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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

コロナ後遺症 立ち上がった患者たち(上) 労災申請への“高い壁”

2024-04-30 07:15:11 | 健康・病気について
コロナ後遺症 立ち上がった患者たち(上) 労災申請への“高い壁”

新型コロナウイルス感染症にかかった後に強いけん怠感や思考力低下・記憶障害(ブレインフォグ)などさまざまな症状が長く続くコロナ後遺症の患者は、推定で400万~500万人ともされます。昨年11月には「全国コロナ後遺症患者と家族の会」が結成され、国に医療や生活支援の拡充を求めています。(西口友紀恵)

東京都内に暮らす保育士だった女性(30代)は、2020年4月に同居の家族から感染、翌21年2月、職場の保育園で起こったクラスター(感染者集団)で再感染しました。以来3年以上後遺症と向き合う日々です。

【コロナ後遺症と日本共産党】
2022年以降、吉良よし子参院議員と宮本徹衆院議員が国会で繰り返し、コロナ後遺症への対策強化を求めてきました。昨年2月に吉良事務所が実施した後遺症についてのオンラインアンケート(回答1172件)では、休業(失業)や治療にかかわって「支援はなかった」が回答者の63%に上るなどの実態が明らかになりました。党国会議員団は同8月、急増するコロナ後遺症について、後遺症の相談・治療の診療報酬の改善、研究予算の抜本的増額、患者の生活支援を国の責任で行うことを厚生労働相あて要請しています。


歩くのもやっと
2度目の感染時は高熱が2週間続きました。女性は「熱が下がると想像を絶するけん怠感と気持ち悪さ、めまいなどで寝たきり状態に。トイレは這(は)って行き、脚は紫色で全身に剣山で刺されたような痛みが走った。生き地獄だった」と振り返ります。
後遺症外来で「後遺症(疑い)」と診断を受けて職場に伝えましたが、同年3月末に自主退職を余儀なくされました。治療を続け、徐々にけん怠感が和らぐなど症状は改善しつつありますが、いまも「心臓発作が起きたり、血中の酸素濃度が下がったりして5分歩くのもやっとのときがある」と話します。
傷病手当の支給が1年半で終わり、長期療養による生活費や治療・通院費などで200万円あった貯金が尽き、23年から生活保護を受けています。



国にコロナ後遺症への支援強化を求め署名を呼びかける患者と家族の会の人たち=3月、東京都渋谷駅前

手続き簡素化を
この間、女性は感染当初の検査で陰性でも労災認定されるケースがあると知り、申請手続きを始めました。しかし、職場が「当時感染者はいなかった」と非協力的なため労働基準監督署に審査請求中です。
女性は労災認定について「労基署による認定以前に、職場の隠ぺい体質や非協力的な姿勢で申請すらできない人が少なくないこと、事業所のサインがなくても労基署に理由を伝えれば申請できることを知ってほしい」と話します。
手続きについて「強いけん怠感や脳疲労が重い患者では、本人が手続きをすることは困難です。国には患者に寄り添い、さまざまな支援を受けられるよう手続きの簡素化をぜひお願いしたい」と訴えています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月29日付掲載


新型コロナウイルス感染症にかかった後に強いけん怠感や思考力低下・記憶障害(ブレインフォグ)などさまざまな症状が長く続くコロナ後遺症の患者は、推定で400万~500万人とも。
後遺症外来で「後遺症(疑い)」と診断を受けて職場に伝えましたが、同年3月末に自主退職を余儀なく。治療を続け、徐々にけん怠感が和らぐなど症状は改善しつつありますが、いまも「心臓発作が起きたり、血中の酸素濃度が下がったりして5分歩くのもやっとのときがある」と。
職場の感染での後遺症なら、労災認定できることも。申請手続きの簡素化が求められます。

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陥穽(かんせい)ファンド 危ない大学改革⑤ 科学者が“危険な職業”に

