きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

アナログ停波200日 崖っぷちの地デジ 後半 

2010-12-30 22:50:40 | 政治・社会問題について
アナログ停波200日 崖っぷちの地デジ 後半

軍用機原因の電波障害④
 沖縄県宜野湾市役所。フロアの一角に設けられた「地デジ相談コーナー」に来ていた男性が、日本共産党の塩川鉄也衆院議員に訴えました。
 「ドラマの一番いいところだったのに、米軍機が飛んできてテレビが映らなくなった。何のために高いお金を出して地デジテレビを買ったかわからない」

全然映らない
 9月末、地上デジタル放送問題の調査で宣野湾市を訪れた塩川議員。「米軍普天間基地は、市のど真ん中にあります。基地の周辺は航空機の爆音被害だけでなく、地デジ放送の電波障害被害も深刻でした」と語ります。



沖縄・宜野湾市役所内の「地デジ相談コーナー」を訪れた塩川鉄也議員

 航空機などで電波がさえぎられる障害(フラッター障害)はアナログ波でも起こりますが、地デジ波では画面がまったく映らなくなったり、モザイク状になるのが特徴です。「さらに、普天間基地のヘリコプターや輸送機は、頻繁に飛び立って低空でゆっくり旋回するため、被害がより大きくなる」と塩川議員は指摘します。
 同市基地渉外課によると、市民から苦情が寄せられるようになったのは2007年以降。沖縄本島で地デジ放送が始まった06年直後のことでした。08年5月から市民に情報提供を呼び掛けたところ、今年の9月までに寄せられた被害は75件。その場所を地図に落とすと、被害は基地を取り囲むように広がっています。
 「米軍のヘリコプターが上空を飛行するたびにテレビ画面が消える」「家が滑走路の延長線上にあるため、ほとんど毎日テレビ画面が真っ暗になる。調査し早急に改善してほしい」―。寄せられた市民の叫びは深刻です。
 「解決」するためには、まず、地方自治体が事前に被害の有無を調査し、防衛省に対策を要請。その後、防衛省で独自に調査して被害の範囲を特定し、アンテナの整備やケーブルテレビヘの移行などの対策を実施するという流れ。手間と時間がかかります。
 宣野湾市では基地の返還とともに、この問題についても08年10月に総務省や防衛省に調査を要請。ようやく今年の9月末から調査が始まり、対策工事は来年度から。「地デジに完全移行する来年7月24日までに間に合うのか」(市の担当者)予断を許さない状況です。

自治体が声を
 もう一つの問題が、「基地による電波障害の被害が起きていても、自治体が声をあげなければ、防衛省は対策を行わない」(塩川議員)仕組みです。たとえば、埼玉県の航空自衛隊入間基地。基地を直接抱える狭山市のほか、隣接する入間市や所沢市でも電波障害が想定されますが国に対策を要請したのは狭山市だけです。
 塩川議員は10月、入間、所沢の両市役所を訪れ、「住民から聞き取り調査を行って被害があれば、ぜひ国に対策を要望してほしい」と申し入れました。
 「本来、基地による地デジ電波障害対策は、地方自治体に負担をかけることなく、国が率先して対策をとるべきものです。また、対策としてケーブルテレビに移行する場合、月額視聴料金にも補助するなど、視聴者に負担をかけない仕組みづくりも必要です」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月29日付掲載



沖縄の遅れ 全国の課題⑤
 地上デジタル放送受信機の普及が、最も遅れている沖縄県。日本共産党の塩川鉄也衆院議員は11月25日の総務委員会で「沖縄の遅れは全国の課題」だとして特別の対策を求めました。9月の下旬に現地調査をした塩川議員に聞きました。
  ◇
 調査の目的は、沖縄の実態を把握することで、残り期間がわずかとなった地デジ移行の課題を明らかにすることです。「デジサポ」や各自治体との懇談に加え、県内の民放3社の社長さんからも要望を伺いました。

