きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

ベトナムと50年③ 原発建設に反対した人々

2019-02-28 13:12:15 | 国際政治
ベトナムと50年③ 原発建設に反対した人々
鈴木 勝比古

ベトナムは2009年の国会で中部ニントゥアン省の二つの原発建設(第1原発はロシア、第2は日本が担当)を決定したが、16年11月の国会で「財政的な困難」を理由に中止を決定した。国民の安全性への懸念を受けた専門家、識者の勇気ある発言があったことも影響したと指摘される。

ファム・ズイ・ヒエン教授は旧ソ連で原子物理学を学び、1981年から10年間ダラトの原子力研究所で所長をつとめたベトナム原子力研究の第一人者である。私が最初に会った2012年5月、教授は開口一番、「ベトナムの国民の7~8割が反対です」と語った。「ベトナムは日本と比べても近代社会の規律で訓練されていない。オートバイの走行をご覧になれば一目瞭然です」「電力浪費も深刻です。ベトナムの生産原価に占める電力支出はフィリピンの倍です」。ヒエン教授はテレビ番組に出演し、貿易省高官と議論した。「相手は原発は絶対安全だと言うだけでした」
ベトナムの国会議員も重要な役割を果たした。09年の原発建設計画の採決では、賛成382、反対39、棄権18だった。福島原発事故の前だったことを考えると、反対・棄権票57は注目に値する。



ファム・ズイ・ヒエン博士(12年6月6日付「今日の女性」紙から)


グエン・ミン・トゥエット議員(当時)=2007年ハノイで筆者撮影

グエン・ミン・トゥエット議員(70)=当時=は採択で反対票を投じた一人だ。「安全性への危惧からだった」。11年3月に福島原発事故が起き、自分の反対投票が正しかったことを確信したと言う。
賛成票を投じた議員の多くは、政府が国会に提出した電力需要の増大予測に影響されたと思われる。
ヒエン博士はインターネット新聞「今日の女性」紙のインタビュー(12年6月6日付)で、政府の電力需要予測の誤りを指摘している。ベトナム共産党が掲げる2020年の電力の節約と効率的使用の目標数値を示し、目標を実現すれば電力需要の増大を抑えることは可能だと説明する。
ベトナム法律家協会副会長でもあるチュオン・チョン・ギア議員(65)は、13年6月に東京で開かれたアジア弁護士会会長会議に出席した機会に福島を訪問し、さまざまな分野で原発事故の解明や住民への保障に取り組む専門家・弁護士たちとの交流会に出席、生々しい報告を聞いた。そこで得た情報をまとめ、その後、ベトナム国会事務局に提出した。
ベトナムでは、原発プロジェクトとほぼ同時に再生エネルギー開発を全国的に開始し、各省は風力・太陽光発電に取り組んでいる。世界銀行のインドシナ4力国調査では、ベトナムの風力発電の可能性は最も高い。再生エネルギー開発と電力浪費削減の取り組みに期待したい。
(すずき・かつひこ ジャーナリスト)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年2月13日付掲載


福島原発事故を受けて、原発推進から原発からの脱却、自然エネルギーへ舵を切ったベトナム。
日本自身が学ばないといけませんね。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベトナムと50年② 元女性政治囚たちとの交流

2019-02-27 08:08:16 | 国際政治
ベトナムと50年② 元女性政治囚たちとの交流
鈴木 勝比古

昨年末、ホーチミン市で、南ベトナムの獄中でたたかった元政治囚の女性との交流が実現した。二十数人の年配の女性が、女性連合本部に日本からの訪間者十数人を迎えて歌と踊りを披露した。