2024-04-29 07:13:17 | 政治・社会問題について
陥穽(かんせい)ファンド 危ない大学改革⑤ 科学者が“危険な職業”に


ペンシルベニア大学のM・スーザン・リンディー教授の著書『軍事の科学』の「隠れたカリキュラム」の章には、研究と軍事機密の板挟みになった米ソ冷戦下の米国の科学者の異様な習性が紹介されています。
ある研究者は、同僚との飲み会、学生との応答、電車、教会のなかでも「四六時中、用心を怠らない方法」を身につけたと回想。別の研究者は、家族や同僚にうそをつくことを学んだと打ち明けます。隠れたカリキュラムには、秘密保持に関するセキュリティー・クリアランス(適性評価)に合格するための受け答えの仕方も入っていました。
公開と共同で成り立つ科学の営みがゆがめられ、厳しい監視や重い刑罰と隣り合わせだった時代。「専門家であることは危険だった」とリンディー教授は強調します。



◆軍事研究に大学ファンド活用を求める意見も
2022年10月20日の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の議事録から作成

予期せぬ「機密」
同書の日本版の監修を務めた河村豊・東京工業高等専門学校名誉教授は、民生技術や戦闘の支援にかかわる後方装備の重要性が高まるもとで、核兵器開発などに機密情報が限定されていた冷戦期とは異なり、研究者自身が予期しない形で研究内容が重要軍事技術になったり機密情報になったりする可能性があると指摘。「社会学や心理学のような文系の学問も含めて、軍からすれば全ての研究が重要な軍事機密の候補になる。専門家であることの危険は過去の話ではない」と語ります。
河村氏は背景として、直接戦闘に用いられる「正面装備」と「後方装備」の米軍での比率が1945年の4対6から91年には2対8に、21世紀に入ると1対9に変化したとする研究を紹介。「後方装備」の中身も冷戦期の軍用特注品から既成市販品に置き換わってきたことが、軍と研究者との距離を縮めることにつながっているといいます。

軍事研究が加速
岸田政権は今国会で研究者や技術者など広範な民間人に適性評価の網をかぶせる経済秘密保護法案の成立を目指し、軍事研究の禁止を宣言した日本学術会議への攻撃も執拗(しつよう)に続けています。
さらに10兆円の大学ファンドと昨年末に改悪された国立大学法人法が組み合わされることで、軍事研究の流れが加速するとの懸念があります。大学ファンドの支援を受ける国際卓越研究大学(卓越大)と東大など国立大学5法人に設置が義務づけられる最高意思決定機関「合議体」で、政府や産業界に近い学外委員が学長以上の権力を握れば、大学ごとに定めている軍事研究禁止の縛りを外せとの圧力が強まりかねないからです。
2022年10月に官邸で開かれた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」で山口寿一読売新聞社長は、軍事研究に大学予算を重点配分すべきだとし、そのために大学ファンドを活用するよう主張。政府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の上山隆大常勤議員は「相当慎重に対応する必要がある」としつつ、軍事産業と科学者が深いかかわりを持つ米国を「有り得べき一つのモデル」とし次のように述べました。
「そのような状態をどうつくっていくか。国民の皆さまと一緒に考えながらコンセンサス(合意)をつくっていくことが最大の試練だし、CSTIとしてやるべき仕事だ」
憲法が定める学問の自由の保障として大学自治を再生させるのか、米国の軍事戦略に沿って軍事研究の拠点へと変質させるのかが、大学ファンドをめぐって鋭く問われています。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月27日付掲載


ある研究者は、同僚との飲み会、学生との応答、電車、教会のなかでも「四六時中、用心を怠らない方法」を身につけたと回想。別の研究者は、家族や同僚にうそをつくことを学んだと打ち明けます。隠れたカリキュラムには、秘密保持に関するセキュリティー・クリアランス(適性評価)に合格するための受け答えの仕方も入っていました。
河村豊・東京工業高等専門学校名誉教授は、「社会学や心理学のような文系の学問も含めて、軍からすれば全ての研究が重要な軍事機密の候補になる。専門家であることの危険は過去の話ではない」と。
憲法が定める学問の自由の保障として大学自治を再生させるのか、米国の軍事戦略に沿って軍事研究の拠点へと変質させるのかが、大学ファンドをめぐって鋭く問われています。
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陥穽(かんせい)ファンド 危険な大学改革④ 「学生にも恩恵」は本当か

