。
一般小売り業の淘汰。労働者の使い捨てで成り立っている。
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