全国で最下位
 総務省の9月末の調査で、沖縄県の地デジ普及率は全国で最下位の78・9%。全国平均より10ポイント以上も遅れている要因は何か。まず第1に、地デジ放送の開始が沖縄では遅れたという問題がありました。国内で地デジ放送が始まったのは2003年12月ですが、沖縄本島では06年、富古島や石垣島を含む先島諸島では09年10月です。他地域より地デジ対応の準備期間がありません。
 2番目が、地理的な困難さです。沖縄は離島が多いうえ、31ある有人離島のうち電器店のある島は24。竹富町には一つもありません。総務省の調査でも、宮古島市と宮古郡の地デジ世帯普及率は65%、石垣市は69・7%と、沖縄本島(80・3%)よりもさらに10ポイント以上の差があります。
 3番目はホテルや旅館に設置されているテレビのデジタル化の遅れです。総務省は実態をまったく把握していません。あるホテルの支配人は「160室すべて地デジテレビに替えたら1千万円以上かかる。対応のめどが立たない」と嘆いていました。



竹富町役場で川満栄長町長(右)と懇談する塩川鉄也衆議院議員(左)

 最も深刻なのが、低所得者層への普及の遅れです。沖縄の県民所得は全国平均の約7割といわれます。現在、国では生活保護世帯など「NHK受信料全額免除世帯」(最大280万件)を対象に、アナログテレビに取り付ける地デジチューナーを無料支給しています。沖縄県でも独自の支援策として、市町村民税非課税世帯を対象に地デジテレビの購入費用として1万2千円を補助しています。

支援策進まず
 しかし、県内で国の支援策はほとんど活用されていません。全国レベルでも、最大280万件が対象なのに、今年の7月までの申し込み件数は88万件にすぎません。
 なぜか。デジサポでは「NHKの受信料を払っていない世帯が多いので、受信料契約とリンクした国の支援策の利用が進まない」といいます。また、この機会に地デジテレビに買い替えたい人にとっては、県の支援策の方がありがたい。
来年度、国はチューナー支給の対象を住民税非課税世帯にも拡大することを決めました。しかし、地デジテレビ購入にも補助をするなど、支援メニューも柔軟に対応しないとこれまでと同じ失敗を繰り返すだけです。
 このように、沖縄での地デジ普及の遅れは、多かれ少なかれ全国の地方部では共通する問題です。支援策の強化・拡充とともに、来年7月のアナログ停波計画の延期を、おおいに検討し具体化する時期にきているのではないでしょうか。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月30日付掲載


沖縄県が地デジテレビ本体の購入に補助しているって魅力的ですね。確かに、20インチ以下で見るだけなら1万円台で買えますものね。
全国的に見ると沖縄だけでなく地方に行くと、地デジテレビ購入やアンテナ工事なども事欠くでしょうね。
無理して2011年7月にアナログ停波をせずに、すべての国民が準備できるようにして地デジに移行してもいいのではないでしょうか。
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アナログ停波200日 崖っぷちの地デジ 前半

2010-12-29 22:33:37 | 政治・社会問題について
アナログ停波200日 崖っぷちの地デジ 前半

観光客に人気の「東京スカイツリー」(東京都墨田区)。電波塔としては世界一高い634メートルに達し、2012年春に開業する予定です。本来の役割は、地上デジタル放送を首都圏に送信するテレビ塔だということをご存じでしょうか。(佐藤研二)

スカイツリー 建設遅れムダな出費に①
 現在の東京タワー(港区、333メートル)に替わって、新たにタワーを造る理由は何か。スカイツリーのホームページでは、「都心部に林立する200メートル級超高層ビルの影響を低減できる」「『ワンセグ』のエリア拡大」と解説しています。
 間題なのが、実際にスカイツリーから本格的に地デジ電波が発射される時期。当初の予定では、来年7月の地デジ完全移行に間に合う予定でしたが、計画の遅れで本放送が始まるのは早くても12年冬以降。アナログ停波から1年半も遅れる“時間差”が、思わぬ波紋を呼んでいます。



 東京都内で電器店を経営していた奈良原光衛さん(77)は「送信点が東京タワーからスカイツリーに替わると、アンテナの向きを変える必要が出てきたり、新たに難視聴になってしまう家が必ず出る」と懸念します。
 総務省地上放送課では「高さが倍になるので影響はほとんどない」と説明。これに対して、「実際にスカイツリーから電波を出してみなければわからない」と奈良原さんは反論します。