2024-04-28 07:14:09 | 政治・社会問題について
陥穽(かんせい)ファンド 危険な大学改革④ 「学生にも恩恵」は本当か


「学生は授業料が免除され、生活費の支給も受け、思う存分研究しながら博士課程の取得が可能になる」―。岸田政権は、大学ファンドから支援を受ける国際卓越研究大学(卓越大)になれば、学生も大きな恩恵を受けるといいます。
一方、現時点で唯一の卓越大候補となっている東北大学の学生からは、むしろ学生の経済負担が増えるのではとの不安の声が聞こえてきます。その一つが卓越大認定へ東北大が打ち出した全学生の留学必修化です。
実際、千葉大学では2020年度の留学必修化に合わせて入学金と授業料を2割値上げ。4年間で48万円の負担増になっています。留学には大学から補助が出るものの短期でも数十万円、中期なら100万円を超える自己負担が発生します。
千葉大に通うある学生は、留学プログラムが豊富なことは評価しつつ「経済的に苦しい学生には重い負担になるし、家庭の経済力が留学先などに影響してくるのは問題」と指摘。別の学生は「国際的なことをしているというパフォーマンス」と冷めた視線を向けます。




独自基金の育成
卓越大の現実も甘くありません。卓越大には毎年3%の事業成長と、大学ファンドからの卒業に向けた「独自基金造成」という実現困難なノルマが課されるからです。
大学ファンドは公的資金10兆円で基金をつくり、それを株などに投資し、運用益で卓越大に補助金を出す仕組みです。支援期間は最長25年間。卓越大はこの期間に、大学ファンドからの補助金と同規模の運用益を上げられる独自基金を造成しなければなりません。
政府は1校あたりの支援額を年間500億円と説明したこともあります。年間500億円の運用益を上げる独自基金の規模は、年利約4・5%(物価上昇分込み)という大学ファンドの高い運用目標を当てはめても1兆1千億円超です。
実際、東北大の独自基金の目標は約1兆3千億円。大学ファンドから仮に毎年500億円ずつ入ったとしても25年間の補助金総額は1兆2500億円です。

資金拠出も強制
しかも大学ファンドの補助金を直接独自基金に回すことはできないうえ、卓越大は大学ファンドへの資金拠出まで強制されます。各年度の拠出金額が次年度の補助金額に反映される仕組みだからです。拠出金は支援終了後に大学に返され独自基金に充てることができますが、それまでは年間数百億円単位の積み立てを自力で賄わなければなりません。
ちなみに拠出金に利子はつかず、大学ファンドが運用に失敗すれば減額される恐れもあります。
拠出金として大学ファンドに還流した後に残った補助金も自由になりません。政府は表面的には補助金の使い方は大学の「自由裁量」としながら、使用状況を文部科学相に毎年度報告させ、補助金の額に反映する仕組みにしています。3%の事業成長が至上命令とされ、財務の観点から学外委員の厳しい監督が入るもとで、学生支援が優先される保障はありません。
政府は大学ファンドで毎年3千億円の運用益を見込みます。しかし、本格運用を開始した2022年度は手数料と合わせて667億円の赤字に沈みました。運用益がでなければ補助金自体が絵に描いたもちです。政府がバラ色に描く大学ファンドは、どこから見ても非現実的な色彩をまとっています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月26日付掲載


卓越大の現実も甘くありません。卓越大には毎年3%の事業成長と、大学ファンドからの卒業に向けた「独自基金造成」という実現困難なノルマが。
大学ファンドは公的資金10兆円で基金をつくり、それを株などに投資し、運用益で卓越大に補助金を出す仕組み。支援期間は最長25年間。卓越大はこの期間に、大学ファンドからの補助金と同規模の運用益を上げられる独自基金を造成しなければなりません。
株式などの運用利益をあてにするなんで、本来大学のやることではないんじゃないですか。
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陥穽(かんせい)ファンド 危ない大学改革③ 「チーム甘利」の暗躍

