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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

日韓の歴史をだどる⑬ 「文化政治」 民族運動抑えつつ同化図る

2019-11-07 21:03:46 | 日韓の歴史をたどる
日韓の歴史をだどる⑬ 「文化政治」 民族運動抑えつつ同化図る
松田利彦
まつだ・としひこ 1964年生まれ。国際日本文化研究センター教授。『日本の朝鮮植民地支配と警察』『東亜聯盟運動と朝鮮・朝鮮人』『植民地帝国日本における知と権力』ほか

1919(大正8)年、朝鮮三・一運動が起こったとき、首相・原敬は「内地延長主義」―日本本国の法制度を漸進的に植民地にも適用していこうとする同化主義的政策―を構想していた。原首相と原の任命した斎藤実朝鮮総督は、三・一運動後の新たな朝鮮統治体制をつくっていった。
とはいえ、武力に頼る支配の本質が変わったわけではない。1910年代の「武断統治」を支えた憲兵警察制度は廃止され普通警察制度に転換したが、警察官は増え駐在所も大幅に増設された。



朝鮮で発行されていた日本語雑誌『朝鮮公論』(1935年10月)掲載の風刺画。独立思想を鎮めるのに武断主義を使いたいが、世界の目が光っているので文治主義でソフトに抑えようとしている

三・一独立運動 再発恐れ懐柔策
武力で民族運動を抑え込みながら徐々に日本への同化をはかった1920年代の朝鮮統治政策を、総督府は「文化政治」と称した。
朝鮮民族のナショナリズムがふたたび爆発することを恐れた総督府は、1920年に民間の朝鮮語新聞発行を相次いで許可した。朝鮮人の不満のはけ口をつくって懐柔するとともに、民情を探ることが目的だった。
今日でも韓国の代表的言論となっている東亜日報、朝鮮日報はこのとき創刊された。朝鮮語新聞・雑誌は、きびしい検閲のもとでも政治的主張を試み、民族主義運動や社会主義運動の基盤となった。
また、地方参政権が拡張され、府県・町村に当たる行政単位(道・指定面・面)に諮問機関が設けられた。多くは議決権を与えられなかったから、地方自治とはいいがたい。しかし、このような地方諮問機関でも、日本人のみならず「有志」と呼ばれた朝鮮人地方有力者が進出し、学校の設立や道路や水道の整備など地域の利害を訴えた。
教育制度では1911年に、教育勅語の趣旨にもとづき「忠良なる国民の育成」を目的とする第1次朝鮮教育令が施行されていたが、1922年、第2次朝鮮教育令が公布された。第1次教育令は朝鮮人を対象とし、朝鮮に住む日本人の教育と二重構造だったが、第2次では「内鮮共学」の名のもとに朝鮮在住日本人と朝鮮人の教育法規を統一した。また、京城帝国大学が開設された(京城は現ソウル)。しかし、京城帝国大学の教授陣はほぼ日本人が独占し、学生も半数以上は日本人だった。
他方、経済政策としては、産米増殖計画が1920年に開始された。日本本国での米需要の増大に対して、植民地米への期待が高まったためだった。これにより朝鮮での米の生産高は1・2倍になったが、日本への米の移出高は2・5倍に増えたから、朝鮮人の米消費が増えたわけではない。むしろ多くの自作農は水利組合費などの負債に苦しみ、土地を手放し小作農に転落した。

日本に協力する「親日派」を育成
こうした諸政策がからみあって、「文化政治」期には日本の政策に協力する「親日派」の育成が進んだ。斎藤総督自身をはじめ総督府高官は、朝鮮人民族運動家や知識人などとじかに面会してその要求に耳を傾けるポーズをとった。また、地方諮問機関の設置にともない朝鮮人地方議員が登場したことや、産米増殖計画により一部で朝鮮人地主が成長したことも、地域社会に「親日派」を生みだす結果になった。
朝鮮人側でも総督府の支援を受けた親日団体が数多くうまれ、朝鮮の「自治」や、あるいは衆議院議員選挙法の朝鮮施行を求めた。
しかし、民族運動の主流は、あくまで潔癖な姿勢で朝鮮独立を追求し、参政権運動に冷淡な態度をとった。「親日派」は民族独立の敵と見なされ、売国奴とさげすまれたのである。
「親日派」の清算は、植民地から解放された朝鮮で大きな社会問題となり、特に韓国では2005年に「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」が成立するなど、現在まで続く問題となっている。親日派問題の原点は日本の植民地支配にあったのである。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年11月6日付掲載


本当は武力で独立運動を押さえつけたいが、世界世論を無視できなくて、「文化政治」と称する懐柔策。朝鮮語新聞の発行の許可と合わせて、教育勅語の趣旨にもとづき「忠良なる国民の育成」を目的とする第1次朝鮮教育令が施行。
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