アナログ停波200日 崖っぷちの地デジ 後半
軍用機原因の電波障害④
沖縄県宜野湾市役所。フロアの一角に設けられた「地デジ相談コーナー」に来ていた男性が、日本共産党の塩川鉄也衆院議員に訴えました。
「ドラマの一番いいところだったのに、米軍機が飛んできてテレビが映らなくなった。何のために高いお金を出して地デジテレビを買ったかわからない」
全然映らない
9月末、地上デジタル放送問題の調査で宣野湾市を訪れた塩川議員。「米軍普天間基地は、市のど真ん中にあります。基地の周辺は航空機の爆音被害だけでなく、地デジ放送の電波障害被害も深刻でした」と語ります。
沖縄・宜野湾市役所内の「地デジ相談コーナー」を訪れた塩川鉄也議員
航空機などで電波がさえぎられる障害(フラッター障害)はアナログ波でも起こりますが、地デジ波では画面がまったく映らなくなったり、モザイク状になるのが特徴です。「さらに、普天間基地のヘリコプターや輸送機は、頻繁に飛び立って低空でゆっくり旋回するため、被害がより大きくなる」と塩川議員は指摘します。
同市基地渉外課によると、市民から苦情が寄せられるようになったのは2007年以降。沖縄本島で地デジ放送が始まった06年直後のことでした。08年5月から市民に情報提供を呼び掛けたところ、今年の9月までに寄せられた被害は75件。その場所を地図に落とすと、被害は基地を取り囲むように広がっています。
「米軍のヘリコプターが上空を飛行するたびにテレビ画面が消える」「家が滑走路の延長線上にあるため、ほとんど毎日テレビ画面が真っ暗になる。調査し早急に改善してほしい」―。寄せられた市民の叫びは深刻です。
「解決」するためには、まず、地方自治体が事前に被害の有無を調査し、防衛省に対策を要請。その後、防衛省で独自に調査して被害の範囲を特定し、アンテナの整備やケーブルテレビヘの移行などの対策を実施するという流れ。手間と時間がかかります。
宣野湾市では基地の返還とともに、この問題についても08年10月に総務省や防衛省に調査を要請。ようやく今年の9月末から調査が始まり、対策工事は来年度から。「地デジに完全移行する来年7月24日までに間に合うのか」(市の担当者)予断を許さない状況です。
自治体が声を
もう一つの問題が、「基地による電波障害の被害が起きていても、自治体が声をあげなければ、防衛省は対策を行わない」(塩川議員)仕組みです。たとえば、埼玉県の航空自衛隊入間基地。基地を直接抱える狭山市のほか、隣接する入間市や所沢市でも電波障害が想定されますが国に対策を要請したのは狭山市だけです。
塩川議員は10月、入間、所沢の両市役所を訪れ、「住民から聞き取り調査を行って被害があれば、ぜひ国に対策を要望してほしい」と申し入れました。
「本来、基地による地デジ電波障害対策は、地方自治体に負担をかけることなく、国が率先して対策をとるべきものです。また、対策としてケーブルテレビに移行する場合、月額視聴料金にも補助するなど、視聴者に負担をかけない仕組みづくりも必要です」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月29日付掲載
沖縄の遅れ 全国の課題⑤
地上デジタル放送受信機の普及が、最も遅れている沖縄県。日本共産党の塩川鉄也衆院議員は11月25日の総務委員会で「沖縄の遅れは全国の課題」だとして特別の対策を求めました。9月の下旬に現地調査をした塩川議員に聞きました。
◇
調査の目的は、沖縄の実態を把握することで、残り期間がわずかとなった地デジ移行の課題を明らかにすることです。「デジサポ」や各自治体との懇談に加え、県内の民放3社の社長さんからも要望を伺いました。
全国で最下位
総務省の9月末の調査で、沖縄県の地デジ普及率は全国で最下位の78・9%。全国平均より10ポイント以上も遅れている要因は何か。まず第1に、地デジ放送の開始が沖縄では遅れたという問題がありました。国内で地デジ放送が始まったのは2003年12月ですが、沖縄本島では06年、富古島や石垣島を含む先島諸島では09年10月です。他地域より地デジ対応の準備期間がありません。
2番目が、地理的な困難さです。沖縄は離島が多いうえ、31ある有人離島のうち電器店のある島は24。竹富町には一つもありません。総務省の調査でも、宮古島市と宮古郡の地デジ世帯普及率は65%、石垣市は69・7%と、沖縄本島(80・3%)よりもさらに10ポイント以上の差があります。