あわてずとも
 地デジ問題に詳しい砂川浩慶・立教大学准教授は、「スカイツリーの建設が遅れたことで、これまで東京タワーの電波で行ってきたアンテナ調整や、ビル陰難視聴対策がムダな投資になってしまいます」と指摘します。
 実際、地域住民にムダな地デジ投資をしないよう、「学習会」を開いて呼びかけているのが、日本共産党台東区議団。杉山光男区議は、地デジテレビのアンテナ端子に針金を巻きつけるだけでもテレビが映る“実験”をして、参加者を驚かせます。
「地デジの電波は強力です。東京タワーからの電波でも、少なくない家庭で値段の安い室内アンテナで十分受信できます。スカイツリーができればさらに電波の条件がよくなる。あわててケーブルテレビに加入したり高いお金を払って準備する必要はありません」
政策に大問題
 党区議団が地デジ学習会を開いてきたのは、区民からの地デジ相談が相次いだためでした。代表的な事例が、簡易なアンテナでも十分受信できるのに、業者から月額料金の高いケーブルテレビヘの加入を迫られたり、高額なアンテナ工事代を請求されたというもの。ビル陰共聴施設の改修に数百万円をかけたマンションのオーナーの例もありました。
 相談を受けてきた、はしづめ高志区議は「アナログ停波とスカイツリーの開業の順序が逆です。“来年7月までに地デジの準備をしろ”と脅して、地デジの知識のない人や高齢者に余分な負担を強いる国の政策は大問題」と怒ります。
 砂川さんも言います。「スカイツリー建設の計画が遅れたのなら、アナログ停波もそれに合わせて延期すればいいのです。その方が余計な対策に税金を使わなくても済みます。延期するのに何の問題もありません」
   ◇
 地デジに完全移行し、アナログ波を止める来年7月24日まで、あと200日余と迫りました。しかし、低所得者層への地デジ受信機の普及や共聴施設の地デジ対応の遅れなど、課題は山積。NHKの内部試算では、受信契約数が約60万~440万件減ると予測しました。事実上の「テレビ難民」です。崖っぷちに立たされた地デジの課題を探ります。(つづく)

延期して困ることなし
 砂川浩慶さんの話 デジタル化は世界の大きな流れです。しかし、政府が「円滑な地デジヘの移行」というなら、きちんとしたデータをもとに議論して、その上で国民生活の重要なインフラ(基盤)であるテレビの電波を止めていいのかどうか判断すべきです。アナログ停波を延期すると、放送局のサイマル(アナログ放送とデジタル放送の両方を流す)経費が大変だといわれます。いくつかのローカル局の話では、年間のサイマル経費はだいたい数千万円で、民放127社だと約100億円。NHKと合わせても140億円です。地デジチューナー支援予算の570億円よりはるかに安い。このまま地デジに完全移行してテレビの台数が減れば、民放は広告料がそのままというわけにはいかない。NHKも受信料がとれなくなります。現実問題、アナログ停波を延期して困ることはありません。イギリスでは、停波実験を重ねながら延期し、「2012年停波」を決めました。社会的弱者といわれる人もきちんと地デジに替われる状況のもとで停波する方が、税金投入も少なくて済むのではないでしょうか。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月26日付掲載



ビル陰共聴施設 遅れる政府の支援策②
 「来年7月までやれるはずがない。無理ですね」。全国約3200のマンション管理組合が加盟する「NPO法人全国マンション管理組合連合会」(全管連)の谷垣千秋事務局長は言い切ります。
 谷垣さんが指摘するのは、ビル陰の電波障害に対応する共同受信施設(共聴施設)の地上デジタル化が、来年7月の地デジ移行Hアナログ放送打ち切りまでに間に合わないということです。