2024-04-27 07:08:41 | 政治・社会問題について
陥穽(かんせい)ファンド 危ない大学改革③ 「チーム甘利」の暗躍

2022年の国会答弁では大学ファンドの支援を受ける国際卓越研究大学(卓越大)にだけ設置するとしていた最高意思決定機関「合議体」を、なぜ昨年強行した改悪国立大学法人法(国大法)では一定規模以上の国立大学に強制することにしたのか―。
文部科学省は、当初は卓越大にだけ合議体を義務づけるつもりでいたが、全国86の国立大学共通の組織と運営のあり方を定めた国大法を卓越大制度のために見直すのは「法技術的に困難」と内閣法制局から意見がついたと説明します。
運用資金は10兆円と巨額でも大学ファンドの本質は補助金事業であり、卓越大はその補助金をもらうための認定制度にすぎません。補助金事業のために国立大学全体にかかわる法律をいじるのは筋が通らないという内閣法制局の指摘は、大学ファンド構想の問題を鋭くえぐっています。



◆「チーム甘利」のメンバー
「文部科学教育通信」2019年11月11日付掲載の甘利氏のインタビューから作成。国会議員の肩書は現在

自民党が出発点
文科省事務次官を務めた前川喜平氏は「内閣法制局のダメだしで政策が変わることはある」と指摘。自身も08年、公立学校の教員給与に関わる法律の改正を目指した際、法制局の意見で法案提出を断念したと振り返ります。
同時に、24年度から卓越大への支援開始というスケジュールが決められているもとで国大法改定を見送れば「文科省の責任が政府内で厳しく問われることになっただろう」と語ります。
文科省が23年にとった道は、大学ファンドと国大法を表面上切り離し、一定規模以上の大学に合議体設置を強制することでした。内閣法制局の意見で08年に法案提出を断念した文科省が、23年には前年の国会答弁を覆してまで法改悪を強行する―。ここに大学ファンドの特殊性があります。
政府自ら「異次元の政策」と呼ぶ大学ファンドの出発点は、甘利明前自民党幹事長が会長を務めた自民党知的財産戦略調査会の18年5月の提言です。19年10月には首相が議長を務める総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)で議論となり、20年には大学ファンド創設が、21年にはファンドの規模を10兆円規模とすることが閣議決定されます。
重要な役割を果たしたのが甘利氏自ら命名した「チーム甘利」です。現在、卓越大の選定作業を進めている文科省有識者会議で座長を務める上山隆大氏は、甘利氏がCSTIに招いた人物。上山氏は、卓越大の認可や事業計画への意見、補助金額に認可権を持つCSTIの唯一の常勤議員も務めます。また大学ファンドを運用する科学技術振興機構の橋本和仁理事長は、甘利氏に上山氏を引き合わせた人物です。
内閣法制局から意見がついた後、誰が22年の国会答弁を覆す判断をしたのか。野党の追及を受け、文科省は2月、参院文教科学委員会にようやく法案作成経過を提出しました。

関与には触れず
しかし、そこに書かれていたのは、法案閣議決定の5カ月前に文科省の高等教育局で判断したということだけ。昨年の国会審議では日常的にCSTIと情報交換していたことを認めておきながら、CSTIの関与には一言も触れません。大学ファンド構想が立ち上がって以来、チーム甘利と官邸によって蚊帳の外に置かれ続けてきた文科省が、国大法改悪のヤマ場になって突如主体性を発揮したという異様な内容になっています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月25日付掲載


文科省が23年にとった道は、大学ファンドと国大法を表面上切り離し、一定規模以上の大学に合議体設置を強制すること。内閣法制局の意見で08年に法案提出を断念した文科省が、23年には前年の国会答弁を覆してまで法改悪を強行する―。ここに大学ファンドの特殊性。
大学ファンドを推進した「チーム甘利」のメンバーに、上山隆大氏、橋本和仁氏、五神真氏などを起用。大学運営を民間のもうけ話にするメンバーですね。
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陥穽(かんせい)ファンド 危ない大学改革② 憲法との整合性問われる