「この世の地獄」と呼ばれたコンダオ島などで、棍棒で殴る、口と鼻から水を注ぐ、電気ショックなどあらゆる拷問に耐えた。リーダーのチュオン・ティ・ミーレさんは77歳。獄中で、トイレに飛び込んで娘を産み落とした。「私も娘も、このまま死んでしまうと思った」と語る彼女。仲間の懸命の看護で生き延びた。娘は獄外の身寄りに預けられて育ち、解放後、大学の教授になった。奇跡というほかない。
この交流会に元国家副主席のチュオン・ミーホアさん(73)が飛び入り参加した。ミーレさんの実妹で、彼女もコンダオ島などで11年間の獄中生活を送った。
ミーホアさんは「生きることはたたかうこと」の言葉を繰り返し、「たたかって独立と自由を勝ち取ること、豊かな生活を勝ち取ること」と力を込めた。獄中闘争の闘士の言葉は、今、たたかいに直面している日本の私たちの胸に素直に響いた。
2時間近くの交流の締めくくりは、「青い空は青いままで子どもらに伝えたい」の歌「青い空は」の日本語とベトナム語での合唱だった。これは、2017年12月、81歳で亡くなった元コンダオ政治囚ダン・ティ・ホンニャットさんの努力の賜物である。
16年8月、私はホーチミン市で、旧知のホンニャットさんを日本の一行との夕食会に招いた。ホンニャットさんが獄中で歌った曲を披露したお返しに、日本の一行が「青い空は」を合唱した。ホンニャットさんはすっかり気に入った様子で、私は彼女の家を再訪した際、歌詞のついた楽譜をもっていった。



「青い空は」をベトナム語で訳詞した元政治囚のホンニャットさん=2016年8月


元政治囚の「獄中闘争」を描いた踊り=2018年12月29日(筆著撮影)

歌詞をベトナム語に訳すと彼女は熱心にメモした。それから5カ月もしない17年1月、コンダオ島を訪れた日本の一行をホーチミン市の南部女性博物館に招いて、元女性政治囚による「青い空は」のベトナム語の合唱を披露したのである。
これを機に18年1月、「青い空は」の作詞者小森香子、作曲者大西進両氏が率いる日本の「青い空は」合唱団とベトナムの元政治囚歌舞団、ホーチミン市文化大学学生舞踊団による総勢約300人の日越文化交流会が同大学で開催された。
聴衆の学生たちが、元女性政治囚の獄中闘争の歌や踊りに最も熱烈な拍手を送ったことに私は感動した。学生たちが、不屈にたたかった先輩に尊敬の念をもったこと、世代から世代にベトナム人民のたたかいが伝承されたことがわかったからである。
(すずき・かつひこ ジャーナリスト)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年2月6日付掲載


日本の平和の歌「青い空は」とベトナムの解放闘争の曲の交流。
獄中でも希望を捨てずにたたかった人たち。それを劇にして、若い人たちが引き継いでいるとは心強い。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベトナムと50年① なぜアメリカに勝てたのか

2019-02-26 16:12:02 | 国際政治
ベトナムと50年① なぜアメリカに勝てたのか
鈴木 勝比古
すずき・かつひこ 1944年生まれ。ブリージャーナリスト。大阪外大ロシア語科卒業後、69年11月~73年7月、ハノイ総合大学ベトナム語科に留学・卒業。赤旗記者として75年から5期、約10年半ベトナム特派員

私がベトナムを初めて訪れたのは1969年、今年が50年の節目だ。ベトナム戦争からドイモイ(刷新)へと激動の時代を生きた人々と社会を見続けた私の思いをつづってみたい。

1946年から75年までつづいた、国の独立と統一、完全解放をめざす抗仏戦争と抗米戦争。その大半を南部の戦場でたたかった作家グエン・ゴック(86)の現在の願いは、「平和の中でのベトナムの健全な発展」である。平和を願う思いは人一倍強い。
私は一昨年、氏の著書『海のホーチミン・ルート』(光陽出版社)を翻訳、出版した。ベトナム戦争中にチョンソン山脈を切り開いた北から南への補給路「陸のホーチミン・ルート」は知られているが、南シナ海が舞台の「海のホーチミン・ルート」作戦は知られていない。「この海上作戦を日本の読者に伝えたい」「なぜ小国ベトナムが大国アメリカに勝てたのか解き明かす鍵がここにある」。その思いが私を翻訳に駆り立て、グエン・ゴック氏の来日招待運動につながった。
ゴック氏は、昨年11月、10日間の滞在中に東京、名古屋、京都、奈良、大阪を訪問。「なぜ小国ベトナムが大国アメリカに勝てたのか」と題して講演し、この本で描いた感動的なエピソードを紹介した。わが家で、自分の持ち場で、ひっそりと夫の帰りを待ち、孤独に耐える女性たち。夫を大きな愛で包み、子どもたちを育てているが、困難を乗り越える勇気を持ち、解放闘争に貢献する―。
「無数の名もない人たち、とりわけ女性がこの海上作戦を支えた。数十万、数百万の民衆の解放戦争への献身が大国アメリカに勝利する力となった」と強調した。どの会場でも共感の大きな拍手が起きた。