3割が未対応
 9月末時点での総務省の調査では、全国のビル陰共聴施設のうち、地デジ対応が済んだのは70・2%。京都府(50・5%)、千葉県(50・7%)と都市部での遅れが顕著です。ビルやマンションなどの建造物が原因で電波障害が起きた場合、その建物の所有者の負担で、共同アンテナから各戸にケーブルを引くなどの対策を講じてきました。全国で約6万8千施設、690万世帯が利用しています。
 共聴施設を管理するマンション住民にとって、アナログからデジタルヘの変更は、まったく想定外の事態。受信調査や施設の改修・廃棄には多額の費用と時間がかかります。総会で居住者の承認を得るだけでなく、施設を利用する地域住民への通知や説明会も開かなくてはなりません。
 最近、共聴施設の改修を終えた埼玉県三郷市のマンションの場合、改修を終えるまでに費やした時間は1年半。管理組合役員は「地デジの知識や情報がまったくないなか、費用の捻出や地域住民への説明は本当に苦労しました」と振り返ります。
 全管連では2007年1月、共聴施設の地デジ改修費用の国庫負担などを政府に求めました。しかし、助成制度が始まったのが昨年5月。完了まで面倒をみる「総合コンサルティング」支援は今年の5月になってから。
 「政府の対応は後手後手なうえ、肝心の情報が伝わってこない」と管理組合役員。谷垣さんは「支援策ができても、伝わるのは管理会社止まり。これが『遅れ』の原因です」と指摘します。






改修のめどは
 実際、助成制度の利用件数も伸びていません。今年の11月末まで4800件分の予算を用意していましたが、実際の申し込みは約1700件にとどまりました。いまだに改修のめどがたっていない「計画なし」の施設も、総務省の調査で8・3%。世帯に換算すると40万に達します。
 日本共産党の塩川鉄也衆院議員が10月に訪問したケーブル会社「JICOM所沢」(埼玉県所沢市)の担当者によると、ビル陰対応が必要なマンション約100棟のうち、改修がすんだのはまだ半分程度。担当者は「対策が必要なマンションを回っていますが、まだ把握できていない施設も数多くあります。総務省のリストだけでは数は合いません」と危惧します。
 塩川議員は、総務省の調査方法に疑問を投げかけます。「ビル陰共聴施設の管理者が、利用している地域住民に『個別でも受信できる』とチラシなどで周知すれば『地デジ対応済み』とカウントされる。これでは、双方がきちんと地デジに対応したのか、正確な実態が反映されません」
 改修が間に合わなくても、アナログ波を止めるのか…政府の対応が問われています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月27日掲載



普及率9割? 「実態反映せず」の指摘
 「地デジ受信機の普及率9割超える」「エコポイント効果」―。先月末、新聞やテレビが一斉に報じました。総務省が11月26日に発表した「地上デジタル浸透度調査」によると、9月末現在の地デジ受信機(テレビやチューナー、録画器など)の世帯普及率が90・3%に上昇。政府目標の91%に届かなかったものの、片山善博総務相は「誤差の範囲」と、来年7月の地デジ完全移行に変更がないと明言しました。

重過ぎる負担
 一方、東京都大田区の黒沼良光・日本共産党前区議は「とても9割もの世帯に普及しているとは思えません」と首をひねります。黒沼さんが地域住民の要望にこたえて「地デジ講座」を開いたのは10月。十数人の参加者のなかで「地デジ受信機」を準備できていたのは、わずか2人でした。
 「すでにテレビを注文した人や、期限ギリギリまでアナログテレビを使うという人もいます。しかし、高齢者にとって数万円のテレビやアンテナ代を負担するのは大変です」と黒沼さん。「テレビを見るのをやめる」と語った参加者もいたといいます。
 総務省の「浸透度調査」からも、このような傾向が読み取れます。地デジ受信機を「保有していない」理由(複数回答)について、トップは「アナログ終了まで時間的余裕がある」で70・1%。「経済的に地デジ放送に対応する余裕がない」が36・1%で2番目です。年収200万円未満の普及率も全体より10ポイント低い80・3%と、経済的な「格差」の問題は残されたままです。
 地デジ問題に詳しいジャーナリストの坂本衛さんは、「総務省の調査はまったく信用できない。地デジの世帯普及率は、9月段階で8割に達していないのではないか」と疑問を投げかけます。