3番目はホテルや旅館に設置されているテレビのデジタル化の遅れです。総務省は実態をまったく把握していません。あるホテルの支配人は「160室すべて地デジテレビに替えたら1千万円以上かかる。対応のめどが立たない」と嘆いていました。
竹富町役場で川満栄長町長(右)と懇談する塩川鉄也衆議院議員(左)
最も深刻なのが、低所得者層への普及の遅れです。沖縄の県民所得は全国平均の約7割といわれます。現在、国では生活保護世帯など「NHK受信料全額免除世帯」(最大280万件)を対象に、アナログテレビに取り付ける地デジチューナーを無料支給しています。沖縄県でも独自の支援策として、市町村民税非課税世帯を対象に地デジテレビの購入費用として1万2千円を補助しています。
支援策進まず
しかし、県内で国の支援策はほとんど活用されていません。全国レベルでも、最大280万件が対象なのに、今年の7月までの申し込み件数は88万件にすぎません。
なぜか。デジサポでは「NHKの受信料を払っていない世帯が多いので、受信料契約とリンクした国の支援策の利用が進まない」といいます。また、この機会に地デジテレビに買い替えたい人にとっては、県の支援策の方がありがたい。
来年度、国はチューナー支給の対象を住民税非課税世帯にも拡大することを決めました。しかし、地デジテレビ購入にも補助をするなど、支援メニューも柔軟に対応しないとこれまでと同じ失敗を繰り返すだけです。
このように、沖縄での地デジ普及の遅れは、多かれ少なかれ全国の地方部では共通する問題です。支援策の強化・拡充とともに、来年7月のアナログ停波計画の延期を、おおいに検討し具体化する時期にきているのではないでしょうか。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月30日付掲載
沖縄県が地デジテレビ本体の購入に補助しているって魅力的ですね。確かに、20インチ以下で見るだけなら1万円台で買えますものね。
全国的に見ると沖縄だけでなく地方に行くと、地デジテレビ購入やアンテナ工事なども事欠くでしょうね。
無理して2011年7月にアナログ停波をせずに、すべての国民が準備できるようにして地デジに移行してもいいのではないでしょうか。
軍用機原因の電波障害④
沖縄県宜野湾市役所。フロアの一角に設けられた「地デジ相談コーナー」に来ていた男性が、日本共産党の塩川鉄也衆院議員に訴えました。
「ドラマの一番いいところだったのに、米軍機が飛んできてテレビが映らなくなった。何のために高いお金を出して地デジテレビを買ったかわからない」
全然映らない
9月末、地上デジタル放送問題の調査で宣野湾市を訪れた塩川議員。「米軍普天間基地は、市のど真ん中にあります。基地の周辺は航空機の爆音被害だけでなく、地デジ放送の電波障害被害も深刻でした」と語ります。
沖縄・宜野湾市役所内の「地デジ相談コーナー」を訪れた塩川鉄也議員
航空機などで電波がさえぎられる障害(フラッター障害)はアナログ波でも起こりますが、地デジ波では画面がまったく映らなくなったり、モザイク状になるのが特徴です。「さらに、普天間基地のヘリコプターや輸送機は、頻繁に飛び立って低空でゆっくり旋回するため、被害がより大きくなる」と塩川議員は指摘します。
同市基地渉外課によると、市民から苦情が寄せられるようになったのは2007年以降。沖縄本島で地デジ放送が始まった06年直後のことでした。08年5月から市民に情報提供を呼び掛けたところ、今年の9月までに寄せられた被害は75件。その場所を地図に落とすと、被害は基地を取り囲むように広がっています。
「米軍のヘリコプターが上空を飛行するたびにテレビ画面が消える」「家が滑走路の延長線上にあるため、ほとんど毎日テレビ画面が真っ暗になる。調査し早急に改善してほしい」―。寄せられた市民の叫びは深刻です。
「解決」するためには、まず、地方自治体が事前に被害の有無を調査し、防衛省に対策を要請。その後、防衛省で独自に調査して被害の範囲を特定し、アンテナの整備やケーブルテレビヘの移行などの対策を実施するという流れ。手間と時間がかかります。
宣野湾市では基地の返還とともに、この問題についても08年10月に総務省や防衛省に調査を要請。ようやく今年の9月末から調査が始まり、対策工事は来年度から。「地デジに完全移行する来年7月24日までに間に合うのか」(市の担当者)予断を許さない状況です。
自治体が声を