2024-04-26 07:16:56 | 政治・社会問題について
陥穽(かんせい)ファンド 危ない大学改革② 憲法との整合性問われる


短期間で急速に大学関係者の反対の声が広がるなかでの、昨年末の岸田政権による改悪国立大学法人法(国大法)強行は、官邸主導で進む大学ファンドを象徴する出来事となりました。
改悪法は、東大など一定規模以上の5法人を特定国立大学法人に指定し、学内の最高意思決定機関となる「合議体」の設置を義務付けるもの。合議体の委員任命には文部科学相の承認を必須としました。
国立大学の自治のあり知った時期を「先週」「ごく最近」「報道を通じて」と答弁(2023年11月14日の衆院文部科学委員会)。直後の国立大学協会の総会では、永田恭介会長(筑波大学学長)が法案の閣議決定前に文科省から説明がなかったことに強い不快感を表明するなど、当事者不在の法案作成過程が浮き彫りになりました。



国立大学法人改悪案の廃案を求めて声を上げる人たち。マイクを握っているのは光本教授=2023年12月5日、参院議員会館前

建前投げ捨てる
そもそも合議体設置は大学ファンドの支援を受ける国際卓越研究大学(卓越大)の認定要件であり、政府は2022年の国会では卓越大以外の国立大学に合議体設置を押し付けることはないと明確に答弁していました。卓越大かどうかにかかわらず大学の規模を口実に合議体の設置を強制する改悪国大法は、22年の国会答弁に明らかに反しています。設置を強制する大学は政令で決まるため、政府の意向で自由に対象が拡大します。
高等教育論が専門の北海道大学の光本滋教授は、卓越大の仕組み自体が非常に問題だとしたうえで「卓越大に応募して合議体を設置するのは大学の判断といえないこともないが、法律での設置強制は各大学の自主性・自律性尊重という国立大学法人化時に文科省が掲げた建前すら投げ捨てるものだ」と批判します。
光本氏はまた、合議体の学外委員に拒否権など強力な権限を与える文科省案を、構成員の対等な関係性を基礎とする大学自治とは異質な仕組みだと指摘します。
大学自治は憲法23条の「学問の自由」と密接不可分の存在で、政府も国会答弁でそのことを認めています。

戦前の反省から
憲法の教科書の定番、芦部信喜東大名誉教授の『憲法』は、23条を明治憲法下での「学問の自由ないしは学説の内容が、直接国家権力によって侵害された歴史を踏まえて、特に規定されたもの」だと解説。大学自治とは「大学における研究教育の自由を十分に保障するために、大学の内部行政に関しては大学の自主的な決定に任せ、大学内の問題に外部勢力が干渉することを排除しようとするもの」だと説明します。
大学自治のおよぶ範囲は、教員人事、施設管理、学生管理、研究・教育の内容と方法の自主的決定、予算管理などが含まれると考えられています。
しかし卓越大や特定国立大では、合議体の学外委員が、6年間の中期計画や年間3%の事業成長のための体制強化計画、予算編成などで学長を超える発言権を有するようになります。卓越大の選定を担う文科省有識者会議の上山隆大座長は21年、合議体に産業界の代表が入り学部や教育課程の改変を求めることは「十分ある」と語っています。
憲法が求める大学自治のあり方を大学ファンドが激しく揺さぶっています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月24日付掲載


そもそも合議体設置は大学ファンドの支援を受ける国際卓越研究大学(卓越大)の認定要件であり、政府は2022年の国会では卓越大以外の国立大学に合議体設置を押し付けることはないと明確に答弁。卓越大かどうかにかかわらず大学の規模を口実に合議体の設置を強制する改悪国大法は、22年の国会答弁に明らかに反しています。
「合議体」と言いながら、その主導権を握るのは外部委員。大学自治、つまり「大学における研究教育の自由を十分に保障するために、大学の内部行政に関しては大学の自主的な決定に任せ、大学内の問題に外部勢力が干渉することを排除しようとするもの」を明らかにはく奪することに。

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