問題多い調査
 坂本さんは今年の7月、学識経験者4氏で「地上デジタル放送完全移行の延期と現行アナログ放送停止の延期を求める提言」を発表。その根拠の一つとして、「総務省発表の世帯普及率は、実態と大きくかけ離れている」ことを挙げています。
 それによると、調査は無作為に抽出した電話番号に電話をかけ、アンケート調査票の郵送に同意した家庭だけに送付するという「RDD法」と呼ばれるもの。この方法だと、地デジに対応していないなど調査に非協力的な家庭が最初から漏れてしますこと。さらに、電話がかかる時間帯に不在がちな単身世帯や共稼ぎ世帯、携帯しか持たない若者世帯が反映されないと指摘しています。
 「そもそも、総務省の調査では、地デジの対応が最も困難な80歳以上の高齢者を対象から除外している」と坂本さん。80歳以上の単身世帯(約150万)と夫婦世帯(約100万)の合計250万世帯は、全体の5%。四国4県(約165万世帯)を上回ります。
 坂本さんは言います。「このままでは、いちばんテレビを必要とするお年寄りからテレビを奪うことになります。もし、来年7月24日に日本を大型台風や地震が襲ったとき、それでもアナログ波を止めてしまうのか―。そんなことは断じて許されるはずがありません」(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月28日付掲載



 僕の場合はもともと電波障害で、ケーブルテレビが無料でアナログと地デジを配信してくれています。
 パソコンの方はやっと地デジ対応のチューナーを購入しました。セットアップは来年になります。
 テレビの方はどれほどの機能が必要なものかと悩んでいます。録画機能のないものなら比較的安く買えます。
 パソコンのチューナはダブル録画ですので録画はそちらで充分な気がしています。パソコンのチューナを使い込んでみてテレビの方は決めます・・・


それにしても、高齢者などよく分からない人に高価なテレビやチューナ、アンテナを売りつける輩って許せませんね!
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苦境と模索 眼鏡の里 福井・鯖江④ 加工力・企画力で発信

2010-12-28 19:23:09 | いろんな取組み
苦境と模索 眼鏡の里 福井・鯖江④
加工力・企画力で発信
産地創設の祖父を継ぐ 増水悟さんに聞く


 福井県に眼鏡枠づくりの技術を普及した増永五左衛門(ますなが・ござえもん)を祖父に持つ、増永眼鏡社長、増永悟さん(64)に今後の展望を聞きました。
 祖父は1900年代の初めごろ、貧しいこの地の村おこしとして眼鏡枠づくりを始めました。当時は日清戦争(1894~95年)の後の不景気の時代で、田んぼを相続できない農家の次男三男は現金収入もまともに得られない状態でした。「やらなければ」ととりくんだと聞いています。農閑期の冬に、雨や雪が多く屋外労働が適さないこの地域は、家のなかでコツコツとでき、大きな設備投資もいらない眼鏡枠づくりが適していたのです。人々の生活向上が目的なので、祖父は人を育て、眼鏡枠づくりで独立した人がまた人を育て独立させるようにしてきました。鯖江もそうして産地として発展してきたのです。




力をあわせる
 産地は、製造過程が分業化し、モノや人が集積しており、物資の調達や流通にとても有利です。また、産地には力を合わせるという素晴らしいメリット(優位点)があります。新技術や新製品の開発への投資でも、1企業の投資額は少なくても産地全体では大企業を超える大きな額となります。開発・工夫の切磋琢磨(せっさたくま)もあります。「あそこでこんな工夫をやった。なら、うちでもこんなこともできる」とね。ある企業が「自社が独自に開発した技術」と考えたとしても、ここではほとんど産地全体で開発したといってもいいと思います。私たちは90年代に低価格出荷を迫られました。製造―卸―小売りという商晶流通のなかで価格決定権を握る者の逆転が起こったということです。以前はメーカーが一番強く、商品は「製造コスト」に「適正マージン」を上乗せして売られていました。しかし、大手小売業が価格の決定権を握り、自分たちが売りたい価格から逆算して製造出荷価格を求めるようになったのです。小売業が求める低価格で造れない製造業者は「滅びよ」ということです。

日本人の感性
 これに対し今、私たちがとっている策が、産地メーカーによる自社ブランドの取り組みです。価格をたたかれやすい委託生産でなく、自社で企画・デザインし、製造・調達し、売り、商品保証や修理などのアフターケアまでして、量販店の価格勝負に負けまいとする努力です。メーカーだけでできることではありません。部品造りやその加工、仕上げまで産地ならではの共同と連携の力があってこそできるのです。世界の眼鏡枠の生産は今、量ではアジア、特に中国産が圧倒的です。確かに低価格は魅力の一つでしょう。しかし、加工の仕上がりの美しさ、正確さは、そう簡単に日本に追いつくことはできないでしょう。その美しさなどは日本の文化のなかで培われた日本人独特の、感性によるものだからです。日本人がヨーロッパのデザインカや色彩感覚の豊かさに簡単に追いつけないのと同様です。日本の加工力に自信を持ち、デザイン力や企画力を高めて、産地のみなさんとともに、国内や世界に発信できる新しい眼鏡づくりに挑戦していきたいと思います。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月11日付


>加工の仕上がりの美しさ、正確さは、そう簡単に日本に追いつくことはできないでしょう
確かにそうかもしれませんね。しかし、さらに技と芸術性を磨いて、さらに上を目指してほしいものですね。
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苦境と模索 眼鏡の里 福井・鯖江③ 悲願の自社ブランド

2010-12-26 20:32:34 | いろんな取組み
苦境と模索 眼鏡の里 福井・鯖江③
悲願の自社ブランド


 「鯖江はある意味、取引先や流通業者のいいなりの眼鏡枠を作ってきました。これを転換するために私たちは今、『自社ブランド』を持つ努力に産地をあげてとりくんでいます」。福井県眼鏡協会の坂野登二専務理事はいいます。市内の眼鏡枠メーカーでは自社のブランド名を付けて販売できる製晶を持つ企業はわずか。国内外のブランド企業から委託を受けて下請け生産(OEM)する企業が大半です。
量販店が台頭
 1990年代以降、国内ではアジアとくに中国産の低価格製品を売る量販店が台頭。価格競争が激しくなり、産地も出荷価格の厳しい引き下げを求められ、ときには採算を割ることさえありました。県眼鏡協会は、自ら設置・運営する「めがねミュージアム」(眼鏡会館)に今年3月、産地企業による自社ブランド品の展示場を開設しました。県、市が資金を支援しました。鯖江市中心街に近い同展示場。柔らかい照明を受けて、産地メーカーによる新しいデザインの眼鏡枠が多数展示されています。透きとおったワイン色や淡いグリーンの樹脂にメタル装飾をあしらったファッション性の高いもの、丸型の黒い枠で昔流行したロイド・メガネの復活版や竹製の枠などが並びます。訪問者は観光客も含め平均月5000人。「『眼鏡ってすてきなんですね』『こんな眼鏡もあったんですね』などの感想が寄せられるんです」と笑顔で語る坂野さん。市内ではメーカーによる自社ブランドづくりへの努力が続けられています。



 県眼鏡工業組合副会長の長井正雄さん。政府の新製品開発支援施策に応募して認定され、カーボン(炭素繊維)の眼鏡枠を開発中です。自社ブランドヘの思いについて長井さんはこういいます。「私たちはOEMの製造で鍛えられ、良質の眼鏡を造る高い技術を持つことで発展してきました。しかし、OEMは“待ち”の生産。低コスト国に委託が移ると私たちにはどうしようもありません。自社ブランドしかわれわれの生きる道はないのです」

もっと支援を
 自社ブランドは産地の悲願です。しかし、自社ブランドヘの道は容易ではありません。コ企業では乗り越えられないことも多い。政府がもっと支援してほしい」と長井さん。開発支援についても自己負担(企業負担)が2分のーあり、二の足を踏む企業も多く、全額支援ができないものかと、と長井さんは望みます。デザイン学校の開催や販売・宣伝企画への助言、資金支援なども求めています。産地が力を入れているのが「THE291」(291は「フクイ」をもじったもの)です。高品質と優れたデザインを持ち、デザイナーや大学機関などによる審査に合格した製品に認められる産地の統一ブランドです。自社ブランドヘの思いは小さなメーカーも例外ではありません。市北部地域で家族を中心にした従業員3人のメーカー経営者はいいます。「受注が減って納入先の問屋さんも元気がない。でもこういう時だからこそ、独自のデザインで自社ブランドに挑戦したい。アイデアはあるんです」眼鏡枠づくり100年を支えてきた鯖江の新しいものづくりに挑戦する志は生きています。(つづく)


■OEMとライセンス契約鯖江の産地メーカーの多くはOEM(委託受注生産)企業として発展してきました。OEMは、メーカーが依頼を受け、納入先のブランド名で製品を生産します。完成品の所有、販売権はメーカーにはありません。一方、ライセンス契約では、ブランド名や製造技術などの使用許可料を払うことで契約の範囲内での販売ができます。OEMでは独自に市場には入れず、ライセンス契約も厳しい制約があるため、メーカーは「ハウスブランド」(自社ブランド)による市場への直接的な参入を望んでいます。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月10日付