もう一つの問題が、「基地による電波障害の被害が起きていても、自治体が声をあげなければ、防衛省は対策を行わない」(塩川議員)仕組みです。たとえば、埼玉県の航空自衛隊入間基地。基地を直接抱える狭山市のほか、隣接する入間市や所沢市でも電波障害が想定されますが国に対策を要請したのは狭山市だけです。
塩川議員は10月、入間、所沢の両市役所を訪れ、「住民から聞き取り調査を行って被害があれば、ぜひ国に対策を要望してほしい」と申し入れました。
「本来、基地による地デジ電波障害対策は、地方自治体に負担をかけることなく、国が率先して対策をとるべきものです。また、対策としてケーブルテレビに移行する場合、月額視聴料金にも補助するなど、視聴者に負担をかけない仕組みづくりも必要です」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月29日付掲載
沖縄の遅れ 全国の課題⑤
地上デジタル放送受信機の普及が、最も遅れている沖縄県。日本共産党の塩川鉄也衆院議員は11月25日の総務委員会で「沖縄の遅れは全国の課題」だとして特別の対策を求めました。9月の下旬に現地調査をした塩川議員に聞きました。
◇
調査の目的は、沖縄の実態を把握することで、残り期間がわずかとなった地デジ移行の課題を明らかにすることです。「デジサポ」や各自治体との懇談に加え、県内の民放3社の社長さんからも要望を伺いました。
全国で最下位
総務省の9月末の調査で、沖縄県の地デジ普及率は全国で最下位の78・9%。全国平均より10ポイント以上も遅れている要因は何か。まず第1に、地デジ放送の開始が沖縄では遅れたという問題がありました。国内で地デジ放送が始まったのは2003年12月ですが、沖縄本島では06年、富古島や石垣島を含む先島諸島では09年10月です。他地域より地デジ対応の準備期間がありません。
2番目が、地理的な困難さです。沖縄は離島が多いうえ、31ある有人離島のうち電器店のある島は24。竹富町には一つもありません。総務省の調査でも、宮古島市と宮古郡の地デジ世帯普及率は65%、石垣市は69・7%と、沖縄本島(80・3%)よりもさらに10ポイント以上の差があります。
3番目はホテルや旅館に設置されているテレビのデジタル化の遅れです。総務省は実態をまったく把握していません。あるホテルの支配人は「160室すべて地デジテレビに替えたら1千万円以上かかる。対応のめどが立たない」と嘆いていました。
竹富町役場で川満栄長町長(右)と懇談する塩川鉄也衆議院議員(左)
最も深刻なのが、低所得者層への普及の遅れです。沖縄の県民所得は全国平均の約7割といわれます。現在、国では生活保護世帯など「NHK受信料全額免除世帯」(最大280万件)を対象に、アナログテレビに取り付ける地デジチューナーを無料支給しています。沖縄県でも独自の支援策として、市町村民税非課税世帯を対象に地デジテレビの購入費用として1万2千円を補助しています。
支援策進まず
しかし、県内で国の支援策はほとんど活用されていません。全国レベルでも、最大280万件が対象なのに、今年の7月までの申し込み件数は88万件にすぎません。
なぜか。デジサポでは「NHKの受信料を払っていない世帯が多いので、受信料契約とリンクした国の支援策の利用が進まない」といいます。また、この機会に地デジテレビに買い替えたい人にとっては、県の支援策の方がありがたい。
来年度、国はチューナー支給の対象を住民税非課税世帯にも拡大することを決めました。しかし、地デジテレビ購入にも補助をするなど、支援メニューも柔軟に対応しないとこれまでと同じ失敗を繰り返すだけです。
このように、沖縄での地デジ普及の遅れは、多かれ少なかれ全国の地方部では共通する問題です。支援策の強化・拡充とともに、来年7月のアナログ停波計画の延期を、おおいに検討し具体化する時期にきているのではないでしょうか。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年12月30日付掲載
沖縄県が地デジテレビ本体の購入に補助しているって魅力的ですね。確かに、20インチ以下で見るだけなら1万円台で買えますものね。
全国的に見ると沖縄だけでなく地方に行くと、地デジテレビ購入やアンテナ工事なども事欠くでしょうね。
無理して2011年7月にアナログ停波をせずに、すべての国民が準備できるようにして地デジに移行してもいいのではないでしょうか。