京都・清水寺で。グエン・ゴックさん(左)と案内する大西晧久(こうきゅう)さん=2018年11月

2日目の歓迎会で、元気の秘訣を聞かれた氏は、自分のことではなく、「ベトナムに、わが子、夫を解放戦争で亡くした母親英雄と呼ばれる女性たちがいる。
母親英雄は総じて長生きだ。母親にとって自分の子どもが死ぬことほどの苦しみはない。その苦しみが彼女たちの心身を強くしたのだ」と答えた。
最後の大阪の講演会が終わった後、私はゴック氏を誘って近くの回転ずし店で遅い夕食をとった。店には5~6人のベトナムの若い男女が働いていた。かつて教科書で読んだことがある作家のグエン・ゴック氏だとわかると、彼らは歓声をあげうれしそうにあいさつした。ゴック氏もねぎらいの言葉をかけた。
異国の地で深夜働くベトナムの若者の姿に、ゴック氏は戦争当時とは違う過酷な現実を垣間見たかもしれない。しかし、楽しそうな、屈託のない彼らの表情に、氏は若者たちのたくましさを感じたようだった。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年1月30日付掲載


ベトナム戦争で、南シナ海を舞台にした「海のホーチミン・ルート」ってのがあったんですね。それも、女性が下支えしていたとは心強い。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍「経済偽装」⑤ 多国籍企業奉仕を自賛

2019-02-25 11:48:40 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍「経済偽装」⑤ 多国籍企業奉仕を自賛
安倍晋三政権は、広域経済連携を「成長戦略の切り札」と位置付け、11カ国の環太平洋連携協定(TPP11)や、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(日欧EPA)を政権6年間の「成果」に数え上げています。


日欧EPAに反対する人々=2018年12月7日、参院議員会館前

貧困と格差広げ
しかし、これらは、国境を越えてもうけを追求する多国籍大企業に奉仕するものです。関税を撤廃・削減するほか、国民を守る規制でも、多国籍大企業にとって障害になると見なすものは廃止・緩和し、国内農業、地域経済、消費者に被害を与えます。産業空洞化を助長し、貧困と格差をより広げます。
政府は、TPP11で国内総生産(GDP)が約8兆円、就業者が約46万人増え、日欧EPAでGDPが約5兆円、就業者が約29万人増えると誇示します。しかし、政府試算は、「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づく施策によって、プラス効果が表れ、マイナス影響が克服されるという期待を織り込んだ恣意(しい)的な試算なのです。
農産物では、関税率10%以上かつ国内生産額10億円以上の品目だけが試算の対象です。TPP11では19品目、日欧EPAでは18品目にすぎません。その上で、輸入品に押され、国産品が値下がりし、生産額が減っても、国内対策によって生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されると結論付けます。
雇用では、完全雇用が前提です。雇用がある分野で失われても、労働者は必ず他の分野へ移れるので、失業は決して起きないという想定です。ですから、当然ながら失業は起きず、GDPが拡大した分だけ雇用が増えるというのです。
TPP11は、米国が離脱しても、基本的には元のTPPのままです。農林水産物では、82・3%の関税品目で関税が撤廃されます。国会決議が守るよう求めた農産物重要5品目でも、28・6%の関税品目で関税が撤廃されます。
日欧EPAでは、農産物に強みを持つ欧州諸国を相手に、チーズ、ワイン、菓子、小麦粉製品で、TPP以上に譲歩しました。政府調達(官公需の受発注)でも、外国企業が参入できる行政組織の規模を、TPPの範囲を超えて、人口20万人以上の「中核市」にまで広げました。