一所懸命、眼鏡のフレームを造っても、美味しいところを大手メーカーが取っていくのって確かに悔しいですよね。
メガネ屋さんの店頭に、鯖江の自社ブランドが並ぶといいですね。
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苦境と模索 眼鏡の里 福井・鯖江② 手の熟練技失われる

2010-12-25 23:31:09 | いろんな取組み
苦境と模索 眼鏡の里 福井・鯖江②
手の熟練技失われる


 鯖江市内で眼鏡の仕上げ加工をする大川幸夫さん(70)=仮名=。「テンプル」「さや」などと呼ぶ眼鏡の柄の部分に曲げを付け、鼻のうえで眼鏡を支える「パッド」を整え、標準的な人の顔に合うよう、仮の調節をします。この道50年。立体として眼鏡の図面に指定された寸法どおりに、手作業だけで眼鏡の形をピッタリと仕上げます。「手の勘だけがたより。機械ではできない仕事」と大川さん。「でもね、技能を受け継ぐ者はいないんだよ」とぽつり


下請けが減少
 手作業を担う小・零細下請けが減少しています。市内の眼鏡関連事業所は、2008年までの5年間に640から531に減りました。うち、金属部品を接合する工程を担い、小・零細企業が多い「ろう付け」加工の事業所は92から64に3割減少しました。眼鏡枠の製造は、部品の生産や枠の組み立てのほか、研磨など、特殊な技術や熟練の技を要する多様な工程から成り立っています。一部は下請け企業が専業的に担います。“技術の分業”です。このなかで小・零細下請けは、勘と手の技を頼りとし、もっとも手間のかかる工程を引き受けてきました。市北西部の加工工場。従業者が作業台に向かって黙々と「ろう付け」をしていました。作業台の機械には二つの部品が乗せられています。部品の闇に細い金属板を差し込み、高温で金属板を溶かすと同時に高圧をかけて部品同士を接合します。作業は一瞬の間。プレスのタイミングや時間の長さなどは体感で覚えるといいます。しかし、この熟練の技が失われつつあります。「昨年から今年の春までに外注先の下請けが2軒、廃業した」。欧州向け眼鏡枠の組み立て加工をする小規模メーカーの経営者はいいます。「父ちゃん、母ちゃん2人でやっているような小さな下請けが熟練の技を支えてきた。これが失われれば鯖江の眼鏡枠の質は保てない」



最大手も懸念
 長期にわたる工賃引き下げが小・零細下請けの経営を掘りくずします。「加工単価は1990年代の半ばくらいから下がりっ放し。モノにもよるが、今はいい時の半分から4分の1。商売として成り立たたないので、先輩や仲間がここ数年で次々とやめていった」。眼鏡の枠や関連部品の研磨加工に携わる内藤晃さん(47)旺仮名Uは悔しそうにいいます。市内では下請けに一切頼らずに生産するメーカーはありません。産地生産はメーカー、大、中、小・零細下請け企業が一体となって成り立っているのです。小・零細企業の激減は「産地の技術的分業の弱体化をもたらす」。市内最大手のメーカーも懸念します。しかし、廃業の増加に対する抜本対策はとられていません。眼鏡工場の労働者、独立・開業の自営業者として10代の頃から眼鏡の加工に携わってきた内藤さん。「眼鏡の仕事が好き。産地で続けられるようにしてほしい」(つづく)

■眼鏡枠の工程眼鏡枠の製造は、金属製の場合なら約20種類の部品の接合、表面の磨き、着色、メッキ、組み立てなど200~300の工程からなるといわれます。そのため、どの完成品メーカーも工程の一部を下請けに委託。鯖江市内の眼鏡関連事業所531のうち完成品メーカーは108、部品メーカーは69、メッキ、研磨など中間加工業が314となっています。うち研磨加工では従業者3人以下の事業所が85%、「ろう付け」加工では70・3%を占めます(2008年)。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月9日付


いくつもの工程があって初めて眼鏡が出来上がるんですね。一つひとつの部品メーカーは零細企業。お互い支えあって頑張っているんですね。世界に通用する技術を継承して・・・
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