民主的ルールを
安倍政権は今後、TPPから離脱した米国と2国間の貿易協定の交渉を開始することになります。米通商代表部(USTR)が公表した米日貿易協定(USJTA)の「交渉目的の概要」は、物品貿易のほか、通信・金融を含むサービス貿易、投資、知的財産、通貨(為替条項)など、多くの分野を列挙しています。
TPP11と日欧EPAが発効した今、米国の業界は、他国に比べて日本市場で不利にならないようにと、強硬な対日要求を米政府に提出しています。特に、TPP11と日欧EPAを超える譲歩を日本から引き出すようけしかけています。
安倍政権は、TPP11や日欧EPAを「自由で公正な21世紀型のルールをつくっていく上で重要な一歩」と自賛します。しかし、それは、「自由貿易」の名で「企業利益を最優先する管理貿易体制」(スティグリッツ米コロンビア大学教授)にほかなりません。各国の経済主権や食料主権を尊重した民主的な国際ルールこそ必要なのです。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年2月23日付掲載


輸出に強い農業分野の開拓などと言うが、欧州との農産物の輸出入額をみると、圧倒的に輸入。関税撤廃で日本の農業に打撃が及ぶことは明らか。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍「経済偽装」④ 税収増、半数は消費税増税

2019-02-23 11:25:31 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍「経済偽装」④ 税収増、半数は消費税増税

安倍晋三政権は「過去最高の税収」を強調しています。1月28日の施政方針演説で安倍首相は「来年度予算における国の税収は過去最高、62兆円を超えています」と胸を張りました。



国民を苦しめて
安倍政権が閣議決定した2019年度予算案の一般会計税収は前年当初予算比3・4兆円増の62・5兆円です。この金額は確かに、過去最高となるものです。
しかし、この税収増は「景気回復」によるものではありません。安倍政権発足前の12年度決算と19年度予算案の税収を比較すると、18・6兆円の増額となります。そのうち、半分近くとなる9兆円が消費税によるものです。
安倍政権は14年4月に8%への消費税増税を強行し、国民の暮らしと日本経済を奈落の底に突き落としました。増税から5年近くたつ現在も、家計消費や実質賃金は増税前の水準を取り戻していません。国民を苦しめている消費税増税による増収が、安倍政権が自慢する税収増の半分を占めるのです。
法人税は12年度の9・8兆円から19年度は12・9兆円と3・1兆円増額しました。しかし、税収の伸び率は1・32倍にとどまります。
法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業の経常利益は09年度から17年度の間に1・6倍に増加。税引前当期純利益は1・91倍にまで伸びています。
大企業業績の好調さと比べて法人税収の伸び率が低いのは、安倍政権のもとで大企業に手厚い減税が行われてきたからです。国と地方を合わせた法人実効税率は12年度の37%から段階的に引き下げられ、18年度以降は29・74%となっています。主に大企業が恩恵を受ける研究開発減税も拡充が繰り返されてきました。



「消費税10%中止、改憲やめよ」とデモ行進する中小業者=2月6日、東京都千代田区

株には低い税率
所得税は12年度の13・9兆円から19・9兆円と6兆円の増収です。所得税については所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がる構造があります。最大の要因が株の売買や配当による利益については、他の所得と分けて低い税率で課税するためです。
現在、株式譲渡益や配当にかかる税金は所得税・住民税合わせて20%です。一方、給与所得にかかる税金は最高で55%です。その結果、株式譲渡益や配当収入が多い高額所得者ほど負担する税率が低くなっています。
安倍政権のもとでの超金融緩和や公的マネーをつぎ込んだ株高政策で富裕層の保有資産額が急増しています。米誌『フォーブス』調査によると、日本の富裕層上位40人の資産保有額は12年から18年の間に2・4倍にふくらんでいます。
日本共産党は大企業優遇税制を廃止・縮小すれば地方税を含めて4兆円が確保できると提案しています。富裕層の株の利益への課税を強化することで少なくとも1・2兆円程度の財源が確保できます。これらを実現するだけで10%への消費税増税による税収増、5兆円を上回る財源となります。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年2月22日付掲載


税収増の確保は大事なことですが、問題はその内訳。法人税や所得税の割合が減って、低所得者に重い負担の消費税の割合が増えている。
また、株の売買や配当にかかる税金は、庶民の貯蓄にかかるなけなしの利息と同じ20%。
税収の構造を見直すべき。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする